公共/フロンティア

2013.03.01
いまこそ国全体としての視点と体制を、災害対応ロボの配備に向け

※本記事は、「日刊工業新聞」(2013年3月1日付)掲載のシリーズ「つくろう!日本・東日本大震災2年/災害対応ロボ活用」を転載しました。一部見出しを変更しています。

 東日本大震災をきっかけに始まった災害対応ロボットの研究成果が、続々と出始めてきた。今後の焦点は開発成果をどう活用し、維持していくか。東京電力・福島第一原子力発電所の事故を受けて災害対応ロボットが必要との機運は高まったが、一方で、特殊な条件のためにビジネスに結びつけるのが難しいという声もある。災害対応ロボットは普及するのか?

業界を超えた動きにならない災害対応ロボの配備

 2月20日、千葉県習志野市の千葉工業大学で、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の「災害対応無人化システム研究開発プロジェクト」(2011年度第3次補正予算、予算額9億9,600万円)の成果が披露された(動画12)。おもに福島第一原発の廃止作業での利用を想定して、2012年2月頃から事業を開始。日立製作所と東芝、三菱重工業の原子力プラント3社に加え、サイバーダインと千葉工業大学、同大学発のベンチャー・移動ロボット研究所が、放射線量分布を測定できるガンマカメラや、8mでの高所作業ができる遠隔操作作業ロボットなどを公開した。6月以降の投入を目指している。

動画1 三菱重工が開発した、高所作業が行える遠隔操作作業ロボ。小型探査ロボット「Sakura(櫻)」が別角度から捉えたカメラ画像を頼りに2階にあるバルブを開いている。

動画2 東芝が開発した、水陸両用移動ロボットの地上での移動。複数の魚眼カメラで得た俯瞰画像と、レーザレンジファインダーで得た障害物の検出データを重畳して1つの画面として提示するため、障害物と接触するリスクが低い。

 開発と利用にめどがつき始めた災害対応ロボットだが、メーカー側は「要素技術は応用できても、災害用ロボットそのものがビジネスになるかどうかは厳しい」(開発担当者)と見る向きが多い。買い手が少ないというのがおもな理由だ。電気事業者連合はロボットなどを整備し、事故時に対応する体制を2015年度中に整えると決めた(関連記事はこちら)。しかし、この動きは業界を超えて広がっていなうえ、福島原発を抱える東京電力と他の電気事業者の間でも温度差があるという。

 国主導でロボット整備の計画が進んでいない現状について、東京大学の淺間一教授は「国としての戦略が欠けている」と指摘する。経済産業省や国土交通省、総務省、防衛省など管轄が複数にまたがっており、議論しにくいのが要因の1つ。淺間教授は「様々な制約を取り払って新しいことを進める、国全体の視点を持った体制や組織が必要だ」と訴える。

技術は使ってこそ、継続的な体制づくりを

 2月27日に開かれた災害対応ロボットのワークショップ(関連記事はこちら)では、日本原子力研究開発機構(JAEA)福島技術本部復旧技術部の川妻伸二技術主席が「模擬設備を使った試験や実動訓練など、小規模でも操作・整備・改良を一体化した実運用が必須」との見解を示した。その狙いの1つは人材育成。今回の震災では過去に開発したロボットをいざ使おうとしたときに、開発経験を持つ技術者が現場から去ってしまっていたという苦い反省がある。淺間教授も「技術は生もの。使わないと腐ってしまう」と、継続的な体制が必要と見る。

 せっかく開発した災害対応ロボットが生かされないとなると、1999年のJCO臨界事故を受けて開発されたものの、日の目を見ることのなかったロボットの二の舞いとなる。培った技術やロボットをムダにしない戦略と体制づくりが急務だ。


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《特 集》
国民の理解と選択を支えに災害対応ロボットは強くなる
プロローグ:ロボット活用の防災・減災システムへの理解を得よう
PART 1 ロボット大国と原発安全神話の真偽
―原発災害対応ロボの必要性を報じてきたか?ほか

PART 2 ロボット研究者・技術者は国民との対話を
―災害対応ロボットの継続的な研究開発に向け

特別編 リスクマネジメント社会の創出に向け
―安全リテラシーを支えに持続的な社会の発展を




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