産業技術総合研究所 知能システム研究部門の比留川博久部門長は、2日開催のシンポジウム「震災復興にむけてロボット技術のいま」〔主催:対災害ロボティクスタスクフォース(TF)〕で、自身が検討に参加した「リモートコントロール化プロジェクトチーム(リモコンPT)」の活動を紹介。福島第一原子力発電所の復旧作業に向けた無人化システムの選定方法に触れ、私見としながらも「基本的には稼働実績のあるシステムを選ぶのが望ましい」との見解を示した(図参照、比留川部門長の講演利用より引用・転載)。
投入するシステムの選択は、東京電力の現場スタッフに委ねられており、同チームはソリューションの提案やシステムの推奨するのみである。とはいえ、無人化施工や米iRobot社の軍用ロボット「PackBot」がすでに投入されたほか、スウェーデン・BROKK社の遠隔解体ロボット「Brokk(ブロック)」が投入されようとしており、同チームの提案が東電の選択に、確実に反映されていることを伺わせた。
比留川部門長は稼働実績があるシステムを使うのがよいとし、まずは放射線下での稼働実績があるものを選択し、該当するシステムがない場合は、通常環境下で稼働実績があるものを選ぶべきとした。その理由に信頼性と製造物責任(PL)の2点をあげ、研究開発段階のシステムを選択した場合、製品化されていないうえ、今回は東電がすべての作業責任を負う事情から、リスクの負い方が不明瞭になるからとした。
例えば建機では、長崎県の雲仙普賢岳の復興支援で実績のある無人化施工が製品化され、かつ20年以上の実績を持つことから投入されたのに対し、産総研と日立建機が共同研究を進めている、自律的作業ができる自動施工建機は、遠隔操作による作業で瓦礫処理が行えるという判断も重なり、選ばれていない。また、Brokkはスリーマイルおよびチェルノブイリ原子力発電所の廃炉作業で実績があり、投入される可能性が高いとした(下図左)。すでに一部で事故対策統合本部が投入方針を固めたとの報道がなされている。
ただし緊急性が要求され、かつその運用による二次災害のリスクが低いと判断されれば、研究開発段階のシステムの投入もあり得るとし、国際レスキューシステム研究機構(IRS)と東北大学、千葉工業大学が開発した「Quince(クインス)」などが該当するとした(下図右)。4月28日には、Quinceとともに米QinetiQ(キネティック)社の「TALON(タロン)」が投入準備に入ったとされているが、建機と異なり、スタックしたとしても作業員が持ち帰ればよいため、これらも投入の可能性が高いとの見解を示した。
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講演の終盤では今後の展望に触れ、リモコンPT内に新たな作業部会の設置を検討していることを明かした。その中で、Quinceによる上層階を環境計測した方がよいのか、それとも、原子炉建屋内の放射物質を除去した後に建機で瓦礫を除去した方がよいのか、さらには冷却系の復旧作業に向け作業者が行うか、それともシステムで行うのかを、作業環境の変化に応じて施工計画を順次検討していくとした。
また、対災害ロボットや対原発災害ロボットの実用化にも触れ、「規格の整備ととともに、施工計画と一体となった機器開発や試験に取り組み、最終的に法制度化に踏み込まなければ本当に使えるシステムにならない」との考えを示した。比留川部門長らの講演の詳細は、以下の録画動画を、配付資料は対災害ロボティクスTFの公式ブログからダウンロードしてほしい。
なお、対災害ロボットの標準規格については、長岡技術科学大学の木村哲也准教授が、総務省消防庁の消防防災ロボット技術ネットワーク内で提案をすることを表明しており、第一弾として、ユーザーインターフェースの標準化を提案することを予定している。プレイステーション型のコントローラ(ゲームパッド)が広く利用されていることから、操作キーの配置の統一化を図る。また、早ければ10月にはレスキューロボの標準評価試験法を取りまとめた米国標準研究所(NIST)にレスキューロボの安全規格を提示し、NIST標準としての発行を目指す(詳細はこちら)。
安全規格の策定については、「災害対応ロボットの安全基準調査研究」(日本機械工業連合会と日本ロボット工業会、委員長は木村准教授)にて2009年度から3年間にわたり取り組む予定だったが、事業仕分けの影響で競輪の収益を分配するJKR補助事業が廃止となり、2010年度で終了している。
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