RT(Robot Technology)要素応用

2012.01.10
慶大の大西教授、小型鉗子システム開発、加速度を用いて触覚・力覚を伝達

 慶応義塾大学の大西公平教授は、内視鏡手術の際に臓器をつまんだり突いたりする感触を伝えるφ2.3mmの鉗子システム(写真)を開発した。柔軟性を有しており、標的となる部位で血管縫合する感覚や繊細な臓器に触れた瞬間を把握することができる。柔軟性と高感度を兼ね備えた鉗子としては世界最小クラスという。身体を傷付けずに手術する経管腔的内視鏡手術(Natural Orifice Translumenal Endoscopic Surgery:NOTES(*1))の実用化を後押ししそうだ。今後、動物実験を進めることを予定しており、2~3年以内の実用化を目指す。

*1:口や肛門、臍(へそ)などを利用して身体の表面を切らずに手術する方法。1つの孔に鉗子や内視鏡など複数の細い術具を差し込んで手術する。新しい低侵襲治療として期待が大きく、世界中で研究や臨床試験が進んでいる。

ohnishi_0110.jpg 高感度に感触を伝えられる鉗子の中でこれまでの最小はφ3mmで、柔軟性を備えていなかった。開発した鉗子は、おもに人が操作するマスタ部と、先端のスレーブ部から構成。鉗子を前後に動かしたときと、対象物をつまんだときの感覚を伝える。

  従来のバイラテラル制御方式(*2)と異なり、マスタとスレーブの加速度の差で位置制御を、加速度の和で力制御を行う(「Acceleration-based Bilateral Control」と表現)ことにより双方向で、かつ力覚や触覚を伝えるのが特徴()。また力センサではなく、位置情報から得られる加速度とシステムの状態を推定するオブザーバを使用している。

*2:従来のバイラテラル制御方式では、外乱の影響を考慮して安定性を確保しようとするとゲインを小さく設定する必要があり、操作感が悪くなるといった課題があった。

fig.ohnishi_0110.PNG

 Acceleration-based Bilateral Controlの概念図(大西教授提供)

 同方式では、「再現性」「操作性」「安定性」それぞれを設計できる特徴を備えており、例えば、再現性はスレーブ側で捉える環境のインピーダンスをマスタ側で再現する程度であり、触覚を敏感に伝えることが可能。操作性については、スレーブ側で捉えた反力をそのままマスタ側で感じられる程度であり、システムそのものの硬さを感じない軽い操作感が得られる。
 開発したシステムでは再現性を最大で約16倍に増幅しており、例えば肝臓は表面の膜が薄いため慎重な操作が求められるが、膜を貫通した瞬間の触覚を判別することができる。また、スレーブ部は長さ1.5mのワイヤでできているため体内で柔軟に動かせる。

 近い将来に有望と期待されるNOTESでの利用を見据え、まずは遠隔ではない通常の手術で、内視鏡画像を見ながら利用する技術を確立し、将来は遠隔手術への応用も視野に入れる。


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