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2011.05.30
原子炉建屋内での活動に向け国内対災害ロボの準備が進む!
― 10年前のデジャブではなく運営・体制づくりにつながる知見を

 これまで、国内の対災害ロボットが福島第一原子力発電所に投入される可能性が高いと伝えた。ところが、原発建屋外の瓦礫除去に建設ロボットによる無人化施工が運用されたのみで、投入に至っていない(*1)。それもそのはずで、投入に向け無人化システムを推奨するリモートコントロール化プロジェクトチームでは、「まずは放射線下で稼働実績のあるシステムを、なければ通常環境下で稼働実績のあるシステムを投入する」という基本方針を掲げており、5月10日には瓦礫除去に米Qinetic社の「Bobcat(ボブキャット)」とスウェーデン・BROKK社の遠隔解体ロボット「Brokk(ブロック)」が追加投入された。改めて言うが、妥当な判断と考える。
 しかし、原子炉建屋内の調査に向けては、米iRobot社の軍用ロボット「PackBot(パックボット)」に続き、現在は関係者の懸命な努力のもと、国内の対災害ロボットなどを改造し、投入に向けた準備が水面下で進められている。ここでは、5月末時点までの取り組みをまとめる意図から、おもな活動を紹介する。なお、さらなる改造を経て、近々投入が予定されているQuinceの状況は、記者発表の後に紹介する。

*1:2001年発行の『平成12年度 21世紀におけるロボット社会創造のための技術戦略調査報告書』(日本ロボット工業会、日本機械工業連合会)では、災害対応ロボットは米国と欧州が「平均レベル」なのに対し、わが国は「競争力が弱い」。原子力ロボットは、米国と欧州の「競争力あり」に対し、わが国は「平均レベル」と分析している。そのまま踏まえると、先に米国製ロボットを使用したのは理に叶っているともいえる。一方で、わが国の建設ロボットは「競争力あり」と分析されているが、無人化施工技術が真っ先に適用されたことにも納得がいく。なお、ここでの競争力は、オリジナルの製品開発力に加え、輸出能力や市場をプロモートする力、国内で他国を越える製品市場を持つ力などを加味して比較・分析されている。

有線区間で遠距離通信を確保

 千葉工業大学は5月9日、原子炉建屋内への投入に向け準備を進めているレスキューロボット「Quince(クインス)」を公開。大学校内での実証実験を通じて、2台のQuinceが連携して原発建屋の上層階を探査できる様子を披露した。原発建屋内の線量マップの作成を目的としており、Quinceの遠距離通信の確保に向け、ツイストペアケーブルと光ファイバーケーブルによる有線区間を設ける方法に変更している()。今回で3度目の改造になる(5月26日時点では)。

 システムは、建屋内を先行して探査するQuince(先行探査Quince)と、これを支援するQuince(支援Quince)から構成され、先行探査Quinceは線量計とレーザレンジファインダー(LRF)を、支援Quinceは500mのツイストペアケーブルを収納できるケーブルドラムと無線中継器をそれぞれ搭載。支援Quinceが建屋内用無線機と接続したツイストペアケーブルを引き回しながら移動することで、先行探査Quinceを支援する。
 また、建屋内用無線機と建屋外用無線機とは無線LAN通信でやり取りをし、建屋外用無線機と操作卓とは光ファイバーケーブルで通信を行う。建屋外無線機はタービン建屋内に設置し、より線量の低い場所に操作卓を設置して操作すると推測される。

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 有線通信と無線通信のハイブリッドによる運用システムの構成

  4月末に発表した2度目の改造では、先行探査QuinceはLRFを搭載していなかった。最初に改造したときのシステム構成に戻すことで、放射線量と環境情報を組み合わせた線量マップを作成できるようにした。LRFが斜めにQuinceの全周を3次元計測することで環境情報を取得しており1台のみで行えるが、バックアップ用としてもう1台を追加している。4月に実施した耐放射線試験で、LRFの1つが124Gy(グレイ、=Sv)で故障した結果を踏まえての対応と推測される。
  PackBotによる調査では、階段を踏破して上層階にアクセスすることができなかった。それに対しQuinceは実証実験を通じて、それが行えることを示しており、冷温停止に向けさらなる情報収集に寄与すると期待される。

電子部品を可能な限り排除

  Quinceが数時間程度の調査目的で検討されているのに対し、日本原子力研究開発機構(JAEA)は長期間の運用に耐える改造を行った。瓦礫を処理しながら放射線量を計測するロボット「JAEA-1号」(写真左)と情報収集ロボット「同2号」(写真右)がそれで、同2号に至っては理論上で104~105Gyの耐放射線性を備える。

jaea-1.jpgjaea-2.jpg

 2号から説明すると、1999年に開発した情報収集ロボット「RESQ-A」をベースにしたロボットで、サイズは高さが約60cm、重量が約40kg。地上から10~20cmの線量を測定する。上述のような高い耐放射線性を実現したのは、カメラと計測器以外は電子部品をすべて排除したからで、例えば、ロボットの動作に必須のモータドライバは遠隔地に設置し、無線通信によりモータ本体に制御信号を送るようにしている。電子部品の故障や誤作動のリスクを可能な限り抑えた。
  1号機は既述のBrokkをベースに、ロボットアームに代わり本体前面に大型の鋼板を付加した。耐放射線性が高いカメラと線量計を搭載しており、瓦礫を排除しながら放射線量を計測することができる。サイズは高さが約60cm、重量が約300kg。耐放射線性は数百Sv。また、1号機と2号機とも連続稼働に備え、鋼線ケーブルで電力供給を行う方法を採用している。

 Quinceは、カメラとLRF以外は200Gyの耐放射線性を備えることが確認されているが、積算値で30Svに達した時点で電子部品を交換することになっている。除染作業や部品交換などが必要とされるのに対し、JAEAのロボットは24時間・365日連続稼働に耐える。効率的な復旧作業が見込まれる。

実運用で得た知見を運営・制度づくりの一助へ

 かつて1999年9月に発生した東海村JCO臨界事故では、終息に向け既存ロボットを改造して利用する動きがあった。しかし、もともとそれに対応するシステムではないうえ、訓練された操作者がいないという理由から使われることがなかった。今回と違い、災害レベルが国際原子力事象評価尺度でレベル4だったことも理由にあげられよう。

 また、事故を受けて2000年度の「原子力防災支援システム」プロジェクト(*2)で複数ロボットが開発されたが、維持管理にかかる予算がないとの理由で、活躍する機会がないまま廃棄もしくは展示品とされた。結果、国内の対災害ロボットは対原発災害に向け運用実績をつくれないままでいる(同プロジェクトが東芝が開発した作業監視支援ロボット「SMERT-M」を急遽改造し、5月20日にはガンマカメラを搭載して原発建屋内の計測を行っている(写真下))。

*2:同プロジェクトに対しては「原発安全神話」による電力会社の認識の甘さに、運用されなかった原因を求めるきらいがあるが、当時の電力会社側の正確なコメントは「すぐには必要としない」であり、彼ら自身も開発を担当したロボット技術者も原発災害によるリスクを認識していた。そもそも原発安全神話は、わが国の原発行政の崩壊を防ぐ意図から創出された虚構であり、また、当時の国プロのスキームの拙さやヒューマノイドの研究に舵を切っていたロボット開発を取り巻く「当時の空気」などを踏まえると、それのみに原因を求めるのは無理があると思われる。

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 当然、改造した国内の対災害ロボットの投入に向けては慎重な検討が求められ、例えば、千葉工大では東京電力の要求に応えるべく、さらなる改造に取り組んでいるが、同時にQuinceのシステムの信頼性を損ねることが懸念される。とはいえ、今後のわが国のロボット産業の発展を考えると10年前のデジャブにはならず、仮に100%のミッションを達成せずとも、実運用を通じて何らかの知見を得ることは有意である。同プロジェクトの終了時に当時、開発を委託した製造科学技術センターの濱田彰一ロボット技術開発室長(現在は日本ロボット工業会 技術部長)は「運用・体制などソフト面の整備および早期解決の必要性」を指摘していたが、それにつながることを願う。


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