最後に、最も多く見られるのが、あるサービスプロセスをいきなり一体型ハードウエア(*1)のサービスロボット/RTに置き換えようする試みである。
20世紀の製造業の成功モデルのように、最終的にサービスロボット/RTという一体型ハードウエアにまとめ上げ、それを量産・販売するというビジネスモデル(マスマーケティング/マスプロダクション)が成立すればよいが、現在の技術レベルに加え、同業でもプロセスが異なる、カスタマイズ(*2)が求められているといったサービス業の要件を踏まえると、その成立は難しい。
いずれは、これらを満足できる“超汎用的”なサービスロボット/RT(人と同等の作業ができるヒューマノイドなど)を開発できるかもしれないが、それには長期的な研究開発が求められる。それに耐えられる企業はほんの一握りだろう。
また、人が担ってきたサービスプロセスを置き換える方が望ましいプロセス(工程)もあるだろうが、原子力発電所内の配管点検や超高所作業をはじめとする極限環境作業など、特殊な用途に限られる。ビジネスの広がりが期待できないにもかかわらず、特殊環境に耐える技術レベルが要求されるため、研究投資の回収すらままならないのではないだろうか(図1)。
*1:後述する「製造事業者主導型」に位置づけた、富士通の「enon」やパナソニック電工の「HOSPI」は一体型ハードウエアとして紹介しているが、厳密には、両者ともに外部サーバとやり取りをすることで機能を発揮しており、厳密に言えば一体型ハードウエアではないかもしれない。ここでは、あるサービスプロセスを単体のロボットが担い、価値提供を行っているという事実から、他のシステムとの相対比較として一体型ハードウエアに位置づけた。産業用ロボットも他のFA機器とインテグレーションすることではじめ能力を発揮するため、厳密に言えば、一体型ハードウエアという表現は馴染まないかもしれない。
*2:カスタマイズ化に対応する手段としては、ソフトウエアの変更とモジュール構成の変更が考えられる。後者は、RTミドルウエアが一例で、モジュールの充実度、組み替えの用意さが求められることから、2007年度より「次世代ロボット知能化技術開発プロジェクト」を立ち上げた。数多くのRTコンポーネント(RTC)が開発されたが、ソフトウエア開発管理がなされたうえで開発されていないため、その利用は、ロボットシステムとして安全認証を受ける際に妨げになることが懸念される。上市を目的とした開発では、「RTCのつくり直しが必要かもしれない」と、プロジェクトリーダーの東京大学の佐藤知正教授は中間評価でコメントしている。
このような一体型ハードウエアのサービスロボット/RTの提供による事業化は、自動車メーカーや家電メーカー、産ロボメーカーなど製造事業者により試行されてきた(=「製造事業者主導型」)。ここでは、彼らがサービス事業者からサービスの生産性および品質向上(いわゆる「サービスイノベーション」)にかかる課題を調査・ヒアリングし、それを解決する手段としてサービスロボット/RTを提案するという方法で取り組まれている。ところが現時点では、すでに事業化を断念したか、もしくは長期的な研究開発を継続しているかである。
一体型ハードウエアの課題を指摘することを目的にまとめたものではないが、「研究・技術計画学会 第24回 年次学術大会」にて、ロボットビジネス推進協議会の石黒周幹事より、これに関連した論文[1]発表されている。また、システムインテグレーションの方が有利であることも指摘されている。
石黒氏の論文は、サービスロボット/RTを組み込んだサービスイノベーション事業創出の障壁となる課題の抽出および、それを解決するアプローチ例の類型化、共通した特徴の抽出。さらに、これらのアプローチを創出しやすくする条件や支援施策の検討につなげることを目的にまとめたものである。課題の抽出に当たり、メーカー27社とサービス事業者31社(16業種)にインタビューを実施し、それぞれから課題をあげてもらっている。おもな内容は以下の通りである。
《サービスロボット/RTメーカーが指摘する課題(言い分)》
【1】マスマーケティング・マスプロダクションの製品事業モデルにサービスロボット/RTが馴染まない
【2】サービスロボット/RTの導入にはさらなる開発が必要だが、開発投資を回収できるような市場セグメントが見あたらない
【3】サービス提供事業者との意思疎通が困難
《サービス事業者が指摘する課題(言い分)》
【1】ロボット/RTに対する先入観があり、ロボットの導入に抵抗感がある
【2】ロボット/RTメーカーからの提案の妥当性や導入後の発展のさせ方がわからない
【3】ロボット/RTメーカーからの提案がサービス現場やビジネスモデルから乖離。リアリティがない
さらに、石黒氏の論文ではこれらの課題に対応すべく、従来の製造事業者主導型と異なるアプローチ(類型)での事業化が検討されている例を紹介し、類型化を試みている。つまり、製造事業者とRTシステムプロデューサー、サービス事業者による「協同型」、「サービス(提供)事業者主導型」、「RTシステムプロデューサー主導型」である(図2)。
RTシステムプロデューサー(RTSP)とは、「サービス事業者の立場に立って、ロボット/RTシステム導入による課題解決方法や代替案の創出を行う事業化のキープレイヤー」である。
そして、これら類型2~4には共通して、
(1)サービス事業者の立場に立って、サービスロボット/RTシステム導入による課題解決方法や代替案の創出を行う企業(RTSP)が存在する
(2)システムインテグレーションという形態でサービスロボット/RT導入を行っている
という特徴が見られ、これらを備えるがゆえに、上述の課題(言い分)に対応できるのではないかと、石黒氏は指摘している。
話題を「一体型ハードウエアにまとめ上げること」の問題に戻すと、上述にあがった課題の中には、こうしたビジネスモデルに起因する内容が認められる。
例えば、「ロボット/RTメーカーが指摘する課題」にあがった【1】と【2】は、提供される製品形態が一体型ハードウエアであることと、マスプロダクション型のビジネスモデルを前提にしていることが原因となっている。
【3】については、マスプロダクション型のビジネスモデルを前提としているがために、それぞれのサービス事業者と協同で課題解決に取り組もうとする意思がないためと推定される。また、これが「サービス事業者が指摘する課題」の【3】につながっている(図3)。
一方、「サービス事業者が指摘する課題」では、例えば先の【3】の課題は、提供されたサービスロボット/RTがシステム構成を柔軟に変更することができ、かつ人の方が優れているプロセスは、人を組み込んだシステムインテグレーションの形態ではなかったからだろうが、上述の通り、そもそもは、サービスロボット/RTメーカーがマスマーケティング/マスプロダクション型のビジネスモデルを前提にしていることに原因がある。そのほか課題と原因については、図3と図4を参照してほしい。
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| 図3 サービスロボット/RTメーカーが指摘する、事業創出の障害となる課題とそれを生み出している原因(石黒周氏による) | 図4 サービス事業者が指摘する、事業創出の障害となる課題とそれを生み出している原因(石黒周氏による) |
これらの類型の中には、例えば「失敗パターン2」で紹介したRTソリューションのように、提案するサービス事業者からの開発投資の縮減により開発プロジェクトから手を引いた例もある。石黒氏が紹介した、類型2~4で共通する特徴を備えれば、サービスロボット/RTによる事業創出が保証されるわけではないが、少なくとも、システムインテグレーションの形態で提供する方が、それぞれのサービス事業者のビジネスモデルにフィックスしやすく、サービスのカスタマイズ化にも対応しやすい。また、サービス事業者の高度な要求に応えるための研究開発に伴う投資回収に迫られるというリスクを低減できると言えよう。
■参考文献
[1]石黒 周 , “ロボット/ロボット技術導入によるサービスイノベーション事業創出アプローチ:事例と類型とキープレイヤー」, 研究・技術計画学会 , 第24回年次学術講演要旨集 , 2009 .
■関連サイト
ロボナブル2008年8月特集「先進事例に見る サービスロボットによるプロセス革新」
-サービス事業者の取り組みから学ぶ開発の押さえどころ-
次世代シロアリ防除サービス業を目指すアサンテ
http://www.robonable.jp/monthly/2008_08/index.html#p001
将来の労働力不足に備え清掃ロボットの導入を図るNEXCOメンテナンス関西
http://www.robonable.jp/monthly/2008_08/index.html#p004
2009.12.05 NEDO、知能化プロの中間評価公開、商業ベースではRTCのつくり直しが必要との見解
http://robonable.typepad.jp/news/2009/12/05nedo.html