連載 ロボット新時代へ、最新システムインテグレート

2012.01.27
第3回 人と共存環境で運用できる低出力ロボ、自重補償機構を搭載・安川電機

※本記事は2011年11月14日に掲載したニュース記事を再編集しました。

 労働安全衛生規則 第36条 第31号の労働大臣が定める機械を定める告示では、すべての原動機出力が80W以下であれば産業用ロボットの適用除外となり、リスクアセスメントの実施により人と共存環境下での運用が可能になる。産業用ロボットの国際安全規格ISO 10218-1では、現在はこの数値は削除されているが、国内では同規則が優先されるため、この数値を満たすロボットは基本的には「共存可能」と解釈されている。

  このような低出力ロボットの登場に期待を寄せられるのは、単に安全柵(防護柵)を簡素化できるからではない。作業者との協働作業により高度なタスクをこなしたり、ロボットを適用しながらも、作業者による改善活動によりその工程を進化したりできる効果が期待されるからである(*1)。実際、2010年に「第4回 ロボット大賞」で「大賞(経済産業大臣賞)」を獲得したトヨタ自動車は、開発した「スペヤタイヤ自働搭載ロボット(トヨタでは「自働」と表現)」の効果は、それらにあると説明している。
 大手産業用ロボットメーカーの安川電機は、こうした効果を意図して「人共存ロボット」(写真1)を開発し、11月9~12日開催の「2011国際ロボット展(iREX2011)」で初公開した。

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写真1 安川電機が初公開した人共存ロボット。エアシリンダーによる自重補償により全軸に出力80Wのモータの採用を可能にした

*1:加えて、生産ラインの柔軟の編成や、ショートプロセス化によるコスト削減も見込まれる。

トヨタのロボットと類似の軸構成に

  人共存ロボットは、昇降軸と水平軸からなる5軸構成のロボットである。昇降駆動と水平駆動を分離し、昇降軸にエアシリンダーによる自重補償機構(簡単にいえば自重をゼロにすること)を組み込むことで、全軸に出力80Wの低出力モータの利用を可能にした。人と共存環境下で運用することができる。

  加えて、さらなる安全性の確保に向けた対策もいくつか施している。
 ロボットの手先にはキーエンス製レーザスキャナーを搭載しており、作業者などの接近を検知して停止することが可能。水平回転の第2軸に力センサを搭載しており、レーザスキャナーの死角に入り込んで作業者に衝突したり挟み込んだり際は、アームにかかる外力を検知して安全に停止することができる。また、作業者はアームを押しのけてロボットから逃げることができる。さらに、エアシリンダーによる自重補償機構を採用しているため、電磁モータと違い、電源が遮断されてもアームが急に下がるといった危険もない。
  2011国際ロボット展では、動画で示したように、トヨタのスペアタイヤ自働搭載ロボットと同様の用途をイメージしたデモを披露した(動画)。

動画 2011国際ロボット展で披露したスペヤタイヤの搭載をイメージしたデモ

 スペアタイヤ自働搭載ロボットでは昇降軸に平行リンク機構を採用しており、平行リンクが鉛直方向に向いた姿勢でバネの伸びがゼロになるようバネのたわみを調整することでアームの自重をゼロにしている(写真2図1)。自重補償機構の原理は異なるが、同様の用途をイメージしたためか、類似の軸構成となっている点が興味深い(*2)
 ただ、人共存ロボットの可搬重量はスペアタイヤ自働搭載ロボットの25kgに対し120kgを有しており、他の重量物の搬送用途にも活用することができる。汎用性が高く、様々な用途への展開が期待される。

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写真2 トヨタのスペアタイヤ自働搭載ロボットと作業者による協同作業

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図1 スペアタイヤ自働搭載ロボットの軸構成(図提供:トヨタ自動車)

*2:スペアタイヤ自働搭載ロボットとの違いに触れておくと、こちらでは「力センサレス柔軟制御」により外力推定を行っている。駆動軸のモータ負荷電流からトルクと各軸の角速度、角加速度を推定し、これらをもとにアームの動力学モデルを解いてアームにかかる外力を推定している。駆動軸のトルクを用いて推定しているため、アームのどの部分が作業者や障害物に衝突しても外力推定が可能としている。

トヨタのラインで使われる可能性も?

 トヨタでは2010年1月より高岡工場(愛知県豊田市)の第1組立ラインでスペヤタイヤ自働搭載ロボットの運用を開始している。ここでは、適用に当たり45秒のラインタクトへの対応を条件としていた。仮に、デモで示した通りスペアタイヤの自動搭載での実用化を目指す場合は、これへの対応が1つの目安になるだろう。

 また、トヨタではバッテリーやエンジンなどの重量物の自動搭載にも適用をする計画を明かしていた。人共存ロボットは可搬重量が大きく、かつ汎用性を備えるため、こうした重量物の自動搬送に有効である。トヨタでは同社製ロボットを多数導入していることを踏まえると、安川電機ではこれらの搬送用途への対応も見越して可搬重量120kgにしたと推察され、また、可搬重量を低減した小型タイプの開発も進めていると想像される。
 




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