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2012.01.05
産ロボ各社、新興国市場の攻略に向け凌ぎを削る
―低価格機種を投入、現地SIと協力・連携へ

 2012年の産業用ロボットの需要はまだら模様にある。国内外の自動車メーカーが増販計画を掲げて生産投資をしており、ボディのスポット溶接や塗装ロボットの需要は底堅い。一方、電子機器の製造向けは一服感があり、今年後半にかけての需要回復が期待される。ただ、中国をはじめとする新興国市場が成長を牽引する構図は変わらない。メーカー各社、生産増強、新製品投入、エンジニアリング能力の強化などで攻勢をかけている。

中国市場攻略に向け低価格機種を相次いで投入

 産ロボメーカー各社が中国市場に攻勢をかける。中国は世界最大のロボット需要が見込まれる。このため各社、供給能力の増強に動いている。

 安川電機は、2013年春の稼働を目指して中国江蘇省常州市内にロボット工場の建設を決定した〔写真1(左)はイメージ、関連記事はこちら〕。中国工場で2015年度に年間6,000台を生産する。現地調達によりコスト競争力を高める。「新興国向けに低価格の機種も展開する」(南善勝取締役)方針だ。能力増強に向けて第2期の投資も見据えている。
 ファナックは、山梨県忍野村の本社でロボット新工場を稼働させた〔写真1(右)、関連記事はこちら〕。ロボット生産能力を従来比2倍の月5,000台に引き上げた。工場の全自動化により製造原価を低減している。

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写真1 安川電機の本社工場(左)とファナックが2011年12月に稼働を始めた新工場(右)

 中国は工場作業者の賃金上昇と定着率の低さを背景に、生産ラインの自動化が急速に進んでいる(そもそも急激なGDPの上昇に対し労働者数が追いついていない)。この切り札として産ロボの導入が注目されている。国際ロボット連盟(IFR)は、中国のロボット需要について2010年の1万5,000台に対し、2014年は3万台を超えると予測する。
 特にスマートフォンやタブレット端末などの電子機器の生産ラインでは、ネジ締めなどの簡単な工程に大量のスカラロボットが使用される。2011年前半までEMS(電子機器製造受託サービス)企業の旺盛な設備投資を受け、スカラロボットの需要が伸びた。これを受け三菱電機やセイコーエプソン、ヤマハ発動機、デンソーウェーブといった日系各社の値引き合戦も過熱している。

 東芝機械は、従来の5割にまで低価格化した98万円の機種を投入した(写真2)。坂元繁友取締役は「これまでは高付加価値の機種を大手顧客に提案していたが、中国の地場メーカーなどの新興国企業を攻略するには低価格機が必要と判断した」としている。さらには、東芝機械以外の産ロボメーカーの話題となるが、〔システムインテグレータ(SI)経由では〕65万円とほぼ原価ともいえるスカラロボットも出回り始めている。
 中国では金融引き締め策が響いて製造業の投資が一服しているが、2012年後半から投資活動が活発化する見方もある。2012年も低価格機の投入が相次ぎそうだ。

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写真2 東芝機械が中国など新興国市場の攻略に向け投入した98万円のスカラロボット

SIとの協力・連携により小口案件カバー

 ただし、中国市場でロボットを普及させるには課題がある。「生産システムにロボットを組み入れる技術者が少ない」(南取締役)からだ。このためシステム構築などを請け負うエンジニアリング・サービスが求められている。

 市場開拓は需要の半分を占める自動車向けが焦点。安川電機はスポット溶接ロボットを工場に組み込むエンジニアリング・サービスの機能を北京と上海の拠点に持たせた。ファナックも上海子会社でシステムを構築できる人材を急速に拡充している。
 また、不二越は2010年春から上海にロボット事業拠点を立ち上げ、地場自動車メーカー向けスポット溶接ロボットの導入提案に乗り出した。「中国での工具や軸受、油圧、工作機械などの取引実績を足がかりにしてロボットの受注増につなげる」(田中佐千夫取締役)としている。

 自動車以外の一般産業向けも潜在需要を秘めている。しかし、自動車メーカーが一度に数百台を注文するのに比べて、1つひとつの案件での受注台数が少ない。メーカーがシステム導入までを自前で提供するには限界があり、SIとの協力、連携がカギを握る。
 川崎重工業は、中国でSIの提携社数を2014年までに現状比3倍の100社に拡充する。山口雅敏執行役員は「液晶・半導体、食品などの業界に精通した現地SIが育ちつつある」と強調する。天津や上海、広州(広東州)の現地法人を活用してSIを発掘し、連携して小口の案件をカバーする(関連記事はこちら)。

SIの育成や人材の底上げに向け業界も支援

 国内の産ロボメーカーは、販売台数で世界の7割のシェアを維持しているのに対し、国内の稼働台数シェアが低下している。IFRによると国内の稼働台数シェアは1985年の67%に対し、2011年は18%弱にとどまる。
 また、ロボット内需の振興も求められており、非自動車の一般分野に用途を広げることがカギとなる。2008年秋の「リーマン・ショック」以降、食品・医薬品・化粧品の「3品」業界、物流業界では手作業をロボットに置き換える機運が高まっており、また景気変動の影響を受けにくいことから、需要の伸びが期待できる。ただい、わが国は欧州に比べてSIの数が少なく、業界をあげたSIの底上げが求められる。

 安川電機はさいたま市内にSI向け施設「関東ロボットセンタ」(写真3)を開設した。南取締役は「3品業界を攻略したい。業界固有の製造現場に詳しいSIが発想した生産ラインを試作できる場とし、メーカー単独では発想できない用途も探る」と強調する。ロボット導入を検討する顧客に対し、試作ラインを実演して提案できる。SIや顧客がロボットと触れる機会を増やし、受注を底上げする。中部や関西に同様の施設を新設することも検討中だ。

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写真3 2011年9月から稼働を開始した安川電機の関東ロボットセンタ

 業界をあげてSIを育成する取り組みも始まった。日本ロボット工業会は「ロボットエンジニアリング業界活性化検討会議」を発足した。2012年を準備期間とし、インターネットによるアンケートやヒアリング、意見交換会などを通じてSIの要望を収集した上で活動内容を決める。サービスメニューを整えて会員制組織に移行する。100社以上が参加する業界団体に育てる方針だ。

 同組織の部会長を務める三菱電機の小平紀生主管技師長(ロボット学会副会長)は「国内には優秀なSIがたくさんいる。ところが、完全に実態を把握し切れていない。新組織を通じてSIを支援し、ロボット業界を活性化させたい」と力を込める。日本ロボット工業会は国内のSI数を1,000社以上と推定している。SIの海外進出支援も検討している。

インタビュー:産ロボは速さと信頼性の時代、ファナックの稲葉社長

 産業用ロボットは中国市場を牽引役にして需要増が続いている。日本ロボット工業会の会長を務めるファナックの稲葉善治社長にロボット産業の見通しなどを聞いた。

inaba_funuc_0105.jpg―欧州の財政危機などで世界経済の先行き不透明感が強まっています。ロボットの受注をどのように見ていますか?
 「産業用ロボットは自動車向けが堅調だ。2012年は自動車メーカーの生産投資プロジェクトが目白押しのため、垂直多関節ロボットの需要は2011年を上回るだろう。中国は金融引き締めの影響で、CNC装置やサーボモータなどのFA関連の需要は減少している。ただ1月下旬の旧正月明けから2月、3月と月を追うごとに活気が戻ると期待している」

―高成長を続ける新興国市場での体制整備が成長のカギを握ります。
 「中国とインドに対してこれまで以上に力を入れて(販売体制など)充実させている。特に中国では人員や拠点をさらに拡充する計画だ。販売・サービス体制も整備する。インドも成長余地が大きいため、発展を見越して先手を打つ」

―中国ではロボットのシステム提案が求められています。
 「自動車のスポット溶接や搬送、塗装のエンジニアリングに力を入れている。一般産業向け金属研磨や組立、物流分野でも導入を提案している。現地のエンジニアリング能力が向上し、強力な部隊になった。現地SIとも連携している」

―タイの洪水では自動車産業を中心に被害が広がりました。
 「当社の拠点に被害はなく、顧客の被害状況の調査から手伝いを始めている。NC装置はすでに代替品の注文を受けている。ただ、現地はようやく人が入れるようになったところで、復旧活動はこれから。要請を受け、最大限の努力をするつもりだ」

―東日本大震災後、省エネの要求が一段と強まっています。
 「確かに重視されるようになった。電力を最も効率的に使う動作プログラムの自動生成機能を提供している。今後は余剰のエネルギーを回収し、電力として再利用する電力回生にオプションで対応したい」

―これからの産業用ロボットに最も求められる要素は何でしょうか?
 「サイクルタイム(作業時間)と信頼性に尽きる。ロボット自らが振動を抑制する『学習ロボット』はスピードの速さが注目されている。事前に動作の負荷をシミュレーションし、寿命を推定するサービスも始めた。今後も信頼性の確保に努める」

(取材&テキスト作成:日刊工業新聞社 川口哲郎)


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