ロボナブル コラム

2011.06.28
【コラム】産ロボ導入事例がリリース、SIの機能や役割の再評価を

 先週22日、経済産業省日本ロボット工業会のホームページにて、産業用ロボットの導入効果や導入成功に向けた要点などをまとめた「ロボット技術導入事例調査」(三菱総合研究所まとめ)が公開されました。システムインテグレータ(SI)などへのインタビューを通じて分析・整理されたもので、自動車や電機など既存ユーザーから、食品・医薬品・化粧品(いわゆる「3品」)やサービス業などの新規ユーザーまで計54の導入事例が紹介されています。産ロボの導入事例を包括的に取りまとめた文献としては、おそらく、わが国初でしょう。筆者も微力ではありますが、事例提供で協力させてもらいました。

  わが国の産ロボ市場を振り返ると、SIの存在および彼らの下支えにより発展してきたといえます。そもそも産ロボは「半完成品」であり、SIがシステムインテグレートをしたり既存システムに組み込んだりすることで初めて価値が生まれるからであり、また、産ロボメーカーはSIによるシステムインテグレート例を受けて、新たな可能性を産ロボに埋め込み、SIはこれを生かして新たな分野や用途にトライするというサイクルによりアリケーションが拡大されてきたからです。
 そして、いま上述の「3品」に代表される新規ユーザーへの適用拡大に向け、このサイクルを通じて、新たな技術革新が求められています。すなわち、大胆なコスト低減に寄与する技術革新です。3品業界では、自動車や電機など既存ユーサーほどの大規模な設備投資が難しく、いまだに産ロボは専用機や人手作業とコスト面で競合に、いや、むしろ遅れをとっているからです。

  産ロボは、市場が立ち上がった当初から基本的な構成要素に変化がありませんが、もしかしたら、これにメスを入れることが必要なのかもしれません。かつて、600~700点あった部品点数を約300点に半減させたように、あって当然と思われている減速機やエンコーダなどの削減にも手を加えるという具合に。原価低減や品質管理など間接費の圧縮につながるばかりか、減速機がなくなることで、これらの業界に適した、新たな構造を備える産ロボの創出につながるかもしれません。

 また、システムインテグレートに関しても技術革新が必要です。現在のシステムインテグレートは案件ごとに設計や立ち上げ費用が発生するうえ、他システムとの接続や安全性の確保などが求められるために、システムの価格は産ロボの単価の3~20倍にまで膨らんでいます。例えば、ティーチングレスや、それを簡易にする技術は有効で、システムインテグレートにかかる費用の圧縮につながり、絶大なコスト削減効果を生み出すでしょう。「3品」業界は産ロボの扱いに不慣れであることを踏まえると、余計に求められるといえます。

  ただ、気になるのは2008年秋のリーマンショック以降、多くのSIが元気をなくしていることです。現在も「見積もりの提示は多いが、仕事(受注)が半減したまま・・・」という声が聞かれます。以前であれば、上述のサイクルにより適用拡大に向けた試みがなされてきたのでしょうが、SIがこのような状況では、それが十分に機能しているかどうかが気になるところです。しかも、以前は産ロボメーカーによる製品説明会(懇親会)が定期的に開かれていましたが、「最近は、めっきりなくなった・・・」という声がSIから聞かれ、両者の関係性が疎遠になりつつあるのではと懸念されます。産ロボの主戦場がすでに中国をはじめとする新興国へと移行し、収益を支えているからなのでしょうが・・・。

  今月はじめに紹介した「国際食品工業展(FOOMA JAPAN 2011)」にて新たなアプリケーションが見られたように、3品業界で産ロボの利用が広がりつつあります。一部、元気なSIの仕事によるものです。しかし、自動車業界における「溶接」や「塗装」、成形機からの「取り出し」などのアプリケーションのように、これらの業界で産ロボが不可欠な存在となるためには上述のような技術革新が必要であり、これを支えるサイクルが機能しなければなりません。まだまだSIには頑張ってもらわないといけません(彼ら自身に自助努力してもらわないといけません)し、同時に、彼らの役割を再評価する必要があると考えます。

 海外への生産拠点の移行が避けられない中、わが国に残るのは高度なモノづくりのみになることイメージすると、なおさらSIの役割は欠かせないわけで、同調査事例は単に参考になるばかりではなく、こうした機会を与えるものになっていると捉えています。
(ロボナブル編集部)

ロボット技術導入事例調査 ロボット技術導入事例集
ロボット技術導入事例調査 ロボット技術導入事例集要約版


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