公共/フロンティア

2011.05.23
【メルマガ・コラム】わが国は災害対応・原発対応ロボは競争力に欠ける?

※本記事は、メールマガジン読者のみに配信しているコラム記事を掲載したものです。メールマガジン読者だけではなく、広く発信してほしいとの一部の声を受け、掲載しました。ニュース記事とは異なり、ロボナブル編集部の考え方を紹介していることを、ご承知おきください。


「原発に投入されたのは海外製ばかり」
「ロボット大国・日本なのに、なぜ日本製が使われないのか?」

 先週号では「原発安全神話」を取り上げましたが、これとほぼ同じぐらい、「ロボット大国」という言葉が、各マスメディアで取り上げられています。
 周知の通り、もともとはロボット市場の多くを占める産業用ロボット市場において競争力が高いことを形容したものですが、ロボット関連の報告書や、国や地域のロボット関連施策で安易に使ってきた結果なのでしょう。すべての応用分野で、わが国のロボットの競争力が高いという誤解を与えています。

 様々な応用分野に向けロボットや要素技術が存在する中で、十派一欠片に「ロボット」というカタマリで捉え、それに対し「大国」と表現するのは、わが国のロボット行政、産業構造ならびに研究開発力の実態を見えにくくし、今後、われわれが選択すべき方向性をわかりづらくするだけです。

 過去に、災害対応ロボットや原子力ロボットなど応用分野や要素技術ごとに国際競争力を分析した報告書がいくつかあり、米国や欧州との比較・分析がなされています。
 例えば、2001年発行の『平成12年度 21世紀におけるロボット社会創造のための技術戦略調査報告書』(日本ロボット工業会、日本機械工業連合会)では、災害対応ロボットは米国と欧州が「平均レベル」なのに対し、わが国は「競争力が弱い」。原子力ロボットは、米国と欧州の「競争力あり」に対し、わが国は「平均レベル」と分析されています。
 ここでの競争力は、オリジナルの製品開発力に加え、輸出能力や市場をプロモートする力、国内で他国を越える製品市場を持つ力などを加味して比較・分析されています。

 また、2007年発行の『平成18年度の特許出願技術動向調査の結果について -Part.1 ものづくり・情報通信-「ロボット」「ズームレンズ系」「半導体洗浄技術』(経済産業省)では、各国特許庁への出願件数上位を日本勢が占めるとしながらも、軍事、宇宙、災害対応、水中・海洋、原子力などの特殊環境用ロボットで必要となる制御技術や遠隔操作については、米国勢が優位との報告がなされています。

 これらの報告書をそのまま踏まえると、冒頭のような結果になるのは当然といえ、特に米国製ロボットを使用するのは、理に叶っているともいえます。また、前者の報告書では、わが国の建設ロボットは「競争力あり」と分析されていますが、無人化施工技術が真っ先に適用されたことにも納得がいきます(一般紙やテレビなどでは、これらは「ロボット扱い」されないようですが)。
 とはいえ、10年前には「競争力が弱い」とされていた災害対応ロボットの開発で、「大都市大震災軽減化特別プロジェクト(通称「大大特」)」(2002~2006年度)や「戦略先端ロボット要素技術開発プロジェクト」(2006~2010年度)を経て、技術的には欧米に肩を並べるレベルに到達したことは素直に評価されてよいでしょう。

 日本も米国も、欧州も、保有技術や社会問題、さらには歴史や文化などを背景に、それぞれに得意とする応用分野や要素技術があります。これらすべてにおいて高い競争力を備えることは、一国のみでは難しく、限られたリソースの中で注力すべき応用分野や要素技術を適切に選択しなければなりません。
 研究として示されるロボットや要素技術の可能性は無限ですが、その中から、われわれ国民が選択できる未来は有限であり、優先的に実用化できるロボットも有限です。

 10年前から災害対応ロボットと原子力ロボットは欧米に比して競争力がないと分析され、報告書を通じて公知されていながらも、国際レスキューシステム研究機構や関係する研究者の努力により技術レベルは格段に向上したものの、われわれ国民の選択の結果(ロボット行政の選択の結果)、今回の東日本大震災と福島原発災害に適切に対応できませんでした。欧米に比し、総合的な競争力を備えていないのは、いまもさほど変わりません。
 また、選択するための十分な情報が発信されていなかったことも、その原因にあげられます(取り上げられてこなかったともいえますが)。ゆえに、「ロボット大国」や「国家の威信をかけて」といった類のフレーズで、刹那的に、これらのロボット開発を高揚するのではなく、わが国のロボット産業の実態を伝え、知ってもらうことがまずは大切です。そのうえで適切な選択を、つまり注力すべきロボットの応用分野および要素技術を、われわれ国民は考えるべきで、その参考資料の1つとして、上記の報告書も参照してほしいですし、現在のロボット技術および産業の実態を知ってほしいです。

 筆者は、「生活支援ロボット実用化プロジェクト」に代表されるライフ・イノベーションと同様、災害対応ロボットおよび原子力ロボットという、われわれの命を守るシステムの開発に注力されるべきであり、こうした選択がなされるべきと考えています。同時に、災害および原発災害に対応できる社会および運用システム、それを支える1システムとしてのロボットをつくり上げるために、安全へのリテラシーを備えた社会(政治家、専門家・研究者、事業者、国民を含め)を育むことが必要と考えます。   (ロボナブル編集部)


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