公共/フロンティア

2011.07.12
【追記】東電、クインスのミッション公開、不具合が発生するも自力で戻る

 東京電力は11日夕方、8日に千葉工業大学などの災害対応ロボット「Quince(クインス)」(写真)を利用して実施した、福島第一原子力発電所 2号機原子炉建屋内での線量計測およびダスト採取による放射性物質の分析結果を公開。同時に、ミッション遂行時にクローラの動作不良や通信不良など複数の不具合が発生したことを明らかにした。不具合が多重に発生し、かつ「(11日の時点では)原因を特定できていない」(東電広報担当)ことから、しばらくはQuinceの使用を見合わせる。またQuinceで行う予定だった、建屋地下での高濃度汚染水の採取および水位計センサの投下の実施は未定としており、他のロボットで実施するのか、それとも他の方法を選択するのかは検討中という。Quinceの機能改善に向けては、すでに千葉工大のスタッフと協議に入っており、12日の段階ではクローラの交換やソフトウエアの修正(パッチ処理)などの対応策を検討している。

0711quince.jpg 8日に実施した線量計測は、原子炉建屋の1階~3階にかけて計7個所で実施。1階の非常用扉から北東階段を経由して2階に上昇し、さらに、北西階段を踏破して3階にアクセスして行った。各地点での線量率は図1の通りである。またダスト採取は、前方および後方カメラを搭載している支柱部にダストサンプラーを取り付け、2階の原子炉建屋補機冷却系の熱交換器まわりと3階の北西階段前の2個所で行った。分析結果の詳細は図2の通りである。
 なお、図1の前方カメラで捉えた画像には水位計センサが映っていないが、今回のミッションでは不要な水位計ケーブル送り機構などは取り外さず、搭載した状態で運用している。

0711quince-2.PNG

図1 2号機原子炉建屋内の線量率の測定結果とQuinceが捉えた建屋内の画像。レンズの曇り止め対策などを実施したため、鮮明な画像の記録に成功している

  東電によると、これらのミッションを通じておもに4つの不具合(事象)が発生した。1つは階段上での相次ぐスリップおよび、それに伴う転倒。2つ目は片側のクローラのみに発生した動作不良(メインクローラかサブクローラかは不明)。3つ目はツイストペアケーブルによる通信不良。4つ目はツイストペアケーブルの巻き取り機構の不具合である。すでに千葉工大の研究スタッフと機能改善に向けた対応策を検討しており、12日の段階では、クローラの交換やパッチ処理などを行うことを予定しているという。8日のミッションでは、上記のような不具合を発生しながらも自力で1階の非常用扉まで戻ってきており、ミッションを完遂したといえる。同時に、災害対応ロボットとしての面目躍如を果たしたともいえる。
 なお、6月24日のミッションでは水位計ケーブル送り機構に滑りが生じたためミッションの遂行を断念していたが、7月6日には部品の交換を済ませ、送り出せることを確認していたという。

0711quince-3.PNG

図2 2号機原子炉建屋内における空気中放射性物質の核種分析結果

  千葉工大などは、原発災害対応に向け複数の開発(対応)例を発表しており、今回のミッションに対しては、5月9日に発表したシステム構成が最も適していると判断される。おもに建屋内を先行して探査するQuince(先行探査Quince)と、これを支援するQuince(支援Quince)から構成され、先行探査Quinceは線量計とレーザレンジファインダー(LRF)を、支援Quinceは500mのツイストペアケーブルを収納できるケーブルドラムと無線中継器をそれぞれ搭載。支援Quinceが建屋内用無線機と接続したツイストペアケーブルを引き回しながら移動することで、先行探査Quinceの活動を支援する。
 先行探査Quinceが放射線量を計測しつつ環境情報を組み合わせた線量マップを作成することができ、ダストサンプラーを追加搭載すれば今回のミッションに対応できる。

 ただ、東電が上述の支援Quinceをベースに追加装備をし、単独での運用を決定した背景には無線通信のためのリソースの確保が困難という判断があり、加えて、今回のミッションで有線通信に不具合が生じたことを踏まえると、通信方法を変更しない限りは、次回以降のミッションへの対応は難しいと思われる。
 なお、本記事は東電側の情報をもとにまとめたものであり、千葉工大にQuinceが戻された場合は追跡調査をして、実際に発生した事象および原因を探りたい。操作時の状況を映像で記録・保存できるようになっており、追跡調査は可能と判断される。


【関連記事】
東電、線量計測にクインス利用、窒素封入接続個所は作業者が確認 (2011/07/09)
クインス、24日のミッションは水位計センサの投下に至らず (2011/06/27)
クインス、20日午前に福島原発に移送へ、3号機原子炉建屋から投入 (2011/06/18)
【詳解】クインスによる原発建屋地下の汚染水の調査と採取に向けた方策 (2011/06/09)
千葉工大などのクインス、10日に福島に移送、水位計の設置や汚染水を採取 (2011/06/08)
千葉工大、原発建屋内の線量マップを作成へ、追加改良したクインス公開 (2011/05/12)
 




好評連載がついに書籍化!


―東大研究者が描く未来―


国内外の事業例を解説


消費者が描く未来生活を紹介