年末企画 分野別に振り返るロボット業界2011

2011.12.28
PART5 国プロ関連掲載記事一覧(非産業用ロボット)
―安全検証センターの成否はモノづくり全体に関わる問題

年間1億円の赤字を計上することに!?

  「PART1」でも触れたように「生活支援ロボット実用化プロジェクト」(2009~2013年度、NEDOはいくつか課題を抱えており、中でも「生活支援ロボット安全検証センター」の資金面での課題は非常に重い。

 プロジェクト終了後の2014年度以降は、試験設備は日本自動車研究所(JARI)が試験設備を所有(購入)し、安全認証は日本品質保証機構(JQA)が行う予定となっている。ただ、三菱総合研究所が取りまとめた『戦略的な認証ビジネスの国際化戦略に関する調査』(2010年3月まとめ)では、同センターの運営コストの概算が示されており、初期投資として試験設備機器に約11億円、施設の建設に約6億円(同プロジェクトより捻出)、運営コストとして年間3億円と見積もっている(内訳は、設備更新のための資金:50%、メンテナンス費用:5%、固定資産税:10%、人件費や光熱費、管理費など:35%)。そして、試験受託による収益は、数年間は年間約2億円にとどまると見積もっている。

emc_1229.JPG 汎用的に活用できる「10m法電波暗室EMC試験機」(写真)については近く、受託試験を開始することを予定しており、北関東地域では「同規模の試験装置がないため一定程度の受託が見込まれる」(プロジェクト関係者)と力説するが、どの程度の収益を上げられるかは“出たとこ勝負”である。また、資金調達に向け「事業化検討委員会」を通じて検討を進めているが、現在のところ具体的な方策は何ら聞こえてこない。
 それ以前に、生活支援ロボットの開発に携わる中小・ベンチャーが安全認証にかかるコスト負担に耐えられるとは考えにくく、どの程度のロボットが同センターに持ち込まれ、試験および認証受託による収益を上げられるのか、甚だ疑問である。

  また、認証審査官の確保および育成も重い課題である。同プロジェクトでは2015年までに5名を輩出することを計画しており、安全認証を行うJQAを中心にOJTで育成することになっている。関係者によると2011年の秋頃に数名を確保したとするが、「どのような経験やスキルを備えているかはわからない」とも述べている。
  認証機関として機能(*)するためには、将来的には、高い実績とブランド力を持つ独TUV SUDなどと互していくような競争力が必要であり、優れた認証審査官の確保が求められる。以前、「特集」でも述べたが、併せて、モノづくり企業や研究機関の出身者などスキルの高い開発経験者が移籍し、認証審査官として育成される仕組みを具体化することが求められるだろう。

*:そもそも安全認証サービスを展開するに当たり、サービス提供の主体を担う人材(認証審査官)の確保は最優先に手が付けられるべきことである。

ロボットだけの問題で済ませるな

  上述のような課題を抱えたのは、単純に生活支援ロボットをターゲットにしているからではない。わが国の認証ビジネスの強化に向けた仮説検証を担うという複雑な事情が絡んでいるからである。生活支援ロボットの安全性を検証する試験研究機関に加え、安全性認証や標準化提案を行うという複合的な役割を担っているのは、そのためである()。

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 生活支援ロボット安全検証センターの機能と役割

  改めて、欧米とわが国の認証機関との差を整理しておくと、欧米の認証機関は、規格が未整備な分野でも性能や安全性に踏み込んだ認証活動(「性能・安全性評価」)を展開している。特にEUにおけるCEマーキング制度は性能規定がなされており、その具体的な達成手段に関して認証機関に裁量判断が委ねられているという背景があるからだが、こうした活動は認証機関としてのブランド力や信頼性の構築につながっている。さらには、新規分野の認証が行える(任せられる)といった先行者利益にもつながっている。
 これに対し、わが国の認証機関は法令の技術基準やJISなどで規定された要求事項を満たしているか否かを、客観的事実にもとづいて実証する「適合性評価」にとどまり、結果、認証機関としてのブランド力や情報収集力、規格開発力で遅れをとっている。

  しかし、未開拓の領域で評価技術や試験方法などを国際標準化し、認証スキームとして発信できれば、認証機関の先行者利益の確保ならびに欧米認証機関との差別化につながる可能性がある。また、どの国や地域で技術標準が策定されるかにより、ビジネスに影響を与えるという事実もあり、未開拓領域の代表格である生活支援ロボット(パーソナルケアロボット)市場の立ち上げを通じて、それを実践しようとする意図が同プロジェクトには込められているのである。この仮説(上述の太字部)が実証された暁には、他の技術分野にも展開し、わが国の認証ビジネスを強化していくことが企図されている。

  本来、このような仮説の尤もらしさの確認はプロジェクトを立ち上げる以前にきちんとなされておくべきだろう。が、すでにスタートしている以上、安全検証センターの本格稼働ならびに認証機関としての競争力確保に向け、できる限りの努力が払われるべきである。
 例えば、資金面ではロボリューションの小西康晴代表が提案しているような方策(詳細はこちら)を実行に移すのも一計だろうし、認証審査官の確保に向けては、三菱総研の報告書で記載されているように、移籍時にインセンティブを与えるといったことの検討も必要だろう。これに加え、生活支援ロボット安全性確保に関する技術や認証技術は他の技術分野にも展開できる知見を得られる効果も考慮すると、単純にロボットの問題として片付けずに、産業界として一定程度のリソース(人や資金)をつぎ込むべきである。

 安全検証センターの成否は、わが国認証ビジネスに大きな影響を及ぼすものであり、ロボットだけではなく、わが国のモノづくり全体にも関わる課題である。他分野の方たちも関心を持てもらい、こうした重い課題に向け、ぜひ知恵を出してほしい。

生活支援ロボット安全検証センター始動!設立の背景と課題を探る
生活支援ロボット安全検証センターホームページ

 

※掲載した記事のタイトルは一部変更しています。括弧内は掲載月日を表します。
※PART1~4に掲載した記事と一部重複しています。また、セミナーで紹介された話題も掲載しています。 

戦略的先端ロボット要素技術開発プロ関連

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※村田機械の記事は1年前に掲載したものだが、NEDO成果発表会を取材できなかったことを踏まえ、事前に実施されたクリスマスイベントの記事を掲載した。
※災害対応ロボット「Quince(クインス)」は、同プロジェクトを通じて開発されたが、すでに福島原発事故対応の関連記事で紹介したため、こちらでは掲載しなかった。

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※2011年度は高信頼のRTミドルウエアおよびRTC、Android版RTCの開発に注力されたため、これらの記事を中心に掲載することとなった。
※次世代ロボット知能化技術開発プロジェクトの中間評価は2年前に公開されたものだが、参考までに掲載した。

生活支援ロボット実用化プロ関連

生活支援ロボット実用化プロにホンダやアイシンなどが参加 (04/07)

消費者が抱く生活支援ロボのリスクは電動車椅子と同程度 (06/01)

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パナソニック、ロボティクベッドの新版を披露 (10/07)
 ※本記事は、タイトルを変更して掲載しています。
 

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※8月1日掲載のコラムは、参考記事として掲載した。
 

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特集コンテンツ一覧

PART1 分野別注目ニュース
―産ロボ、サービスロボ、要素技術、ビジネス・経営

PART2 福島原発事故対応関連ニュース一覧
―災害対応ロボの実用化に向けた対話を

PART3 東日本大震災対応関連ニュース一覧
―世界展開を見据えた産業政策を

PART4 2011国際ロボット展(iREX)掲載記事一覧(産業用ロボット)
―技術に裏付けられた価格提案を

●PART5 国プロ関連掲載記事一覧(非産業用ロボット)
―安全検証センターの成否はモノづくり全体に関わる問題




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