RT(Robot Technology)要素

2012.01.20
神戸大の横小路教授、折り紙ロボ披露、作業のコツを抽出して教示に反映

 神戸大学の複雑系機械工学研究室の横小路泰義教授は、人間の手先の器用さを探求する一環として開発している「折り紙ロボット」(写真)を公開。ダイレクトティーチング(直接教示)を通じて抽出した人間の作業スキルを反映することで、折り紙が作成できる様子を披露した。ロボットの指先には力センサを配置しており、教示データと力センサの計測データからコツに相当する折りの動きを抽出し、ロボットの動作に反映する。これにより折りの成功率を向上することができる。開発した動作生成手法をロボットの教示に応用することで、柔軟物をはじめとする難供給部品の扱いや高度な組立作業が可能になると見込まれる。

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写真 公開した折り紙ロボット。右側が操作指、左側が固定指になる

 折り紙ロボットは、人間が行う折り紙の動作を再現する機構となっており、折り紙を操作する2本の操作指と、折り紙を固定する2本の固定指から構成される。ともに3軸構成となっており、操作指には3軸力センサを1つずつ配置している。
 折り紙には「谷折り」や「袋折り」など複数の折り方が存在するが、いずれも人間は4本の指先を用いて行っており、この動きをそのまま機構に反映することで簡素なシステム構成とした。また、人間と同じシーケンスで動作するため直接教示しやすいという利点もある。

  横小路教授の研究室では、以前から折り紙ロボットを例に、直接教示を通じてコツに相当する動作を生成する研究に取り組んでいる。教示動作を隠れマルコフモデル(=確率・統計的モデルの1つ)を用いて確率モデルとして表現し、ここから作業スキルとして通常軌道と、隠れマルコフモデルの統計的性質からセンサフィードバック則を生成し、補正をかける手法を提案している[1]

 具体的には、まず、人間がロボットの指先(操作指および固定指)を介して折り紙を折り、その動きを20回にわたって教示する。その際、力センサで折り紙の反力を計測しながら教示動作を記憶する。次に、教示動作を隠れマルコフモデルを用いて確率モデルとして表現し、連続的な人間の教示動作を区切って記憶する。人間が教示する動作にはバラツキがあることから、このモデルを用いている(図1)。
 人間が折り紙をたわませたり、持ち上げたり、折ったりする際、折り紙が微妙に傾いたときは位置を調整することで作業を続けている。このような動作は反力の方向から推定することができ、記憶した教示動作から位置のばらつきが大きく、力との関係性が大きいときは、このような折り紙の挙動(折り紙の反力)に応じて位置調整していると判定される。したがって、動作速度がゆらいでおり、かつ力の変化との関係性が大きいところをコツ(位置調整)として抽出し、フィードバックを行うことで折りのバラツキを低減している(図2)。計測した反力をもとに速度に補正をかけており(図3)、折りの成功率の向上につなげている(図4)。

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直接教示のおもな手順(図1、左)と折り動作のコツの抽出(図2、右)

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センサフィードバックをかけている区間(図3、左)と、それによる効果(図4、右)

  以前の手法では、モデル化に用いる隠れマルコフモデルは、状態遷移が一定方向に進む「Left-to-Righit型」としていた。ただし折り紙に限らず、紙には繊維方向があり、置き方によっては折り紙の挙動が大きく変化する。ゆえに、折り紙の状態に応じて状態遷移を分岐し、動作を切り換える必要がある。このような分岐させる手法の開発に取り組んでおり、昨年12月開催の「計測自動制御学会 第12回 システムインテグレーション部門講演会(SI 2011)」で紹介し、その有効性に触れている[2]
 また、これまではオタマジャクシが折れることを紹介しているが、より高度な折りとなるカエルにトライしている。こちらについてもSI 2011でリンク模型を用いた実験と設計を紹介しており今後、実機を製作し、遠隔操作によりカエルを作成することを予定している[3]

 公開した動作生成手法は、対象物や作業内容により必要とするセンサの種類および配置する位置が異なるという課題を抱えるが、「難供給部品の取り扱いや組立作業などコツが要求される作業全般に適用できる」(横小路教授)としており、教示に応用することで、ロボットの巧緻化につながると期待される。
 また、公開した折り紙ロボットは、あくまで手先の器用さを探求する一環として開発したものであり、今後、人間の手の骨格筋のモデル化や、モーションキャプチャによる動作解析などを通じて探求を進めることで「得られたエッセンスをロボットハンドの設計などに役立てていきたい」(同)としている。

  なお、横小路教授をはじめとする神戸大学と京都大学、三菱電機の研究グループは2008年に、SI にて「循環産業創成を目指した自律型セル生産ロボットシステム」というオーガナイズドセッションを企画し、これまでに「次世代ロボット知能化技術開発プロジェクト」(2007~2011年度、NEDO)の成果を発表している。同プロジェクトでは知能化コンポーネント(ソフトウエア・コンポーネント)の再利用性に重点を置いていたが、同セッションでは、将来的には生産システムの再利用性を議論することを目指している。ここでいう再利用性とは、製品を軸とした循環に加え、生産システムの循環、さらには生産情報や関連する履歴情報の循環であり、これにより迅速な生産システムの構築や変更、解体作業の効率化、設計や生産へのフィードバックが可能になると見ている。

【参考文献】
[1]木原康之,横小路泰義,“人間の直接教示動作に基づく複数センサによるセンサフィードバック則生成法”,第10回システムインテグレーション部門講演会,2009.
[2]木原康之,横小路泰義,“直接教示によるモード分岐を含む動作に対する作業スキルの生成手法”,第12回システムインテグレーション部門講演会,2011.
[3]大島裕貴,木原康之,横小路泰義,“直接教示の容易性と高難易度の折り紙作品の実現を考慮したロボットハンドの設計”,第12回システムインテグレーション部門講演会,2011.


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