サービスロボット

2014.03.21
ATRなど、車椅子ロボによる被介護者の移動支援を公開

 国際電気通信基礎技術研究所(ATR)とATR-Promotionsは3月20日、半自律移動型の車椅子ロボットによる要介護者(高齢者など)の移動支援サービスのデモを披露した(動画)。有料老人ホームを運営するオリックス・リビングの協力を得て取り組んできた介護施設内における実証実験の成果で、ロボットによる移動支援により介護スタッフが他業務に専念できるなど、拘束される時間および身体的負担の軽減につながる可能性を示した。また移動中は、ロボットによる声かけ機能により高齢者に安心感を与えることで好意的な評価を得ており、今後、オリックス・リビングにおける介護現場への実導入を見据えて開発を続ける。ATRの研究成果の事業化などを担うATR-Promotionsでは、導入支援のコンサルテーションや運用モデルの提供などを含む移動支援サービスとして展開する方向で検討するとしている。
 
 
動画1 居室(寝室)から公共スペース、さらには浴室への移動支援の例。介護スタッフがタブレット端末を用いて車椅子ロボットを操作できる。高齢者が寝室を出た後、介護スタッフが寝室の整理を行っている。
 
 2013年8月に開設した、介護施設を模したオリックス・リビング イノベーションセンター(大阪うめきた)で実施した。デモでは、介護スタッフがタブレット端末を操作して、高齢者を居室から公共スペース、さらには浴室へと車椅子ロボットで案内し(写真12)、その間に居室の整理など他業務に専念できる様子を披露した。また移動中は、例えば狭い通路に差しかかると、「ここはちょっと狭いですよね!」と車椅子ロボットから声かけを行うことで、高齢者に親しみや安心感を与えられることも示した。
 10名の要介護者と18名の健常高齢者、10名の介護スタッフが参加した実証実験では、車椅子ロボットであれば「(移動を)気兼ねなく頼みやすい」「ロボットがしゃべってくれると楽しい」など、利用者から好意的な意見があがり、介護施設における現実的な移動支援サービスになり得る可能性(つまり、それによる高齢者のQOLの向上につながる可能性)を得た。
 
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写真1(左):車椅子ロボットには計3台のレーザレンジファインダー(LRF)を設置(後方のLRFは利用していない)。LRFにより走行地図を生成し、走行経路上で自己位置推定をしながら半自律走行ができる(いわゆるSLAM)。写真2(右):タブレット端末の操作インターフェースは簡易なものとなっており、画面上のアイコンを操作するのみでロボットや移動場所を指示できる。
 
 今回、披露した移動支援サービスは、ユビキタスネットワークロボット(UNR)を構築するためのソフトウエア・プラットフォーム「UNR Platform(UNR-PF)」(写真3)上で構築した。
 UNRとは、ロボット(ビジブル型ロボット)とスマートフォンアプリ(バーチャル型)、環境センサ(アンコンシャス型)の3タイプのロボットが、ネットワークを介して連携してサービス提供を行うための基盤技術。UNR-PFの利用により、ロボットの開発(ロボットコンポーネント層)とサービスアプリケーション(サービスアプリケーション層)の開発を分離することができ、サービスアプリを開発するのみでプラットフォームに接続するロボットを用いたサービス提供が可能(写真3右)。また、サービスアプリの共有や再利用性の向上にもつながり、開発コストならびに期間の短縮にもつながる(UNR-PFの詳細はこちら)。さらに、UNR-PF層の「ユーザ台帳」に高齢者などを登録しておけば個別サービスを提供できる利点もあり、初期投資に制約のある介護施設への導入に馴染むとしている。
 
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写真3:UNR-PFのシステム構成(3層構造、左)と今回の移動サービスの構成(右)
 
 実施した実証実験は、第一歩として取り組んだものであり、アンケートとインタビューを通じた車椅子ロボットの受け入れ評価にとどまる。今後は、車椅子ロボットによる移動支援サービス、さらには、移動支援サービスとしての事業性の評価へと進展するものと想定され、例えば、前者では車椅子ロボットによる一連の移動支援により、介護スタッフの時間的拘束および身体的負担の軽減効果にかかる計測・評価や、それによる介護サービスの高効率化および高品質への寄与が、後者では、適用現場でのリスクアセスメントおよびシステムインテグレーションを含む導入コンサルテーションや運用モデルの提供による事業性などが検証されると見られる。
 
 車椅子ロボットにより高齢者の移動支援を委ねることについては、経営により判断が大きく分かれるところであり、実際、人による移動支援に比して高いサービス品質を望むのは難しいかもしれない。しかしながら、その利用により介護スタッフの時間的拘束および身体的負担の軽減が見込まれ、それによる従業員満足度の向上によるサービス品質の向上、特に、入浴介護や排泄介護など要所となるサブプロセスでの品質向上が期待され、導入する介護施設側にとっては経営の差別化につなげられる可能性がある。
 なお、今回の実証実験は、平成24年度補正予算「ICT超高齢化社会づくり推進事業」(総務省)の一環として実施した。
 
 
動画2 車椅子ロボットを呼び出して他の高齢者を浴室に案内することもできる。
 
 
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