公共/フロンティア

2011.06.09
【詳解】クインスによる原発建屋地下の汚染水の調査と採取に向けた方策

quince0609.jpg 千葉工業大学 未来ロボット技術研究センター(fuRo)と東北大学、国際レスキューシステム研究機構は8日、福島第一原子力発電所原子炉建屋への投入に向け準備を進めてきたレスキューロボット「Quince(クインス)」を公開。1~3号機原子炉建屋の地下に貯まった高濃度汚染水の調査に向け、水位計センサの投入と汚染水のサンプリングを行うことを明らかにするとともに、その方策を説明した。すでに東京電力の技術導入促進チームによる評価試験を終えており、最終調整および確認をした後、早ければ10日の夕方には福島に向けて移送する。水位計センサの投入作業については、遅くとも15日にまでに実施する。

 現在、復旧作業に向け高濃度汚染水の処理が最大の問題となっている。浄化処理システムを開発するためには汚染水の貯水量や汚染濃度を把握することが求められており、Quinceによる調査はそれを担うことになる。

 今回のQuinceの構成は図1のようなイメージで、建屋内用無線機(子機)と建屋外用無線機(親機)とはエアロック(二重扉の内扉)を挟んで無線LAN通信でやり取りをし、親機と操作卓とはツイストペアケーブルで通信を行う。親機は原子炉建屋外に設置し、操作卓は線量が低い敷地内のサービス建屋に設置して、ここから操作を行う。Quinceと子機とのツイストペアケーブルは500m、親機と操作卓とのケーブルは200mあり、最大で700m離れたところから操作することができる。

水位計センサの投下イメージ.png

図1 水位計センサの投下イメージ

 水位計センサの投下と汚染水のサンプリングは、それぞれ分けて実施する(図1)。
  前者のミッションではまず、2人の作業者がQuinceを二重扉まで運搬して、有線接続による通信状況を確認(図1の【1】)。原子炉建屋内の1階の階段付近まで有線による遠隔操作で移動する(図1の【2】)。前方カメラで階段の踊り場に水がないことを確認した後、ロングタイプのクローラを前にして階段を降下し、汚染水がたまっている手前までアクセスする(図1の【3】)。カメラで汚染水の水面を確認することで、降下した段数から水位を推定する。また、踊り場にさしかかるたびに放射線量を計測して線量マップを作成する。

 次に、水位計センサの投下作業に移行し、踊り場上でQuinceの位置を微調整して階段横のスリットすき間から投下準備に入る(図1の【4】)。ケーブルの目印をカメラで確認しながら送り機構で推定した水位まで投下し、水位に対して十分な長さのケーブルを送り出したら、ツイストペアケーブルを巻き取りながらバックの状態で階段を上昇する。1階まで上昇した後、作業員がQuinceから水位計センサおよびケーブルを取り外し、水位計本体に接続して水位および貯水量を確認し、二重扉付近までQuinceを移動して撤収すればミッション終了となる。
 原子炉建屋地下は4区画に仕切られていることから、1号機~3号機の建屋内で、すでに投下されている1区画を除いて同様の作業を計11回行う。

動画1 6月6日にfuRo内で実施した水位計センサの投下訓練

  後者のミッションは、同様の方法で階段を降下し、階段の踊り場から汚染水を採取するためのボトルを投下し、採取した後、回収容器に入れて1階まで戻る。作業員が回収容器に封をしてQuinceから取り外し、別機関による分析作業へと回す。
 ボトルは50ccの汚染水を回収することが可能。底部に鉛を付加することで容器全体の比重(水に対し)を1.05にしており、確実に回収できるようにしている。fuRo内での試験では、前者のミッションは20分未満で行えたことを確認している。

動画2 水位計ケーブルの前に設置されている白い容器が汚染水の回収容器。ボトルで採取した汚染水をここに収容して1階まで上昇して戻る

 各種機材の搭載に伴いQuinceの重心位置が大幅に高くなったことから、前後のサブクローラを刷新した。Quinceの前方に当たるサブクローラの先端プーリに1.2kgのカウンターウエイトを付加し(写真左)、後方に当たるサブクローラをロングタイプに変更した(写真右)。総重量は、もともとQuinceの重量の2倍に相当する50kg以上になるため、重心位置が高いことには変わりはないが、これにより重心位置を前方にずらしつつQuince本体の中心部で荷重を受けられるようになり、傾斜角が42度ある原子炉建屋内の階段(チェッカープレートの床材)の昇降が可能になった。またロングタイプのサブクローラは、こちらを前方にして階段を降下した際に効果的に荷重を受けるため、前方への転倒回避に寄与する。fuRo内に設置した模擬階段で、これらの効果をすでに確認しているという。

quince,sub1.jpgquince,sub2.jpg

 なお、原発への投入に向けては耐放射線対策が求められるが、4月15日と20日に実施した耐放射線試験の結果、レーザレンジファインダー(LRF)とカメラ以外のデバイスは200Gy(=Sv)まで耐えられることを確認したことから(5月16日の記事を参照)、具体的な対策はとっていない。また除染対策については、ひと足早く源太発建屋内で調査した米iRobot社の「PackBot(パックボット)」がさほど汚染されておらず、表面を拭き取る程度の対応で済んだことから、こちらも何も行っていない。


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