国立情報学研究所(NII)と電気通信大学などは5月3~5日開催の「RoboCup JAPAN OPEN 2012 OSAKA」にて、「ロボカップ@ホーム」リーグ内でシミュレーションリーグを立ち上げる考えを明らかにした。NII が知能ロボットの研究に向け開発したシミュレータ「SIGVerse(シグバース)」を用いて没入感システムを構築し、仮想空間で人とロボットがインタラクションしてホームリーグのタスクを実行できるようにする(写真、動画)。ハードウエアの開発にかかる負担が大幅に軽減され、ホームリーグの参加者の拡大につながるうえ、認識や学習、計画など高次レベルの研究に集中することができる。RoboCup日本委員会ならびに国際委員会の理事会に提案し、数年内に正式競技となることを目指す。
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写真 ロボカップの会場で実施してもらったSIGVerseを用いたシミュレーションのデモ(左)。3台のPCの間に設置したKinectでジェスチャーを認識し、仮想空間の人物(アバター)を動作させている(右)。
ロボカップ@ホームリーグは、キッチンやリビングなど家庭環境での利用を想定した用途を競技形式で評価する。人とロボットとのインタラクションを通じて、認識した人物を記憶して追従したり飲み物を提供したりするといったタスク(*)に挑む(動画1は「Follow Me」のデモ)。
*:タスクの一例をあげると、「Robot Inspection」(フィールド内を移動しながらロボット自身が基本機能を紹介)、「Follow Me」(未知ユーザーに対して1分以内にキャリブレーションを行い、追従する)、「Go Get It」(フィールド内にあるオブジェクトを探索)、「Who Is Who」(フィールド内にいる人を見分けて名前と顔を憶える、「Open Challenge」(ロボットの性能に関する、研究で優れている点のデモ)、「Enhanced Who Is Who」(フィールド内にいる人を見分けて飲み物を届ける)、「General Purpose Service Robot」(上記のタスクをランダムに組み合わせてロボットに実行させる)、「Shopping Mall」未知環境で棚からオブジェクトを持ってくる、「In the Restaurant」(注文を聞く、ドリンクを用意するなど給仕関係のデモ)がある。
動画1 プレス向けに公開した「Follow Me」のデモ。
現在、構想しているシミュレーションリーグでは、SIGVerseにヘッドマウントディスプレイ(HMD)とジェスチャーインターフェース「Kinect(キネクト)」を組み合わせて没入感システムを構築し、仮想空間で人とロボットがインタラクションをしてタスクに挑んでもらう。
SIGVerseは「社会的知能発生シミュレータ」として開発したシステムで、物理・力学シミュレーションと物体認識などの知覚シミュレーションに加え、対話シミュレーションを統合したのが特徴。いわばロボットシミュレータに社会シミュレータを組み合わせたようなシステムで、人と対話したり協調したりする知能ロボットの評価・検証が行える。
インターフェースにKinectを追加することで、仮想空間上で視線および音声認識に加え、ジェスチャー認識も可能。これらの複合的な入力情報を通じてのタスクを検証したり、さらには、人とロボットが協調作業する際に求められる学習や推論、計画などを評価したりすることができる。共通課題となっている、認識した人物に追従する「Follow Me」(動画1)といった単純なタスクから、現在の実空間のホームリーグでは実施が難しい、人とロボットが協調しての調理作業まで評価・検証が行える(動画2)。
SIGVerseは、サーバクライアント形式によるマルチエージェントシステムとなっており、ネットワークを介して複数ロボットや複数人がインタラクションすることが可能。開発言語はC++に対応しており、作成したプログラムをロボットに実装することで様々な評価・検証が行える。
SIGVerseはオープンソースで公開されており、クライアントPCからSIGVerseのWebサイトにアクセスし、ダウンロードすれば利用可能。リビングなどの環境モデルのほか、ロボットモデルとしてヒューマノイドと電通大などがホームリーグで利用している「DiGORO(ダイゴロウ)」のモデルも用意している。
シミュレーションリーグの構想には、NII の稲邑哲也准教授と電通大の長井隆行教授のほか、玉川大学の岡田浩之教授、情報通信研究機構の杉浦孔明専攻研究員らが参加している。なお、来年の「RoboCup JAPAN OPEN 2013 TOKYO」は5月4~6日の日程で、玉川大学で開催されることが決定している。
動画2 ロボカップの会場で実施してもらったSIGVerseを用いたシミュレーションのデモ。3台のPCの間に設置したKinectでジェスチャーを認識し、仮想空間の人物(アバター)を動作させている(通信環境が悪いうえ多数の人が往来する中で実施してもらったため、システムうまく動作していない点はご容赦願いたい)
●社会的知能発生シミュレータ「SIGVerse」
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