ロボナブルでは、2011年度上半期を総括する意を込めて、掲載した各記事のページビューを調査し、ランキング形式でまとめた。当初から予想されたが、福島原発災害への対応をめぐる東京電力や政府の動向、各研究機関の開発対応を使った記事が上位を独占し、上位20では13本が、上位50では25本がランキングに入った。
中でも、アクセス数が高かったのは3月末から5月初旬にかけて掲載した記事で、この頃は、原発災害の復旧作業に向け災害対応ロボットが運用されないことへの“疑問”や、米iRobot社の「PackBot(パックボット)」が投入されたのを機に、海外製ロボットに後塵を拝したことへの“嘆きに近い不満”が渦巻いていたことが思い返される。この時期に、メールマガジンへの登録数が飛躍的に伸びたことに象徴されるように、普段はロボットにほとんど関心がない方が多数アクセスした結果、このようなランキングになった。また、水中ロボットによる探索活動など、東日本大震災への対応を扱った複数の記事も上位50のうち6本が入った。
やはり新しいロボへの関心は高い
原発災害対応を扱った記事が上位を占める中、新たな可能性を提示したロボットには注目が集まった。
9位にランクインしたスキューズのスコット・ラッセルリンク機構を採用したロボットは、同機構の採用により低出力(出力80W)モータの利用を可能にし、人と共存環境下での運用を可能にした。同機構は水平方向の直線運動の入力に対し、垂直方向の直線運動に変換するもので、通常は駆動力となる水平運動を垂直方向に変換したい場合に利用される。しかし、同ロボットでは手先のモーメントを抑え、かつ低出力モータを利用したいという意図から、通常と逆となる、入力した垂直運動を水平方向に変換する構成にした。スキューズによると産ロボへの同機構の採用は世界初で、古くから知られている機構を採用した意外性が注目を集めた。
また、同機構の採用により垂直多関節ロボットのような動作範囲を確保しながらも設置面積を小さくし、スカラロボットには及ばないものの一定程度の高速性も確保している。汎用ロボットは市場のボリュームゾーンに合わせた仕様となっており、動作範囲が大きいゆえに設置スペースに制限がある。これとは一線を画すような仕様となっており、産業用ロボット市場において、ユニークなポジショングをとることも関心を集めたと推測される。
15位に入った安川電機のシステムは、同社の双腕ロボットの新たな応用展開といえるもので、双腕ロボットが専用工具を用いて梱包資材を開封し、ハンドで把持して原材料を取り出したり、取り出した後は梱包資材を解体し、畳んでから所定位置に移動したりすることができる。
ロボットの動作は、梱包資材の種別ごとにティーチングされており、上位システムで種別を判定し、専用テーブルで位置決めをした後に、それに応じた動作をさせる。梱包資材の形状データは事前に登録すれば、段ボールや紙袋など異なる形状の梱包資材にも対応が可能。段ボールの微妙な潰(つぶ)れには、距離センサによりその度合いを検出し、専用工具の軌道を修正することで対応する。
梱包資材の開梱から解体・回収までの一連の作業を、人と同等のスピードでこなすことができ、このような単調かつ重作業を置き換えられる可能性の提示が注目を集めた。また、8位には昨年のソフトクリームに続き、かき氷をつくる作業に適用した開発例がランクインしている。
|
|
これら以上に関心が高いと判断されるのは、9月下旬に掲載したばかりの川崎重工業が開発した重作業支援向けアシストスーツ。これからもアクセス数が伸びると思われる中、20位以内にランクインした。川崎重工では開発が外部に漏れないよう相当気を配っていたようで、試作機が突如公開されたサプライズからアクセスが集中した。
このような外骨格型のアシストスーツは、ロボットスーツ「HAL」がよく知られており、これと比較されがちだが、設計思想が異なるゆえシステム構成も異なる。例えば、動作意図の推定はデジタル出力タイプのエンコーダなどで行っている。生産現場で利用するシステムである以上、誤動作は許容されないのはもちろん正確な動作(制御)が要求され、アナログ出力では信頼性の確保が難しいという判断による。大学などの研究機関で開発されているアシストスーツは、表面筋電位のほか力覚センサや圧力センサなどが多用されているが、こうした考えゆえに、これらのアナログ出力のセンサは選択肢には入らなかったという(こうしたセンサの取り扱いに不慣れという事情もある)。なお、HALでは生体電位(表面筋電位)センサと足裏の圧力センサにより動作意図の推定を行っている。
また、装着時の負荷がかからないよう股関節や膝関節の屈曲に応じて下肢部および下腿部を伸長させる機構も実装しており、動作の正確性と運用性(装着性)を重視した設計も注目された要因と思われる。
安全性確保への関心はイマイチ?
これらの記事に対して、安全性確保に向けた取り組みが展開されている「生活支援ロボット実用化プロジェクト」(2009~2013年度、NEDO)への関心は“今ひとつ”といった結果だった。
11位に同プロジェクトにホンダやアイシン精機などが新規に参画した話題を扱った記事が入ったが、9月上旬に掲載した、具体的な取り組み例を紹介した記事はアクセス数が伸びていない。9月6日にアイシン精機、10日にはIDEC、12日にはダイフクと綜合警備保障(ALSOK)の研究開発をそれぞれ取り上げたが、いずれもあまり読まれていない。2011年度から参画したアイシン精機とIDEC、ダイフクの開発内容は、東日本大震災の影響により正規にプレス発表がなされなかった結果、ほとんどの人が知り得ないままであった。ロボナブルで初めて紹介したにもかからず、このような結果となった。
5~8年前にかけて、他の媒体で国際安全規格「ISO 12100」や「IEC 61508」などを扱い、規格の概要に加え、各企業の対応状況を紹介したが、部数の低下を招いたことがあった。現在とでは状況は異なるだろうが、以前から安全規格および安全性確保に関する話題への関心は想定的に低い傾向にあり、それを示す結果となった。
2011年度上半期記事ランキングベスト50およびリンク集
※掲載の都合上、掲載時とはタイトルを変更しています。
【関連記事】
►やすかわくんが大人気!2010年記事ランキング ― 日刊工業新聞社メルマガ「かわら版」より
►製造業は実務に直結するロボット記事に関心!? 全業種でみるロボナブル記事ランキング ―日刊工業新聞社メールマガジンより

ビジネスライン














