RT(Robot Technology)要素応用

2012.11.09
ATR、カメラ画像でドライバーの認知状態を推定し、提示する手法を開発

 国際電気通信基礎技術研究所(ATR)知能ロボティクス研究所は、11月8日、9日開催の「オープンハウス2012」で、運転技能自動評価システム「Objet(オブジェ)」の後継システムとして、複数カメラによりドライバーの「認知状態」を検出する手法を公開した(写真)。カメラ画像からドライバーの顔の向きと視線方向を認識し、ペダル操作などを組み合わせることで周囲への気配りや安全運転への意識などの認知状態を判定する。ドライバーの認知状態を提示することで、周囲のドライバーや歩行者への注意喚起や危険回避につなげてもらうことを研究目的としており、今後、このような“見える化”による交通事故の低減効果を検証する。

 Objetは、交差点など事故の多発地点の通行時など、要注意地所におけるドライバーの行動を自動評価するシステム。3軸加速度および角速度センサを内蔵するセンサモジュールを頭部とつま先に装着して、顔の向きとアクセルおよびブレーキ操作を計測。GPSによる自動車の位置情報を組み合わせることで、要注意地所における確認の深さと時間、タイミングを検出し、十分な事故の予防動作を行っているかを判定することができる。「A」~「E」の5段階で評価する。
  既存システムでは、計測・判定した後に安全アドバイスを行っていたが、ワイヤレスセンサの利用により、危険運転をすればリアルタイムに行えるシステムへと改善を図っている。

atr_1109.jpg 公開した複数カメラによる認知状態の検出手法は、その状態を周囲のドライバーや歩行者に提示することで注意喚起や危険回避につなげる研究の一環として開発した。
 ドライバーを捉えた複数のカメラ画像を、顔の向きの計測用と視線計測用に分離して、それぞれ検出する(写真)。視線計測の手法にはATRの既存技術を採用。カメラ画像から3次元眼球と虹彩モデルを生成し、元のカメラ画像と照合して眼球中心と虹彩を結ぶ視線方向を推定する。視線推定における誤差角度は約5度。モデルの生成は、瞳孔(どうこう)の中心を捉えて行う。
 また、Objetではブレーキなどのペダル操作はセンサモジュールで計測していたが、公開した手法では、ECUから直接データを得る方法に変更している。

 研究では、ドライバーの認知状態を定量的に検出する手法と、その“見える化”による効果を検証しており、ルーフ上に設置した表示器で「眠気」「イライラ」「疲労」の3つの状態を視覚的に提示したところ、注意して横断歩道を歩行するなど歩行者の行動に変化が見られたことを確認している。認知状態の効果的な提示により、周囲のドライバーや歩行者を含む協調的な危険回避につながると見ている。
 私見となるが、こうしたシステムは工事現場における安全性確保にも有効であり、すでになされつつある周囲への建設機械の状態の提示に、今回の手法を組み合わせることで、より安全性を高められる。また、工事現場など私有地での運用実績を積み重ねたうえで公共空間に設置する方がスムーズな社会実装が見込まれると想像される。


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