社会や暮らしの成熟に伴い、技術のみでは「新たな価値」として認知されにくくなっています。ロボットも同様の傾向にあり、いまの時代では「新たなモデル」の提示が必要とされています。
ここで言う、新たなモデルとは「新規性」「進歩性」に富み、また、技術と結合することで社会や暮らしに「有効性」を導くような仕組みやシステムを指します。そして、これを達成したものは「新たな価値」として、つまり「イノベーション」をもたらしたものとして捉えることができます。
「ロボナブル」では、2009年に扱った記事の中から、このような社会や暮らしに有効性を提示し、イノベーションをもたらすと判断される「ロボットビジネス」を番付として評価しました。なお、ここでのロボットビジネスは非産業分野に向けた提案のみを対象としています。
一般的に実施されている番付は、その年に社会や暮らしに影響を与えた製品やサービスに対し、評価・判定がなされています。本来なら同様に、社会や暮らしへの影響度を判定して評価すべきですが、非産業分野におけるサービスロボット市場の規模は2008年度実績で約77億円(富士経済調べ)とされ、影響を与えるレベルにはまだまだ到達していません。
今回は、次回実施予定の2011年に、世の中への影響度を判定して評価を下せることを期し、期待度を優先して、提案されたロボットビジネスの秀逸さで評価をしています。ロボットベンチャーが半数を占めたのは、そのためと捉えていただければ幸いです。

冒頭で番付を実施した目的を示しましたが、もう少し具体的に説明します。
2000年以降、非産業分野に向けたロボット、すなわちサービスロボットの実用化が期待され、2001年に発表された『21世紀におけるロボット社会創造のための技術戦略調査方向書』(日本ロボット工業会)では、2兆円弱の市場に成長することが予測されていました。ところが、2008年発表の『RTによる産業波及効果と市場分析』(日本ロボット工業会)では425億円へと、大幅に下方修正されました。先に紹介した富士経済の調査結果を参照すると、この修正数値にも遠く及ばないことが見込まれます。
これには複数の原因が考えられますが、「ロボナブル」ではテクノロジーやプロダクト側のイノーションと同様に、社会や暮らしに価値提案をし、収益を確保するビジネスモデル側のイノベーションがなされていないことにあると考えています。
わが国のロボット技術は、世界的に見てかなり高いレベルにあると言われています。定量的なファクトをあげると、2007年に経済産業省が発表した『平成18年度特許出願技術動向調査の結果について』が最もわかりやすいと思います。
1999年~2005年までの日本の特許庁へのロボット関連特許出願件数は13,276件に上り、うち日本企業からの出願が11,841件と89.2%を占めました。また、米国特許庁への出願件数7,302件のうち日本からの出願は24.1%を、欧州特許庁への出願件数では3,945件のうち日本からの出願が22.3%を、それぞれ占めたことが報告されています。わが国はロボット関連技術を十分確保していると言えます。
技術がない「無」の状態からは何も創出されませんが、技術がある「有」の状態であるにもかかわらず、具体的な製品やサービスとしてロボット関連技術の存在感を示せていないのは異常な状況です。
そこで、重要になるのがビジネスモデルです。技術がある「有」の状態を、製品やサービスとしても「有」の状態に変貌させる、つまりイノベーションが起きたかのように見せる役割を担っています。
また、それを達成したビジネスモデルは「新規性」「進歩性」を備えると言え、さらに、社会や暮らしに新たな価値提案ができたものは「有効性」を示したと言えるでしょう。冒頭で紹介した内容には、このような意味が込められています。

高度成長期では、技術の進歩が社会や暮らしの向上に直結したわかりやすい時代でした。しかし、いまは社会も暮らしも成熟し、製品やサービスも成熟の域に到達しつつあります。また、携帯電話に代表されるように、世の中の製品の多くがコンピュータ機能を持ち、ネットワークを介して「サービス」を受けるツールに変貌しています。それが備える機能に加え、それを通じて提供されるサービスも統合して構想を練ることが現在のモノづくりには求められています。
繰り返しになりますが、技術のみの提示では、新たな価値として認知されにくい時代にあります。
サービスロボットは、このような時代に向けて新たな製品またはサービスとして提示するからこそビジネスモデル側のイノベーションが必須であり、それが達成されたときに同市場の発展があると確信しています。
2009年に扱った記事の中から製品単体に加え、ビジネススキームを評価して選定しました。上述の通り、社会や暮らしに対し有効性を、つまり価値ある提案を行ったロボットビジネスを選んでいます。また近い将来、持続的に収益が上げられるか否かも判定に加えています。したがって、「新規性」「進歩性」「将来性」「持続性」をキーワードに評価しています(「番付の目的①」参照)。
ただし今後への期待を重視したことから、販売台数や導入台数といった実績は加味していません。異論百出になることが予想されますが、実績評価は「『今年のロボット』大賞」できちんとなされているので、ここでは上述の問題提起を踏まえた「ロボナブル」独自の評価にこだわって判定しています。
なお、「東小結」に富士重工業の清掃ロボット事業を選んでいますが、2006年の「今年のロボット」大賞をはじめとする受賞実績を踏まえると、実績評価では横綱クラスになります。ある問題提起をするうえで同社の取り組みは有益であると判断されるため、番付に加えています。詳細は、同社の取り組み内容を参照して下さい。