連載 俺の起業!ロボットベンチャー奮戦記2010

fujimoto.jpgshirogauchi.jpgアクティブリンク
代表取締役社長 藤本弘道
京都府相楽郡精華町光台3-4
(パナソニック内) 
http://psuf.panasonic.co.jp/alc/
 

藤本社長(左)と城垣内取締役(右) 

 「我々が目指そうとしていることはクルマの世界に近いのかもしれない。例えば建設車両や救急車両の開発では、ベースとなるシャシーをあらかじめ定義しておき、それをもとに用途や作業環境に応じてカスタマイズやローカライズがなされ、最適な姿や形へと変貌を遂げている。
 POWER LOADER(パワーローダー)も同様にベースを定義し、かつプロトコルをオープンにしておくことで作業内容や利用環境に応じてアームやエンドエフェクタを柔軟に変更してもらう。こんな環境を構築できれば普及が見込まれるはずなのでは」

 アクティブリンクの藤本弘道社長は、近い将来の事業のあり方をこう語る。

 同社は2010年10月、研究機関などに向け「パワーローダーライト(POWER LOADER Lighit:PLL、写真1)」を販売すると発表した。重作業支援向けPOWER LOADERを下肢のみとした構造で、市販デバイスを中心にシステムが構成されている。パワー増幅ロボットの研究開発の促進を意図するがゆえの構成だが、そうした思いを聞かされると将来の普及を見据えたプラットフォーム(クルマでいうシャシーに近い)といえる構成でもあり、懐の深さを感じさせられる。

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写真1 2010年10月に研究機関に向け提供を開始したPOWER LOADER Lighit 

 パワー増幅分野の研究開発の発展を期して

  アクティブリンクは、パナソニックの社内ベンチャー支援制度「パナソニック・スピンアップ・ファンド」(PSUF)(*1)を活用して設立した企業である。2002年に応募し、約1年間の検討期間を経て2003年6月に起業した。受託R&Dを本業としており、POWER LOADERの実用化開発ならびに応用開発を中心に活動している。また最近は、加齢などによる筋力低下の予防に向けたトレーニング機器(*2)(写真2)の製造販売も手がけている。動作追随を可能にするアクチュエーション技術とウエアラブル機器設計技術をコアにした事業展開に特徴がある。

*1:2001年4月~04年3月まで運用され、年3回募集した。「(パナソニック、当時松下電器)本体への将来的な貢献度」「社外で取り組む有効性」「事業規模」「独自性と市場性」や、提案者自身の「経営者としての適正」などをポイントに、外部機関の支援を得て事業のブラッシュアップと審査を実施し、選定された。3年目で単年度黒字、5年目で累損解消をすることが事業継続の見極めとなっている。出資比率は、松下電器が51%以上、提案者本人が30%以下、外部30%以下が目安となっており、アクティブリンクでは、松下電器が99%、藤本社長が0.5%、城垣内取締役が0.5%だった。

al2.jpg*2:拮抗筋への電気刺激で得られる筋収縮を運動抵抗に利用したトレーニング機器。例えば、膝を伸ばす運動では、伸展側の大臀筋と外側広筋などが主動筋に、屈曲側の大腿直筋と大腿二頭筋などが拮抗筋になり、このとき拮抗筋に電気刺激を与え、筋収縮を発生させると、主動筋に負荷がかかることになる。自発的な筋収縮と電気刺激による筋収縮を混合した訓練を行うことから「ハイブリッド訓練機」と表現している。術後のリハビリ用途での利用が始まっているほか、宇宙飛行士の筋肉の萎縮防止としての利用も見込まれており、2012年には国際宇宙ステーションでの実証実験が予定されている。


 これまでに、過去に小サイトで紹介した「上肢リハビリ支援スーツ」や、POWER LOADERを応用展開した「鍛造作業補助システム(*3)」など印象的なシステムを複数発表しているが、同社が注目されるきっかけとなったのは全身タイプのPOWER LOADERと思われる。SF映画「エイリアン2」に登場したパワーローダーと同じ名称を持つに相応しい外観を備え、その実現への期待を抱かせたからである。

*3:パンタグラフ構造のアーム先端に把持機構を付加したもので、把持したワークの上下方向と回転(捻り)方向の動作をパワーアシストする。エアハンマー鍛造作業は、熟練作業者が大型のヤットコを用いてワークをハンドリングしているが、ワークの重量が大きいうえに、ハンマーが落ちる瞬間にワークを金型内に位置決めしたり把持を少し緩めたりするといった微調整が要求され、作業負荷が非常に大きい。同システムの利用により、その負荷を軽減し、かつ熟練技能の発揮を可能にすると期待される。これを試験導入しているまこと工業では、5kg程度ワークで10秒/1個のタクトタイムを実現しており、実導入に近いレベルを達成しつつある。詳細はこちら

  ところが、その注目度とは裏腹に、パワー増幅分野の研究は手薄である。空圧アクチュエータ関連を除くと、サイバーダインの「HAL」やマンマシンシナジーエフェクタズ(MMSE)の「パワーエフェクタ」、東京農工大の超音波モータを活用した、農作業支援向けパワーアシストスーツしか見あたらない。しかし、この分野の研究開発はきわめて重要である。重作業支援に加え「介護福祉関連をはじめとする生活支援への応用展開も十分見込まれるはず」(藤本社長)だからである。このような状況に一石を投じる意を込め、提供を始めたのが上述のPLLである。

 PLLは片脚3軸、計6軸から成る下肢のみの構造で、ペダル下部の力覚センサで検出した脚力の大きさと方向に合わせて、脚の動作に追従しつつパワー増幅を行う。最大で400Nまで脚力を増幅することができる。人(装着者または搭乗者)と制御器、ロボットを力学的相互作用のループの中に取り込まれた構成にすることで、ロボットの挙動を機械的に、かつダイレクトに人にフィードバックするパワー増幅のエッセンスを理解できる構成となっている(同社では「ダイレクトフォースフィードバック」と表現している)。
  また、研究用途に向け取り扱いやすくしており、OSにはRT-Preemptパッチ(*4)を適用したLinux2.6を、制御回路にはFA用パソコンをそれぞれ採用しており、購入後に使い慣れたOSを再インストールするなど自由にマスタマイズできる。

*4:ハードリアルタイム処理を実現するために必要なLinuxカーネルに対する変更内容をまとめたもの。

 加えて、同社独自の研究開発助成プログラムを用意している。1年以内に研究状況をホームページなどで公開し、3年以内に研究成果をホームページや学会発表を通じて紹介し、他の研究者が再現できることを条件に900万円を助成するというもので、これにより通常価格の半額程度での購入が可能になる。ベンチャーが用意するとは思えない大胆なプログラムである。
 藤本社長はいう。
 「パワー増幅の研究開発が進まない主因は、それに適した公開されたハードウエアが存在しないこと。ゆえに、二の足を踏まれている研究者が多いのでしょうが、いまのままでは、この分野の研究は先細りしてしまう。一緒に研究開発に取り組んでくれる仲間を増やしたいというのが我々の思いであり、PLLの情報を公開し、かつ助成プログラムも用意したのです」

  最近は、学会レベルではパワー増幅も含まれる力制御の研究が未成熟であるとの認識が高まっており再び、この研究を取り上げようとする機運がある。同社の取り組みは、こうした流れも受け、狙い通りパワー増幅の研究開発を促進すると期待される。

動画 POWER LOADER Lighitによるデモの一例

運搬作業と災害救助に向け実用化を推進

  話題をPOWER LOADERに戻すと、現在は、運搬作業支援と災害救助支援に向け実用化研究を進めている。前者はPLLをベースに作業内容に適したアームおよびエンドエフェクタを搭載した構造になる見込みで、後者はNEDOのイノベーション推進事業「研究開発型ベンチャー技術開発助成事業」(2009年度採択)にて、消防研究所と共同研究を進めている。

  一方、全身タイプについては、「みなさんがイメージされるようなものと異なるものになるかもしれない」と前置きしつつも「2015年過ぎには実用化できれば」と、藤本社長は話す。実用化に至るまでに再度、試作検証を行うことを予定している。
  2009年に公開した試作機(写真3)では、いくつかのテーマをもって試作・検証に臨んでいた。1つは、搭乗者が腰を置くサドルに支点を置き、そこから力ベクトルの変化により腕および脚の動作に追従させることが可能かである。従来にない構造を持つPOWER LOADERの制御では、設置部分を原点として関節角度状態における関節位置の3次元座標を求める多関節ロボットとも、重心をコントロールすることで歩行制御する2足歩行ロボットとも異なるからで、これについては実証されたという。

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写真3 2009年に公開した全身タイプのPOWER LOADERの試作機

 もう1つは、オートバランス制御を実装せずに、このような大きな構造物を動作(歩行)できるかである。試作機の脚部構造は、荷重を支えつつ搭乗者の脚部との干渉を避けられるよう、鳥脚状に構成したリンク構造を採用していた。POWER LOADER自体の重量など重力によるアクチュエータへの影響を最小に抑えることと、歩行時の遊脚への応答性を確保することに加え、予測不可能な過度な負荷に対抗することを狙ってものである。次期試作機は「これとPLLを融合した構造にするだろう」と、開発を担当する城垣内剛取締役は説明する。

 「POWER LOADERや下肢のみのパワーペダルでは本体前方から見たときの脚の関節位置にこだわって製作した。しかしPLLの開発を通じて、脚を前後に動作させるのであれば横方向から見たときの関節位置の方が重要であることに気づき、PLLでは軸の構成および位置を変更した。実際に、足先にマウントするだけで歩行をコントロールできたし、この見方の方が理にかなっていると確認されたからです」
 城垣内取締役は、そう続ける。

  災害救助向けは型番が「MS-03」と、全身タイプの型番「MS-02」の後継となっており、これらの知見を盛り込まれるものと想像される。また災害救助向けについては、現場での様々なミッションに耐えられるように「複数のツールを交換しながら作業が行えるようエンドエフェクタ部を工夫したい」と、今後の開発構想について、さらに説明を続ける。

POWER LOADERは当社で製造・販売する

  意欲的に開発に取り組む同社の活動で今後、気になるのは、親会社であるパナソニックとの関係性である。例えば、かつて研究開発していた上肢リハビリ支援スーツがパナソニックヘルスケア(当時はパナソニック四国エレクトロニクス)に移管されたように、POWER LOADERも事業化の段階ではドメインと呼ばれる専門事業部にシフトされるのではと想像されるからである。

 これに対し、藤本社長はいう。
 「ヘルスケア分野は大きな事業が見込まれるのに対し、パワー増幅の分野は各作業に適したものが要求され、小回りが利く事業体制が適しているはず。したがってPOWER LOADERについては、ファブレスにはなるが、当社がメーカーとして製造販売することを計画している」
  また、「我々はパナソニックの事業が拡大することをミッションとしており、大きな事業化が見込まれるものは移管します。ですが、POWER LOADERはうちが手がける方がよいでしょうし、こうした意思決定の自由度は創業当時から高く、我々の判断を尊重してもらっています」と付け加える。
  メンテナンス会社と提携し、そこで保守をしてもらうような事業体制をイメージしているという。

  これに関連して、藤本社長は今後の事業の方向についても語ってくれた。
 「(すでに紹介したが)当社は動作追随を可能にするアクチュエーション技術とウエアラブル機器設計技術をコアにしています。密接に関わるパワーアシストとトレーニングなど力に関わる分野は切り込むが、それ以外は考えていない。
 これらの技術をコアコンピタンスにしている以上、なおさらそうでしょうし、ブレるのは、これらで事業が成立した後でよい。そう考えていますよ。」

  私見となるが、筆者はPOWER LOADERは人と制御器、ロボットが力学的相互作用のループの中に取り込まれた構成となることで、人の器用さを発揮しつつパワー増幅が行えるという特徴を備えており、汎用性が高いシステムになると捉えている。運搬作業支援をメインターゲットにしているが、これだけでも、その特徴を生かすことで様々な応用が見込まれ、事業として大きな成長が期待される。加えて、下肢構造のPLLはパワー増幅システムのベース部分となり得るものであり、カスタマイズには協力企業の協力が求められるとはいえ、相当な台数が生産されるのではと思われる。
 すると、パナソニック本体に移管されるのではと先走って考えてしまうが、それはまだ5年程度先の話であり、まずは実際に、そう考えるまで現在の研究を具現化してほしい。そう期待している。

(取材&テキスト作成:ロボナブル編集部)

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sakamoto.jpg パーソナル・テクノロジー
代表取締役 坂本俊雄
〒665-0051
兵庫県宝塚市高司3-8-29
http://www.pti.co.jp/


 「これまで不況とはほとんど縁がなかったのですが、今回のリーマンショックはちゃいますね~。仕事が減りましたよ~。長年付き合いがあった計測機器メーカーとの開発はやり尽くした感がありますし、関西地区のロボット開発プロジェクトは停滞ぎみですし、うちも例に漏れず苦しいですねぇ~」

 関西地区でシステムインテグレータとして活躍するパーソナル・テクノロジーの坂本俊雄さんは、苦笑交じりに、そう切り出す。以前、異色の開発案件もしなやかに対応できる希有な存在として紹介したが、リーマンショックに端を発した今回の不況は同社の経営にも影を落としているようだ。

 それでも、次世代ロボット分野のリーダーを育成する社会人向け教育プログラム「EPEER(イーピア)」に参加し、国際電気通信基礎技術研究所(ATR)と共同でコミュニケーションロボットを活用した販促活動に関する実証実験などを経験した。「2009年からは不況の影響で仕事が減少するだろう」と想定しての受講であり、確かに仕事は減ったかもしれないが、実証実験を扱った論文を「第9回 情報科学技術フォーラム」にて連名で発表(発表者はATRの塩見昌裕研究員)した。確実に今後の仕事の糧としたようだ。

カスタマイズから販促用途へ

 同社は、坂本さんが29歳のとき(1994年10月)に立ち上げた企業である。おもに計測・制御・通信や各種情報処理に関するシステムの設計開発を手がけている。起業する以前は水位計などを扱うセンサメーカーに在席し、自社センサを活用したシステム開発や提案をしていた。ここで個人として活動できることに自信を深めたことが、その若さでの独立につながっている。

  そんな坂本さんがロボットに深く関わるようになったのは、関西地区で次世代ロボット開発が活発になった2005年からで、東洋理機工業の細見成人社長からの“半ば強引な”勧誘による。もちろん、次世代ロボットの開発にはシステム構築が必須であり、「本来業務の延長線上に位置づけられる」という“確かな理由”もあってのことだが、細見社長を介して次世代ロボット開発ネットワーク「RooBO(ローボ)」に参加。その後、菱田伸鉄工業の菱田聡社長を迎え「RooBOカスタマイズチーム」を結成することになる。
  同チームのおもな開発実績をあげると、脳神経外科医に納品した「患者見守りロボットシステム」や日本食研の「バンコロボ」などの各種キャラクターロボット、今でもロボット関連のイベントでは大人気の「お好み焼きロボット」がある。

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キャラクターロボットの取り組み例(バンコ)(左)と国際ロボット展2009で人気を博したお好み焼きロボット(右)

写真3・見守り.jpg写真4.jpg

2005年に脳神経外科に導入した患者見守りロボットシステム。無断で外出しようとする患者を測域センサが検出すると、ロボットが優しく声掛けをして外出の防止あるいは足止めをし、同時に、監視用パソコンに警告を出す。さらに、ネットワークカメラにより外出社を撮影して監視用パソコンに画像を転送・表示・記録を行う。ifbotをカスタマイズして構築した。

 また2008年のはじめには、顧客ニーズに応じて柔軟にカスタマイズできるプラットフォームロボット「pul(プル)」も発表している。ロボットの主要機能をモジュール化し半製品にしたもので、各種センサやカメラなど外部機器との連携を可能にする各種インターフェースや、音声認識・合成機能などコミュニケーションロボットに必要な機能をほぼひと通り備える。

 発表当初はキャラクターロボットの開発を意識してカスタマイズの容易さを提案していたが、ある時からは、pul(ロボット)のアイキャッチの高さを生かした、PR用途に向けた提案に切り替えている。「ロボットは目立つし、話題性もある」という展示会での反応を踏まえたもので、pulとパソコン、大型モニターとの連携により、来場者が商品番号を告げるとpulが音声認識をして該当する商品説明をし、同時に大型モニター上で商品説明が表示されるというデモを披露して、こうした用途で活用例を創出した。その後、販促用途での応用を模索するようになり、後述するEPEERでの取り組みにつながる。
 この路線変更は「物理的な利便性がないがために目的を明確化しにくく、ビジネス化への道筋が見出しにくい」と、コミュニケーションロボットが抱える課題を冷静に捉えた結果でもある。

写真5.pngpulのアイキャッチの高さを生かしたPR用途での提案例。来場者が商品番号を告げると、ロボットが音声認識をして該当する商品説明を行い、同時に大型モニター上でも商品説明がなされる。

コミュニケーションロボの事業化はまだ先?

  坂本さんが参加したEPEERとは、次世代ロボット市場を開拓できる人材育成を目的に、大阪大学や奈良先端科学技術大学院大学、ATRなどの各機関が連携し、それぞれの技術やノウハウを生かして「基礎技術力」「実践開発力」「実証評価力」を育成する2年間の教育プログラムである。受講生は1年目は、ロボット要素技術やシステム統合に関する技術力を「基礎技術力」として習得し、2年目は、次世代ロボットの利用現場などを想定して試作機を開発し、実フィールドでの検証などを通じて「実践開発力」および「実証評価力」を身に付ける。

 2年目からは、奈良先端大で画像処理を学習するグループと、阪大の知識・機能創成工学専攻「基盤PP(PIER Program)(*)」を受講するグループに分かれて取り組む。坂本さんは後者に参加し、冒頭で紹介した実証実験を大阪南港の商業施設「ATC(アジア太平洋トレードセンター)」で実施した。

*:同専攻の「創成工学演習(Project-Based Learning)」を発展させたカリキュラム。企業から先端の研究開発テーマの提供を受け、3名の学生からなる各グループに、企業からの講師1名と阪大の教員2名を指導者とする少人数教育体制のもと、発想から設計、開発、評価までの一連のサイクルを体験させ、問題設定および解決力やコミュニケーション力、リーダーシップ力などを育成する。本来は、坂本さんのような社会人ではなく学生が受講する。

  ここでの取り組みの一端を紹介すると、その目的は、コミュニケーションロボットの販促効果により広告収入や成果報酬を得るというビジネスの可能性を見出すことにある。ATRの「Robovie-miniR2(ロボビー・ミニ・アールツー)」と、大型ディスプレイ、クーポン発行プリンタからなるシステムを構築し、Robovie-miniR2が身振り手振りなどで集客し、ATC内のオススメ店舗の紹介・クーポン券の発行を通じて来場者の購買行動につなげるというストーリーで検証した。
 具体的には「(1)ロボットの有効性」「(2)ロボットが推薦する効果」「(3)対話シナリオの違いによる効果」について、(1)は同ロボットの有無で、(2)は非推薦と推薦で、(3)は、最初もしくは最後に推薦するという推薦のタイミングで、それぞれ検証した。

  アンケート調査を交えた検証結果では、Robovie-miniR2のような小型ロボットでも多くの来場者を惹き付け、その推薦により紹介した特定店舗のクーポン配布率を向上できることが確認された。Robovie-mini-R2がいたときでは10倍程度の集客があり、アンケート結果でもそれを活用した販促活動に対し『合理的』との声があがった。また(3)については最初に推薦する方が効果的であり、そのタイミングにより配布率が増減することも確認された。一方で、高い集客力が必ずしも実際のクーポンの配布数にはつながらなかったという課題もあがった。

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 コミュニケーションロボの販促の流れ(左)と発行したクーポンと実証実験に関するアンケート(右) 

 これらを踏まえ、坂本さんはいう。
 「確かに、たいへん興味深いデータが得られ(論文の執筆につながった)が、そもそも(実証実験に協力してくれた)店舗が期待するような集客とは次元が異なるかもしれません。技術的な課題も加味すると、ビジネスベースに乗せるのはまだ先かな~という印象です」
 また、「対話を通じて顧客の好みを推定するなどマーケティング情報の収集にも寄与する仕組みを組み合わせることも必要なのでは」と続ける。

 実は、このような話は2009年春に取材した際も聞いており、pulから始まる一連のコミュニケーションロボットの実用化はまだまだ遠い印象を受ける。それでも、「(ロボットのような新しい価値観を認めてもらうには)とにかく続けることが大切でしょうし、だから最近は『継続こそロボット成り』なんてことを言っています」。坂本さんは、そう前向きな姿勢を見せてくれる。

大手と中小が分業できる産業の階層化を

 コミュニケーションロボットに関する取り組みが目立つ坂本さんだが、最近は介護福祉分野に関心を抱くようになっている。手始めとして、RooBO内で介護福祉分野を理解するための勉強会を企画・立案し、8月下旬より開催している。司会進行も自ら務めている。

  この分野における機器開発は、特定の身障者に必要とされ、かつ症状に合わせたつくり込みを行う「オーファン・テクノロジ」(ユニバーサルデザインの対極)が要求される。マスマーケティング・マスプロダクション型のビジネスモデルが成立せず、大手企業がこの分野に及び腰になっている主因になっている。
 坂本さんは、こうした現状を踏まえ、またシステムインテグレータとしての自身の役割を込めて、こう言う。「大手と中小が分業できる階層化された産業構造ができれば、介護福祉ロボットの普及もあり得るのでは」と。
 つまり、「大手企業が、例えば移乗介助を支援するロボットのベースを最大公約数として開発・提供し、それを我々のような中小企業がカスタマイズやローカライズ(=事業者向けのカスタマイズ)を担う」という構造である。さらに、サービスやメンテナンスを担う企業を加味したものをイメージしている。

  考えてみれば、汎用の産業用ロボットは各現場の要件に合わせて教示をしたり他システムと接続したり組み込んだりすることで初めて価値が生まれる。いわば「半完成品」であり、システムインテグレータが存在することで様々な生産現場での利用が可能になっている。したがって、カスタマイズやローカライズを担うようなプレイヤーは必要であり、この存在が介護福祉ロボットの普及を担う可能性がある。
 実際、坂本さんが手がけた患者見守りロボットシステムは、コミュニケーションロボット「ifbot(イフボット)」にレーザ距離センサやカメラシステムなどを組み合わせ、カスタマイズを行うことで患者への声かけや見守りを可能にした。5年が経過した今でも、必須のロボットシステムとして稼働している。

 「介護福祉分野に関心を抱き始めたのは自身の親のこともあり、身近な問題になってきたから・・・」。坂本さんは、そう理由を明かすともに「せっかくロボットに関わっているからこそ、自身のシステムインテグレートで手助けしてあげたい」と力を込める。
 そのためには、坂本さんがいうような産業構造が必須であり、産業用ロボットの分野で構築されている、産ロボメーカーとシステムインテグレータあるいは商社などのような関係性が構築されることを期待したい。この分野でも、坂本さんのようなプレイヤーが活躍できる場がたくさんあるだろうし、ロボット開発の再度の活性化につながればと思う。

(取材&テキスト作成:ロボナブル編集部)

 

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パーソナル・テクノロジー 坂本俊雄さん
第1回 「こんな産業用ロボットの使い方があっても、ええんやない?」
東洋理機工業 細見成人さん
第11回 「将来的にはQOLの観点から、新たなRTの利用を提案したいですね」
菱田伸鉄工業 菱田聡さん

永里.jpgメカトラックス
代表取締役 永里 壮一
〒814-0001福岡市早良区百道浜2-3-2
TNC放送会館2F ロボスクエア内
http://www.mechatrax.com/

  9月はじめに東京池袋のアミューズメント施設に新たなアーケードゲームが登場した。ヒューマノイドとビデオゲームを融合した機種で、ヒューマノイドを操作して正面にディスプレイに表示されたミッションをクリアする。リアルなロボットとバーチャルなビデオゲームとのインタラクションが新鮮だ。
 それ以上に目を惹かれるのは、アゲ嬢風の女の子がド派手にデコレートされたヒューマノイドを手にする外観。アゲ嬢とヒューマノイドという組み合わせは斬新の域を超えている。新たな体験を味わえるのでは? と期待感を持たせてくれる。

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ヒューマノイドとビデオゲームを融合したアーケードゲーム「デコロボ大戦」。アゲ嬢風の女の子がロボットを手にする外観は斬新(写真左)。ロボットを操作してボールを投入口に投げ込んで、正面のディスプレイに表示されたミッションをクリアする(写真右)。

   開発したのは、ヒューマノイドとクレーンゲーム機を融合した「ロボキャッチャー」の開発で知られるメカトラックスである。これに次ぐ新商品として打ち出したもので、景品獲得を楽しむロボキャッチャーと違い、ゲーム(ミッション)そのものを楽しむ。その外観は演出の一環としてつくり上げたもので、ロボットを派手々々(ギャルギャル)しくデコレートしたことから「デコロボ大戦」という商品名を付している。

 「エンターテイメント性を追求した結果!」

 同社の永里壮一社長は、演出の狙いをそう簡潔に説明する。狙い通り、エンタメ色は十二分だ。同時に、正統的な見せ方であることに気づかされる。アミューズメント施設は女子高生を中心に若い女性客が多い。年齢を問わず、女性は貴金属類をはじめ光沢系に強い興味を抱く。加えて、ロボット好きとされる20~40代前後の男性客への訴求と違い、こうした客層に向けた提案はヒューマノイドそのものへの要求機能を低減できる可能性もある、からである。

理詰めの考察から生まれたロボキャッチャー

 メカトラックスは、2005年12月に設立したロボットベンチャーである。設立当初は、研究機関に向けに高性能ヒューマノイド「KRB-1」を販売していたが、価格が65万円と高価であり、受注生産だったことから売れ行きは芳しくなかった。ヒューマノイドの開発・販売というビジネスモデルの難しさに直面していたが、ヒューマノイドの技術シーズとクレーンゲームの市場ニーズとを融合することでロボキャチャーの開発に至る。

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ヒューマノイドとクレーンゲーム機との融合とで話題となった「ロボキャッチャー」。

   「ロボキャッチャー」という成果物のみを捉えると、単にこれらを融合した“思いつきによる開発”と誤解されがちだが、そこに至るまでには綿密な構想がなされている。

  当時(2005年~06年頃)、永里さんがまず考察したのはヒューマノイド市場をめぐる情勢だった。現在もさほど変わらないが、(教育を除き)ホビー用途以外では市場性が見出しにくいうえ、5~10万円の価格帯で年間数千体が売れる程度。にもかかわらず、参入メーカーが多いため低価格化が急速に進んでいた。価格競争に巻き込まれずに高機能なヒューマノイドを販売し続けるには、ビジネスユーザーをターゲットにすべきだが、「適切なアプリケーションを提示できなければ投資判断がなされない」(永里さん)。
 また、技術面でも課題が多かった。現在のヒューマノイドは特定条件下(事前の軌道計画ができる範囲)であれば稼動できるが、オープンフィールド(一般社会)で動かせる技術レベルに到達していない。実用的な運動制御を可能にするためには稼動環境を固定したり限定したりすることが求められた。

  こうした考察をから見えた有力なアプリケーションがクレーンゲーム機だった。ヒューマノイドの身体性(手足をはじめ身体を有していること)により創出されるエンターテイメント性にフィットしているうえ、専用の筐体により稼働環境が安定する。しかも、筐体内に隔離できるため「ロボットの安全性を担保することができ、ビジネスベースに乗せやすい」(同)という利点があった。

 一方で、クレーンゲーム機市場に目を向けると新たな機種を求めてられていたことが伺えた。日本アミューズメントマシン工業協会によると、2005年の業務用クレーンゲーム機の売上げは年間127億円あり、試算では毎年1~2万台が出荷されていた。機器1台から得られる年間プレイ代は170万円程度に上るが、うち1/3程度が景品コストに費やされており、“景品人気”に依存する体質になっていた。
 こうした中でのロボキャッチャーの登場は市場から歓迎され、初めてお披露目した2007年の「AOUアミューズメントEXPO」では人気機種ランキング1位を獲得するに至った。永里さんの読みはずばり的中したわけで、当時の考察を整理すると以下の図のようにまとめられる。

 このような考察はロボキャッチャーとともに高く評価され、2007年7月には「九州技術開発ファンド(*)」投資1号として1億円の出資を受けた。これをもとに開発・製造および販売のための「特別目的会社(SPC)」を設立し、必要な技術シーズをSPCに投入してファンドとの共同事業を開始。ロボキャッチャーの製品版の発表に至る。決して思いつきではない、このような考察が投資するに足る事業として認められたのである。

*:九州地域の中小・ベンチャー企業が保有する技術力や知的財産権の価値を評価し、投資を行う。不動産などの担保余力がない企業や、公開を目指さない企業に対しても投資を行う。企業への直接投資ではなく、「プロジェクト・ファイナンス」と呼ばれる手法や匿名組合出資と呼ばれる手法を活用する。㈱パテント・ファイナンス・コンサルティングが運営する。

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永里社長が2006年頃に行った考察を整理した図(ロボナブル編集部で解釈しまとめた)。

製造企業の倒産などを乗り越え、企業として進化

  ファンドより出資を受けた当時は、日経ビジネスなどでも取り上げられ、大きな話題になった。また2007年末には上市を果たし、2008年以降は大きな飛躍が期待されていた。ところが、思わぬかたちで経営が振り回されることになる。

 最も痛手となったのは製造委託企業で、当時JASDAQ上場のプロデュースの倒産である(販売は福岡の老舗企業・アールエスが担当)。粉飾決算に端を発した上場廃止、民事再生法の適用により出荷できない状況に追い込まれた。粉飾決算の発覚は2008年9月だが、「3月頃から生産が停滞し始めていた」(永里さん)という。これを受け、専用部品を多用するロボキャッチャーと違い、汎用部品の積極利用によりコストダウンを図った「プチ・ロボキャッチャー」(69万8,000円、ロボキャッチャーは198万円)を急遽発表するが、「実質1年近くは製造も販売もできない状態だった」と振り返る。

  ほかにも企業間もない同社を困難が待ち受けていたが、山あり谷ありの経営を乗り越えつつプチ・ロボキャッチャーの急展開と直販体制の構築により、この約2年間でロボキャッチャーと合わせて100台程度を販売している。また今年6月には、プチ・ロボキャッチャーに対し購入1年後に最低買取価格を保証する「下取りプラン」をスタートし、シンガポールに開設した駐在所を介して、アジア各国のアミューズメント施設に低価格で販売することも始めた。苦難のたびに迅速に新たな取り組みを始めている。
 「月並かもしれませんがが、ピンチをチャンスと捉えた結果ですよ」
 永里さんはさらりと言うが、上述のようなことがあってもなお同社が新製品を発表できるのは、このような判断および対応があってのことである。開発力に加え経営力も進化していることに気づかされる。

期待感を抱かせるモノづくりが人を集める

 現在、同社は冒頭で紹介したデコロボ大戦の販売に注力している。東京池袋をはじめ各地でロケテストを実施している。
 デコロボ大戦をもう少し詳しく説明すると、2本のジョイスティックでヒューマノイドを操作し、ボールを投入口に投げ込むことで正面のディスプレイに表示されたミッションをクリアする。3種類あるゲームのうち、例えば「ロボキャノン」では、投入した個所の砲台から砲弾が発射され、敵をブチのめすことができる。難易度に応じて敵が移動したり、倒すのに必要な攻撃回数が変化したりするため、子供からゲーマーまで幅広い層で楽しめる(動画上)。また、ビデオゲームのコンテンツをバージョンアップするだけで、ハードウエアを変更することなく新たなゲームに切り替えられるのも大きな魅力である。

ミッションでの敵への攻撃は、2本のジョイスティックでロボットを操作し、ボールを投入口に投げ込むことで行う。例えば「ロボキャノン」では、投入した個所の砲台から砲弾が発射され、敵を攻撃することができる。難易度に応じて敵が移動したり、倒すのに必要な攻撃回数が変化したりするため、子供からゲーマーまで幅広い層で楽しむことができる。

 今回、エンターテイメント性を追求するに当たり、外観デザインやビデオゲームコンテンツなどの制作は、ロボキャッチャーのデザインも手がけた空気(株)の白川東一氏に依頼した。同氏は今年6月に、国際的な映像作品のアワード「Telly Awards(テリー・アワード)」でBronze(銅賞)を受賞するなど国内外で高く評価される気鋭のクリエイターである。
 「プチ・ロボキャッチャーは(プロデュースさんの倒産の影響により)慌ただしい中で発表しました。開発の必要性に迫られたとはいえ、白川さんの思いがまったく込められていません。特に今回は、ゲームそのものを楽しんでもらうためエンターテイメント性の追求は必須であり、(ロボキャッチャーへの)原点回帰が最良の選択だったのです」
 永里さんは、同氏に託した理由をこう説明する。

 ビデオゲームを見ると、エンターテイメントとして精緻につくり込まれているのがわかる。例えばロボキャノンでは、ターゲットになる巨大敵ロボットはじっとしているかと思いきや目を光らせて突然ジャンプをしたり、いまCMで話題の“レディーガガ”もどきの怪しげなダンスを繰り出したりする。絶妙な“小憎たらしさ”を醸し出すことで、プレーヤーに従来にない楽しさを提供したり、倒そうとする意欲を掻き立てたりするものになっている(動画下)。また、ビデオゲームの映像は可愛らしい色使い(配色)により、アゲ嬢がヒューマノイドを手にする奇抜な外観と乖離していない。全体としてのデザインの調和もとられている。本格的な受注はこれからだが、9月に実施したロケテストでの評判は上々のようだ。

 ロボキャッチャーもデコロボ大戦もそうだが、同社の製品は意外性ととともに期待感を感じさせる見せ方や提案をしてくれる。そのためか、ロボキャッチャーの開発では永里さんの知人がBGMをはじめ様々なジャンルの楽曲を提供してくれた。デコロボ大戦ではデコ職人が楽しみながらヒューマノイドにデコレートしてくれているという。知らず知らずのうちに、周囲が積極的かつ自然に協力するような開発になっている。

  「常に新しい提案をしているせいか、金融機関も行政もうちには比較的温かく対応してくれます。いろいろありましたけど、うち(の会社)は恵まれている方でしょう」

 永里さんは、そう何でもないように話すが、強烈な意外性と斬新さに富みつつも周囲に期待感を抱かせるような提案がそうさせているのだろう。またそれだけ、ロボキャッチャーもデコロボ大戦もエンターテイメント性の創出に成功しているといえ、ロボキャッチャーに続きデコロボ大戦も大きな話題になると思わずにはいられない。

(取材&テキスト作成:ロボナブル編集部)

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ロボリューション
〒592-0001
大阪府高石市高砂3丁目24番地
代表取締役 小西康晴
http://www.robot-revolution.com/

 

 2007年6月に逝去された首都大学東京の谷江和雄教授は、将来のロボット産業(ここではサービスロボット産業)は、RT(Robot Technology)要素メーカー、ハードウエアとして提供するロボットメーカー、これらを顧客ニーズに合わせて開発・提供するシステムインテグレータの3業種による分業体制になることを予想していた[1]。その市場立ち上げに向け、特に重要なのがシステムインテグレータといわれる中、その役割も担うことで存在感を増しているのが、ロボリューションの小西康晴さんである。起業する以前に在席した村田製作所(以下ムラタ)での経験を生かし、ロボット業界を軸足にコンサルタントとして活動している。

  起業した頃は、谷江教授が描いた産業構造モデルを踏まえたビジネスモデルを描き、要素技術メーカーと研究機関、製造業者、サービスプロバイダー、顧客を結び付ける立ち位置でコンサルテーションに当たっていた(図1)。ただ、ここ1、2年の小西さんの活動を見ると、その業務内容はビジネスプロデューサー的な色合いが強くなっている。「ムラタセイコちゃん」開発プロジェクトや現在、携わっている介護福祉分野に向けたロボット開発は、特にそうである。

  その理由について、小西さんはこう説明する。
 「様々な業種の方と関わるうちに、ロボットビジネスに対する各メーカーさんのアプローチのまずさが見えてきた一方、自分なりに世の中に求められているものや『あるべき開発の姿』が見えてきました。自分で企画・提案できるようになったこともあり、プロデューサー的な色合いが強くなったのかもしれません」
  サービスロボットの市場規模はまだまだ小さいこともあり、こなれたビジネスモデルが提示されることは少ない。また、それを支えるビジネスプロデューサーも数えるほどしかいない。こうした現実を踏まえての業態の変化なのもしれない。

図1.PNG図1 起業した当初描いていたロボリューションのビジネスモデル。ロボリューションのポジショニングには変化はないが、業務内容はビジネスプロデューサー的な色合いを強くしつつある。

自身の経験をそのままビジネスに

 改めてロボリューションを紹介すると、小西さんが2006年6月に、各種ロボット開発・導入、運営に関するコンサルを主業務に立ち上げた企業である。コンサルといっても、一般的なそれとは異なり、上述のシステムインテグレータに加え、プロジェクトマネージャーやリサーチャー、プランナーなど複数の役割を兼ね備える。例えば以前、参画していた大和ハウス工業の「住宅床下点検ロボット開発プロジェクト」では、技術調査から要求仕様の取りまとめ、運用マニュアルの作成までを手がけた。

  このように幅広く業務をこなせるのには、冒頭で触れた通り、ムラタでの経験が大きい。
 2002~05年まで生産技術開発本部に在籍し、グループ企業向けの産業用ロボットの開発に携わっていた。入社間もない頃に、所属したリーダーと開発を立ち上げたが、ほどなくリーダーが異動となり、独りで開発をまとめなければならないという経験をした。また、ロボットを利用する各部署のニーズをヒアリングして整理し、全関係者に発信したり、機能分離をはじめとするシステム設計に携わったりもした。小西さんいわく、「システム設計+社内広報という珍しい役割を担っていた」とのことだが、ここでの希有な経験を自身の強みとして見出し、そのままビジネスモデルに反映したといえる。

  すでに起業して4年以上が経過したが、小西さんと似たような業態の企業や個人はまだまだ少ない。小西さん自身「サービスロボ市場の黎明期において手薄な業種」であることを見越したうえでの起業だったが、企画・提案力も備わったこともあり、いまも変わらずロボット業界内では重宝される存在でいる。それゆえに、小西さんのポジショニングは、"ロボットをつくらないロボットビジネス"の代表例として、資金的にリスクを伴いがちなベンチャーを志す人の間で参考になっている。

ロボットによる行動展示で広告宣伝の可能性を示す

  小西さんは、すでに複数の開発プロジェクトに関わってきたが、最もよく知られるのは、メディアでの露出が高い「ムラタセイコちゃん」の筐体設計プロデュースになるだろう(図2)。

 小西さんは、『機能価値』と『感性価値』の両面から価値分析を行うが(詳細は、「第1回 サービスロボット開発におけるコンセプト作成のアプローチ」を参照してほしい)、ムラタセイコちゃんでは後者を重視し、『デザイン』『こだわり』『調和』『共感』『遊び心』の5つの要素から訴求力の創出に成功した。具体的には、女性デザイナーによる女性視点による『デザイン』、開発秘話を通じての開発陣の『こだわり』の見える化、兄貴分(厳密には従兄弟にあたる)の「ムラタセイサク君」との『調和』(写真1)、小冊子の配布など顧客から『共感』を得る努力、押し付けにならない『遊び心』である。ムラタの電子部品を訴求するPR用ロボットでありながら、人に感動を与えたり共感を獲得したりすることに成功しており、その成果は、企業イメージや人材の獲得で如実に現れている(*1)。

*1:ムラタセイサク君とセイコちゃんを起用した出前授業の開催などCSR活動を複合的に重ねることで企業イメージの向上にも結び付けている。例えば、2006年度の日経企業イメージ調査『技術力がある企業」の一般個人の部門で、電子部品メーカーとしは異例の高順位となる24位にランクインし、また、2006年度の新卒者の応募者数は、好景気により技術系の採用が激化する中、前年比60%増を達成した。

図2.PNG図2 小西氏がムラタセイコちゃんの開発プロジェクトで担当した業務(図提供:ロボリューション)

  また、このプロジェクトでは広告・宣伝に対し、ロボットという「メディア」を用いてイノベーションが興せる可能性も示したことでも注目されている。
 一般に、展示会における電子部品をはじめとする要素部品の紹介は、姿・カタチを見せるだけの静的な展示にとどまる。展示パネルには仕様や用途例など詳細な説明がなされているが、わかりやすいとは言い難く、訴求力も不足している。これに対し、ムラタセイコちゃんはジャイロセンサをはじめムラタの電子部品を多数実装しており、平均台走行やカーブ走行などのデモは、これらの機能が直感的にわかる。インパクトも大きい。従来の静的な電子部品の展示形態に対し、このように機能をわかりやすい様相で提示する展示形態を「行動展示(*2)」と、小西さんは表現する。北海道の旭山動物園が実践する行動展示をそのまま拝借した言葉だが、「ロボットという媒体を利用した行動展示に切り替えることで、顧客に新たな価値提供が行えるのでは」と続ける。

  そして現在、小西さんは、その可能性をさらに追求すべく、新たな取り組みを始めている。その1つが、非接触方式のページめくりシステム「エアリアル」である。デジタルサイネージと連動したシステムで、本体上面には超音波センサ(ムラタ製)を横並びに5個、ファイバーセンサ(オムロン製)を4区画に1つずつ実装する。前者でページをめくる手の動作(方向)を検知して画面上のページをめくり、後者で50mm程度の距離まで手が近づいたことを検知し、検知したセンサの区画に該当する画面のエリアを拡大表示する。

 ムラタセイコちゃんでは、来場者は機能を「見る」にとどまっていたのに対し、エアリアルでは電子部品を活用した独自のインターフェースを通じて、それを「体感」できる仕掛けになっている。しかもiPadなどと違い、非接触でページがめくれるという従来にない経験が味わえる。経験価値を重視した新たなデジタルサイネージシステムとして興味深いうえ、現実世界とバーチャル空間をつなぐインターフェースとしても期待される。行動展示への探求がデジタルサイネージやインターフェースに新たな価値をもたらしそうだ。

図3の改訂図.jpg図3 小西さんが提案している非接触方式のページめくりシステム「エアリアル」。デジタルサイネージと連動したシステムで、本体上面には超音波センサを横並びに5個、ファイバーセンサを4区画に1つずつ実装する。前者でページをめくる手の動作(方向)を検知して画面上のページをめくり、後者で50mm程度の距離まで手が近づいたことを検知し、検知したセンサの区画に該当する画面のエリアを拡大表示する。非接触でページがめくれるという従来にない経験が味わえる「経験価値」を重視したシステムになっている。

 トータルプロデューサーへと進化、求められる人材像の1つに

 冒頭でも触れたように、ここ最近はビジネスプロデューサーの色合いを強くしている。自らビジネスのタネを仕込み提案するようになっており、上述のエアリアルはその一例である。また、介護福祉分野に向けたロボット開発では、ビジネスのあり方を実施企業に提案し、採用された結果、深く事業にコミットしている。また、事業化に向けた組織づくりから関わることで、より深く長期戦略を踏まえたビジネスプロデュースを実施している。

 コラムでも紹介してもらったが、小西さんは「ロボットによるイノベーションを興すためには『3つのデザイン階層』に整理して検討すべき」と説いている(図4)。すなわち「(1)ビジネスデザイン」「(2)外的デザイン(インダストリアルデザイン)」「(3)内的デザイン(エンジニアリングデザイン)」であり、(1)から(3)の順番で取り組むのが理想的なアプローチの1つとしている(詳細は、「第15回 ロボット開発で重要な3つのデザイン階層」を参照してほしい)。これが冒頭にあった『あるべき開発の姿』の1つでもある。

図4 デザイン階層.png図4 小西さんが提案するロボットビジネスを構築するうで必要な3つのデザイン階層。大きくは(1)ビジネスデザイン、2)外的デザイン(インダストリアルデザイン)、(3)内的デザイン(エンジニアリングデザインから成り、(1)から(3)の順番で取り組むのが理想的なアプローチの1つとしている。

 ところが、サービスロボットの事業化に向けた取り組みでは、技術者を中心にプロダクトアウト的なアプローチで進められがちで、このプロセスが逆転していることが多い。試作開発した後にビジネスデザインを検討するために、実用化に向けた現実的なストーリーが描けなかったり、ビジネスパートナー探しに四苦八苦したりしている例に事欠かない。ゆえに、冒頭での「アプローチのまずさ・・・」という言葉につながっているのだろうし、プロデューサーの色合いを強くしているのだろう。

  実は、小西さんも起業する以前に参加した、大阪市のロボットラボラトリーが主催する「ロボットビジネス起業塾(*2)」では、技術者だったこともあり「プロダクトアウト的な思考からなかなか抜け出せなかった」(小西さん)。世の中に要素技術が豊富に存在することに改めて気付き、要素技術メーカーとロボットを使いたいユーザーまたはサービス事業者とをつなぎ合わせてロボットを提案するシステムインテグレータを兼ねるコンサルとして起業した。そして最近は、さらに考え方を進め、「これら各層をバランス良くまとめ上げられる『トータルプロデューサー』を目指している」(同)。さらなる進化を遂げようとしている。

  小西さんを見ていて感心させられるのは、ムラタ時代に培った開発をまとめ上げる力もさることながら、世の中の動向を的確に捉え、業界内での自身のポジショニングをしなやかに変革していること。つまり、自身の価値をより一層高めていることである。コンサルタントのような個人プレーヤーには常に求められることとはいえ、センスの高さを感じさせられる。
 次に、どのようなロボットビジネスをプロデュースしてくれるのかも楽しみだが、彼が目指す方向性に、ロボット業界で必要とされる人材像の1つがあるようにも思われる。こうした意味でも、小西さんの動向は注目される。

(取材・テキスト作成:ロボナブル編集部)

*2:ロボットテクノロジー(RT)を使った新たなビジネスモデルを構想し、それを事業化できる人材の育成を目的としたアフタースクール。同塾から6社が起業した。

■参考文献
[1]谷江和雄 , ロボット市場を立ち上げるために , 東芝レビュー , 2004年9月号 , p.12 , Vol.59 , No.9 , 2004 .

大野、赤澤.JPG 大阪ハイテク・ロボクリニック
〒530-0003 大阪市淀川区宮原1-2-43
院長 大野一廣、教育顧問 赤澤夏郎
http://roboclinic.osaka-hightech.ac.jp(大阪ハイテク・ロボクリニック)
http://www.plen.jp/(PLEN公式サイト)
左は大野一廣 院長、右は赤澤夏郎 教育顧問


  世界初のロボット専門の診療所として、2006年8月に開院した「アカザワロボクリニック」。ロボットに深い愛情を抱くオーナーの心を察して、修理部門ではなく「クリニック」と命名した同院の思いやりや、丹念な診療・治療は国内外で報道され当時、大きな話題になった。ところが、2008年秋以降の経済危機の影響で、運営母体のシステクアカザワが自己破産を申請し、閉院に追い込まれる。2009年1月のことである。

  それでも同年9月には、大阪滋慶学園 大阪ハイテクノロジー専門学校の支援のもと「大阪ハイテク・ロボクリニック」として再び開業する。院長には大野一廣さんが再び就任し、システクアカザワのグループ企業である創和の赤澤夏郎代表が教育顧問としてサポートに当たっている。最適な人材により運営されている。

post-20100827_2.jpg 写真1 2009年9月に開業した大阪ハイテク・ロボクリニックで診療に当たる大野院長。

 

ロボット学科との有機的な連携を視野に

 ロボクリニックでは、前身のアカザワロボクニックと同様の診療方針を掲げている。つまり、『現在販売中、あるいは過去に市販されたすべての民生用ロボット等の診療・治療を行う』である。また、ロボットを治療する一般診断科とモーションの改良などを行うリハビリ科からなる診療科目や5,000円の初診療なども踏襲している。

  大阪ハイテクノロジー専門学校が開設を支援し、同校内に設置した背景には「ロボット学科」の新設がある。ロボクリニックでの診療や治療を見学することで実際のロボット開発の一端に触れることができ、より実践力を身に付けた学生の輩出につながる。学科との有機的な連携が期待されるからである。また、ロボクリニックの存在はロボット学科そのもののPRにもなり、生徒募集の後押しになることが見込まれることもある。

  ロボット学科は、早ければ2010年度からの開講を目指していたが、学科のさらなる広報活動が必要との認識から、大野さんと赤澤さんは「今年度は来年度の開講に向けた準備期間」と捉え、活動している。そこで、問い合わせがあった学生や保護者への学科の説明とともに、力を入れているのが親子ロボット工作教室である。「新大阪からロボットを盛り上げてほしい」という学校側の強い要請があったからでもある。

 工作教室といっても、参加者にはモータと電池などの素材を提供するが、身近な材料を用いての機構部品の設計・製作や電子工作などは、それぞれの創意工夫に委ねている。リピーターが多く、「子供以上に熱くなってデザインなどに凝る親御さんや、めきめきと腕(工作力)を上げている小中校生がいますよ」と、大野さんは、そう盛況ぶりを強調する。
  もちろん、工作教室の開催はロボット学科の広報という側面もあり、参加者には楽しんでもらうことを大切にしている。そうした配慮があっての盛況でもあるが、ゆくゆくは「参加した子供たちがロボット学科を受講してくれれば」(赤澤さん)と期待を寄せている。

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写真2 大阪ハイテクノロジー専門学校内に設けられた 大阪ハイテク・ロボクリニック。毎週水曜・土曜日にホビー ロボットなどの診察や修理、改良などを受け付ける。   学科にて、学生が診察の見学などを通じてロボット開発 の実際を学習できる場としても活用することもあり、部品 の製作や塗装などが行える環境も整備されている。
 
写真3 親子ロボット工作教室で製作した作品の一例。ギヤの仕組みを理解するために製作したクルマやリモコン操作できるクルマなど。左上に写っているのはデスクトップロボット「PLEN」。
 2人とも本業でも教育関連に深く関わる

 大野さんと赤澤さんは、過去にも紹介したように、それぞれに本業を抱えている。そして、ここでも教育に深く関わり、多忙を極めている。

 大野さんは、大阪・日本橋まちづくり振興の事務局長を務めており、電子部品や関連商品を扱う店舗および企業から構成される「日本橋でんでんタウンロボット連絡会」の事務局担当として、ロボット市場の創生および人材育成に関わる事業の一環として電子工作教室の運営に携わっている。工作教室やロボット工作教室の開催を通じて、子供や親御さんに街に足を運んでもらい、各店が取り扱う電子部品を購入してもらうことで商店街の活性化を図る。同時に、次代のモノづくり人材を輩出することでロボット産業の活性化を図る、というチャレンジングな目標を掲げている。

 教室は、おもに知的財産に関するマナーも身に付けられる、小中学生を対象にした「でんでんタウン電子工作教室」(*1)と、その上位版に当たる「でんでんタウン発明ロボット塾」の2つを開催している。
 後者は、昨年4月からスタートした教室で、ラジオの製作やセンサ基板の製作をはじめとする電子工作から、市販ロボットキットの改造、からくり人形の製作、さらには「ロボカップジュニア大阪ノード大会」の参戦まで取り組む。「参加対象は小中学生だが高専レベルのロボット工学の習得を目指すという野心的な内容」(大野さん)になっている。参加者は、昨年の16名から今年は18名に拡大しており、上述のチャレンジングな目標に向け一歩ずつ前進しているようだ。

*1:例えば、他人のアイデアを拝借するときは、その人に必ず許可を得るように指導しており、工作を通じて知的財産権の基礎を学習できる仕掛けも組み込んでいる。詳細は、連載「新産業の創造に挑む!なにわのロボット商人たち 第30回「街の活性化はもちろん、ロボット産業の担い手の育成も目指しています」を参照してほしい。

post-20100827_5.jpg 写真4 電子工作教室の上位版として開講した「でんでんタウン発明ロボット塾」。参加対象は小学生から中学生と従来と同じだが、高専レベルのロボット工学の習得を目指すという野心的な内容が特徴である。

 一方、赤澤さんはロボライズ(*2)が運営するロボット教室でも教鞭を執るかたわら、デスクトップロボット「PLEN(プレン)」の教育版の発売に向け動き出している。
 私立校では生き残り(生徒集め)に向けた競争が激しさを増しており、他校との差別化を図るために、また、学校の魅力の一端を伝えるために、学内で使用する機材や教育教材にコストをかけるところが多い。例えば、学内のパソコンを「Mac」に統一したり「iPad」を提供したりするといった取り組みである。
 ロボット教育教材であれば、制御基板やサーボが剥き出しになっている無骨なものよりも、PLENのように愛らしい外観を備え、滑らかなモーションが行える方がよいわけで、低価格の2足歩行ロボットが多数あるにもかかわらず、25万円もするPLENを採用する学校があるという。このような"こだわりの強い"私立校に向けた提案を計画している。

*2:兵庫県の川西市を拠点にロボット教室を運営する企業。ロボットコースと科学技術コースを用意しており、前者では自分で考える練習をしてもらい、達成感を積み重ねることで意欲や創造力を向上したり興味を広げたりする。後者では、実験を通じて理科の概念や法則に触れてもらい、身体を使って習得してもらうことで基礎力・応用力を養成する。ロボットに触れてもらうことを通じて、科学への興味、理解を深める仕組みになっている。ロボット科学教育の手法に共通するところがある。

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写真5 デスクトップロボット「PLEN」。  全身に計18軸の関節自由度を備えており、20種類以上のモーションが滑らかに行える。サーボにはラジコン飛行機の  ラダー用のものを使用。可動域は150度だが、モーションの工夫により可動制限を感じさせないダイナミックな動作を可能にしている。また、Bluetooth対応のau携帯電話から操作が行える。 写真6 昨年開発したPLNE用の3次元シミュレータ。ダウンロードしたモーションやプログラミングした動作を画面上で事前に検証することができる。Webブラウザ上で楽しんでもらうことを意図して開発した。教育向けには、これをベースに直感的な操作でプログラミングができるものを用意する。

  PLENの金型を残していることもあり、外装および構造は2006年の発売時のものを継承する。モーションプログラミングには、一般的なホビーロボットと同様、関節角度を定義して組み上げるモーションエディタを利用するが、すでにあるPLEN用の3Dシミュレータを組み合わせることで、より直感的な操作でプログラミングできるものを用意する。「やはり開発環境も琴線に触れるようなGUIでないと、購入を決断してもらえないでしょうから」と、赤澤さんは、そう開発へのこだわりを説明する。アカデミーパックとして15万~16万円での提供を予定している。

ゆくゆくは新大阪をロボ人材の供給地に

 それぞれに本業を抱えるが、ロボクリニックの存在感をより一層高めるうえで、まずは来年度の学科の開講を成功させる必要がある。
 現在は、学校側と協議をしつつ、生徒の募集に向けた方策を検討している。具体的には、在阪のロボット関連企業に一定期間研修生として勤務できるインターンシップ制度を設けたり、他の新設学科と同様、関連学科と連動性を強くすることで資格取得につなげたりするなどである。「専門学校では就職という、きちんとした"出口"を提示することが求められる」(赤澤さん)ことを踏まえて議論している。

  このように、就職に強い(就職の内定率が高い)ことを提示するためには、産業界といかに密接なつながりを持っているかが重要になる。「ロボクリニックを通じて産業界との関わりを深め、関連企業に生徒を送り出せるような関係性を築きたい」と、事務局担当は話す。また、「こうしたかたちで学生さんに還元できる仕組みにしたい」と続ける。

  学校側としては、ゆくゆくは医療・福祉・生活支援ロボットの開発に携わる人材を養成し、同校がある「新大阪をロボット人材の供給地に成長させたい」(同)との意向を抱いている。ロボクリニックや親子ロボット工作教室を通じて社会や地域との関係性を深め、来年度開講のロボット学科と有機的につながれば、その可能性は十分ある。
  ここ最近、大阪を含め関西地域において、ロボット産業を興そうとする熱気が落ち着きつつある。それだけに、赤澤さんは「ロボット産業に関わる1人して、ロボット学科の開講という明るい話題を提供したい」と意気込む。その第一歩となる開講に至ることで、ロボット人材の拠点へと成長してほしいと願う。

(取材&テキスト作成:ロボナブル編集部)

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大阪ハイテク専門学校、構内にロボット診療所を開設、実習の場としても利用(2009/10/01)

post-100823_1.jpg JAPAN ROBOTECH
〒814-0001
福岡市早良区百道浜2-3-2
TNC放送会館2F ロボスクエア内
http://www.japan-robotech.com/

 ベンチャー企業にとって販路開拓の道のりは険しい。知名度の低さや販売網の未整備といった課題を抱えており、たとえ製品や技術が優れていたとしてもターゲット市場に受け入れられないことがある。ところが、福岡市にオフィスを構えるJAPAN ROBOTECHに対しては、同じくベンチャーでありながら、ロボット業界内では次のような言葉がよく聞かれる。

 「あそこは例外でしょう・・・」
 「なんせ、河野さんという一騎当千の営業マンがいますから・・・」

 最近出展した、6月末開催の「ロボット産業マッチングフェア北九州」は大学の研究室による技術PRの意味合いが非常に強く、商談を成立させるのは難しい状況下にあった。それでも、河野さんが説明を始めると1人、また1人と来場者が同社のブースに足を止め、近々発売予定の倒立二輪タイプの教育教材ロボット「MiniWay(ミニウェイ)WV-007」の商談を複数成立させた。もちろん、同社が扱う教育教材ロボットが「教育に使える!」と判断されてのことだが、河野さんの営業力(提案力などを含む)と人的ネットワークによるところが大きい。

 一時期、数名の営業担当を置いていたが、現在は実質、河野さんが1人で営業活動している。それでも、上述の言葉の通り一騎当千のごとく精力的に営業し、新規顧客の獲得につなげている。

post-100823_2.jpg 写真1 「ロボット産業マッチングフェア北九州」の会場で、MiniWayの説明をする河野さん(写真左側)。1人、また1人と、学校関係者が同社のブースを訪れた。

 

顧客となる先生とロボット教材を共創

 改めて同社の紹介をしておくと、JAPAN ROBOTECHは2003年4月に、福岡市の「ロボット関連ベンチャー育成事業」の認定を受け、ロボスクエア内に設立した企業である。翌年には、主力商品となるロボット製作・学習教材「ROBO DESIGNER(ロボデザイナー)」の販売を開始した。

 河野さん自身は、古くから教材関連のビジネスに関わっており、それ以前は、イーケイジャパンでCOO(Chief Operating Officer)を務め、電子工作キット「ELEKIT(エレキット)」の販売に携わっている。1995年から約7年間在席し、「ロボカップジュニア」大会が新設された際は、ELEKITのロボットキットを同競技対応モデルとして売り出し、アジア各国での拡販に尽力した。「(同大会の)啓蒙普及という姿勢で臨んだ」(河野さん)提案および営業が、大会への参加を教育の柱にしようとする動きがアジア各国で広がり、結果、拡販の成功につながった。
 河野さんは、営業時にはもちろん自社製品の説明をするが、教育のあり方にも熱心に触れる。それが好感を持たれる理由の1つだが、この頃に身に付けた営業スタイルなのかもしれない。

 また、同大会の啓蒙活動を通じて、ロボカップの提唱者である北野宏明氏と知り合うことになり、さらに同氏を通じて、早稲田大学の高西淳夫教授らとも知り合う。そして、同教授らの協力のもと生み出したのがROBO DESIGNEER(*1)である。

*1:ROBO DESIGNERは、福岡市の産学研究開発サポート事業「進化するロボット学習教材開発事業」の枠組みで、上述のMiniWayは福岡県の「ロボット開発技術力強化事業」(2008年7月~2010年3月)の枠組みで、それぞれ開発している。

 ROBO DESIGNERは、コントローラボードとアクチュエータ、センサおよび数点のロボットパーツ、専用の開発環境「TiColla」で構成される教材で、コントローラとパーツ、他のパーツ類とを組み合わせることで自律型車輪駆動ロボットなどが製作できる。TiCollaは小中学生でもアルゴリズムを習得できるよう「タイル」と呼ばれるオブジェクトを組み合わせることでプログラミングができるソフトで、フローチャートの「処理」や「判断」を表す図と同様にタイルが扱える。このような扱いの容易さと、ユーザー自身が課題設定をしながら組み立てる仕組み(*2)が好評を博している。
 国内外の高専や大学で教材として利用されており、2007年秋の段階で1万2,000台を販売している。ここ数年は年間4,000台前後を安定販売していることから、2万台以上を販売していると推計される。

*2:ROBO DESIGNERではセンサやモータなどの取付け位置が定義されていない。ユーザー自身が設計目標を設定する必要があり、また、その過程で遭遇する問題を解決しなければ完成には至らない。このように自ら課題を設定し、問題を発見・分析し、解決する能力を培うことができる仕組みが込められているのが特徴の1つである。設計をするのは「アナタ自身です!」という意味を込め、「ROBO DESIGNER」という製品名になっている。

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写真2 ROBO DESIGNER Platformセット。コントローラボードとアクチュエータ、センサおよび数点のロボットパーツ、専用の開発環境「TiColla」から構成される。ユーザーはコントローラとパーツ、他のパーツ類とを組み合わせることで自律型車輪駆動のロボットなどが製作できる。 写真3 TiCollaのプログラム作成画面。「タイル」と呼ばれるオブジェクトを組み合わせることでプログラミングができる。フローチャートの「処理」や「判断」を表す図と同様に、タイルを扱うことができる。また、本格的なC言語をサポートする開発環境「TiColla CDE」もある。

 これほどまでに販売できた要因として、"JAPAN ROBOTECH価格"といわれる低価格での販売(例えば、ROBO DESIGNERの基本セット「RDS-X01:Platform」は税込みで9,975円)がよく挙げられる。こうした側面もあるが、最大の要因は高西先生をはじめ、ユーザーとなる先生方との共同開発(=共創)にある。
 例えばTiCollaには、タイルを組み合わせることでアルゴリズムを習得できると同時に、C言語によるプログラミングも学習できるというユニークな機能を持たせているが、テスト授業による仕様検証などを通じて挙げられた機能である。販売間近のMiniWayも、同様の方式で開発を進めている。仕様変更や追加機能などの要望に応えるために上市に時間を要するきらいがあるが、その甲斐あり「使える教材!」として認知され、売れているのである。

ベンチャーなので、やはり経営はやりくり

 同社の近況に触れると、少なからず2008年秋以降の経済危機の影響を受けたが、それよりむしろ、人的な面で苦労させられている・・・。そのような印象を受ける。
 もともとMiniWayは4月末から発売を始める予定だったが、専用の開発環境の開発が間に合わず、夏以降に延期することを決断している。開発を担当する協力企業のソフトウエア開発担当者の体調不良が原因で、こればかりは、河野さんには如何ともし難い。現在は、社内の電気設計担当者が開発に当たっている。間もなく完成の予定だ。

 また、かつてベテランの営業スタッフを雇っていたが、2008年のリーマンショック以前にレイオフするという決断も下している。
 2007年秋に、組込みシステム技術者向けの教育教材「SYSTEM CREATOR(*3)」を新たに商品ラインナップに加えたが、対象ユーザーのレベルが高くなるため、必然的に教材の内容も高度化する。容易に扱え、かつ説明ができるROBO DESIGNERと違い、ベテランスタッフにとって新たに高度な内容を理解するのは難しく、うまく説明できないために、営業から足が遠のくという状況になってしまった(同社に限らず、こうした状況は散見される)。ゆえに、そのような決断をせざるを得なかったのである。
 「リーマンショック以前に決断したからこそ、うちはまだ(企業として)あるのでしょうし、退社された方も、現在のように、職探しに苦労を強いられることを免れたことでしょう・・・」
 河野さんは、そう振り返る。

*3:SYSTEM CREATORに関しては、期待されたほど販売台数は伸びなかった。組込みシステム技術の不足がよく指摘されるが、どちらかと言えば、携帯電話や情報家電などアプリケーション層の開発を担う組込みソフト技術者が不足している。同教材ではハードウエア技術や、それを制御するデバイスドライバなどが学習できるが、こうした特徴と不足しているエンジニアの属性がマッチしなかったからと推測される。

 さらに昨年は、麻生政権時に第二次補正予算で2009年度に使用する補助教材に経費が認められ、小中学生でも扱えるROBO DESIGNERに拡販のチャンスが訪れたが、政権交代とともに霧散と化した。運転資金を借り入れるための格好の材料になるはずだっただけに惜しまれる。
 いくらROBO DESIGNERが売れているとはいえ、低価格で提供しているため利幅が大きいとは言い難い。それだけに「うちも例に漏れず、やりくりしながらの経営ですよ・・・」と漏らす河野さんにとっては痛い出来事だったようだ。

 それでも、MiniWayの販売と並び、河野さんが期待を寄せていることがある。高西研究室や九州大学などと新たに取り組む医療用訓練ロボットの開発である。
 腹腔胸手術の技能評価を目的としたシステムで、人間の腹部を模した構造体の中に可動する臓器が複数あり、これらが微妙に動作する状況下での施術を判定する。施術者には実際に手術で使用する鉗子などを利用してもらい、カメラ画像をもとに点数化して技能評価を行う。人工皮膚や臓器などの素材は京都科学が提供し、JAPAN ROBOTECHはロボット技術を応用して稼働部や構造体を開発する。

 このようなロボットの場合、実際に治療を行うわけではないので、薬事法などの制約を受けることはない。また、教育カリキュラムの開発を担当する九州大学が九州大学内視鏡トレーニングセンターで実際に使用し、新たな医療用訓練ロボットとして世界に発信していくことになっている。さらなる広がりが期待される。

レベルに応じて2タイプの教材が揃う、これからが本番

 最後に、販売を控えるMiniWayを紹介しておくと、これも高西教授らと共同開発した倒立2輪タイプの教育教材ロボットである(動画1、2)。搭載した加速度センサで検出した並進加速度を、レートジャイロセンサで検出した角速度の積分値を加えてキャンセルし、さらに、エンコーダで検出した車輪角度と角速度を加えたパラメータをもとにモータを駆動することで倒立姿勢を維持する。

post-100823_5.jpg 写真4 倒立2輪タイプの教育教材ロボット「MiniWay(ミニウェイ)WV-007」。専用シミュレータも備えており、ロボット技術の基礎学習から応用まで幅広く活用できる。無線通信ユニットとデータ収集MMC(マルチメディアカード)を搭載するフルスペックタイプの「MiniWay Advanced」は約20万円、基本構成タイプの「同Platform」は約10万円での販売を予定している。写真はAdvancedタイプ。

 

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写真5 MiniWayが搭載するエンコーダ付モータとセンサ類(左)と、制御基板(右)。これら単体での販売も行っている。2相出力エンコーダ付DCモータ「RDO-29BMA」は2008年末より販売を開始しており、価格は1個当たり3,780円。ギヤ付は1万500円。10個以上の購入の場合は、1個当たり7,980円にて販売している。良心価格のため多くの研究室で支持されている。

 2足歩行ロボットを題材にした教育教材は多くあるが、大学生が学習するにはかなり敷居が高い。しかしながら、このような倒立振子制御は2足歩行制御の基礎知識であり、その触りを理解するには格好の題材となる。2008年末から試作機の公開を始めており、販売開始ながら多数の教育機関での採用が決まっている。

 MiniWayの販売により、ROBO DESIGNERは大学1、2年生以下のレベルに向け、MiniWayはそれ以上のレベル向けという具合に、「ロボット工学教育に向け、ようやく理想的な商品構成」(河野さん)になる。
 MiniWayについては、3年間で3,000台を販売することを目標に掲げているが、ROBO DESIGNERと違い、フルスペックタイプが約20万円、基本構成タイプが約10万円と、高価な商材となる。それでも、すでに多数の教育機関で採用が決定していることなど踏まえると、そう難しい目標でもないように感じられる。レベルに応じた商材が整ったいまからが、河野さんの営業力が試されるといえるのだろうし、今後の成長に向けた第一歩として販売目標をクリアしてほしい。

(取材&テキスト作成:ロボナブル編集部)


 
動画1 高西研究室が開発したMiniWayの応用例1。サッカー競技の様子(画像提供:早大・高西研究室、JAPAN ROBOTECH)。

 


 
動画2 応用例2。相撲競技の様子(画像提供:早大・高西研究室、JAPAN ROBOTECH)。

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