レスキューロボットコンテスト実行委員会は、6日と7日に「inrevium(インレビアム)杯 第11回 レスキューロボットコンテスト(レスコン)」競技会本選を開催。大阪工業大学の「大工大エンジュニア」チームが、最優秀チームに与えられる「レスキュー工学大賞(計測自動制御学会賞)」、動画1)および「inrevium杯」を獲得した(写真)。また、総合ポイントで同チームを上回った神戸大学の「六甲おろし」チームが「ベストパフォーマンス賞」と「ベストプレゼンテーション賞」に加え、「日本機械学会ロボティクス・メカトロニクス部門一般表彰」を受賞した。前回大会でレスキュー工学大賞を獲得した大阪電気通信大学の「救命ゴリラ!S」チームは、7日のファイナルミッションでこれら両チームととともに3体のダミヤン(要救助者を模したレスキューダミー)の救出・搬送に成功し、「ベストチームワーク賞」を獲得した。
動画1 レスキュー工学大賞の選定方法、レスコンの精神を説明する土井智晴実行委員長。
レスコンは、災害救助を題材としたロボットコンテスト。「『国際レスキュー工学研究所』におけるレスキュー技術の評価と訓練を目的とした実験」という想定のもと、遠隔操縦型ロボットにより1/6スケールの被災した街の模型の中からダミヤンを救出、搬送する(写真下)。ヘリコプターからの映像通信を想定した遠隔操作カメラ「ヘリテレ」と、各ロボットに搭載したカメラの映像情報のみで救助活動を行い、被災地へ出動する「つよさ」と活動の「はやさ」に加え、ダミヤンを扱う「やさしさ」を競う。参加チームには、スポンサー企業のサンリツオートメイションより遠隔操作IPシステム「TPIP2」(レスコンボード)が提供される。競技では救助活動に与えられる「競技ポイント」に加え、プレゼンなどを加味した「総合ポイント」として評価される。
写真下 レスコンの活動風景。大工大エンジュニアチームが救出・搬送活動に当たっている。
各ミッションの競技ポイントは「フィジカルポイント」と「ミッションポイント」から構成され、前者は、ダミヤンに内蔵した圧力センサや加速度センサの値をもとに圧力や傾き、衝撃を計測することで印加された痛みや負担を評価し、優しい救助がなされているかどうかを判定してポイントを与える。スタート時のダミヤンの体力は「100」となっており、これらが印加されるたびに、時間の経過とともに減少する仕組みとなっている。
後者は、救助作業の達成度を評価して与えるポイントで、ダミヤンを瓦礫の中から安全な場所に救出する「救出完了」、スタート地点まで搬送する「搬送完了」の達成度で与えられる。また、ダミヤンの目の色や音声(周波数)、点滅(鳴動)パターン、体重、マーカをもとに識別を行う「個体識別」の達成度も加算される。
それぞれ20点、10点、20点の配点となっており、1体のダミヤンの救出につき、フィジカルポイントを足し合わせて150ポイント。各ミッションで3体を救出するため450ポイントが満点となる。そして、6日のファーストとミッションと7日のファイナルミッションを足し合わせたポイントが「競技ポイント」となり、900ポイントが満点となる。
総合ポイントは、これらに加え、ファイナルミッションでのレスキュー活動への姿勢などが審査員ポイント(600ポイントが満点)として評価、加算され、計1,500ポイントが満点となる。最も得点をあげたチームにベストパフォーマンス賞が与えられる。レスキュー工学大賞については、実践力としての競技ポイントに加え、コンセプトを提示する書類審査や技術力を示す製作力およびマネジメント力も加味して評価されるため、各賞の中で最上位に位置づけられている(各ミッションポイント、総合ポイントの結果はこちら)。
今大会では、ミッションポイントの配点を変更しており、個体識別の配点を前回の10ポイントから上述の通り20ポイントに引き上げている。個体識別をより重視した。また、ダミヤンに内蔵したセンサ類の感度を上げることでフィジカルポイントが減少しやすくしており、これまで以上にダミヤンへの優しさを要求した。
レスキュー工学大賞を獲得した大工大エンジュニアチームは、瓦礫除去と状況確認に特化した1号機と2号機、救助活動に特化した3号機と4号機の計4台を用意し、1号機と3号機、2号機と4号機がそれぞれペアとなってミッションに臨んだ。このような明瞭な役割分担により2号機と4号機による救助活動を安全かつ高効率に行えると判断したからである。
1号機と2号機は様々な瓦礫除去に対応する汎用アームに加え、狭所にもアプローチできる棒状アームを搭載。また、周囲を見渡せる展望カメラも搭載しており、初期探査のほか、3号機と4号機による救助活動時には俯瞰カメラとして、その活動を補助する。3号機には自律型搬送機を内蔵しており、これによりダミヤンの搬送を行うことで3号機本体は他の救助活動に当たることができる(動画2)。4号機は家瓦礫の中からダミヤンを救出できるよう、それに対応したアームなどに加え、上下動するベッドを備える。ファイナルミッションでは残り3分近くを残して3体のダミヤンの救出に成功した(競技時間は12分間)。
総合ポイントは、ファイナルミッションで対戦した六甲おろしチームがより早く救助活動を終えたこともあり、六甲おろしチームの1,072ポイントに対し1,059ポイントにとどまった。しかしながら、ファーストミッションでは副審がダメージと判断して提示する「イエローフラグ」や「レッドフラグ」がなく、ほぼ完璧にミッションをこなしたことや、ファーストミッションで不具合が生じた自律型搬送機がファイナルミッションで機能したことなどが評価され、大賞の獲得につながった。
動画2 大工大エンジュニアチーム・3号機による救助・搬送活動の様子。
ベストパフォーマンス賞を獲得した六甲おろしチームは、大工大エンジュニアチームとは対照的に、機能を集約した3体のロボットによる多地点での同時活動により高効率な救助を披露した。
いずれのロボットも瓦礫除去に加え、救助および搬送が行えるのが特徴で、1号機は可動範囲が広い瓦礫除去アームと、抱きかかえるようにしてダミヤンを回収する救助機構を搭載する。2号機は、瓦礫除去と救助活動の両方に使える左右独立型の双腕アームと、ダミヤンの下に潜り込んで救助を行う送り式の可動ベッドを搭載。そして、3号機は奥にいるダミヤンでも救出活動が行えるベッド一体型の伸縮アームに加え、重量物でも持ち上げられるパワーリフト式アームを備える(動画3)。
このような機能集約型のロボットは機構およびシステムが複雑になりがちで、大会本番でうまく動作しないことが間々ある。今大会でも、こうした反省から、単機能のロボットを投入するチームが複数あったにもかかわらず、最も効率的な救助活動を達成したことから、チームとして、各ロボットをシステムとしてまとめ上げる能力に長けていたといえる。
動画3 六甲おろしチーム・3号機による家瓦礫からのダミヤンの救出・搬送活動(上の動画)。ベッド一体型のアームで瓦礫内からダミヤンを引き出し、ベッドに収容している。下の動画は、3体目のダミヤンの救出に成功し、スタート地点(ロボットベース)まで搬送する様子。
これら両チームとともに3体のダミヤンの救出・搬送に成功した救命ゴリラ!Sチームは、それぞれの役割に特化した4体のロボットを用意し、これらの連携による救助活動を披露した。
1号機は先行探査に特化したロボットで、フィールドの情報収集を行い、各オペレータに情報提供をする。2号機は救助活動に特化した門型ロボットで、3号機が瓦礫を除去した後にダミヤンにアクセスし、クレーンで引き上げて3号機のベッドに移乗する。4号機は引き込みアームを使って単独でダミヤンを救助・搬送できるほか、2号機との連携により本体上のベッドに移乗して搬送することもできる。
ファーストミッションを通じて、3体のダミヤンの救出・搬送に最初に成功したのは同チームで、2号機のクレーンで家瓦礫の中からダミヤンを引き上げ、3号機のベッドに移乗、搬送する、連携しての救助活動は会場を大いにわかせた(動画4)。ベストチームワーク賞の獲得につながった。総合ポイントは967ポイント。
動画4 2号機と3号機との連携による救助活動。3号機が瓦礫を除去した後に2号機がダミヤンにアクセスしてクレーン引き上げ、3号機のベッドに移乗する。
そのほか「ベストテレオペレーション賞(サンリツオートメイション賞)」には、ユーザーインターフェースの改良に加え、マスタースレーブシステムやダミヤンの自動認識の導入にトライした神戸市立高専の「がんばろうKOBE」チームが、「ベストロボット賞」には、ダミヤンの両脇にアームを入れつつスライド式のベルトコンベヤで優しく救出する岡山県立大学の「メヒャ!」チームが選ばれた。
また、国際レスキューシステム研究機構(IRS)が授与する「竸基弘賞」には、実際の災害現場を想定してヘリテレを使用せず別途、高所から情報収集を行うシステムを用意したり、携行性に優れる操作卓を用意したりした金沢工業大学の「MS-R」チームが選ばれた。前回大会でも、ヘリテレの代わりに探索に特化した専用機を用意し、これから得た映像情報をもとに救助活動を行っていた。
レスコンは、防災やレスキューの啓発および広報を目的に開催しており、競技への参加者に加え、観戦者にもその大切や難しさを考えてもらうことに重きを置いている。ゆえに、単にポイントを競うのではなく、レスキューに対する姿勢や、それにもとづいたロボットの設計・製作も評価する方針を掲げている。レスキュー工学大賞の選定には、その精神が強く反映されている。なお、「コンテスト」と「レスキュー」という相反する課題を包含するレスコンの課題などについては、大阪大学の大須賀公一教授による講評を参照してほしい(動画5)。
動画5 レスコンの課題を丁寧に説明する大須賀阪大教授。コンテストならではの「楽しさ」とレスキューという「重いテーマ」、レスキューロボットに求められる「強さ」と「優しさ」といった相反する課題を、レスコンの開催を通じて解いていきたい語る。
●総合ポイント結果
※ファーストミッションとファイナルミッションの競技ポイントと審査員ポイントの合計。
《第1競技》
救命ゴリラ!B(大阪電気通信大学 自由工房):728
SHIRASAGI(兵庫県立大学 ロボット研究会):445
《第2競技》
メヒャ!(岡山県立大学 ロボット研究サークル):418
がんばろうKOBE(神戸市立高専):780
《第3競技》
救命ゴリラ!S(大阪電気通信大学 自由工房):967
MCT(松江高専 機械工学科):386
《第4競技》
六甲おろし(神戸大学):1,072
大工大エンジュニア(大阪工業大学 ロボットプロジェクト):1,059
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