産業用ロボット

2011.10.11
三菱電機、ランダム・ビン・ピッキングを可能にしたロボットシステム開発

 三菱電機は11日、複数ロボットを連携・協調することで部品箱に乱雑にバラ積みされたワークを取り出し(ランダム・ビン・ピッキング)、パレット上に整列できるシステムを発表した(写真上)。1台目のロボットがバラ積みされた1つのワークをいったん平面上に取り出し、2台目のロボットが部品形状および姿勢を認識して把持し、部品の位置姿勢を調整したうえで(写真下)パレット上に並べる(文末の動画参照)。ワークをいったん平面上に取り出すことで部品を安定した姿勢にし、さらに、複数ロボットがワークを持ち替えてハンドリングしやすい位置姿勢にすることで可能にした。同システムを部品供給に利用することで専用治具やパーツフィーダが不要となり、柔軟性を備えるロボットセルを構築することができる。
  2012年度にはハンドや3次元距離センサなどの各コンポーネントをシステムインテグレータ(SI)などに提供し、電機業界を中心に普及を目指す。部品点数が10点以上に上れば、パーツフィーダなどを利用する場合と比較して導入コストを抑えられるとしている。

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 ランダム・ビン・ピッキングは従来からロボット化が試みられてきた。しかし、ピッキング時にハンドが他のワークに衝突して把持できなかったり、仮に把持できたとしてもワークの表裏を反転できず、安定した位置姿勢にできなかったりするといった課題があった。単純形状のワークや、内掴みや吸着パッドで把持できるワークに限定されていた。1つのワークをいったん平面上に仮置きする作業を行うことで、複雑形状のワークの位置姿勢の認識および把持を単純化することに成功した。

  発表したシステムは、天吊りにした4台の6軸垂直多関節ロボットから構成され、1台目のロボットは3次元距離センサをハンドカメラとして備える。天井には2次元カメラを設置しており、仮置きしたワークの位置姿勢を認識する。
 作業の流れは、まず1台目のロボットが部品箱から1つのワークを取り出し、平面上にいったん仮置きする。次に、仮置きしたワークの位置姿勢を2次元カメラで認識して2台目のロボットが把持。そして、3台目のロボットに手渡してハンドリングしやすい位置姿勢に変更した後、4台目のロボットがパレット上に配列する(図左)。ワークが単純形状の場合は、2台目のロボットがパレット上に並べる。2~4台目のロボットは力覚センサを備えるが実験のための計測用であり、センサ情報はフィードバックしていない。

 3次元距離センサでは、バラ積みされたワークの距離画像を取得し、ある高さ(Z軸方向)でセグメンテーションを行う。抽出したセグメントからハンドが挿入可能な隙間を探し出し、把持する位置を決定する。最速で約3秒で把持することができる(*1)。2次元カメラでは、事前に登録した部品情報をもとにワークをシルエットで認識し、位置姿勢を確認して把持する(図右)。

*1:部品の認識~把持にかかる時間(タクトタイム)には5秒を要求する企業が多く、「5秒の壁」をいかにしてクリアするかがビン・ピッキングの重要な課題になっている。したがって、最速で約3秒で把持できるというはエポックであり、ワークを平面上に仮置きすることによる認識と把持の問題の単純化の効果は大きいといえる。

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 複雑形状のワークでも、いったん仮置きすることで、いくつか存在する安定した姿勢で静止することができる。また、仮置きした場所の高さ方向は既知であるため、より高精度なワークの位置姿勢の推定につながる。この状態で2次元センサで計測すれば、安定した姿勢のうちのいずれかの状態であるかを認識することができ、さらに、複数ロボットで持ち替えることでハンドリングしやすい位置姿勢にできる。このような発見によりランダム・ビン・ピッキングの課題を克服した1),2)。同時に、ワークの位置姿勢の認識にかかる計算量の圧縮にもつなげている。3次元距離センサには2010年度終了の「戦略的先端ロボット要素技術開発プロジェクト」の成果物を利用した。

 把持対象を変更(品種変更)したい場合は、ロボットの動作ソフトの書き換えのみで対応することができ、ワークに合わせて専用治具やパーツフィーダを用意しなくて済む。また、専用治具の再設計・製作にかかる手間も不要になる。部位点数が10点以上であればパーツフィーダなどを利用するよりも低コストで済むとしており、ほとんどの部品供給作業において同システムの運用は有利になると見込まれる(下表)。

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 三菱電機では、すでに自動復帰など知能化技術を実装したロボットセルならびに柔軟物を扱えるロボットセルを開発しており、同システムを組み合わせることで多品種かつ変種・変量生産に対応可能なセル生産システムを実現することができる。2012年度にはシステム構成する各コンポーネントをSIなどに提供し(*2)、電機業界を中心にロボットセルの普及を目指す。3次元距離センサなどは、ソフトウエアコンポーネントと一体での外販を予定しているが、「RTコンポーネント」のかたちでの提供ではないという。
  なお、同システムは2007~2011年度実施の「次世代ロボット知能化技術開発プロジェクト」(NEDO)で開発した。11月9~12日開催の「2011国際ロボット展(iREX2011)」への出展を予定している。

*2:画像処理を扱うことに後ろ向きなSIが多い。画像処理のロバスト性の確保が難しく、システム構築時は問題なく稼働していても数カ月後には認識が不安定となり、チョコ停の主因になるからで、こうしたトラブル対応に悩まされたというSIは意外に多い。

 

【参考文献】
1)堂前,奥田,北明,永谷,野田,“物体形状に依存せず高速なバラ積み物体の取り出し方法”,第29回 日本ロボット学会学術講演会,2011.
2)野田,堂前,永谷,長野,田中,“ロボットによるバラ積み部品供給”,第29回 日本ロボット学会学術講演会,2011.


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