※本記事は2011年3月3日と9月17日に掲載したニュース記事を再編集しました。
昨今の超円高などを背景に国内製造業の海外展開が加速しつつある中、いかにして国内にモノづくりを残すべきかが議論されている。極端な海外移転は、次代の技術者がモノづくりに触れる機会を喪失することになり、国全体としての生産技術の低下につながりかねないからである。そこで、国際競争力への対応を睨みつつ、より一層の自動化が取り組まれている。
ロボットを活用したセル生産システム(ロボットセル)への移行は、その代表例であるが、現状では簡易なアセンブリにとどまる。中でも、ケーブルをはじめとする柔軟物の取り扱いがロボットでは難しく、人手作業に依存する主因の1つになっている。
三菱電機は、その解となり得るロボットセルを発表している。「戦略的先端ロボット要素技術開発プロジェクト」(2006~2010年度、NEDO)の開発成果であり、昨年3月の成果発表会で2台のロボットが協調してバラ積み状態のケーブルをビンピッキングして治具に整列したり、コネクタに挿入したりしてサーボアンプを組み立てるデモを披露した(写真1)。柔軟なケーブルの取り扱いを実現しており、電気・電子部品の組立作業の自動化につながると期待されている。
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写真1 公開したロボットセル。2台の垂直多関節ロボットが協調して作業を行う(左)。整列治具にコネクタ付きケーブルを整列(キッティング)した後、プリント基板上のコネクタに挿入する(右)
動画 公開したサーボアンプの組立デモ
ケーブルとコネクタを分けて認識処理
開発したロボットセルは、2台の垂直多関節ロボットが協調して組立作業を行う。ロボットには3次元(3D)距離センサと力覚センサを配置しており、これらの計測情報を用いることで、バラ積み状態のケーブルをビンピッキングして整列治具(もう一方のロボットが扱いやすくするための治具)に整列(キッティング)したり、ケーブルをプリント基板上のコネクタに挿入したりすることを可能にしている。
3D距離センサは、ビンピッキング時の認識と把持状態の認識に1台ずつ使用しており、前者はハンドカメラとして、後者は整列治具の脇にそれぞれ配置している。
このような柔軟なコネクタ付きケーブルの取り扱いは、独自開発の認識アルゴリズムにより可能となった。把持した後のハンドリングのしやすさを考慮し、コネクタ付近のケーブルを把持するように制御していることから、ケーブルとコネクタそれぞれをターゲットにしたアルゴリズムを実装している。
まず、ケーブルの認識では、計測した3D距離画像からケーブルの3D曲面形状を抽出し、ケーブルの位相(ここではトポロジー)判定ならびにロボットハンドとの干渉判定を行うことで把持候補の優先づけを行う。ケーブル中央ではなく端部を優先した処理を行っており、結果、バラ積みされたケーブルの中で、コネクタ部があたま1つ飛び出したようなケーブルを把持できるようにしている。
一般的なビンピッキングでは単純に最上位に位置する対象物を把持するよう制御するが、このようなケーブルでは掴み損ねに加え、複数ケーブルを同時に取り出してしまう可能性が高い。このような処理を採用sるうことで、単純に最上位のケーブルを把持したときの成功率が50%以下だったのに対し、90%にまで高めることに成功している。
次に、コネクタの認識は、簡易な直方体モデルの結合で表現したコネクタの3Dモデルを用いて行う(*)(図)。おもに3段階で処理しており、まず3D距離画像からコネクタのエッジを検出して先端領域を抽出。次に、抽出した領域にハフ変換(特徴抽出法の1つ)を適用し、コネクタは直方体モデルという前提から、一対の平行線の抽出および、その間の面法線を計算。コネクタと推定される先端部の3D姿勢を決定する。最後に、これに対して直方体の結合で表現したコネクタの3Dモデルを、3D距離情報を用いて位置合わせ(=照合)をし、コネクタの位置姿勢を推定する。
*:簡易な直方体の結合によりコネクタの3Dモデルを表現した結果、0.5秒での高速処理を可能にするとともに、±0.5mmの位置姿勢の推定精度を実現している。
図 単純な直方体モデルの結合によりコネクタを3Dモデル化。これを計測データに対し位置合わせすることでコネクタの位置姿勢を推定する
ビンピッキングとキッティング時は、これらの認識アルゴリズムを併行して走らせており、前者では、把持候補の優先づけをしたケーブルの情報と、推定したコネクタの位置姿勢から把持すべきケーブルの位置姿勢を算出して行う(写真2)。後者では、把持したケーブルのコネクタの位置および姿勢を再度認識し、位置ズレを補正して整列治具への整列を行う(写真3)。
三菱電機では、バラ積みされたビンピッキングおよび位置姿勢の補正によるキッティングができたうえ200回連続で行えることを確認している。さらには、人と同等の5分程度でサーボアンプの組立が行えたとしている。ロボットセルのより高度なアセンブリへの適用に向け、道が拓かれたといえる。
また、このような直方体の組み合わせで表現したコネクタモデルの利用により、他のケーブル付きコネクタにも対応できるとしており、様々な製品に適用できると見込まれる。
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写真3(左)バラ積み状態のコネクタの計測例。推定したコネクタの位置姿勢から把持すべきケーブルを算出する。写真4(右)把持したケーブルの状態判定。コネクタの位置姿勢を再度認識して、位置ズレを補正する
協力会議を通じて運用ノウハウを提供
ロボットセルを支えるもう1つの要素技術に触れておくと、力センサによる組立制御技術がある。コネクタの挿入時は位置制御から力制御に切り換えており、力センサの計測値をもとにコネクタの位置ずれなどを認識し、力制御のパラメータをリアルタイムに変更して作業を行う。高速での挿入作業に加え、位置すれが生じた際の安全な停止が行える。また、ネジを挿入する際も同様に制御することで、挿入エラーの検知ならびに自動復旧を可能にしている。
三菱電機では、公開したロボットセルは従来、作業者でなければできなかったコネクタ付き柔軟ケーブルの組付作業が行えるのを提示したとしており、コスト面を考慮すると、そのままでの外販は予定していないと説明する。まずは、構成する3D距離センサや制御技術などをコンポーネント製品として社内の生産技術部やシステムインテグレータ(SI)に提供するとともに、協力会議を通じて運用ノウハウとともに提供することを計画している。したがって、今後2~3年のうちにSIを通じて、各生産現場に提供されると思われる。
【参考文献】
[1]北明靖雄,堂前幸康,奥田晴久,関真規人,“柔軟物を扱えるロボットビジョンシステムの開発”、第29回 日本ロボット学会学術講演会,2011.

ビジネスライン














