ロボナブル 2010年第1弾特集
失敗するロボットビジネス!成功するロボットビジネス!【増補改訂版】
プロローグ
作りたいロボや保有RTをまんまコンセプトにしていません? ―サービスロボ事業で見られる失敗例

2035年のロボット/RT市場、9兆7,000億円に―。

 経済産業省とNEDOは今後25年間に、わが国のロボット/RT産業が現在の約14倍になるとの市場予測を公表し、警備や介護など非産業分野向けロボット(サービスロボット)市場が牽引役となるとの見方を示した。同市場だけでも、2015年は3,733億円、20年は1兆241億円、25年は2兆6,462億円、そして35年には4兆9,568億円に拡大すると、大胆な予測数値を算出している。予測にかかる根拠や真偽のほどは、ここでは議論しないが、少なくとも、いまもなおサービスロボット市場への期待が高いことを示したと言える。

 これほど期待される理由には、一般には次の2つが挙げられている。すなわち、若年労働人口が減少する中での「サービス業の生産性向上(サービスの工業化)」、個々人(=「個客」)のレベルでの「サービスのカスタマイズ化への対応」である。これに加え、わが国製造業の「サービス産業への進出」という課題も挙げられる()。

 ロボットの究極の形態をヒューマノイドとするならば、その開発は感覚器官や情報処理、運動機能など「人間が持つ基本機能を自動機械に置き換えようとする試み」と定義することができ、ロボットがサービス提供を担う人間に取って代わったり、役割の一部を代替したりすることには違和感がないし、その利用によりサービスの生産性向上が期待される。また、フィードバックループを備えるロボットであれば、個々人に合わせたサービス提供も十分可能である。

 サービス産業でロボットが必要とされる一般的な理由

 これらの理由は数多くのサービスロボットのプロトタイプが提示された、2005年の「愛・地球博」以前より指摘されているものであり、万博終了後には複数のロボットが実用化されると期待された。しかし、これらの成果をもとにしたロボットやRT応用システムの実用化は数える程度であり、事業化に至った例となると、さらに少ない。他業界からすれば、チャンスはあった(ある)はずなのに、生かせなかったと言われかねない状況である。

 確かに、サービスロボットを構成する各種要素技術やシステム開発技術が未成熟であり、安全性確保に象徴される課題(「隔離の原則」に代わる「共存の原則」)を抱えているのは事実である。が、そればかりに原因を求めるには無理があるだろう。なぜなら、多くのロボット開発は、技術者を中心にプロダクトアウト的なアプローチでなされており、コンセプト構築をはじめとするビジネスモデルのデザインが”後付け”でなっているというファクトがあるからである。

 このようなアプローチの開発では、つくりたいロボットや保有しているRTをそのまま開発コンセプトにするきらいがあり、結果、次のようなパターンに陥っている例が見られる。

●失敗パターン1:サービスプロセスの局部の置き換え
●失敗パターン2:ターゲットが肉体労働・単純労働に集中
●失敗パターン3:ハードウエア一体型にまとめる

 技術者としてロボットを開発したい欲求は理解できるし、保有するRTを生かそうとするのは正しいことだが、顧客価値の創出につながるかどかは別問題である。顧客価値をきちんと捉えることにより、持続的な事業展開が行えるビジネスデザインを心がけるべきではないだろうか。

 2008年4月に「失敗するロボットビジネス 成功するロボットビジネス」として、失敗事例を交えながらビジネス構想の方法論をまとめた。本特集では、ここ最近の動向も包含した「増補改訂版」として紹介する。

 景気はやや回復基調にあるものの、その頃とは状況が異なり、国内の設備投資は冷えきったままである。しかも雇用危機にあり、労働力過剰の中で自動化や省力化を達成するロボット/RT応用システムを提案しなければならない。サービスロボットが必要とされる背景に若年労働力の減少がよく挙げられるが、当面は必要条件にも得ないかもしれない。したがって、以前にも増して、ビジネス構想の重要性が高まっていると言えよう。

 なお労働力過剰の中で、かつ「個客レベル」での製品およびサービスのカスタマイズ化が進む中、「自動化」や「省力化」に代わる、ロボットの新たな役割については、次回の特集で紹介する。北陸先端科学技術大学院大学にて、サービスサイエンスの専門家への提案、議論を経た後に掲載する。