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2011.11.27
ロボ業界は出荷額・売上高で成長、産ロボの革新を求める声も
―ロボット業界アンケートより

 2011年の産業用ロボット生産額が2010年実績の5,570億円を上回りそうだ。日刊工業新聞社が実施したアンケートでは中国や東南アジアにおける設備投資の拡大を受け、産業用ロボットメーカーの約5割が受注は「増加」と回答した。また、ロボット事業の収益は「増収増益」が33%と「減収減益」の4%を大きく引き離した(図1)。ロボット市場は2008年秋の「リーマン・ショック」からV字回復した2010年を上回り、出荷実績および売上高では成長を続けている。

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図1 ロボット事業の収益動向

 11月9~12日開催の「2011国際ロボット展(iREX2011)」の開催に先駆け、ロボット事業の受注や業績などのアンケートを実施し、産業用ロボットメーカー11社、部品・周辺装置やサービスロボット関連企業44社の計55社から回答を得た。回答企業全体では「2011年度の受注計画」について前年度に比べて「増加」と回答したのが全体の49%で、「減少」の5%、「横ばい」の35%を大きく上回った。
 受注水準はリーマン・ショック前に比べて「80%未満」が31%だった。ただ産ロボメーカー11社に限ると半数以上がリーマン・ショック前の8割程度に戻ると見ている。11社のうち海外売上比率が50%を超える企業は7割で、このうち中国だけで20%以上の企業が3割に上った。海外依存が鮮明になっている。

 日本ロボット工業会(JARA)がまとめた産業用ロボットの受注額(会員46社分)は、2011年7~9月期が前年同期比3.1%減の1,026億円と8四半期ぶりのマイナスだった。電子機器の投資が端境期を迎えており、受注全体の40%近くを占める電子部品実装機の落ち込みが響いた。しかしながら、自動車向け溶接ロボットは好調に推移。新興国で中長期の需要増が期待され、業界大手は総じて受注が堅調に推移すると見ている。

研究開発投資は製販強化で増加基調

 ロボット事業への投資は増加基調にある。「2011年度の設備投資」は「増加」が22%に対し、「減少」が4%にとどまった(図2)。また「研究開発投資」は「増加」が35%、「減少」が5%と、いずれも増加が上回った(図3)。

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図2(右):設備投資の計画、図3(左):研究開発投資の計画

 ファナックは新興国市場での受注増を受け、本社工場(山梨県忍野村)で生産能力の増強に向け準備に入っている。安川電機は2011年度のロボット販売台数が前年度比10.8%増の1万8,400台の見込みで、本社工場(北九州市八幡西区)の生産能力を引き上げている。また、販売面ではロボット実機によるアプリケーションを試作したり検証したりできる施設(トレーニングセンター)を今秋から米国、日本と相次いで立ち上げた。来春までにドイツの拠点も開設し、3極体制とする。さらに、中国にも拠点の開設を検討しており、システムインテグレータの(SI)育成にも役立てていく。

海外展開は、特に中国市場を睨み体制整備

 海外市場の開拓は事業拡大のカギを握る。ところが、ロボット関連事業の海外売上高比率は「10%未満」が約半分だった。地域別では中国での売上高比率「10%未満」は約70%に達した。サービスロボ関連企業の回答が多かったことによるもので、産ロボメーカーに限れば海外売上高比率50%超と回答した企業は70%に上る。海外依存が高まっていることが伺える。

 「海外市場攻略に向けた取り組み」に関しては、「販売拠点の拡充」と「地場商社との連携」が上位を占めた。「生産拠点増産」や「生産拠点新設」をあげる企業も多かった(図4)。
 安川電機は中国北京と上海にロボット生産設備の拠点を構えて増員。ファナックと不二越は上海現地法人を増員している。中国では自動化、省人化に向けたロボット導入が今後4~5年間は続くと見られており、各社ともに体制強化を急いでいる。しかし、生産については産業用ロボットメーカーの大半は国内生産を維持する。減速機やモータなどの要素部品は国内メーカーがほぼ独占しており、海外生産にシフトする利点が少ないためだ。

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図4 海外市場攻略に向けた取り組み

求められる産ロボの技術革新とSI支援

 アンケートでは、「わが国のロボット産業の発展に向けて必要な施策や取り組み」についても聞いた。ここからは指摘された施策や取り組みに加え、それぞれの課題にも触れる。

 最も多くあげられたのは「産業用ロボットの基本構造の革新・技術進歩」だった(図5)。産業用ロボットは、ロボット産業が立ち上がった頃から基本構造ならびに構成要素はほとんど変化していない。iREX2011で公開されたシステムの中で新たな構造を採用したロボットを強いてあげたとしても、スキューズのスコット・ラッセルリンク機構を採用した5軸ロボットと安川電機の自重補償機構を組み込んだ「人共存ロボット」ぐらいである。ただし、構成要素は従来と同じであることに変わりはない。

 部品点数については、当初600~700点だったのが300程度に半減し、限界に差し掛かったと捉えられているが、三菱電機の小平紀生主管技師長は「ここに糸口がある」とし、「必須とされる構成要素を不要にする取り組みも必要」と指摘する。具体的には、ケーブルや減速機、グリース、エンコーダなどの削減にも手を加えるといった挑戦的な取り組みであり、これにより部品原価の大幅な低減に加え、品質管理など各種間接費の圧縮にも寄与する。また、例えば減速機がなくなるだけでも設計の自由度が向上し、構造のバリエーションが格段に増えるうえ、制御面でも拘束条件が少なくなり、適用技術の拡大につながる。パフォーマンスの向上も期待される。
 こうした取り組みは、大学の研究室もトライしやすい汎用性のある研究課題であり、産学連携により基本構造の革新につなげ、産業用ロボットの新たな可能性を提示してもらいたい(*)

*:「産ロボ業界は以前より“我が道を行く”きらいにあり、学会や国などにあまり期待を寄せていない傾向にある」と、ある大手産ロボメーカーの幹部は明かす。しかし、新興国における激烈な低価格競争などの影響で、ただでさえ収益を上げにくい産ロボ事業がさらに逼迫している状況となっており、技術革新に裏付けされた高機能化と低価格化の両立が求められていることを踏まえると、こうした傾向は改められるべきと考える。

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図5 ロボット産業の発展に向け必要な施策

 また、産業用ロボットの持続的な発展に向けては「SIの海外展開支援」も求められる。単体の産業用ロボットはいわば「半完成品」であり、システムインテグレータ(SI)が他の生産設備とシステムインテグレートをしたり(例えば、同期を図ったり)既存システムに組み込んだりすることで初めて価値が生まれる。それを担うのがSIであり、また、産ロボメーカーはSIによるシステムインテグレート例を受けて、新たな可能性を産業用ロボットに埋め込み、機能強化を図り、SIはこれを生かして新たな分野や用途にトライするというサイクルによりアプリケーションの拡大が果たされてきた。

 SIは国内に1,000社程度あると推計されるが、日本国内での設備投資は低迷を続けており、受注水準はリーマン・ショック以前に遠く及ばない。それでも、一部で中国や台湾に積極展開したり、商社経由で中国向けのシステム開発を請け負ったりして回復したSIがいるように、新興国におけるシステムエンジニアリングは日本のSIに及ばないため、海外市場においても彼らへの依存度は高い。海外市場においても上述のサイクルが展開されるよう、インテグレーションにかかる契約や業務範囲に関する課題解決などを支援し、SIの海外展開につなげていくことが求められよう。

生活支援ロボへの関心高い、国プロの改革を求める声も

 そのほか「研究開発支援型の国家プロジェクト制度の見直しや長期プロの創設」、「公道走行など社会実証の機会創出」、「生活支援ロボット安全検証センターの支援」と、サービスロボットの事業化を前提にした支援を求める声もあがった。「標準化活動、国際規格策定への積極関与」は2012年12月の発行予定となっているパーソナルケア・ロボットの国際安全規格「ISO 13482」を強く意識したものであり、「生活支援ロボ安全検証センターの支援」にも関係する。

 「国プロ制度の見直し」は、東日本大震災ならびに、それに伴う福島原発災害に向け、技術レベルの高い災害対応ロボットがあるにもかかわらず、即投入できなかったことを意識しての回答であろう。ロボットビジネス推進協議会の会長を務める桂靖雄パナソニック副社長は、「研究開発が中心であり、実用化まで漕ぎ着けていないことに原因がある」と指摘する。特に、災害対応ロボットのようにリスクマネジメント(危機管理)にかかわる研究開発については、既存のNEDOプロジェクトのスキームが適しているか否を検証したり、あるいは異なる切り口として、運用組織の創設ならびに育成を中心としたプロジェクトに組み込むことを検討したりすることが求められるだろう。

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図6 福島原発災害対応で原子炉建屋の調査で活躍した米iRobot社の「PackBot(パックボット、左)」と千葉工業大学などの「Quince(クインス、右)」PackBotは4月18日に、Quinceは6月24日に、それぞれ初投入された。ただしQuinceに課せられたミッションは複雑かつ高度である

 「生活支援ロボ安全検証センターの支援」については、「生活支援ロボット実用化プロジェクト」終了後の運営コストが年間3億円程度なのに対し、試験受託による収益は(数年間は)年間2億円程度との見積もりがなされていることへの危惧と想像される。同センターでは生活支援ロボットに特化した試験装置がほとんどを占める中、汎用性が高い「10m法電波暗室EMC試験機」については近く、試験の受託を開始することを予定している。茨城県つくば市近郊には、「これほどの試験装置が存在しなく、一定程度の収益が見込まれる」(同プロジェクト関係者)とするが、これのみで赤字を補うのは難しい。それゆえに、海外ロボット関連メーカーなどからの試験受託の活性化が求められるにもかかわらず、「安全認証審査官の確保・育成」は緒に付いたばかりである。
 生活支援ロボットでは、PL(Performance Level)やSIL(System Integrity Level)でのリスク評価や安全性評価を行う力量が要求される。したがって、企業での開発経験者が同センターに移籍するような仕組みを構築し、優秀な審査官を確保することで、試験受託の確保につなげていくことが求められよう。

  「社会実証の機会創出」は、ロボットビジネス推進協議会の声明(「次世代ロボットの本格普及に向けて」)でも指摘されているように実証実験の協力を得にくいのが実情である。実施にかかる行政手続きなどを含め様々な課題があるが、その一方で、サービスシステムや社会システムに実装するうえで必須となる運用モデル(ビジネスモデル)の検討が不十分であるために、ロボットの利用による有意性を提示できていないという開発側の課題もある。「ビジネスプロデューサー」は、クライアントの課題解決だけではなく、こうしたアレンジやコーディネイトでも活躍が期待され、課題の1つとしてあがっているように、その育成および輩出が併せて求められる(社会システムへの実装を議論する場合は、ロボットビジネス推進協議会の石黒周幹事がいう「アーキテクト」という表現が好ましいと考える)。

 なお今回、RTミドルウエアや生活支援ロボットに関連する意見があがったのは、iREX2011でのNEDOによる出展内容を踏まえ、設問に加えたからである。今年度で終了する「次世代ロボット知能化技術開発プロジェクト」も、中間年に差しかかった「生活支援ロボット実用化プロジェクト」も今後のハンドリング次第では、研究開発の成果を十分に生かし切れないことが危惧される。少しでも関心を持ってもらい、今後の対応に向け議論してもらいたく加えた。

【アンケート回答企業一覧・50音順】
アールティ/アイ・シイ・エス/アイ・ディー・エクス/アイシイ/イクシスリサーチ/イナバモデル/Aiソリューションズ/ABB/NTTデータ/大羽精研/オプテックス/川崎重工業/旭光電機/KUKAロボティクスジャパン/クリエイティブテクノロジー/クロイツ/KEBA Japan/コスモスウェブ/三明機工/杉浦機械設計事務所/ストーブリ/スペイシャル/大電/ダイヘン/TAIYO/ダブル技研/東芝機械/東洋理機工業/ナレッジ/ニイガタ/日本精工/日本トムソン/日本メクトロン/ハイボット/パナソニック/羽根田商会/ビー・エル・オートテック/日立産機システム/ファナック/ブイ・アール・テクノセンター/不二越/富士重工業/マイクロストーン/前川電気/MANOI企画/マクシス・シントー/マクソンジャパン/三重電子/三木プーリ/三菱電機/三菱電機特機システム/安川電機/ヤマハ発動機/ユーシン精機/ワコーテック


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