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2013.11.29
参入企業が続々!市場つかめるか双腕ロボット
―双腕ロボットである理由を明確にできるか?

※本記事は、日刊工業新聞掲載の「深層断面」より引用・転載しました。

 産業用ロボットメーカーが人の上肢を模した「双腕ロボット」の開発を加速している。2013年11月6~9日開催の「2013国際ロボット展(iREX2013)」では、セイコーエプソン(写真1左)や不二越(写真1中)、スイスABB社(写真1右)が相次いで試作機を発表した。その一方で、現在双腕ロボットを手掛ける安川電機や川田工業は拡販に苦心している。双腕ロボットの課題と可能性を探った。

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写真1 iREX2013で各社が披露した双腕ロボットの試作機

iREX2013では双腕ロボがキーワードに

 スカラ(水平多関節)ロボットで世界トップシェアを持つセイコーエプソンは、2015年をめどに双腕ロボット事業に参入する。同社の双腕ロボットは頭部と手首にビジョンセンサを搭載。ビジョンセンサで得た情報をもとにアームの軌跡を自律変更する機能を持つ(いわゆるビジュアルサーボ)。今後は自社のプリンター工場で試験的に導入を進め、得られたデータをもとに広く販売できる機種に仕上げていく考え。

 世界4大ロボットメーカーの一角であるABB社も双腕ロボットの投入を伺う。前工程となる各種部品の配列を担うなど作業者との協調作業を想定しており、低出力モータなどを採用。こちらも2015年の商品化を予定している。また、不二越も9月に発売した小型ロボット「MX07」2台を使用し、ビジョンセンサを組み合わせた双腕ロボットを披露。「今後はアームの小型化など改良を施しつつ、製品化に向け市場調査を行う」(赤川正寿ロボット事業部長)。

高価格と双腕ロボである必然性がネック

multi_1111.jpg 注目を集める双腕ロボットだが、製造現場での活用は遅れている。他社に先駆けて2005年に製品化した安川電機も、2012年の販売台数は約500台規模と見られ、川田工業の双腕ロボットも2012年の販売実績は数十台にとどまる。販売が伸び悩んでいる大きな理由はおもに2つ。「高価格」であることと、「双腕ロボットが絶対必要な仕事がまだ少ない」ことだ。

 小型のロボットアームは、参入企業の増加もあり市場価格は現在百数十万円にまで値下がりしている。これに対し、双腕ロボットの市場価格は(低価格でも)700万円前後。人間の腕の自由度に相当する7軸構成のアームを2本有するなど関節軸が多いため、単純に小型ロボットアームと比較できないが、導入を検討する企業にとっては割高な印象を与えるようだ。安川電機、川田工業ともに「販売台数が伸びれば量産効果により低価格化を図れる」と見込むが、そのための方向性がいまだに見えない。

 また、後者の理由は、双腕ロボットの本質的な課題であり、ロボットアームを2台配置するほうがむしろ合理的とする意見が業界に根強い。川崎重工業の橋本康彦執行役員は「双腕ロボットをシリーズ化することは考えていない」と話す。ファナックの稲葉清典専務も「産業用ロボットが人型である必然性は見当たらない」と厳しい見方をしている()。

将来の協調作業時に双腕は有利?

 双腕ロボットの市場拡大にはやはりコストダウンが必要であり、そのためには需要拡大が不可欠だ。安川電機は双腕ロボットの生産台数を増やすため新用途を積極的に開拓している。従来の機械部品の組立作業だけでなく、先端研究分野での単純作業代替などバイオ分野でも販売を進めている。川田工業も現在の電機・電子分野だけでなく、食品分野なども将来市場として見込む。新分野開拓が進めば、量産化に一歩近づきそうだ。

 もうひとつの課題である「双腕ロボットが必要な仕事」についても、その可能性を指摘する声が上がっている。メーカーより現場に近く、実際に工場で自動化システム構築を手掛けるシステムインテグレータ(SI)からだ。
 三明機工の担当者は「双腕ロボットはロボット2台を並べるケースに比べ設置面積が小さく、治具などが不要のためロボット回りをすっきりできる」と利点を説明する。ロボットアーム2本を用いて自社で双腕ロボットを開発するウエノテクニカも「組立など人手作業を置き換えるには最適」とし、さらに、「将来人間とロボットが協調作業する時代が来たときに、双腕型の方が動きの軌道を予測しやすく安全面で有利」と分析する。

組立用途で大きな期待

 双腕ロボットの開発に乗り出す企業が増えている理由は、ロボット化が遅れている組立用途での販売増につながると期待しているからだ。双腕ロボットはシルエットが人間に近いため、人間が行っている作業の置き換えが比較的容易だ。多品種小ロットの仕事が増える先進国の工場では、複雑作業を自動化できる双腕ロボットが役立つ可能性は大きい。また、先進国で実績を積み上げれば、賃金上昇に悩む新興国でも双腕ロボットの需要は高まるだろう。
 国際ロボット連盟(IFR)のGudrun Litzenberger(グドルン・リッツェンバーガー)事務局長も「現在の組立工程は多くを人手に頼っている。今後は双腕ロボットの導入がさらに増える」と予見している。

高度な組立作業への適用も

 群馬県にある自動車部品工場では、安川電機の双腕ロボットが複数台稼働。製造ラインの最終工程で、組立作業に従事している。これまでは、おもにベテラン技術者によって行われていた作業だが、熟年社員が退職時期に入ったことや、「今後、日本の市場規模が縮小するなかで新たな雇用は増やせない」(同社社長)との判断から双腕ロボットを使い始めた。双腕ロボットの導入により、繁忙期の人件費抑制や品質安定などのメリットがあったという。今後は、さらに双腕ロボットの導入を増やし、より多様な作業を自動化していく方針。

 グローリーの埼玉工場では川田工業のNEXTAGEを多数導入。現在は4ラインで13台が稼働しており、貨幣処理機のモジュール部品の組立作業を行っている(写真2、詳細はこちら)。金属部品だけでなく、樹脂製ベルトのような柔らかい部品も2本の腕で器用につまみ上げてモジュールに組み込む。ベルトの張力の調整など一部の工程は人手が必要となるが、ほとんどの工程をロボットのみで実現した。自動台車で移動して別の工程の仕事を担当する「副業化」も実現。「人による生産に比べると作業スピードは遅いが、夜間作業も実現すればトータルでは大幅なコストダウンになる」(グローリー)という。今後は4台のNEXTAGEを新たに稼働し、計5ラインをロボット化する計画だ。

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写真2 グローリーの埼玉工場で稼働するNEXTAGE

(取材&テキスト作成:日刊工業新聞社 鳥羽田継之)


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