ロボナブル 2009年 12月特集
2009年版ロボットビジネス番付 -今年の注目記事から独自評価!-
【東関脇】「コマーシャリース」(JA三井リース)
 -広告宣伝費を原資にロボを普及する可能性を提示-
※JA三井リースは、2010年3月末日の契約期限満了をもってSegwayの販売を中止し、レンタルについても4月末日で終了しました。Segway事業からは完全撤退しました。

 東の関脇には、ロボット業界におけるプロバイダーとして活動するJA三井リースの「コマーシャリース」を選びました。
 コマーシャリースとは、同社の物件である「Segway(セグウェイ)」にかかるレンタル料を広告料収入で賄うことにより、ユーザー負担をゼロにするビジネスモデルです。広告クライアント企業の広告用ボードとホイールキャップをSegwayに取り付け、広告料収入によりレンタル料をゼロ円(「ゼロレンタル」)にします。さらに、十分な広告料収入を獲得できるレベルにまで発展したときには、「ユーザー還元」を行うことも視野に入れていいます。イベント主催者や、イベント会場および商業施設に向けた提案を想定しています。

 JA三井リースは、2007年10月のSegwayのレンタル事業を皮切りに、2008年4月には販売・リース事業を、8月にはTRY&BUYをそれぞれ開始。Segwayのレンタルおよびリース事業を拡大してきました。レンタルでのSegwayの普及が見えてきたことと、そのアイキャッチの高さを広告料収入に生かせるという判断から打ち出したのがコマーシャリースです。また、現状のSegwayのレンタル料金は、他の物件と比較すると物件価格に対して高額設定となっています。予算不足によりレンタルを断念したユーザーに配慮したいという考えもあります。

 コマーシャリースのコンセプトは、Segwayを物件として扱う以前より同社内であったようです。一般の目に触れる機会が多く、かつアイキャッチが高いSegwayの特徴と合致するとの判断から打ち出しました。まずはSegwayで成功事例をつくり、他のレンタル/リース物件にも拡大していくことを構想しています。

図1 コマーシャリースのビジネススキームおよび特徴


広告予算を原資にロボットを普及させる

 コマーシャリースで注目されるのは、まずSegwayの提供にかかる予算を企業の広告予算に求めていることです。
 一般にサービス業の企業広告は売上高の2%程度を占めており、例えば、SegwayをイベントでのPRとして利用した経験を持つ日本マクドナルドでは、広告宣伝費に年間約109億円(2008年12月期)を投入しています。確かに、2008年秋以降の経済危機の影響で各企業の広告宣伝予算は大幅に削減されていますが、それに伴い“選択と集中”が進展し、強い媒体への出稿意欲はむしろ増しました。日本マクドナルドが2007年8月末に「マックカフェ」恵比寿ガーデンプレイス店のオープンニングセレモニーでSegwayを“動く広告”として利用し、大きな話題になりました(*)が、特にイベントでは強みを持つ広告媒体として期待されるでしょう。

図2 コマーシャリースの特徴

 加えて、広告投資への判断基準は設備投資に対するものと比べると寛容という特徴もあります。JA三井リースでは、これを「おおらか」と表現し、そのような特性に目を向けたことに対し、「エポック」とまで表現しています。普段、企業の設備投資予算を原資に物件を貸し出している同社からすれば、扱いやすい原資だったと想像されます。そのためでしょうか、同社は「広告宣伝予算は、サービスロボを普及させる重要な原資になる可能性がある」とまで強調しています。

 また、コマーシャリースはレンタル業を変革する可能性があることでも注目されます。一般にレンタル業は、代金と引き替えに物件を一定期間貸し出しますが、コマーシャリースは「ゼロレンタル」を、さらには「ユーザー還元」を目指しています。一般的なレンタル業とは明らかに異なる業態を目指しています。
 Segwayに広告用ボードやホイールキャップを取り付けてPRする取り組みは、米Segway社でもなされてきましたが、あくまでレンタルの動機付けとしての提案にとどまるものです。それだけに、コマーシャリースのインパクトは大きいと言えます。

*:Segwayの広告媒体としての有効性があるのはもちろん、その利用は、搭乗者と来場者との良好な関係性の構築に寄与するのではと考えられている。Segwayの第一の特徴は、軽快な走行性にあるが、これに加え、搭乗者は非搭乗者(イベント来場者など)とFace to Faceで対話できる、新たなインターフェースも特徴として有している。また、そのアイキャッチの高さが、搭乗者の1つひとつの行動や仕草を目立たせるため、結果として搭乗者にモラールの向上を促し、来場者に丁寧な応対をさせるというメリットもある。Segway搭乗者によるチラシの配布率が比較的良いのは、Segway搭乗者による案内がきちんと、かつ丁寧になされたからなのではと推測されている。
 なお、公道走行が認可されている米国では、警官の巡回に利用することで、結果として、警官と市民との間で良好な関係が構築されていることが報告されている。Segwayの利用により狭い路地もくまなく巡回するというサービス品質の向上を促すと同時に、警官のモラールの向上およびFace to Faceによる市民との対話により信頼性の構築につながっていると見られている。この場合、結果として、犯罪率の低下にどの程度寄与しているかが問われるのだろが、少なくとも上述のイベントと類似の効果が認められると言えよう。

普及のための原資が示されないサービスロボ

 前節では、広告宣伝予算に目を付けた点を強調しましたが、ロボナブルではサービスロボットの普及にかかる原資を明示したことに注目しています。いまだに行政からの補助金に依存したロボット開発が多く、また事業性が不明瞭な提案が多い状況とは対照的です。
 JA三井リースでSegwayのレンタル事業に携わる機械本部 建設機械部の中井潤部長は、「ロボット政策研究会・次世代ロボット市場整理WG」などに参加した経験があり、事業性がないような提案を何度も見てこられてきたそうです。コマーシャリースは、このような現状に一石を投じる意図もあったのでは考えてしまいます。

 ところが、良いことばかりを並べてきましたが、コマーシャリースのビジネススキームはJA三井リースには必ずしもフィットするとは言い難いです。
 広告予算に目を付けるということは、すなわち同社ではほとんど経験がない広告営業に取り組むことになります。一般に広告代理店を絡めた営業活動を展開がなされますが、大手広告代理店を絡めてしまうと、それとの力関係上プロフィットを吸い取られてしまいます。これではゼロレンタル、さらにはユーザー還元も視野に入れる、コマーシャリースのコンセプトの達成は困難です。2009年は、第一段階として、同社が扱う物件に関連するイベント(例えば建設機械関連の展示会など)に参画したり施主に近い位置についたりすることで、コマーシャリースにトライすることを予定していました。が、世界同時不況の影響を少なからず受け、意図したように展開できなかったようです。

 ただ、コマーシャリースそのもののコンセプトはユニークですので、イベントの施主などビジネスパートナーを探すことができれば、十分機能するビジネスモデルに思われます。継続的な取り組みにより具体化することを期待しています。

■関連サイト
2008.12.01【RTフォーラム】JA三井、広告料収入により顧客負担をゼロにするレンタル戦略を披露
http://robonable.typepad.jp/news/2008/12/20081201-rtja-8.html

2008.05.09 三井リース事業(現JA三井リース)、セグウェイのレンタル・リース事業開始
http://robonable.typepad.jp/news/2008/05/20080509-5598.html

2009.04.01 セグウェイジャパン発足、横浜市などに次世代交通システムとしてSegwayを提案
http://robonable.typepad.jp/news/2009/04/20090401-segway.html