公共/フロンティア

2011.04.06
IRSなど、原発内での探査活動に向け探査ロボに追加機能を搭載

 国際レスキューシステム研究機構(IRS)と東北大学千葉工業大学などは6日、「戦略的先端ロボット要素技術開発プロジェクト」(2006~10年度、NEDO)で開発した探査ロボット(レスキューロボット)を、福島原発での探査活動に向け急遽、追加装備したことを発表した。遠隔操縦により複数台のロボットが連携して、原発建屋内外を環境計測しつつ位置情報を組み合わせたデータベースが作成できる。すでに実験を通じて、屋外環境で約2km、屋内環境で最大200mの通信距離を確保したことを確認している。
  福島原発へのロボットの投入に向けた動きは、経済産業省 製造産業局 産業機械課が運用可能案ロボットを調査し、今週月曜(4日)には各ロボットの開発者から実行可能なミッションなどの説明を受けた。投入の判断は同省原子力安全・保安院と東京電力が行うが、現在も待機したままとなっている。今回の発表を通じて、福島原発の早期復旧に向け有効な対策を講じる一手段として、早期に判断されることを望む。

quince&keanf.JPG NEDOプロで、CBRNE(Chemical・Biological・Radiological・Nuclear・Explosive)災害時に地下街などの閉鎖空間内で高速走破することを目的に開発した「Quince(クインス)」(写真左)と前モデルの「Kenaf(ケナフ)」(写真右)に追加装備をした。もともと、サブクローラの自動制御による高い踏破性や、3次元距離センサによる3次元地図生成・自己位置推定機能、6自由度アームによる運搬機能などを備えるが、原発建家内外の環境計測ならびに位置情報を合わせたデータベースの構築に向け、通信距離の増大と電源の確保を図った。 

 具体的には、原発建屋の入り口で中継する中継ロボット(Quince4号機)には無線機や光メディアコンバータなどを搭載。原発建屋内を探査するロボットには、1台(Quince6号機)には光ファイバーケーブルリールを、もう1台(Quince5号機)には電源供給のためのPoE(Power over Ethernet)ケーブルリールを設置した。中継ロボットは、八木アンテナにより約2km離れた地点によるオペレータの指令を無線通信で伝送し、探査ロボットはそれぞれのケーブルを敷設しながら原発建屋内を調査する。通信距離は約200m、PoEケーブルは最大で100mを確保。PoEケーブルを搭載するロボットは、大容量バッテリと無線機を搭載する可搬型の中継パレットと接続しており、長時間の稼働を可能にしている。
  各ロボットはPTZカメラを備えるほか、探査ロボットは放射線測定プローブと放射線測定器も搭載しており、原発建屋内の放射能レベルなどを計測する。サーモグラフィーを標準搭載しており、ガス計測器なども追加搭載できる。

quince1.PNGquince2.PNG
quince3.PNGquince4.PNG

 KenafにはUHFアナログ送信器を搭載し、建屋内で直線距離で約100mの通信距離を確保。また、Quinceにはコンクリート瓦礫での走破性を高めるためにクローラ表面にスポンジを貼るという対応も可能で、走行実験などを通じて効果を検証しているという。併せて、放射線の影響を低減するための工夫も行っており、耐放射線性能は、民生機器をアルミ板や鉛板で覆ったレベルに相当する20Sv(シーベルト)程度にしている。 

kenaf1.PNGquince8.PNG

  投入可能なロボットとしてQuince 5台とKenaf 1台の計6台を公開しており、残りのQuinceと連携することで6自由度アームにより障害物を移動して観察をしたり(Quince2号機)、3次元距離センサにより3次元地図の生成および環境情報のマッピングによるデータベースを構築したり(Quince3号機)することができる。 

quince5.PNGquince7.PNG

  IRS会長である東北大学の田所諭教授らは、先月半ば頃から原発建屋内外での探査活動に向け、QuinceとKenafへの追加装備に取り組んでいた。先月末の29~30日頃には、経産省 産業機械課より原発内での運用に向け近く、ヒアリングを実施するとの連絡を受けていた。4日には実施されており、現在は経産省 原子力安全・保安院と東京電力からの投入判断を待ったままとなっている。
  今回の発表に向け、田所教授は「福島原発問題は極めて重大な国家的かつ地球的危機。われわれロボット研究者には、ロボティクスを活用することにより、この問題を少しでも軽減する一助となることが求められている。外国のロボットだけに任せておくのは責任放棄」(一部言い回しを変更)とのメッセージを案内文に沿えている。

●緊急研究開発メンバー
総リーダー:小柳栄次氏(千葉工業大学)
技術リーダー:永谷圭司氏(東北大学)
広報リーダー:田所諭氏(東北大学,NEDOプロジェクト責任者)
主要メンバー:吉田智章氏(千葉工業大学)、羽田靖史氏(工学院大学)、大野和則氏(東北大学),竹内栄二朗氏(東北大学)

【関連記事】
IRS、宮城県三陸町で水中ロボットによる行方不明者の捜索へ (2011/04/06)
日本ロボット学会など、ロボ技術の震災復興と原発災害への適用に向け声明 (2011/04/05)
レスキューロボはボランティア活動なら運用できる ―今後の発展に向け、いまやれることをしておこう (トレンドウォッチ)
【第2報】原発の調査・放射能の計測に探査ロボ活用へ、近く試験を実施 (2011/03/30)
放射性物質のモニタリングに探査ロボを活用へ、検討が具体化 (2011/03/29)
復旧に向け探査ロボのニーズがある、松野京大教授、東北での調査を振り返る (2011/03/28)
長岡技科大の木村准教授、レスキューロボで貴重品を探査するボランティア開始 (2011/03/27)
京大の松野教授、八戸工大でレスキューロボによる調査活動へ (2011/03/19)
原子力安全技術センター、福島原発に放射線測定ロボット投入へ (2011/03/18)




好評連載がついに書籍化!


―東大研究者が描く未来―


国内外の事業例を解説


消費者が描く未来生活を紹介