公共/フロンティア

2013.02.22
三菱重工、高さ8mまでの高所作業が行える遠隔操作作業ロボ公開

 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は20日、「災害対応無人化システム研究開発プロジェクト」(2011年度第3次補正予算、予算額9億9,600万円)の成果報告会を開催。その中で、三菱重工業は高所作業が行える遠隔操作作業ロボット「MHI-Super Giraffe」を公開した。4輪駆動・4輪操舵方式で駆動し、人が近づけない過酷環境に移動することが可能。8mの高所に質量150kgを荷揚げできる5段の伸縮梯子〔5段テレスコピック梯子(はしご)構造〕を搭載しており、先端部に付加した7軸構成のロボットアームで各種作業が行える。千葉工業大学発のベンチャー・移動ロボット研究所が開発した小型探査ロボット「Sakura(櫻)」(詳細はこちら)のカメラ画像を頼りに、高所のバルブを開閉できる様子を披露した(動画1写真、そのほかの動画は文末参照)。6月頃に東京電力・福島第一原子力発電所に投入する計画。

動画1 Sakuraが別角度から捉えたカメラ画像を頼りに2階にあるバルブを開いている

 ロボットアームの端部に搭載するエンドエフェクタを交換することで、バルブの開閉や溶接、穴開け、搬送などの高所作業が可能。公開したバルブ操作ツールは、手動バルブハンドルを回転させる爪と回転反力受けから構成され、反力受けに対して爪が回転することでバルブを開く (三菱重工による公開動画)。

  エンドエフェクタの交換装置には、ビー・エル・オートテックの「クイックチェンジ」を採用しており、これにより機械的な接続に加え、電気的な接続も可能。電源ラインには制御信号を従量したPLC(Power Line Communication)を採用しており、制御通信と電源供給を2本の線で行っている。ツール側(ツールプレート)のクイックチェンジには「QCX-S04 T6113」の型番が表記されており、BLオートテックの製品カタログに記されていないことからすると特注品と想像されるが、同様のツールプレートを使用したエンドエフェクタが提供されれば共通して利用できるという。
 三菱重工が開発した搬送ロボット「MHI MARS-i」をツールラックとして使用することで、エンドエフェクタの交換も遠隔操作で行うことを計画している(動画2の冒頭で奥にあるロボット)。

mhi_fig1_0222.jpgmhi_fig2_0222.jpg

写真 荷揚げ機構によりロボットアームを伸ばして高所のバルブの開閉作業に当たっている(左)。バルブ操作ツールの爪を回転させてバルブを開いている(右)

 また、高所作業を行う際の転倒防止として、おもに2つの方策を採用している。1つは、ロボットの重心位置の表示。ロボットアームや荷揚げ機構など各アクチュエータの移動量から重心位置を算出し、転倒防止のために展開したアウトリガーで支持したエリアから外れた場合は警告表示を行う。2つ目は、アウトリガーの先端部に設置した荷重センサによる監視。一定の荷重を下回った場合は各アクチュエータを停止し、転倒しない方向のみを動作可能としている。

 ロボットの外形寸法は、長さ2,350×幅800×高さ2,000mm、質量は4t。移動時の最高速度は6km/hで、ロボットアームの可搬質量は最大20kg。4輪駆動4輪操舵方式のため信地旋回(その場旋回)も可能。電源はリチウムイオン2次電池で、稼働時間は5時間。三菱自動車工業の電気自動車(EV)用バッテリー技術をロボット向けにカスタマイズした。

 原子炉建屋内の上層階で作業を行う場合は、東芝が開発中の遠隔操作荷揚台車(通称「スーパーリフター」、はデジタルモックアップ)により上層階に送り込むことを計画している。スーパーリフターは、外形寸法は長さ約9,000×幅約4,000×高さ約4,000mmあり、積載重量は最大約4t。中央のリフトアップ機構によりプラットフォームを垂直昇降させることで、30mの高さまで荷揚作業が行える(動画5)。昇降時は、複数のカメラ映像を合成して俯瞰画像を生成することで、周囲の状況を確認しながら作業ができる。
 現在も開発を続けており、他のシステムと同様、6月には福島原発に投入する計画だが、「世界初ともいえる巨大システムであり、慎重な検証を要する」(プロジェクトリーダーを務めた東京大学の淺間一教授)ことかあ、投入時期はずれ込む見込み。

toshiba_0222.PNG

 スーパーリフターの完成予想図。アウトリガーを展開して、中央のプラットフォームを降下させている(提供:NEDO、東芝)

動画2 MHI-Super Giraffeの移動の様子(信地旋回など)

動画3 バルブの開閉作業が終了後、5段テレスコピック梯子構造の荷揚げ機構を収納している様子

動画4 スーパーリフターの動作イメージ

●「遠隔操作作業ロボット MHI-Super Giraffe(三菱重工業)


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