その他ロボット関連

2013.04.12
東大出身ベンチャー・SCHAFT社に支援の輪、DARPA Robotics Challenge

  米国で開催される原発・災害向けロボットの競技会に挑戦する日本のベンチャー企業に、賛同者が集まり始めている。東京大学出身のロボット研究者らが立ち上げたSCHAFT(シャフト)は開発を加速させるべく、4月に初となる正社員2人を雇用。出資を希望する声も増え、増資に向けた交渉も進めている。米国勢が名を連ねる中で大会に参加する日本のチームに、働くヒューマノイドの夢が託された。

●DARPAが事業化に向け資金提供

 「いま参加しなくてはいけない」。SHAFTの鈴木稔人最高執行責任者(COO)は、米国防総省高等研究計画局(DARPA)による災害対応ロボットの競技会「DARPA Robotics Challenge(DRC)」への参加を決めた心境をこう振り返る。DRCは東京電力福島第一原子力発電所の事故を受けて企画され、2012年4月に計画が発表された。DARPAの資金援助を受けながら開発を進め、2014年12月に行われる最終競技で勝ち抜けば、事業化に向けた資金を得られる。

 ミッションは、車を運転して現場に移動する、障害物を動かす、など8つ。これらを1台のロボットで行わなければならない。ロボットの形態には制約はないが、東京大学の稲葉雅幸教授は「1台でこれらの動作をするにはヒューマノイドでなければ難しい」と指摘する。DRCがヒューマノイドロの競技会といわれるゆえんだ。

●投資会社も続々と後押し

 一方、稲葉研究室でヒューマノイドを研究していた中西雄飛氏と浦田順一氏は、技術は積み上がるのに、なかなか実用化につながらない状況を歯がゆく感じていた。DRCならヒューマノイドの有用性がわかりやすい。
 そこで、2人は同大を辞めて中西氏を最高経営責任者(CEO)に、浦田氏を最高技術責任者(CTO)に据え、2012年5月にSCHAFTを設立。同じ研究室出身の鈴木氏を加え、同社と研究室出身の有志や協力者を含めた「チームSCHAFT」としてDRCへの出場を決めた。

 災害現場で活躍するヒューマノイドに期待をかけるのは技術者だけではない。常石造船のグループ会社で研究開発型の投資会社・ツネイシパートナーズと、ベンチャー支援事業を手がけるTomyK Ltd.が、その技術内容や夢に賛同して資本参加。他にも資金を提供したいという申し出が着実に増えている。

●6月末の審査のクリアが当面の目標

schaft_0409.jpg 開発するロボットは人間の大人と同じくらいの身長で、既存の人型ロボの10倍程度の出力を瞬間的に発揮するモータドライブシステムや、循環水を使った冷却システム、蹴っても転倒しない2足歩行アルゴリズムなどを実装した(写真は試作機、SCHAFT社提供)。参加する7チームのうち2チームが落とされる6月末の審査をクリアすることが当面の目標だ。

 複雑な構造を有するがゆえ安定感やパワーが足りないとされ、かつ整地歩行を前提に開発がなされることが多かったヒューマノイドは災害現場での運用に向かないとされてきた。しかし、鈴木COOは「DRCの開発が進むほど、実用化につながる道が見えてくる」と自信をみせる。DRCの条件はユーザーインターフェース(UI)や操作方法など、実際の現場に出すことを想定せざるを得ない内容だという。

 シャフトSCHAFTの真の目的は、災害対応・極限作業ロボットの事業化だ。DRC終了よりもなるべく早い段階で、事業ラインを立ち上げる計画だ。人間が立ち入ることが困難な、いわゆる3Kの現場への導入を狙う。
 すでにマーケティングや適用場所の調査、必要な性能の検討などを始めた。市場は立ち上がっていないが、「DRCでヒューマノイドがきちんと動く所を見てもらえれば、人の意識が変わるのでは」と期待を寄せる。
 国内ではメーカーによる原発・災害対応ロボットの開発も進む。できたロボットをどう活用していくのか、受け入れ態勢を整備しなければいけない時期はもう間近だ。

(取材&テキスト作成:日刊工業新聞社 政年佐貴惠)

●「DARPA seeks robot enthusiasts (and you) to face off for $2M prize!


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