連載 4肢選択で理解する!サービスロボット安全技術講座

2010.12.10
第3回 機械安全規格概論 【解答&解説編】

【問題作成&解説】
長岡技術科学大学
システム安全系 准教授 木村哲也
安全安心社会研究センター 客員研究員 岩岡和幸

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【問1】(ISO 12100)

《解 答》
(A)

《解 説》
 ISO 12100の示す安全設計原則は機械類全般に対するものであり、出力の大小にかかわらず安全設計では参照すべき規格である。WTO/TBT協定によりJIS規格もISO規格との整合が進められており、ISO 12100:2003はJIS B 9700として2004年にJIS化されている。

 わが国ではJIS規格(≒ISO規格)は守ることに法的強制はない任意規格である。しかし、JIS規格を守らなかったことが主因で起こった事故に対し、事故発生の責任がより強く問われる判例(*)もあり、様々な形態の事故が懸念されるサービスロボットの分野では、開発者を守る意味でも、ISO規格順守への十分な配慮も必要であると考えられる。ISO 12100は他のISO規格に対して影響力のある、より上位の規格(A規格)として位置づけられている。よって、現在策定が進められているサービスロボット安全のISO規格(ISO 13482)もISO 12100の影響を受けている。サービスロボットの製品化を進めるうえでISO 12100の理解は今後、必須と考えられる。

*1:事件番号:平成20(わ)2167、大阪地方裁判所、エキスポランドのジェットコースター事故の業務上過失致死傷被告事件

 

【問2】(リスクアセスメント)

《解 答》
(B)

《解 説》
 ロボットの設計者がリスクアセスメントにより残留リスクを明らかにし、使用者に伝えることが国際安全規格の求める設計者責任の1つである。しかし、設計者は使用者の使用状況(使用環境、使用者の行動等)を事前に、かつ完全に規定することはできない。よって、国際安全規格では設計者だけでなく、使用者も自らの使用状況にもとづいて再度リスクアセスメントを実施し、残留リスクが許容可能か判断することを求めている。
 ISO 14121:1999(機械類の安全性-リスクアセスメントの原則)ではリスクアセスメントを「機械のあるリスクを系統的に明らかにする一連の論理的手順(*2)」としている。サービスロボットは多様なリスクを内包しており、思いつきで発見的にリスクを見つけようとすると、どうしても見落としが発生する。規格にもとづいてリスクアセスメントを系統的かつ論理的に実施することにより、リスクの見落としが少ない確度の高いリスクアセスメントが実施できる。

 リスクアセスメントの実施では、事故の発生確率の見積もりが困難である場合は、発生確率の最悪値(最大値)を用い、安全側に見積もることでリスクアセスメントを実施すべき、とされる。新技術であるサービスロボットでは、関連事故データの収集・分析・公表体制は現在、社会的に広くは確立されておらず、このままでは経済的に不合理な(事故の発生確率が過大に見積もられる)安全設計がサービスロボットで多くなることが懸念される。設計者、使用者によるリスクアセスメント手順の正しい理解とともに、リスク関連データの社会への適切な蓄積が、今後のサービスロボット産業の育成に必要である。

*2:原文を筆者が文意にもとづき変更

 

【問3】(3ステップメソッド)

《解 答》
(D)

《解 説》
 3ステップメソッドでは、ステップ1 → 2 → 3の順番で安全設計を実施すべき、とされている(ステップ1が最も優先順位が高い)。本質的安全設計方策は安全設計の基本であり、また、その技術的詳細はISO 12100-2:2003(機械類の安全性-設計のための基本概念、一般原則-第2部:技術原則 )にまとめられている。
 ISO 12100-2において本質的安全設計方策とは、モータ出力の低減といった機械的なものから、人間工学の配慮、センサを用いた制御システムなど15項目が例示されている。サービスロボットは、人と接触しながら多様な状況で使用されため、ロボットと人が接触するときの安全を確保するためのカバーの設計や、安全な使用方法を使用者へ明示することも非常に重要となる。

 しかし、「ステップ1:本質的安全設計方策」による危険源の除去こそが多様な使用状況において安全を確保するための最も有効な手段であり、3ステップメソッドの優先順位にもとづく安全設計の実施がサービスロボットでも望ましい。

 

【問4】(付加の保護方策/非常停止)

《解 答》
(D)

《解 説》
 国際安全規格上での非常停止装置は付加の保護方策である。付加の保護方策とは、3ステップメソッド上でステップ2に位置付けされるが、安全防護より下位に来る。ゆえに非常停止装置を備えたとしても、本質的安全設計方策や安全防護を省略および軽視した方策をとってはならない。また、付加の保護方策とは、設計段階上で早い時期に当たり前の方策(標準的な設計基準に属する)として、扱わなければならないものである。
 非常停止の設計原則は、ISO 13850(JIS B 9703)で定めらており、デザインに応じて自由に色や形状および個数を決定できない。非常停止装置の配置は、あくまでリスクアセスメントにもとづき国際規格に準じた実施が求められる。

 

【問5】(使用上の情報)

《解 答》
(D)

《解 説》
 使用上の情報とは、3ステップメソッドの最後の順番で対応する保護方策で、使用者に情報を伝えるための伝達手段を個別に、または組み合わせて使用する保護方策である。この方策は、他の保護方策(本質的安全設計方策、安全防護方策及び付加の保護方策)のように方策自体でリスクを除去、低減出来るわけではないことに注意しなければならない。あくまでも使用者に情報を提供し、使用者が正しく理解し実行して、初めてリスク低減方策としての効果が発揮できるものである。
 したがって、理解しやすい表現での文章や標識、絵文字などを組み合わせ、いかに使用者に注意喚起を促がすことができるかがポイントとなる。また、教育訓練などにも対応できる資料も必要とされる。




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