2011年12月16日、政府により福島原発事故の収束に向けた工程表「ステップ2」の完了、すなわち「冷温停止宣言」が発表された。事故収束に向け災害対応ロボット「Quince(クインス)」の改良および貸与などで、東京電力に協力してきた千葉工業大学は当初、協力期間を冷温停止までとする考えを示していたが、東電より要請がある限りは、引き続き協力することを明らかにした。年明けのQuinceの追加投入に向け、いまもなお準備を進めている。
4月17日に、原子炉建屋内に米iRobot社の軍用ロボット「PackBot(パックボット)」が先行投入されて以来、わが国ロボット産業への(社会の)期待(必ずしも根拠のある期待ではなかったが)とのギャップから、日本のロボット技術およびロボット研究に対し風当たりが強くなった。また、実用的なシステムを提供できなかったことに対し、心を痛めたロボット研究者が多くいた。
しかし、上述のQuinceは高い踏破性を生かし、PackBotでは困難な上層階での線量計測や配管類などの調査で活躍している(写真)。中でも、7月26日に実施した冷却系配管の調査結果は、1カ月後には非常用炉心冷却系〔炉心スプレイ(CS)系〕の稼働に役立てられ、その高い冷却効果により(燃料上部からシャワーのように注水して直接冷却)現在の原子炉の安定冷却につながっている。開発にかかわった千葉工大と東北大学、国際レスキューシステム研究機構(IRS)は胸を張ってよいし、賞賛されるべきである。それ以外にも、4月開催の東電向けのプレゼンおよび技術提案に参加した企業や大学などの研究機関、事故収束に向け継続的に研究開発に取り組んでいる研究者も同様に、そうした姿勢や努力に対し評価されるべきである(もちろん、被災地域で水中探索を行った東京大学やIRSも評価されるべきである)。
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写真 Quinceが10月20日に撮影した2号機原子炉建屋5階の風景(左)と3階の風景(右)
しかしながら、社会の要請に対し実用的なシステムを即提供できなかったことは事実であり、原発災害対応を含む災害対応ロボットの社会実装に向け課題は山積している。
キーワードのみを示すと、次のような項目があげられる。
●持続的かつユーザードリブンな研究開発体制の構築
●人(レスキュー隊員)協調による運用モデルの構築
●運用マニュアルおよび訓練プログラムの開発
●標準化、安全基準の策定
●性能試験評価手法の開発および評価フィールドの設置
●資機材認定への組込みならびに審査官の育成
●規制緩和(電波法)
●救助隊の編成、装備および配置の基準を定める(総務省)省令改正
●海外展開を見据えた外為法の改正(参考記事はこちら)
●災害対応ならびに関連技術の啓蒙活動、国民レベルでの防災・減災にかかるリテラシーの向上(教育)
研究開発以外の内容が多く、国民の理解と支持を得なければ進展しないことが理解されよう。以前、「特集」で国民との対話の必要性を述べたが、今一度、災害対応ロボットの実用化は、すなわち生命を守ることと同義であることを理解してもらう努力を払うべきである。また、その一端を、われわれマスコミも担うつもりでいる。
なお、産業競争力懇談会(COCN)にて災害対応ロボットと運用システムのあり方について議論がなされ、中間報告が開示されている。こうした検討の参考にしてほしい。(PART3に続く)
●災害対応ロボットと運用システムのあり方(産業競争力懇談会)
※掲載した記事のタイトルは一部変更しています。括弧内は掲載日を指します。
2011年3月掲載
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●原子力安全技術センター、福島原発に放射線測定ロボット投入へ (03/18) |
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●放射性物質のモニタリングに探査ロボを活用へ、検討が具体化 (03/29) |
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●原発の調査・放射能の計測に探査ロボ活用へ、近く試験を実施 (03/30) |
2011年4月掲載
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●ゼネコン各社、無人建機で危険域復旧へ、福島原発に投入 (04/05) |
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●RSJなど、ロボ技術の震災復興と原発災害への適用に向け声明 (04/05) |
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●IRS、原発内での探査活動に向け探査ロボに追加機能を搭載 (04/06) |
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●原発へのロボ投入に向け、統合連絡本部内チームで本日初会合 (04/07) |
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●東芝、福島原発の燃料棒取出で連携、米企業と計画案 (04/08) |
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●福島原発にロボ投入向け、プロジェクトチームが初会合 (04/08) |
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●対災害ロボ・タスクフォース、ブログ立ち上げ (04/09) |
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●原発の復旧作業に向け作業プロセスとしての提案が必須 (04/12) |
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●日本学術会議、原発事故対策に向けロボット技術の活用を提言 (04/15) |
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●原発建屋内の作業に向け国内ロボットを近く投入へ (04/15) |
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●東電、原発建屋内の調査に米国製ロボを投入、運用実績を重視 (04/17) |
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●IRS、原子炉建屋の調査に向けQuince再改造、投入時期は未定 (04/24) |
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●日立と三菱重工、原発事故対策で協力、特殊フォークリフト開発 (04/28) |
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●原発被害のリスクを考慮し、開発戦略の再考を、東大・淺間教授 (04/28) |
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●東京電力、福島原発にクインスとタロンの投入を決定 (04/28) |
2011年5月掲載
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●対災害ロボティクスTF、シンポジウムをライブ中継 (05/02) |
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●実績のあるものから使うべき、産総研・比留川氏、ロボTFシンポ (05/08) |
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●東京電力、瓦礫除去にキネティック社のボブキャットなど投入 (05/11) |
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●千葉工大、原発建屋内の線量マップを作成へ、クインスを追加改良 (05/12) |
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●20Sv、30Svに達した時点で電子部品を交換、リモコンPT推奨 (05/16) |
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●原子力機構、原発建屋内の作業に向けロボを改造、6月には投入へ (05/17) |
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●三菱重工、放射線遮断特殊フォークを公開、福島原発に投入へ (05/20) |
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●千葉工大などのクインス、近日中に福島原発に投入へ (05/26) |
2011年6月掲載
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●京大、走行しながら線量マップを作成する車載型システム開発 (06/02) |
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●千葉工大などのクインス、10日に福島原発に移送 (06/08) |
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●クインスによる原発建屋地下の汚染水の調査と採取に向けた方策 (06/09) |
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●クインス、20日午前に福島原発に移送へ、3号機原子炉建屋に投入 (06/18) |
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●原子力機構、原子炉建屋内の線量計測向けロボ開発 (06/21) |
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●クインス、24日のミッションは水位計センサの投下に至らず (06/27) |
2011年7月掲載
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●東電、ロボット清掃による除染効果を公開、線量の低下を確認 (07/03) |
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●東電、窒素封入接続個所を確認できず、ウォーリアーで撮影を試みる (07/07) |
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●現場を知るわれわれが行くべき、福島原発行動隊プロ・山田氏(07/08) |
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●東電、線量計測にクインス利用、窒素封入接続個所は作業者が確認 (07/09) |
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●東電、クインスのミッション公開、不具合が発生するも自力で戻る (07/12) |
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●東電、8日実施のクインスのミッションの様子を動画で公開 (07/17) |
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●東電、クインスによる3号機原子炉建屋内の線量計測を公開 (07/27) |
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●東電、クインスによる3号機原子炉建屋の現地調査を動画で公開 (07/28) |
2011年8月掲載
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●東電、燃料上部から直接冷却へ、Quinceの調査を生かす (08/24) |
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●大林組、GPS連動の放射線監視技術を導入、福島の被災地で実証 (08/31) |
2011年9月掲載
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●ロボット学会、震災対応ロボシンポ開催、中長期の復旧対応を議論 (09/01) |
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●来月下旬に福島原発にクインスを追加投入、3Dマップなど作成 (09/28) |
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●東電、Quinceのミッション公開、ガス管理システムの設置に向け(09/29) |
2011年10月掲載
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●東電、クインスによる調査結果を公開、4階・5階の撮影は初 (10/22) |
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●経産省、事故処理・廃炉に向け遠隔操作ロボ開発、第三次補正予算 (10/25) |
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●東電、原子炉建屋内で停止したクインスの扱いは未だに検討中 (10/28) |
2011年11月掲載
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●東電、ウォーリアーで3号機原子炉建屋内の干渉物などを移動 (11/05) |
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●福島原発の廃炉に向け、各作業で共用できる遠隔操作ロボを開発へ (11/12) |
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●NEDO、来月上旬に災害対応無人化システム研究開発プロの公募開始 (11/24) |
2011年12月掲載
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●東陽テクニカ、海中の線量計測に向け米社の海洋観測ロボ発売 (12/09) |
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●東芝、放射線量を色で表示するガンマカメラ装置を開発 (12/14) |
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●千葉工大、来年早々にクインスを追加投入 (12/17) |
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●NEDO、災害対応無人化システム研究開発プロの公募開始 (12/19) |
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●農水省、高濃度汚染地域の除染作業に向け無人トラクター開発へ (12/20) |
特集コンテンツ一覧
●PART1 分野別注目ニュース
―産ロボ、サービスロボ、要素技術、ビジネス・経営
●PART2 福島原発事故対応関連ニュース一覧
―災害対応ロボの実用化に向けた対話を
●PART3 東日本大震災対応関連ニュース一覧
―世界展開を見据えた産業戦略を
●PART4 2011国際ロボット展(iREX)掲載記事一覧(産業用ロボット)
―技術に裏付けられた価格提案を
●PART5 国プロ関連掲載記事一覧(非産業用ロボット)
―安全検証センターの成否はモノづくり全体に関わる課題

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