ロボナブル 2009年 12月特集
2009年版ロボットビジネス番付 -今年の注目記事から独自評価!-
【東横綱】
「Segwayによる未来都市交通モデル」(セグウェイジャパン)

 -環境を切り口に社会システムの変革を提案-

「番付の概要と目的」こちら

  今年は空前のエコブームを迎え、電気自動車(EV)に代表される電動モビリティへの関心が高まりました。ロボナブルでは、このような時流を捉えて環境に配慮した未来都市交通モデルを横浜市に提案したセグウェイジャパンの活動を東の「横綱」に選びました。

 都市交通におけるエコモビリティとして立乗り電動2輪車「Segway(セグウェイ)」の利用を推進するもので、駅前などにSegway専用のレンタルスタンドを設置し、カーシェアリングのように共有してもらうことでゼロエミッション交通システムの構築を提案しています。ユーザーや使用時間などの管理は、鉄道会社などが発行するICカードで行うことを予定しています。
 加えて、鉄道など公共交通機関の終端にSegwayや自転車などの「マルチモーダルステーション」を設置し、同時に観光ガイドを育成することで、観光客が市内に点在する魅力ある観光スポット(例えば、赤レンガ倉庫や山下公園、元町・中華街など)を行き来できる活性策も示しています。

 同社の提案は、「カーシェアリング」という時流に合致しており、かつICカードなど既存インフラの活用を想定していることに好感が持てます。何より、都市中心部や各観光スポットへの行き来などの短距離移動ではSegwayや自転車などを、中距離ではEVなどを、長距離ではガソリン車をという具合に、未来都市交通モデルの全体像(=マルチモーダルシステム)を示したうえでSegwayの役割を明示している点が評価されます。
 もともとSegwayは“未来”を感じさせる洗練されたデザインを備えていますが、「エコ」という社会トレンドを捉えた切り口から“未来都市交通”とうまく組み合わせた提案と言えるでしょう。

 また、「環境モデル都市」(内閣府)である横浜市と関係性を築きつつ取り組んでいることも評価されます。横浜市は「2025年までに市民一人あたりの排出量を30%以上削減(04年度比)」することを掲げています。内閣府に示した提案書『2-3.ゼロエミッション交通・世界戦略』ではSegwayの導入に加え、公道走行・駐車許可、EV特区認定による走行・駐車などの優遇措置などに関する規制緩和を記載しています。
 現時点では、道路交通法などの法規制によりSegwayの公道走行は認められていませんが、環境という切り口から公道走行の実現に迫る魅力ある提案と言えるでしょう。

 セグウェイジャパンでは、まずは横浜市にて未来都市交通システムを構築し、全国に拡大していくことを目指して活動しています。横浜市のほかにも北九州市などが環境に配慮した都市交通における移動手段として、Segwayの利用に前向きであるという話も聞かれます。

図1 Segwayによる未来都市交通モデルの概要(図はイメージとしてロボナブル編集部が作成した) 図2 Segwayによる未来都市交通モデルの特徴(図はイメージとしてロボナブル編集部が作成した)
ロボットの導入にはトータルでの提案が必要

 上述のセグウェイジャパンの提案から学ぶべきことは多くあります。中でも、ロボナブルが注目したのは「環境に配慮した未来都市交通」という価値提案に向けてシステムおよびサービス(ここでは複数タイプの電動車両、管理および運用モデル、人材育成、観光スポットというコンテンツ)を統合し、かつ、これらの多様なシステムの中でSegwayの役割を明確にしたことです。

 やや本題から反れますが、現在多くの製品がコンピュータ機能を搭載し、ネットワークを介してサービスを受ける媒体になっています。携帯電話をはじめとする組込みシステムはその代表であり、建設機械や工作機械などの各種産業機器も備えるに至っています。ゆえに、現在のモノづくりでは、製品が機能として持つハードウエアおよびソフトウエアに加え、ユーザーとのインタラクション、それを通じて提供されるサービスシステムを統合して検討することが求められていると言えます。“コンピュータのかたまり”と言えるロボット開発も同様で、ATRなどが取り組む「ユビキタス・ネットワークロボット」は、こうした動向を捉えた取り組みと言えるでしょう。

図3 セグウェイジャパンでは、環境に配慮した都市交通として各種交通システムやインフラ、さらには人材を組み合わせて提案を行っている。エコモビリティとしてのSegway単体の提案にとどまっていない。現在のロボットビジネスでは、各種システムやサービスを統合して価値提案を行っている例があまり見られない。

 今後、サービス分野に向けたロボットでは、複数ロボットと複数端末またはシステムとの連携を考慮した機能およびサービス提供を検討することが必要です。同時に、これにより、その中でサービスロボットが果たす役割を明確にすることも求められています。
 このような時代のモノづくりにおいて、セグウェイジャパンによる未来都市交通モデルの提案は、ある価値提案を行うためにシステムやサービスを統合して構想することの重要性を気づかせてくれたと考えています。

4つのフェーズで公道走行の実現へ

 そのほかSegwayの運用は、「乗車リテラシー」を培うという点でも注目されます。Segwayを活用した観光ツアーなどでは、参加者にはインストラクターによる講習を受けることが義務づけられており、操縦方法に加え乗車マナーも指導されます。ゴルフカートとして利用したい場合はラウンドの前日からゴルフ場に入って講習を受けるという徹底ぶりです。
 最近は、都市部における自転車の事故が増加しており、乗車マナーの悪さが問題視されています。にもかかわらず、乗車マナーが指導される機会はほとんどありません。講習を義務づけているSegwayの運用方法は、“未来都市交通におけるリテラシー”を育むうえでも注目に値します。

 セグウェイジャパンでは公道走行に向けて4段階のフェーズを経て取り組むことを表明しています。「フェーズ1」が観光施設や空港内などの私有地を対象にした導入。「フェーズ2」が社会実験としての導入で、これまでに紹介した横浜市への提案。「フェーズ3」がツアーや警備などを目的とした特区申請による導入。そして、「フェーズ4」が歩道での公道走行の実現です。現在は、フェーズ2と3の中間あたりに差しかかっていると言えるでしょう。
 同社では、2013年での公道走行を目標(*)としており、安全性確保に向けた各種データを取りつつ、特区申請や道路交通法の改正を経て実現することを目指しています。このように社会システムを変革しようとする同社の取り組みは東の「横綱」に相応しいと言えるでしょう。

(テキスト作成:ロボナブル編集部)

図4 Segwayによる未来都市交通モデルの特徴、そのほか環境ビジネスへの取り組み、公道走行に向けた展開

*:調査会社のシードプランニングは、同社の動向などを踏まえ、2013年よりSegwayをはじめとする立乗り電動2輪車市場が立ち上がると見ている。同年には1,000台、2018年には自転車の年間販売台数240万台の2%に相当する約5万台が普及すると予測。また現在、Segwayの1台当たりの販売価格は100万円程度だが、普及に伴い2013年には50万円程度に低価格化が進むと予想し、同年は5億円、2018年には250億円の市場規模になると算出している。詳しくはこちら。なお、セグウェイジャパンでは、日本国内では2009年8月時点で約1,000台が普及しているとしている(ロボラボトークセッション「セグウェイビジネスプラン募集 ~近未来モビリティが作る新たなビジネスの可能性」より)。

■関連サイト
2009.11.06 ロボラボ、Segway活用コンテスト最優秀賞にティーツーアル、ARによる位置情報提供
http://robonable.typepad.jp/news/2009/11/20091106-segway.html

2009.07.28 立ち乗り電動2輪車市場、2018年には約5万台が普及し250億円の規模に成長
http://robonable.typepad.jp/news/2009/07/20090728-220185.html

2009.07.21 セグウェイジャパン、7月下旬以降より使用段階のCO2排出量をオフセット
http://robonable.typepad.jp/news/2009/07/20090721-7co2-7.html

2009.05.15 セグウェイジャパン、Segwayの法人向け販売強化、300台の販売を目指す
http://robonable.typepad.jp/news/2009/05/20090515-segway.html

2009.04.01 セグウェイジャパン発足、横浜市などに次世代交通システムとしてSegwayを提案
http://robonable.typepad.jp/news/2009/04/20090401-segway.html