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2012.01.25
IRSなど、国際安全規格に則した安全管理、水中探査ロボ探査で実践

 長岡技術科学大学の木村哲也准教授は、「津波被害地域での復旧・復興に関するロボット技術を用いた調査活動に関するシンポジウム」で、津波被災地域での水中探索活動における安全性と作業性の両立に触れ、国際安全規格にもとづいてリスクおよびアベイラビリティ(可用性、ここでは作業性)アセスメントを実施したことを紹介。アセスメントの結果が、消防隊員の経験にもとづく判断と相違がなく、一定程度役立ったことを明らかにした。今後、実践したアセスメント手法の形式知化ならびに共有を図ることで、水中ロボットによる持続的な探察活動の実現に役立てる。

 木村教授は、2011年4月19~23日の5日間にわたり宮城県南三陸町と岩手県陸前高田市の津波被害地域で水中ロボットによる探索活動を実施している。京都大学の松野文俊教授をはじめとする国際レスキューシステム研究機構(IRS)と、米国ロボット支援探索救助センター(CRASAR)と合同チームを結成して臨み、また、現役消防隊員から組織されるインターナショナル・レスキュー・システム・ユニット(IRS-U)も参加した。ロボットにはCRASARが持ち込んだ「seamor-ROV」と米SeaBotix社の「SARbot」を使用している(動画)。

動画 CRASARが公開した岩手県陸前高田市での調査活動の映像。画面に映っている腕らしきものはゴム手袋

  木村教授はおもに安全管理を担当しており、危険地所の活動となるうえ余震や、それに伴う津波の発生が想定されたことから、作業性を考慮しつつリスク低減策を講じた。自身が専門とする国際安全規格にもとづき、危険源および障害源の同定や、リスク・アベイラビリティの見積もりおよび評価などを行っている。

 おもな内容を紹介すると、危険源および障害源の同定は「JIS-B-9702付属書A」の危険源リストと消防関連書籍に示された事例をもとに、探索活動特有の危険源を導き出した。例えば、危険源リストに示されている「落下物」から「崖崩れ」という危険源を導き、危険状態を「崖付近での作業」、危険事象を「崖崩れによる押し潰し」と同定している。
 障害源の同定については、鉄道用の「RAMS(Reliability・Availability・Maintainability・Safety)規格」に示されている鉄道のリスクとアベイラビリティに影響を及ぼす要素を参考に行った。例えば、RAMS規格における「運転条件―ロジステック」から、「飲食」という障害源を導き、障害条件を「空腹による負荷」、障害事象を「疲労による判断ミス」と同定している。

  また、リスク・アベイラビリティの見積もりおよび評価は、「IEC 61508付属書D」に示されている「リスクグラフ」を用いて行った(図1)。これは事象の発生頻度や被害の大きさ、暴露時間、回避の可能性などを段階的に分岐していくことでリスクを見積もる手法で、安全関連系に割り当てるSIL(Safety Integrity Level:安全度水準)を選別する。「C」「F」「P」「W」の4つのパラメータがあり、障害などのリスクを示すCは、C1は軽傷、C2は1人死亡、C3は複数死、C4は多数死。危険領域にさらされる時間と頻度を示すFは、F1がまれに発生、F2が頻繁。回避または避難の可能性を示すPは、P1が可能、P2が困難。そして、望ましくない事象の単位時間あたりの生起確率を示すWは、W1が確率小、W2が確率中、W3が確率大をそれぞれ示す。

 危険源として「崖崩れ」を想定した場合、通常は「C3」「F1」「P2」「W1」となり、「SIL 1」と導き出せる。ところが4月は余震が続いていたことから、Wが「W3」となり、結果、「SIL 3」となる。「プレス機械への挟まれに相当するリスクを監視していたことになる」(木村准教授)とした。

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図1 リスクグラフによるリスク・アベイラビリティの見積もり

 リスク低減ならびにアベイラビリティの向上に向けては、「ISO 12100」に示されている「3ステップメソッド」による低減策を講じており、ステップ1として釘やガラスなど危険源の排除(図2)、ステップ2として作業スペースの区分け、ステップ3として個人保護用具(Personal Protective Equipme)の使用の呼びかけを行っている。また、余震および津波からの回避などについては、「ISO 13489」にもとづいて多重化を図っており、避難経路として2経路を確保し、かつ緊急地震速報用ラジオに加え、小型化ラジオも携行した。避難経路については、単純に2経路を確保するのではなく、大きな余震に伴う崖崩れにより2経路が塞がれるような状況を共通原因故障として捉え、複数経路を確保した。

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図2 津波被害地域で同定した危険源の一例

 木村准教授は、実施したアセスメントの結果(図3)が消防隊員の経験にもとづく判断から乖離していなかったとし、一定程度の効果が見込まれるとの認識を示した。ただ、事故が発生することなく活動できた要因は、これによるものと断定できる段階にはないとし、消防隊員の判断と比較・検証を行うことを予定している。また、安全管理は、リスクという目に見えない基準で評価を行うことから、「実施したアセスメント手法を形式知化および共有化を図ることで、水中ロボットによる探索活動の持続的な実施に役立てたい」としている。
 
 今回、被災地域の活動を考慮し、地元にできるだけ負担をかけることなく活動できたとするが、各種ロボット被災地域で効果的に運用するためには、例えば、新潟県長岡市のボランティアを支援する「東日本大震災ボランティアバックアップセンター」のように、「(後方支援を担う)ロボットボランティアネットワークの整備が望ましい」との考えを示した。

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図3 リスクアセスメントの結果の一例。木村准教授らの論文より引用転載[1]

【参考文献】
[1]蓮実雄大,木村哲也,“国際安全規格に基づく地震・津波被災地水中ロボット探査作業のリスク・アベイラビリティアセスメント”,第12回 システムインテグレーション部門講演会(SI2011),2011.


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