ロボナブル 2009年 3~8月特集
今年期待のロボットベンチャー&ロボットビジネス2009
PART1
アシストスーツ市場を牽引!2010年には40億円弱の市場規模に
2.アクティブリンク:パワー増幅ロボット、鍛造作業用アシスト装置
1.サイバーダイン&大和ハウス工業:HAL福祉用

 上述のアシストスーツの市場予測の中には「能力増大」に分類されるシステムも含まれており、富士経済では有力なプレーヤーとして、パナソニックの社内ベンチャー・アクティブリンクを挙げている。2月には全身タイプに拡張した「パワー増幅ロボット」の試作機を公開した。2010年度以降の実用化を目指しており、厳密には「2010年期待のベンチャー!」として紹介すべきだろうが、2009年度は大手ゼネコンとともに建設現場に向けた用途の絞り込みを予定しており、今年からの活躍が期待される(*5)。

アクティブリンクが開発した全身タイプのパワー増幅ロボット。「双腕パワー増幅ロボット」に脚部の増幅ユニットを追加したもので、片腕はハンド部を含めて6軸、片脚3軸の全身計18軸を持つ。現在は、建設作業現場に向けた開発を進めている。
*5:脳卒中患者のリハビリ用として「上肢リハビリアシストスーツ」の開発も行っているが、医療機器・医療用具の許認可の都合上、現時点では情報を開示できないため今回は紹介していない。

建設現場への適用を目指すパワー増幅ロボット

 開発したパワー増幅ロボットは、すでに開発した「双腕パワー増幅ロボット」に脚部の増幅ユニットを追加したものである。片腕はハンド部を含めて6軸、片脚3軸の全身計18軸を有している。ユーザーがグリップに加えた力の大きさと方向を6軸力覚センサ(前後、左右、上下と、それぞれの回転方向の計6軸)で検知し、その情報に基づいて関節駆動力を算出、各モータをトルク制御することでパワー増幅を行う。トリガーを引くと把持することもできる。モータには安川電機製を、6軸力覚センサにはミネベア製をそれぞれ採用している。

ユーザーがグリップに加えた力の大きさと方向を6軸力覚センサで検知し、その情報に基づいて関節駆動力を算出、各モータをトルク制御することでパワー増幅を行う。トリガーを引くと把持することもできる。対象物に触れた感覚をフィードバックされ、熟練作業者の能力を発揮できるという利点がある。
 力制御ベースのパワー増幅(*6)であるため、把持した対象物の感触をフィードバックすることができ、硬さや重さなどを感じ取ることができる。万一、ロボット側からユーザー側へ過大な力がかかったときは、フィードバック系を遮断することで安全を確保する。具体的には、フィードバック系はワイヤを介してユーザーに力を返すようにしており、ワイヤを断線させることでプーリを空転するようにしている。
ただし、現時点では具体的な用途やユーザーを決定していないため、どの程度のパワーの流入により断線をさせるかは検討中という(*7)。

*6:物体に触っている感触(触覚)は、基本的には力を通じて得ており、力制御ベースのパワー増幅を導入することは、対象物の感触を確かめながらの作業を可能にすることになる。このような直感的な作業を行えるところに、力制御ベースの最大のメリットがあるとされる。
*7:安全に言及しておくと、試作段階であるため上述のHAL福祉用と同様、非常停止時に緩やかに倒れる仕組みは実装していない。重量物を把持して作業を行うことを考慮すると必須であり、緩やかにゼロメカニカル・ステートに向かうようにしなければならない。その方策の1つとして、城垣内剛代表取締役は、「例えば、回生ブレーキの応用により、このような状態をつくり出せるかもしれない」と話す。
ワイヤを介してユーザーに力を返すようにしている。ロボット側からユーザーへ過大な力がかかったときは、ワイヤを断線しプーリを空転させる。このようにフィードバック系を遮断することで、安全を確保している。
 また、このようなシステムでは、パワーの増幅と安定はトレード・オフの関係にあり、安定したパワー増幅を行うためには、人とロボットとの力学的な相互作用を常にモニタリングし、何らかの制御で抑制することが求められる。
 このような制御では、立命館大学 理工学部の金岡克弥氏が開発した「仮想パワーリミッタ」がよく知られている。同氏とは「パワーペダル」を共同開発しているが、現時点では、このようなソフトウエアリミッタは実装していない。「まずはハードウエアのつくり込みを優先して取り組んでいる」(城垣内剛代表取締役)のが、その理由だが、「用途などを絞り込んだ後に必要があれば、このような考え方などを取り入れるかもしれない」(同)。そのため、オートバランサーをはじめとする姿勢を安定させる制御なども実装していない。

 現在、パワー増幅ロボットの開発は、大手ゼネコンなどとともに建設現場への適用を目指して取り組んでいる。有望な用途の1つとして、高層ビルの建設で利用する5t・m級タワークレーンの解体作業(*8)への適用が考えられる。ビルの完成後は解体して、エレベータの空間を利用して地上へと降ろすが、解体後でも各部材の重量は100kg程度に上る。通常は、複数の作業者で解体や降ろす作業などを行うが、同ロボットの利用により1人の作業者で行うことが可能になる。こうした意図もあり、現在の増幅ロボットは片手で約50kg、両手で約100kgの重量物を持ち上げられる程度のパワー増幅に抑えている(*9)。

 今後の展開に触れておくと、まだ検討段階ではあるが、アクティブリンクは受託R&Dを軸に事業展開しているため、「製造販売を担うパートナー企業に技術提供をすることになるだろう」(同)という。ただし、身体に装着するような感覚で使用するシステムであり、また多軸構造であることを考慮すると、使い勝手の確認や適切なメンテナンスが欠かせない。ログ(利用状況)情報をフィードバックするような仕組みを組み込むことが必要であり、「単なる技術提供にとどまるビジネス展開にはなりにくいのでは」(同)とも話す。
 少なくとも2009年度中には具体的な用途を絞り込み、必要とされる増幅率や軸数などを整理することを予定している。2010度以降の適用に向けた取り組みが加速することが見込まれる。

*8:高層ビルの建設で用いられるタワークレーンは、分解して小さなクレーンを用いて地上へと降ろしていく。近年の高層ビル工事では100m上から15tの荷物を吊り下げられる1,500t・m級クレーンが利用されており、この解体作業を例に説明すると、まずビルの最上部に400t・m級のクレーンを設置し、それを使って解体した1,500t・m級のクレーンを下に降ろす。次に、150t・m級のクレーンを設置し、それを使って400t・m級を解体して下に降ろす。同様に、40t・m級クレーンにより解体した150t・m級を、5t・m級により解体した40t・m級を下に降ろし、最後に、5t・m級を解体してエレベータの空間を利用して地上へと降ろす。なお、「t・m」とはクレーンの能力を表す指標で、クレーンの先端からワイヤロープの先までの距離と、吊り下げられる荷物の重量を掛け合わせた数値で表す。

*9:本来なら、数百~千倍程度のパワー増幅も可能だが、増幅率を大きいほど重量物を把持したときの感覚を掴みにくくなるきらいがある。現場作業者に使い勝手をヒアリングしながら、応用分野および作業に適した増幅率を検証していくという。

あとは購入を待つばかりの鍛造作業用アシスト装置

 アクティブリンクでは、パワーアシスト(能力増大)技術の応用展開を進めており、エアハンマー(熱間鍛造)作業者に向けた鍛造作業用アシスト装置の開発にも取り組んでいる。「中小企業のものづくり基盤技術の高度化に関する法律」(中小ものづくり高度化法)(*10)に基づく「特定研究開発等計画」の認定事業として、岐阜県のまこと工業と共同開発を進めており、“あとは購入してもらうだけ”という段階に来ている。

*10:「中小企業のものづくり基盤技術の高度化に関する法律」(中小ものづくり高度化法)に基づく「特定研究開発等計画」の認定を受けている。「エアハンマー鍛造作業者の熟練技能者継承のための作業負担軽減パワーアシストシステムの開発」として進められている。同法律は、中小企業のものづくり基盤技術の高度化を支援することにより、わが国製造業の国際競争力の強化および新たな事業の創出を図ることを目的としたもので、2006年6月13日に施行された。自動車産業、情報産業等の川下産業のニーズを踏まえた、鋳造やめっきなど特定ものづくり基盤技術に関する研究開発などの計画を作成することで、経済産業大臣(経済産業局長)の認定が受けられる。認定件数は、金型技術分野で60件、切削加工技術分野で48件、金属プレス加工技術分野で34件など、全国で399件、対象となる中小企業は708社。
まこと工業と共同開発しているエアハンマー作業に向けた鍛造作業用アシスト装置
エアハンマー作業とは、ハンマーで加熱した金属材料(ワーク)を叩いて成形しながら強くする工程である。おもに自動車の足回り部品の製造を請け負っているまこと工業の作業では、左右に粗成形型を、中央に仕上げ型をそれぞれ配置し、これら各金型の間を移乗させて成形を行っている。
ビデオ映像参照
  ワークが柔らかいため、また、ハンマーが上がるタイミングに合わせた、金型間でのワークの移乗が難しいため自動化を難しくしている。熟練作業者が「はし」と呼ばれる大型のヤットコを用いてハンドリングを行っているが、ワークの重量が大きいうえに、ハンマーが落ちる瞬間にワークを金型内に位置決めしたり、把持を少し緩めたりするといった微妙な調整が要求され、作業負荷が非常に大きい。それを軽減し、かつ熟練技能の発揮を目指して開発しているのが同装置である。

 開発した鍛造作業用アシスト装置は、パンタグラフ構造のアーム先端に把持機構を付加したもので、把持したワークの上下方向と回転(捻り)方向の動作をアシストする。ワークの把持は、グリップ上のスイッチのON/OFFで制御しており、この動作はパワーアシストをしていない。写真のように、右手でグリップを持ち、それに左手を添えて使用する。
 把持機構には力覚センサを内蔵しており、ワークを把持したときにグリップにかかった力を受ける位置に設置している。また、ワークを捻ったときに軸受部にかかる負荷も検知できるようにもしている。前者の上下方向にかかる負荷はエアシリンダーにより、後者の回転方向にかかる負荷は把持機構内のモータにより、それぞれアシスト力を発生している。この作業では、ワークが柔らかいために金型から離れないことが間々あり、ロボットアームを使用した場合、上型の上下動に伴いアームが損傷することが懸念される。エアシリンダーのストロークにより、上型の上下動に伴う衝撃を防ぐという意図から、このアクチュエータを採用した。
 上下方向は自重をキャンセルしつつ約10kgのアシスト力を発生し、回転方向は作業者の感覚に合わせてアシスト力を調整している。

遠隔保守サービス(遠隔操作) 遠隔保守サービス(アラーム情報転送)
パンタグラフ構造のアーム先端に把持機構を付加したもので、把持したワークの上下と回転(捻り)方向の動きをアシストする。ワークの把持は、グリップ上のスイッチのON/OFFで制御。左右に粗成形型を、中央に仕上げ型をそれぞれ配置し、これら各金型の間を移乗させて成形する。右手でグリップを持ち、それに左手を添えて使用する。 把持機構には力覚センサを内蔵しており、ワークを把持したときにグリップにかかった力を受ける位置に設置している。ワークを捻ったときに軸受部にかかる負荷も検知できるようにもしている。上下方向にかかる負荷はエアシリンダーで、回転方向にかかる負荷は把持機構内のモータでアシスト力を発生している。
 昨年、本サイトで紹介した段階では、タクトタイム(工程作業時間)が厳しく問われる工程であるため、採用に至るためには、それへの対応が必須であることを紹介した。いまでも10kg程度のワークでは、作業者だけによる成形作業の方が早いが、20kg程度のワークになると、作業者だけによる成形作業と同等のタクトタイムを達成している。現場作業者の高齢化が進んでおり、また、同装置の使用により、従来と同等のタクトタイムでありながら作業負荷を軽減できることを考えると、実作業への適用は近い。あとは購入を決定してもらうところにまで交渉を詰めているという。

 上述の認定事業は2008年度までだが今後も、まこと工業との共同開発を継続していくことを予定している。鍛造作業用アシスト装置の販売・サポートについては、同社と関係のある機械商社が担当することが決定している。普及に向けた道筋がつけられており、「鍛造作業用アシスト装置」という新たな市場を切り開くことが期待される。

(次回「PART2.考え抜かれたビジネスモデルを提示:ゼットエムピー:楽曲レコメンドサービス/JA三井リース:コマーシャリース」に続く)

■関連サイト
2009.02.12 アクティブリンク、全身タイプのパワー増幅ロボ公開、建設現場への応用を目指す
http://robonable.typepad.jp/news/2009/02/20090212-71e1.html

アクティブリンク 受託R&Dを軸に“松下の子会社らしく”大きく成長していきたい
http://robonable.typepad.jp/robot/2008/03/rd-6795.html

「MMSE 金岡克弥 人と機械との新しい関係構築のため、熟練作業者のスキルを生かす道具としてMMSEを普及させたい」
http://robonable.typepad.jp/robot/2007/12/mmse-mmse-1771.html