サービスロボット

2011.06.20
ATR、店舗内外の行動計測データで商品推奨や顧客誘導するシステム開発

 国際電気通信基礎技術研究所(ATR)は、店舗内および店舗外で取得した顧客の購買行動にもとづいて、ネットワークロボットなどが店舗への誘導や商品レコメンド(推奨)が行える店舗内外連携サービス・システムを公開した(はイメージ)。2009年度に開発した、実空間で商品推奨が行える仮想店舗「ユビマート」に、店舗外で取得した購買行動を組み合わせることで、顧客を該当する店舗に案内したり来店した目的に応じて商品を推奨したりすることができる。顧客の移動速度から急いでいるかどうかも判定することができ、こうした顧客には優先的に対応するなど、実験を通じて、状況に応じた案内ができることも検証した(動画)。

fig.0-0620-atr.PNG 今後は、実際の店舗に開発したシステムを設置し、ロボットが案内や推奨をした際の顧客の行動計測や、推奨による販促効果の検証などに取り組む。また、想定ユーザーとなる店舗や施設所有者、店舗コンサル業などの業態やサービス内容に応じて、システム構成を変更したり分割したりしての提供も検討する。最近は、サービス業において「サービス工学」の考え方が導入されつつあり、「観測」「分析」「設計」「適用」からなる「設計最適ループ」(産業技術総合研究所 サービス工学研究センターのモデル)を繰り返すことで現場での業務改善が図られている。ATRでは、特に観測と分析のフェーズで新たなツールとして利用できると見ている。

 ユビマートは、「環境情報構造化」技術や「ネットワークロボット」技術などの利用により、顧客の購買行動を自動で取得・蓄積し、解析することで、ロボットとデジタルサイネージを通じて、顧客に合わせて店舗内を誘導したり商品推奨をしたりする仮想店舗。ECサイトでなされている商品レコメンドを、コンビニエンスストアを模した実店舗で実現しており、店舗内での顧客の動線や滞留個所、視線、商品を手にしたかどうかといった情報をもとに行える。
 これにロボットとレーザレンジファインダー(LRF)で取得した、店舗外での購買行動を組み合わせることで、顧客を該当する店舗に案内したり店舗内で来店目的に応じた商品を推奨したり、さらには状況に応じて対応したりできるようにした。

 開発したプラットフォームは、ユビマートのときと同様、おもに「購買行動センシングシステム」と、ネットワークロボット含む「顧客・誘導レコメンデーションシステム」から構成される(図1)。

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図1 ユビキタスマーケット(ユビマート)のプラットフォーム

 前者は、計測した顧客の位置と向き、視線、商品の位置情報を行動履歴として顧客行動履歴データベース(DB)に統合・蓄積し、位置情報を統計的に解析することで店舗内の場所や行動の意味づけを行う。LRF(北陽電機製)による顧客の位置計測と、カメラによる非接触での視線計測はATRの既存技術を、UHF帯RFIDタグによる商品の位置計測は大日本印刷のものをそれぞれ利用。また、場所や行動の意味づけなど購買行動の解析には環境情報構造化技術を活用した(図2)。
 LRFは店舗内に18台、店舗外に6台を設置しており、店舗内外のLRFの計測領域内に滞在する間に限定したIDを付与し、移動や滞留などの購買行動を取得する。また、移動速度をもとに顧客が急いでいるかどうかも判定することができる。

 後者は、ロボットとデジタルサイネージシステムを通じて誘導や商品推奨を行う。店舗内のロボットには「Robovie-mR2」を、店舗外にはヴイストンと共同開発した「Robovie-R ver.3」を利用。ネットワークロボット技術上で動作させており、ロボット同士に加え、デジタルサイネージと連携しての情報提供ができる。店舗外のロボットが顧客と交わした会話情報は顧客行動履歴DBにアップされるため、店舗内のロボットが付与したIDをもとに顧客を特定し、それに対応したインタラクションができる。

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図2 ユビマート仮設店舗のおもな機能

 店舗内外における顧客の購買行動を連携してのサービスは、次のようなイメージで検証した。店舗外のロボットが昼食を買いに来た顧客と、急いでボールペンを買いに来た顧客をそれぞれ該当する店舗に案内し、店舗内のロボットが、それぞれの目的に応じて売り場を案内。急いでいる顧客には、割り込ませて優先的に対応した(図3図4)。実験には男性25名、女性25名の計50名が参加してもらった。
 上述の動画で示した通り、それぞれの目的に応じて店舗および売り場を案内するとともに、急いでいる顧客に対しては、割り込み処理により優先的に対応し再度、元の状態に復帰できることを実証した。
 また、2009年度の実験で得た、店舗内の滞留個所の組み合わせにもとづく推奨ルール(15個所に分割し、うち3つの滞留個所を組み合わせてルール化) も検証しており、推奨した17人のうち13名がその通りに店舗内を回遊してくれたことも確認した。ランダムに推奨した6人すべてが、その通りに回遊しなかったことを踏まえると何らかの効果があるといえる。

 参加者にはアンケート調査も実施しており、ロボットへの親しみやすさおよび信頼性はおおむね高く、「買い物が楽しくなる」といった回答が多くあったことを踏まえると、これらを店員として使える可能性はあると思われる。ただ、「買い物しづらい」との回答が20%程度あり、推奨のタイミングが合わなかったことに原因があると想定されることから、今後は推奨するタイミングについても何らかのルール化が求められるかもしれない。

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図3 店舗内外連携サービスのイメージ(左)。図4 店舗内外連携サービスのセンサシステムとロボットおよびデジタルサイネージの配置(右)

  今後の展開について、ATRでは想定されるサービスとして、店舗コンサルと商品推奨、顧客誘導からなる「ユビキタスマーケットコンシェルジェサービス」(図5)をあげており、開発したプラットフォームをユーザー企業に提供することで、購買行動にもとづくコンサルに加え、商品推奨や顧客誘導による成果保証型広告料(アフィリエーション)による収入が得られると見ている。
 ただし、プラットフォームすべてを購入するのは負担が大きいことから、例えば店舗コンサル業には購買行動計測のみを提供するといった具合に、ユーザー企業の業態やサービス内容に応じてシステム構成を変更したり分割したりして提供したいという。また、現状ではロボットによる商品推奨の効果を判定しがたいことから、「サービス工学における『観察』と『分析』のフェーズに購買行動計測を活用できる可能性が高い」(知能ロボティクス研究所 ネットワークロボット研究室の宮下敬宏氏)とし、まずは店舗コンサルなどに向けてレンタル提供するのが現実的な方法と見ている。

 なお、実験には店舗や施設所有者、店舗コンサル業などユーザー候補となる企業も複数参加しており、「店舗マスコットをロボット化し、それによる商品推奨を行うことで子供主導の購買行動を促進したい」というニーズや、「商品推奨に加え、万引き防止に拡張することで費用対効果が得られるのでは」といった声が寄せられたという。

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図5 ユビキタスマーケットのビジネスモデル

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