公共/フロンティア

2011.07.08
現場を知るわれわれが行くべき、福島原発行動隊プロ発起人・山田恭暉氏

 メルトダウン(炉心溶融)した東京電力福島第一原子力発電所では懸命の作業が続く。被曝の危険を冒しながら作業を続ける若者を見かね、住友金属工業の元エンジニアや東芝の元原発プラント設計者らが「国、次世代のために最後のご奉仕をしたい」と決起した。福島第一原発事故の収束作業を志願するボランティア団体「福島原発行動隊」先発隊の5人は来週12日、本格的な収束作業に向けた現場調査を行う。発起人の  山田恭暉氏にプロジェクト設立の動機と決意を聞いた。

0708yamada.jpg―「福島原発行動隊プロジェクト」を立ち上げたきっかけは?
 「東日本大震災が起きてからほどなく原発がどうなるかが心配になった。3月11日の東日本大震災発生時は50年来の友人といたが、数日後に話し合って、すでにメルトダウンが起きていることを確信した。私は原子力の専門家ではないが、東海村で勉強した。30代の頃、住友金属工業でプラントをつくった経験があり、プロセスや機械を設計し、かつ電気系統も手がけたので原発の電気系統が壊れればカラ炊き状態になるのはわかっていた」

―放射能の影響ではないようですが、過酷な環境下で死者も出ています。ネット上では「シニア決死隊」とも書き込まれています。
 「高い放射線下での人手不足が深刻化している。われわれだって怖くないわけではない。が、本当に再臨界が起こったら日本では避難する場所がない。技術者として“じっ”としておれなかった。
 最初は、『われわれ高齢者の方が年齢的にも放射線量の害も少ない』と考え、行動を起こしたが、自分たちは実際にプラントの設計や製造を経験している。現場で次々と起きる想定外の事に対処しなければならない。技術者が現場の作業員と一緒にプラントをつくり上げていた頃を経験しているわれわれこそが行くべきだと考え、昔の友達にメールを送った」

―7月6日現在、60歳以上の技術者・技能者を中心に430人が参加。カンパも続々と集まっているそうですね。
 「大変ありがたいこと。住金OBもたくさん応募してくれた。今回の事故は技術がわかっている人間がやらなければ収束できない。私は水処理のプロ。元エンジニアや理化学研究所OB、福島原発で安全管理を手がけた人もいる。クレーンの運転免許を持つ人や、福島原発の建屋を造ったとび職も参加してくれている。何をもって収束というのかわからないが、少なくとも10年単位での冷却・保守・運転、数千人規模の人間が必要と考えている」

―5月末に現・原発事故担当相の細野豪志首相補佐官と東電の幹部と会っていますね?
 「そう。この席で細野さんから『行動隊の力を借りたい』との申し出を受け、東電幹部も承諾した。東電も、とても人が足らないという感じだった。ただし、われわれは『下請けではいやだ。対等なパートナーで』と申し入れた」

―どのような作業を想定していますか?
 「本格的な作業は9月にも始めたい。が、今回の事故は現場の状態を調べることから始めなければならない。新プラント立ち上げの企業化調査(FS)のようなものだ。新プラント立ち上げにはプロジェクトのマネジメントが必要だがエンジニアリングのプロの千代田化工建設OBも参加してくれている。現地に行ってみなければわからないが、まずは瓦礫と汚染水の処理だろう」

―現地視察では、どのような点を調べますか?
 「瓦礫の処理方法や原発冷却システムの現状を見てくる。吉田昌郎所長とも意見交換する。調査結果を基に、今月末に細野原発事故担当相らと本格作業に向けた打ち合わせを行う予定だ」

やまだ やすてる:1962年(昭和37)東大工学部卒、同年住友金属工業入社。中央技術研究所で環境や廃棄物処理を担当、和歌山製鉄所ではおもにプラント建設に携わった。1989年退社後、小企業のコンサルタントやNGOで海外ボランティア活動などを行う。東京都出身。72歳。

(本記事は、日刊工業新聞の掲載記事を転載したものです)


【関連記事】
東電、窒素封入接続個所を確認できず、ロボと高所作業車で撮影を試みる (2011/07/07)
東電、ロボット清掃による除染効果を公開、線量の低下を確認 (2011/07/03)
クインス、24日のミッションは水位計センサの投下に至らず (2011/06/27)
東京電力、瓦礫除去にキネティック社のボブキャットなど新たに投入 (2011/05/11)
東芝、福島原発の燃料棒取出で連携、ロボ運用実績のある米企業と計画案 (2011/04/08)
ゼネコン各社、無人建機で危険域復旧へ、福島原発に投入 (2011/04/05)




好評連載がついに書籍化!


―東大研究者が描く未来―


国内外の事業例を解説


消費者が描く未来生活を紹介