ロボナブル コラム

2013.03.21
わが国の認証ビジネスの強化を見据えた体制づくりを!

※本記事は、2013年3月4日配信のメールマガジン「ロボナブルNEWS特別版」の掲載コラムを加筆してまとめました。

  2013年2月27日に、サイバーダイン社のロボットスーツ「HAL福祉用」が、パーソナルケア・ロボットの国際安全規格「ISO/DIS 13482」(ドラフト版)の安全認証を取得しました(関連記事)。同規格での第三者認証は世界初とのことで、日本品質保証機構(JQA)が「生活支援ロボット実用化プロジェクト」(2009~13年度実施、NEDO)の研究成果を生かして安全認証を行いました。第三者認証は通常、国際規格(IS)にもとづいて実施されるものであり、また、認証は数年ごとに見直しがなされることを踏まえると、次回の更新時には正式なISでの認証に格上げされると見込まれます。

  今回のJQAによる安全認証は、いわゆる「適合性評価」と呼ばれるものであり、技術基準やJISなどで規定された要求事項を満たしているか否かを、客観的事実にもとづいて実証する活動を指します。これと対となるのが「性能・安全性評価」であり、規格が未整備な分野でも性能や安全性に踏み込んだコンサルテーションを伴う認証活動を指します。独TUV SUDなどがその代表であり、こうした認証活動は、認証機関としてのブランド力や信頼の向上につながり、さらには新規分野の認証が行える(任せられる)といった先行者利益にもつながっています。

 生活支援ロボットプロジェクトでは、立ち上げた当初、経済産業省 産業技術環境局 認証課などの意向を踏まえ、わが国の認証ビジネスの強化を目標の1つに掲げていました。そして、いずれはわが国の認証機関に海外の認証機関と互していく力量を、すなわち「性能・安全性評価」も行える力量を身に付けてもらう契機とするはずでした。

 現在、同プロジェクトでは、安全性試験の研究を産業技術総合研究所(AIST)などが、安全性試験を日本自動車研究所(JARI)が、安全認証のコンサルテーションを日本認証(JC)が、そして、安全認証をJQAがそれぞれ担うという絵が描かれており、プロジェクト終了後は、各企業および機関がそれぞれで事業展開する計画になっています()。それぞれの強みを生かした事業計画ではあります。ですが、近い将来、JQAに「性能・安全性評価」の実施を期すためには、TUVがフラウンフォーファー研究機構などをバックに展開しているのと同様、強力な研究機関との連携による事業および体制の強化が必須であるにもかかわらず、こうした展開がまったく見られません。いまだにわが国は、小さな認証機関がそれぞれに小さなパイの認証事業を取り合っている状況が続いています。

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 生活支援ロボット安全検証センターの体制図。このような複合的な機能を備える背景には、わが国の認証ビジネスの強化に向けた仮説を検証する役割も担うからでもある

 今回のJQAによる安全認証は、生活支援ロボットの普及に向けた第一歩として評価されるべきですが、やはり最終ゴールは、わが国の認証機関の強化にあります。そして、そのための体制づくりが急がれるべきであり、まずは経産省には、国としてわが国の認証機関のあり方を提示されることを強く求めたく、今月14日に公募が終了した「グローバル認証基盤整備事業」(2012年度第三次補正予算、産業技術環境局 基準認証政策課)にでは、「戦略的な認証ビジネスの国際化戦略に関する調査」(2010年3月公開)以上に踏み込んだ内容が示されることを強く望みます。
 同プロジェクトの担当者によると、担当官の異動もあってか、こうした検討への熱意が冷めてしまっているといった後ろ向きな話が聞かれますが、移動に伴い、類似の施策が取り組まれたり熱意に差異が生じたりするとった類の話はナシにしてもらいたいです。
(ロボナブル編集部)


【関連記事】
サイバーダイン、ISO/DIS 13482の安全認証を取得、JQAが性能・安全性評価 (2013/02/28)
《特 集》
生活支援ロボット安全検証センター始動!設立の背景と課題を探る
PART 2 わが国認証ビジネスのモデルケースを担う
― 資金および人材確保で支援が必要


【過去のコラム】
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