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現在、新たな国プロとして「災害対応無人化システム研究開発プロジェクト」が計画されており、来週18日(水)まで公募がなされています。福島原発事故から廃炉までの対応を視野に入れており、ある程度の緊急性が求められることから、2012年度末までの単年度事業となっています。致し方ないとはいえ、短い開発期間に対し疑問を呈する声が聞かれます。
同プロジェクトが必ずしも該当するわけではないですが、わが国は長期的かつ一貫した研究開発体制を敷くことができなかった結果、基盤技術(プラットフォーム技術)において欧米に遅れを取りつつあると指摘されています〔例えば「ロボット学の将来 -新しい日本の発展に向けた革新と知の統合-」(日本学術会議 機械工学委員会 ロボット学分科会編)〕。特に2000年代以降は、わが国が貧乏になる(財政赤字が増大する)に従い、実用化という結果を求める傾向が強くなっているように感じられます。
例えば、筆者が事後評価に関わった「サービスロボット市場創出支援事業」(2006~2007年度)では、プロジェクトが開始される直前(2006年3月上旬)に、当時の担当官にインタビューした際、次のようなコメントがなされたことを思い出されます。
「財務省の理解を得にくく、関連予算の確保が非常に難しい・・・」
特に1983~1990年実施の「極限作業ロボット」に対し、当時、約200億円を投じておきながら実用化に至らなかったことを詰問されたそうです(*1)。この頃からロボット関連の予算取りは非常に難しくなっており、ゆえに、短期的な結果を求める傾向に拍車がかかったのでしょう(また、実用化という結果を残さない限りは、予算の確保がますます難しくなるだろうという考えもあると思われます)。本来、民間企業が自らのリソースで実施すればよいような研究開発テーマが散見されるのは、そのためかもしれません。
*1:そもそも極限作業ロボットは、実用化に道筋をつけるための各種要素技術の開発に主眼を置いており、実用化に至らなかったことを批判するのは的をえていない。ただ、現在の財政状況では取り組むのは相当困難なプロジェクトであり、当時だったから行えたといえる。
最近の国プロは「ロボット・新機械イノベーションプログラム」の中できちんと取り組まれており、また、過去の国プロとの連続性を保つように努力がなされています。しかしながら、一連のRTミドルウエア関連プロジェクトや安全性確保(*2)に向けた取り組みを除き、研究成果および開発資産が有機的にリンクしているとは言い難いです。結果、上述の日本学術会議が指摘したように、「国プロに一貫性がない」というロボット研究者および技術者の不満につながっているのでしょう。
もちろん、実用化に重きを置いたプロジェクトを否定しませんし、絶対に必要です。ただ、海外でのロボット開発および普及に対する強化策に対抗し、わが国のロボット研究ならびにロボット産業の競争力を維持し続けるためには、少なくとも2020年以降の将来を見据え、様々な応用分野に波及することができ、かつ世界に発信できるプラットフォーム技術〔ロボットにおける応用研究のフェーズでは、具体的な顧客や利用環境などを想定したシステムインテグレーションを伴うため、基礎研究レベルを想定しています。参考はこちら。また、ここでは要素技術も含めて論じています〕の育成に力を注ぐべきでしょう。また本来、国プロ(NEDOプロなど)は民間では開発が困難な先進的かつ挑戦的な研究開発に取り組むべきものであり、それが国(NEDO)が関与する理由づけになっていることを踏まえると、なおさら、そう思われます。
*2:ただ、「次世代ロボット実用化プロジェクト」(2004~2005年度)から「サービスロボット市場創出支援事業」、「人間支援型ロボットロボット実用化プロジェクト」(2005~2007年度)まで、安全性確保に向けた取り組みで中核を担ったのは安全工学研究所であり、これらで実施されたリスクアセスメント(RA)およびRAシート、得られた知見などは、現在の「生活支援ロボット実用化プロジェクト」(2009~2013年度)に必ずしも継承されていない。機能安全をターゲットにする生活支援ロボ実用化プロに対し、これら3つのプロジェクトでは本質安全を念頭に取り組んでいたという違いのみに原因を求めるのは難しいだろう。
幅広い応用展開が見込まれるプラットフォーム技術の一例として、1998~2003年度に取り組まれた「人間協調・共存型ロボットシステム研究開発」や2002~2007年実施の「実環境で働く人間型ロボット基盤技術の研究開発」に見られるヒューマノイドロボット(歩行技術など)(*3)の研究開発が思い出されますが、これに相当するような研究課題をあげることが必要でしょう。
*3:現在のヒューマノイドは事前の軌道計画にもとづき、それを巧みに修正することで「ある程度賢そうに」振る舞うことはできるが、真に有用なツールとなり得るためには、「ある程度の運動能力」を備えること、つまり「歩く技能」を実装することが求められる。したがって、これらのプロジェクトで掲げたビジョンは、現在の軌道計画法の延長線上に存在するとは考えにくい。もちろん、これらのプロジェクトで創出された要素技術は、現在の研究開発に役立っており、評価されるべきである。また、ヒューマノイドの研究開発も継続されるべきだが、優先的に支援すべきプラットフォーム技術になり得るかどうかは別の問題と考える。
推進すべき研究課題については、これからきちんと議論すべき内容ですので、いまはまだ筆者の考えは控えさせてもらいますが、その答えは、われわれが経験(研究成果)を着実に積み重ねてきたというファクトの中にあると考えます。つまり、過去から現在にかけて積み重ねてきた経験(研究成果)の中にこそ、わが国のロボット研究ならびにロボット産業の未来を担う価値が必ず存在するということです。海外のキャッチアップが激しいとはいえ、わが国が積み重ねてきた経験(研究資産)は世界でもトップクラスにあるのは確かであり、わが国の経験(研究成果)という価値を捉え直すことが必要と考えます。
その時々の社会情勢や研究開発のトレンドなどの影響を受けたり、すぐには役に立たない(時期少々、未成熟)と判定されたり、価値(論理)を正しく認められなかったり、あるいは、現実と可能性との違いを見極められなかったり、ロボット技術が解決すべき課題であるか否かを的確に判断できなかったりして、単に蓋をしてしまった基礎技術や研究成果があるでしょう。しかし、顕在化しつつある社会的課題や、十数年先の社会構造や産業構造を見据えて見直してみると、重要性を増しつつある研究開発テーマ(*4)が存在すると筆者は捉えています。
*4:例えば、災害対応ロボットの研究開発も非常に重要ですが、このような応用分野に向けた取り組みでは、基礎研究から、開発成果の運用および活用体制(組織づくり)、人材育成までを有機的に連携した仕組みの構築が求められ、ここでいうプラットフォーム技術を育成する仕組みとは異なると考えます。
先に少しだけ触れましたが、米国では製造業の再活性化に向け、全米科学財団(NSF)と米航空宇宙局(NASA)、国立衛生研究所(NIH)、農務省が共同で、次世代ロボットの研究開発に対し7,000万ドルを助成するとしています(詳細はこちら)。EUでは「FP7(Framework Program7、第7次研究開発枠組計画)」の中で「Congnitive Systems and Robotics」をICT分野のチャレンジ領域の1つに選定し、知能化技術に関する研究プロジェクトを、年間約2億ユーロを投資して推進しています。また、韓国では2008年に施行された「知能型ロボット及び普及促進法案(通称「ロボット特別法案)」にもとづき、中国は「国家中長期科学技術発展規画綱要」(2006~2020年)に則して、それぞれロボット開発・普及に向け大規模なリソースを投入しています。
これらと比較すると、わが国のロボットの研究開発に対する予算配分は少なく、ボヤきたいところではございますが、わが国の財政状況を鑑みると、潤沢なリソースでもって取り組むのは難しいでしょう。だからこそ、育成すべきプラットフォーム技術をきちんと見定めて効率的に、長期的かつ組織的に進めていくべきです。新たな年を迎えたいま、まずは、わが国が積み重ねてきた経験(研究資産)という価値を見直してみることから始めるべきと考えます。
(ロボナブル編集部)
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