公共/フロンティア

2011.11.12
福島原発の廃炉に向け、各作業で共用できる遠隔操作ロボを開発へ

 原子力委員会の中長期措置検討専門部会に参加する東京大学の淺間一教授は、11月9日開催の「第6回」会合の検討結果を踏まえ、10月4日に公開された研究開発項目および研究体制にて廃炉(廃止措置)に向けた取り組みが実施される見通しを示した。福島第一原子力発電所の冷温停止後に実施する、使用済み燃料棒の取り出しや放射性廃棄物の管理、原子炉の廃止措置など中長期的なロードマップの取りまとめ、ならびに研究開発課題の検討を進めており、作業員の被曝量の低減に向けロボット技術を活用した遠隔操作システムの開発も盛り込まれている。研究開発に当たり、共通技術の再利用を促すモジュール化や標準化に言及しており、各種作業で共用できる「共用遠隔操作ロボット」や、これに搭載して使用する各種エンドエフェクタなどが開発されるようだ。
 また、2011年度に終了する「次世代ロボット知能化技術開発プロジェクト」でプロジェクトリーダを務める東京大学の佐藤知正教授がRTミドルウエアおよびRTコンポーネント(RTC)の活用を求めており、こうした言及を踏まえると、RTCを用いた開発がなされると予想される。開発予算の一部に平成23年度第三次補正予算が充てられる(「東京電力福島第一原子力発電所事故の収束に向けた研究開発」、予算額30億円)。

 使用済み燃料プールから燃料体(燃料棒)の取り出し(図13、末尾に掲載)や、原子炉圧力容器および格納容器からの燃料デブリ(核燃料が炉内構造物の一部を溶融し、再度個化したもの)の取り出し(図45、末尾に掲載)など一連の作業において、遠隔操作技術の適用が求められる作業内容を整理している。具体的には、「原子炉建屋内の除染作業」「原子炉建屋、原子炉格納容器(PCV)からの漏えい調査/PCV外部からの内部状況調査」「原子炉漏えい箇所止水・PCV下部補修作業」「PCV内部調査・サンプリング」「PCV上部補修」「炉内調査・サンプリング」「燃料デブリ取出し」であり、それぞれに遠隔での除染装置や補修装置、調査装置、サンプリング装置、デブリ取り出し装置の開発を研究開発項目にあげている。

  さらに具体的な研究開発項目として、例えば燃料体の取り出しでは、瓦礫の散乱など現場に応じた移動技術や燃料体の損傷状態に応じたハンドリング技術などの開発に、燃料デブリの取り出しでは、燃料デブリの位置や環境に合わせた移動装置や圧力容器を水張りした中での取り出し技術などの開発に言及。特殊ツールの必要性をあげながらも、効率的な開発に向けモジュール化や標準化の必要性を指摘した。下表の通り、上記の作業内容に対し、共通的な技術を横軸で取りまとめている。
 その中で、機構設計については原子炉建屋内の各施設への接近状況に応じて共用可能な「共通遠隔操作ロボット」と、各作業を実施するためのエンドエフェクタの組み合わせを考慮した設計の集約化を、インターフェースについてはシステム構成に応じた標準化などを開発課題にあげた。

aec_table1_1112.PNG

 遠隔技術に関係する研究開発項目の課題整理

 専門部会での議論と併行して、東京大学の佐藤教授は来年度以降のRTミドルウエア関連プロジェクトの検討を進めており、1つの取り組みとして原子炉の廃止措置で必要となる遠隔操作ロボットへのRTミドルウエアおよびRTCの活用を提案している。既存のRTC(開発資産)の活用による高効率な開発に加え、モジュール化によるシステムの柔軟な変更が期待されるからで、少なからず、何らかのかたちで利用されると予想される。

  なお、これらの研究開発については、個別の研究開発に取り組む「チーム」と、関連するチームをまとめたり調整したりする「プロジェクト」、各プロジェクトをまとめ、研究開発を統括する「研究開発推進本部」の3層構造で取り組む。研究開発推進本部は政府と東京電力、日本原子力研究開発機構(JAEA)などから構成。プロジェクトは別途、適切なメンバーが選出される予定で、横断的な管理が求められる場合は、サブプロジェクトが設置される。そして、チームは基礎研究と工法およびシステム開発に分けられ、前者は専門知識を有する技術者や研究機関が、後者は原発プラントメーカーおよび関連会社が当たることになる。

 専門部会では燃料デブリの取り出しを10年以内に行うことを目標としている。原子炉の廃止措置に要する期間は標準工程で15年とされていることから、すべての作業が完了するまでに30年以上を要すると見ている。

aec_fig1_1112.PNG

図1 使用済み燃料プール内の燃料体の取り出し作業の流れとイメージ(1)

aec_fig2_1112.PNG

図2 使用済み燃料プール内の燃料体の取り出し作業の流れとイメージ(2)

aec_fig3_1112.PNG

図3 燃料デブリの取り出し作業の流れとイメージ(1)

aec_fig4_1112.PNG

図4 燃料デブリの取り出し作業の流れとイメージ(2)

aec_fig5_1112.PNG

図5 燃料デブリの取り出し作業の流れとイメージ(3)

東京電力(株)福島第一原子力発電所における中長期措置に関する検討結果(案)


【関連記事】
経産省、原発の事故処理・廃炉に向け遠隔操作ロボ開発へ、第三次補正予算 (2011/10/25)
【コラム】原発災害対応はこれからが本番、ロボット研究者の底力に期待 (2011/08/01)
日立と三菱重工、福島原発の事故対策で協力、特殊フォークリフト開発 (2011/04/28)
東芝、福島原発の燃料棒取出で連携、ロボ運用実績のある米企業と計画案 (2011/04/08




好評連載がついに書籍化!


―東大研究者が描く未来―


国内外の事業例を解説


消費者が描く未来生活を紹介