産業技術総合研究所と日本自動車研究所(JARI)、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は2010年12月27日、茨城県つくば市に新設した「生活支援ロボット安全検証センター」を公開した。2009年度よりスタートした「生活支援ロボット実用化プロジェクト」の安全検証拠点として設立した施設で、参加企業が開発する4タイプの生活支援ロボットを対象に、機械・電気安全および機能安全に関する各種試験を実施し、模擬認証を行う。2013年度末までに各種試験技術の構築や安全認証に必要なデータの蓄積などに取り組み、2015年頃には検証から認証までグローバルに、かつワンストップサービスで行える機関となることを目指している。
生活支援ロボット安全検証センターの体制図。このような複合的な機能を備える背景には、わが国の認証ビジネスの強化に向けた仮説を検証する役割も担うからでもある。詳細は「PART 2」を参照してほしい。
プロジェクトでは、参加する開発企業に2015年までに生活支援ロボットの実用化を達成してもらい、2020年までに広く普及してもらうことを計画している。
厚生労働省 職業安定局の推計(2002年7月)と国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口」(2002年1月)によると、2005年の労働力人口(15~64歳)が6,770万人、高齢者人口(65歳以上)が2,539万人だったのに対し、2025年には前者は6,300万人、後者は3,472万人になると推計されており、1,403万人(前者が-470万人、後者が+933万人)の構造変化が起きると見込まれている(各数値は比留川プロジェクトリーダーの講演資料より引用)(*)。外国人労働者の受け入れなど、いくつか選択肢がある中で「生活支援ロボットの活用をソリューション(解決策)として認めてもらうためには、(社会に定着する時間を見越して)少なくとも5年前の2020年には普及していなければならない」(比留川博久プロジェクトリーダー、産総研 知能システム研究部門長)。
*:「平成22年版高齢社会白書(2009年)」では2005年に対し2025年には高齢者人口が約1,070万人増加すると報告がなされている。
このように「生活支援ロボットの実用化には締め切りがある」(同)という危機感から計画されたものであり、それを支援できるよう2015年にはパーソナルケアロボットの国際安全規格「ISO 13482」の改訂作業への反映、同センターの事業化、正式認証を目標に掲げている。しかしながら、比留川プロジェクトリーダーが指摘するように、各企業の事業拡大に加え、ISO 13482の改訂作業にかかる人的支援や同センターの運営資金の確保、海外認証機関との相互認証体制の構築といった難題を抱えている。
12月27日のオープニングシンポジウムで比留川プロジェクトリーダーがあげた課題。
これらの詳細は「PART 2」で触れるが、こうした考えを踏まえると生活支援ロボットの実用化は、まさに待ったなしの状況を迎えている。そこで、本特集ではプロジェクトの要となる同センター設立の背景と課題について、業界をあげて共有し、生活支援ロボット市場の立ち上げにつなげるべく、これらに言及する。「PART 1」では同センターの試験設備を通じて検証能力を、「PART 2」では設立の背景を、それぞれ紹介する。
本特集であげる課題に直接取り組むのはプロジェクトに参画する企業や機関であるが、ロボットを普及するためのインフラづくりを目指すことを踏まえると、ロボット産業に関わる者すべてが当事者意識をもって問題提起をしたり意見を述べたりすべきである。本特集が、業界をあげた議論の活性化につながれば幸いである。
特集コンテンツ一覧
●プロローグ
:2020年までに普及しないと生活支援ロボは解決策にならない?
●PART1:各種試験機は国際優位を確保するための要
― 生活支援ロボに特化した試験機を多数設置
●PART2:わが国認証ビジネスのモデルケースを担う
― 資金および人材確保で支援が必要

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