サービスロボット

2012.10.01
アイシン、10km/h走行の電動車椅子の実現に向け安全機能を開発

 アイシン精機の安藤充宏氏は、9月17~20日開催の「日本ロボット学会 第30回記念学術講演会」で、「生活支援ロボット実用化プロジェクト」(2009~13年度、NEDO)にて取り組んでいる、安全機能を搭載した電動車椅子(搭乗型移動ロボット)の開発を紹介。最高速度10km/hに拡張することを目標としており、搭載した2種類の3次元距離センサの情報をもとにリスクを算出し、その値にもとづいて速度制限を行う方法を検討している。機能確認のための実機検証を通じて、リスクの算出が適切に行えたことを明かした。今後、開発した安全方策を実証モデルに実装し、「生活支援ロボット安全検証センター」での検証を経た後、2013年度にはつくば市の「モビリティロボット実験特区」で実証実験を行う。

aisin_1001.PNG アイシン精機などの開発グループでは、同プロジェクトで開発された「リスクアセスメント雛形シート」によるリスク評価にもとづき、安全防護(3ステップメソッドにおける2ステップ)による対策として「速度制限」と「搭乗者および周囲への注意喚起」に関する機能の実装を検討している。そして、これを担う機能として、センサ部とリスク計算ユニットからなる「安全機能ブロック」を構築し、電動車椅子に搭載している(写真はベースとなるアイシン精機の電動車椅子「TAO LIGHT(タオライト)Ⅱ-m」)。

 センサには日本信号の3次元レーザ測域センサ2台(詳細はこちら)と、オプテックスの3次元距離画像センサ(詳細はこちら)を使用。パルスレーザによるTOF(Time of Flight、光飛行時間測距方式)方式の前者は、ロボット周囲における中朝距離の障害物の検出に、約2万点の距離計測が可能な後者は、周囲の地面の凹凸や障害物の検出にそれぞれ用いている。これらで検出した周囲の情報と、車椅子の現在の移動方向および速度から、障害物との衝突などのリスクを算出する。
 これらのセンサとリスク計算ユニット間とはEthernetで、リスク計算ユニットと駆動ユニット、ジョイスティックの操作ユニットはCANで通信している。

 リスクの算出は、具体的には次にように行っている。2種類のセンサから得た3次元距離情報を統合し、高さ方向に重ね合わせることで2次元情報に圧縮。車椅子を中心とした極座標系の2次元グリッドマップを生成する。これをもとに車椅子と障害物との相対距離および速度、障害物の密集度などをもとにリスクを算出し、その値にもとづいて速度制限を行う。このときジョイスティックの操作量から車椅子の進行方向を予測しており、障害物がない方向に対して速度制限は緩やかに、障害物がある方向に対して厳しく行うようにしている。
 開発グループでは、操縦者が制御することを基本としており、搭乗者が回避運動を余裕をもって行えることを目標に、このようなアルゴリズムを実装している。したがって、搭乗者が回避操作をした場合は速度制御を解除し、障害物があるエリアを抜けて搭乗者が加速を始めようすると、操作意図に沿って再度加速するようにしている。

 屋内環境で実施した、機能確認のための実機検証では、各センサ情報が適切に統合され、それにもとづいて、障害物などがある車椅子周辺のリスクが高い領域が2次元グリッドマップとして提示できたことを確認した。同プロジェクト最終年となる2013年度には、モビリティロボット実験特区にて実環境での実証実験を行うという。

 開発グループでは、3次元距離センサを安全センサとして使用しているが、IEC 61496-1~4で規定されている電気的検知的保護設備において安全センサに含まれていない。開発するオプテックスなどとともに、同規格に対し安全センサとして提案することを検討している。
 また、本稿で紹介した速度制限などの制御には「ITRON」系のリアルタイムOSを実装することを計画している。開発に参画するヴィッツがμITRON4.0仕様準拠のオープンソースのリアルタイムカーネル「TOPPERS(トッパーズ)」の認証取得に向け開発活動を展開していることから、TOPPERSを採用すると想像される。

●「生活支援ロボット安全検証センター


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