東京電力は7月17日、福島第一原子力発電所の事故収束に向けた工程表の第1段階(ステップ1)を終了したと発表しました。「トレンドウォッチ」で紹介しましたように、同月には作業環境の改善に向けた原発建屋内での清掃活動などに複数ロボットが活用されており、これに寄与したといえるでしょう。
4月6日に原発建屋外の瓦礫除去に向け、建機による無人化施工システムが導入されたのを皮切りに、国産・国外産を問わず様々な遠隔操作ロボット(無人化システム)が投入されました。原発建屋外では瓦礫除去を目的に、建屋内では、米iRobot社の「Warrior(ウォーリアー)」による清掃作業を除き、線量計測や内部調査を目的に利用されてきました。原発災害対応で主役を担ったわけではないですが、特に建屋内の作業では作業者の被曝量の低減に役立ったことは確かで、ここに大きなベネフィットが認められたといます。
ただしステップ2以降でも、ロボットが果たすべき役割が多く残されています。いまだに原子炉建屋およびタービン建屋内の状況を把握できていない状況で、そのための内部調査や、作業者が活動できる環境(放射線量など)にあるか否かも不明です。また、冷温停止に向けた各種機材の搬入および設置工事、カバーの設置に加え、冷温停止後の燃料棒の取り出しや廃炉となった原子炉の解体作業も控えています。
遠隔操作システム(無人化システム)あるいは自律制御システムでなければできない作業が数多くあり、ここにロボット技術の適用が求められているといえるでしょう。
7月末に、東北大学 極限ロボティクス国際研究センターが米Pennsylvania大学と共同で、クローラ型災害対応ロボットと小型飛行ロボットを活用して東北大学校舎内の被災状況を調査し、これらの協調作業による有効性を検証しました。建屋内の状況把握に向けた予備実験と捉えられます。しかしながら、上述の冷温停止に向けた作業ならびに冷温停止後に控える作業に向けては、既存の災害対応ロボットでは対応困難であり、新規システムおよび運用モデルの構築が必須です。
それに向けては現在、例えば産業競争力懇談会(COCN)の新規テーマ「災害対応ロボットと運用システムのあり方」〔リーダー:(正)東京大学 淺間一教授、(副)日立GEニュークリアエナジー 齋藤荘蔵会長〕で検討作業が進められています。東芝・日立製作所・三菱重工業の原子力3社に加え、対災害ロボティクス・タスクフォース(ROBOTAD)のメンバーも参加しています。ROBOTADのメンバーには、放射性廃棄物の処理や廃炉解体装置などの知見を有する日本原子力研究開発機構(JAEA)のスタッフも含まれます(ROBOTADのメンバーは現在、各検討グループに参加し、そこで具体的な議論を進めているため、全体としての活動が見えにくくなっているかもしれません)。10月に中間報告が、2012年2月には最終報告がなされる予定で、その間に開発に向けた活動が具体化するものと思われます。
福島原発災害の発生直後、過去に開発されたロボットが配備されずに廃棄されたことや、原発災害にも対応可能な災害対応ロボットが存在しないこと、さらには、戦地での活動実績を有する海外製ロボットが投入される現状に対し、ロボット関係者にも容赦なく批判が浴びせられました。過去の国プロのあり方や研究開発のあり方に対してであれば素直に受け止めなければなりませんが、散見されたような、ロボットの投入により原発災害(水素爆発や高濃度汚染水の流出など)を最小化できた、さらには防げたかのようなニュアンスは的を射たものではなく、むしろ受け流してもよいとさえ考えます。そもそも原発の本質的な安全性の確保に向けては、システム設計や制御システム、運用方法が担うわけですし、この論調では「原発安全神話のロボット版」につながってしまうだけですから。
ですが、上述にあげたステップ2以降の作業に向けては、ステップ1以上に重要な役割をロボットが担うのは確かです。ここからがロボット技術者・ロボット研究者の腕の見せどころであり、安心・安全の提供に向け責任重大でもあります。ロボット関係者みなさんの底力に期待しています。 (ロボナブル編集部)
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