RT(Robot Technology)要素

2012.01.05
立命館大の金岡氏、大出力システムに応用可能なバイラテラル制御を披露

 マンマシンシナジーエフェクタズの代表取締役を務める立命館大学の金岡克弥チェアプロフェッサーは、近く販売を予定する教育・研究向けロボットキット「MMSEUnits(Man-Machine Synergy Effecter:MMSE、人間機械相乗効果器)」の応用例として、「力順送型バイラテラル制御」を実装したマスタ・スレーブシステムを公開した(動画写真)。作業量を計測するための力センサを配置しなくても、スレーブ側のダイナミクスを体感しながら操作できるのが特徴。また、力センサが不要なためスレーブのハードウエア構成をロバストにできる。建設現場や危険地所などでの利用が期待されるパワー増幅ロボットシステムへの応用が見込まれる。

 バイラテラル制御とは、スレーブ側が受けた力を操作者(マスター)に力提示したり、操作者がマスタに入力した力と同様の力で、スレーブが環境側に力を及ぼしたりできる制御。おもに「対称型(*1)」「力逆送型」「力帰還型(*2)」の3タイプがあり、力逆送型ではスレーブは位置サーボで構成され、それに配置した力センサで計測した反力をマスタに伝える。

*1:マスタとスレーブ双方の変位誤差から、これを修正する方向に駆動力を与える。力センサは不要で、かつ比較的安定な系を構成できるが、システムの慣性力や摩擦力の影響を受けるため操作感が重い。
*2:マスタとスレーブそれぞれに力センサを配置して力サーボ系を構成する。力逆送型の欠点を補う構成となっており、マスタの操作感が軽く、かつスレーブ側の反力の伝達もよい。

 金岡チェアプロフェッサーが提案する「力順送型」では、マスタに力センサを配置して、その入力情報をスレーブ側に投射する構成とし、マスタはスレーブとの変位誤差を修正するように駆動する(「変位誤差サーボ」)ことでスレーブ側のダイナミクスを伝える。力逆送型と逆の構成となることから、力順送型と名付けた。
 劣悪な環境にさらされる可能性のあるスレーブに力センサを配置しないため、スレーブをロバストなハードウエア構成にすることができる。後述する「MMSE」のような大出力アクチュエータの搭載に耐える構成にできる。また、マスタ側のダイナミクスを可能な限り消しつつスレーブのダイナミクスを体感できる構成となっているため、高い操作性が期待される。

 公開したシステムは、福井大学での集中講義に向け急遽開発したもので、マスタには同大学の川井研究室が開発したミニロボを、スレーブには3つのMMSEUnitsをそれぞれ使用。それぞれ3軸構成となっており、横方向の入力で第1軸を、前後方向の入力で第2軸を、手先部の入力で第3軸を操作することができる。また、第1軸と第3軸を500倍に、第2軸を1,000倍にパワー増幅して駆動している。
  マスタには力センサを配置していないため、厳密な意味での力順送型バイラテラル制御のシステム構成となっていない。力センサの代わりに、トルク制御しているモータの制御力を擬似的に入力情報として使用することで、バイラテラル制御を可能にしている。また、マスタのハードウエアのモータトルク上限とバックラッシにより高ゲイン(=関節の固さ)にできず、繊細な感覚を伝えるのは困難だが、ある程度の感覚を得られるとしている。

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写真 MMSEUnitsを用いて製作したマスタ・スレーブシステム(写真左)。マスタには川井研究室のミニロボを使用(写真右

 金岡チェアプロフェッサーは、「人間のみ、あるいは機械(ロボット)のみでは実現できない機能を、人間とロボットの相乗効果によって実現する効果器」の実現を目指しており、これをMMSEと表現している。MMSEでは操作者の身体スキルをパワー増幅したうえでパワー増幅ロボットシステムのダイナミクスに投射することを要求しており、それに合致する制御として力順送型バイラテラル制御を提案した。上述のような特徴により、危険地所での利用が期待されるパワー増幅ロボットシステムのほか、「災害対応無人化システム研究開発プロジェクト」にあげられている、過酷環境下での有人による重量物の搬送作業への適用が期待される。

 MMSEUnitsは、ロボット制御工学の研究や教育に向け開発したロボットキット。DCモータ(マクソンモータ製)を関節ユニットにまとめた構成となっており、電流を介して駆動トルクを直接制御できるため、力学的な相互作用を体験しながらトルク制御が学習できる。3タイプがあり、1軸捻り関節ユニットと1軸曲げ関節ユニットが40万円、2軸曲げユニットが80万円での販売を予定している。なお、MMSEUnitsの製作には「手指リハビリロボット」を開発し、デンマークでの医療機器認証に向けオーフス大学病院などで臨床試験に取り組むアールテクスの積山彰社長が協力している。

【参考文献】
[1]金岡克弥,“パワー増幅マスタスレーブシステムのための力順送型バイラテラル制御”,第27回 日本ロボット学会学術講演会,2009.


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