国際レスキューシステム研究機構(IRS)は21日、レスキュー工学を担う若手研究者および技術者を奨励する「第7回 竸基弘賞」(兵庫県、神戸市後援)の授賞式を開催した(写真)。受賞者は12日付けの記事で紹介した通りで、「学術業績賞」に選出した東北大学の永谷圭司准教授と、「技術業績賞」の東京工業大学の黄雅雯(ファン・ヤウェン)氏に表彰状とトロフィーが授与された。また「第4回 特別賞」に選ばれたQuince(クインス)開発チームを代表して東北大学の田所諭教授に記念の盾が贈られた。そのほかの受賞者は文末を参照してほしい。
写真 第7回 竸基弘賞の受賞者とプレゼンター。左から松野文俊IRS副会長、高森年IRS理事、竸和己名誉委員長、永谷圭司准教授、黄雅雯氏、田所諭教授
永谷准教授と黄雅雯氏の受賞テーマは、ともに「3.11」以降の災害対応で役立っている。永谷准教授の研究成果は災害対応ロボット「Quince」に実装され、原子炉建屋内部での調査活動に伴う広域での移動を可能にしている。黄雅雯氏の研究成果は水中探査ロボット「アンカーダイバー3号機 AK-3」の開発に生かされ、2011年4月に実施した東日本大震災の被災沿岸部での水中探索に活用された。「3.11」以降の活動実績を踏まえ、例年以上に社会貢献を重視した選考となった(受賞テーマの詳細はこちらを参照)。なお、黄雅雯氏は海外大学の出身者として初受賞となる。
また、特別賞となったQuince開発チームは社会への貢献度はきわめて高く、6月24日のファーストミッションを皮切りに、原子炉建屋内での線量計測およびダストサンプリング、配管類の調査などで計6回にわたり運用されている。何度も紹介したが、7月26日に実施した冷却系配管の調査結果は、1カ月後には非常用炉心冷却系〔炉心スプレイ(CS)系〕の稼働に役立てられ、その高い冷却効果により(燃料上部からシャワーのように注水して直接冷却)原子炉の安定冷却につながっている。
ただ先週19日に、2号機格納容器の内部映像が公開されたものの、確認できる原発の状況はいまだに限定される。田所教授は受賞の挨拶で、さらなる情報収集活動をはじめ「本当の意味での冷温停止や、数十年後の廃炉に向けた取り組みが求められている」とし、「人に代わって作業できるロボット技術の研究開発を進めていかなければならない」と、ロボット研究者として自らの使命感を強調した(動画1)。
動画1 授賞式でQuince開発チームを代表して挨拶をする東北大学の田所教授。Quinceの追加投入に向け、千葉工大で継続的に開発が進められている。3台目も用意しているという
表彰式に出席した竸基弘氏の親御さんであり、同賞の名誉委員長を務める竸和己氏は、1月12日に政府の地震調査員会が東海地震の発生確率を88%に引き上げたことに触れ、「災害対応ロボットの研究がますます期待されている」とし、「歴代の受賞者が中心となって、この分野の研究開発が発展することを願う」と受賞者にエールを送った(動画2)。
動画2 災害対応ロボとへの期待がますます高まっていると、受賞者にエールを送る竸和己氏
竸基弘賞は、1995年の阪神淡路大震災で亡くなった同氏の意志を継ぎ、その夢の一部でも実現することを期し、また、6,000名以上の亡くなられた方々を忘れないために、10年を経た2005年に創設された。松野文俊IRS副会長が神戸大学在職時(現京都大学教授)に指導した同氏は将来、「ドラえもんのような人を癒し助けてくれるようなロボットをつくりたい」との夢を語っており、ドラえもんのように『人を癒し、一緒に悩む』を『人を助ける』という言葉に置き換え、その実現を担うという意志のもとで運営している。
最後に挨拶をした松野教授は、3月中旬より東日本大震災の被災地域でロボットによる探索活動を行いながらも「(運用面などで)様々な壁にぶつかった」。そして、災害対応ロボットによる救助活動の実現には「彼(竸基弘氏)には、まだ間に合わなかったといわざるを得ない」と現状を分析。しかしながら、福島原発事故の収束には30~40年程度を要するといわれているように、災害対応ロボットの研究開発は現世代で完結するものではなく、終わりがない。「われわれの意志を次の世代、さらに次の世代と担ってもらうことで、災害対応ロボットが役に立ち、本当の意味で安心安全な日本にしてほしい」。また、「そうした(こうした願いが込められている)賞であることを念頭に(研究)活動してほしい」と受賞者ならびに若手研究者に語りかけた(動画3、4)。
なお、竸基弘賞は主旨賛同者の支援を受けて運営しており、募金金額は2011年12月末時点で1,266万2,900円に上る。また、ひょうご震災記念21世紀研究機構とひょうご安全の日推進県民会議の助成を受けている。同賞の詳細はこちらを参照してほしい。
動画3 竸基弘賞の設立経緯について、自身の経験を踏まえて語りかける松野教授(松野教授の許可を得て掲載している)
動画4 動画3の続き。受賞者をはじめ若手研究者に同賞の精神を語りかけている(松野教授の許可を得て掲載している)
●「第7回 竸基弘賞受賞者一覧」
・学術奨励賞:東北大学 永谷圭司准教授「サーチ&レスキュー用不整地移動探査ロボットの性能向上に関する研究」
・技術奨励賞:東京工業大学 黄雅雯氏「水難救助用ロボットの研究開発」
・特別賞:Quince開発チーム(千葉工業大学 小柳栄次教授、吉田智章研究員、西村健志氏、東北大学 田所諭教授、永谷圭司准教授、桐林星河氏、岡田佳都氏、大竹一樹氏、大野和則客員准教授、竹内栄二朗助教、東和幸氏、工学院大学 羽田靖史准教授)
・レスキューロボットコンテスト奨励賞:金沢工業大学 夢工房 MS-R
・ロボカップジュニアIRS賞:Free Walker(行成元気君、鈴木啓太君)
・レスキュー工学奨励賞:神戸大学 佐伯一夢氏(博士後期課程3年)
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