2006年度~07年度の2カ年にわって取り組まれた「サービスロボット市場創出支援事業(*1)」(経済産業省)を通じて、いくつかのロボットがサービス現場に適用された。現在、経産省にて報告書がまとめられており、2009年の早い時期に成果発表会が開催される予定になっている。
産業振興を使命とする同省の立場を考慮すると、また『今年のロボット大賞』において「導入台数で受賞が決定しているふしがある」(ある応募企業の開発担当)という声などから、「導入台数をもとに同事業の成果をはかるだろう」(同)と言われている。しかし本来、問われるべきは、サービスロボットを導入した企業が、それによってプロセス革新を達成し、経営課題を克服したか、である。自社の競争力アップに結び付け、業界内でのプレゼンスを高める例が出てきたときにはじめて、サービスロボットが評価されるはずである。
今月は、サービスロボットを導入したサービス事業者、また導入を進めつつあるサービス事業者が、どのような経営課題を抱え、サービスロボットの導入を機に、それを克服したのか。その実例を取り上げる。すでに導入を果たしたビー・エム・エル、住友商事(住商ビルマネージメント、エス・シー・ビルサービス)と、これから導入を進めるアサンテと西日本高速道路メンテナンス関西の例を紹介する。サービスロボット市場そのものが黎明期にあり、競争力アップにつながったというわかりやすいストーリーではないが、いずれの企業も、サービスロボットの導入に伴いプロセスを変革し、それぞれの経営課題を克服している(しようとしている)。
また最後に、これらの事例から、ロボット開発企業がサービス事業者への提案時に留意すべき点を考察してみる。4月特集「失敗するロボットビジネス 成功するロボットビジネス」(http://www.robonable.jp/monthly/2008_04/index.html)の続編として読んでほしい。
*1:ロボットメーカーとサービスプロバイダー、想定されるユーザーがチームを組んで、使えるロボットを開発するプロジェクト。平成18年~19年度の2カ年の事業として展開されている。9つの事業テーマが採択されている。http://robonable.typepad.jp/news/2006/11/20061110__20cd.html
本来は夏までに成果が公開される予定だったが、成果発表会の開催が明記されていたため、その開催の調整を行っている。来年の早い時期に開催される予定という。
●10年がかりのプロジェクトで経営革新を目指す
シロアリ防除サービスでは、すべてのプロセスを人が担っており、投入する人員がサービス品質および売り上げに影響を与える。一般にはトレーニング(人材教育)により、これらの向上が図られているが、これだけでは飛躍的に拡大させることは難しい。また、こうした取り組みがコストアップにつながるという側面もある。
そこで、アサンテでは各種RT(Robot Technology)の導入によりサービスプロセスを刷新し、経営革新を図ろうとしている。そして、『次世代シロアリ防除サービス業(*2)』へと変貌を遂げることで、業界内でのプレゼンスをより高めようとしている。
同社のシロアリ防除サービスは、大きくは営業スタッフ、技術スタッフ、アフタサービス担当(CS担当)の3部隊により提供されている。おおまかな流れを説明すると、次のように整理される。
(1)営業部隊が一般家庭に訪問し、事業PRや床下点検を勧めることから始まる。営業は飛び込みが多くを占める。
(2)興味を持った相手には床下点検を実施し、家屋の状況報告と併せて、改善に必要な処置と費用などを説明する。希望があれば見積もりを行う。契約に至れば、建物構造や被害状況などの詳細を技術スタッフに申し送る。
(3)技術スタッフは、班長とサブの2人1組で訪問し、施工(防除作業)の準備に取りかかる。再度、被害状況や家の間取りなどを確認して営業スタッフから得た情報との誤差を修正し、必要な薬剤散布量などを算出する。
(4)木部処理(穿穴処理・散布処理)、土壌処理を実施し、玄関や風呂場など床下に潜れない個所は、部屋の中から処理作業を行う(*3)。一連の作業が終了すれば、班長が床下の状況や処理方法などを説明。施工確認書に確認印をもらって作業は終了する。
(5)あとは、CS担当が業務を引き継ぎ(*4)、保証期間である5年間は、施工を実施した前後1カ月の間に訪問して保守点検を行う。万一被害があれば、その場で再度施工を行う。技術スタッフによる施工後、計4回訪問する。
(6)最終年となる5年目の点検時に再度、処理の継続を提案。保証期間の満了を迎えて、一連のシロアリ防除サービスは終了する。
なお、実際の防除サービスは、さらに細かく、かつ複雑なサブプロセスから構成されることを断っておく。
*3:木部処理では、まず班長が床下に潜って木部に穴を開け(穿穴処理)、サブが薬剤を持って追跡し、穴に薬剤を散布する(散布処理)。土壌処理ではサブが床下に潜って行い、併行して、班長が部屋の中から処理を行う。
*4:施工終了1週間後に挨拶を兼ねて、営業や技術スタッフの対応に不備がないかどうかを、アンケート調査を通じて確認している。
アサンテでは、シロアリ防除ロボット開発のプロジェクトメンバー(*5)とともに、このような一連のサービスプロセスを洗い出し、収益の向上につながるプロセスを抽出して、作業の再編成を図ろうとしている。プロセス全体の再設計(リエンジニアリング)を睨みつつ、各種RTをどのようなタイミングで導入すれば再編成が達成できるのかを検討している。
その一例が、「4月特集」で紹介した、営業効率や作業品質を向上するためのRTの導入である。床下点検ロボットと連動した映像配信システムの導入は顧客の安心感や信頼感の獲得につながり、成約数のアップが期待される(*6)。また、床下点検ロボットに薬剤ノズルを搭載し、処理させることにより、作業員の手が届かないような遠い個所や手が入らないような狭い個所でも散布できる。施工精度の向上も期待される。
![]() |
![]() |
![]() |
| 床下作業ロボット「ミルボ1」。作業員との協調作業を前提に開発している。 | カメラを搭載する協同ロボット。約40~200cmの範囲で、伸縮できる。 | 壁内作業ツール。ライン端子接続により家庭用TVに映像を映すことも可能。 |
![]() |
![]() |
![]() |
| ミルボ1のコントローラ。ディスプレイユニットとコントロールユニットから構成。 | 「ミルボ3」は作業者の代替を目的としており、床下点検と薬剤噴霧の両機能を搭載する。 | ミルボ3のコントローラ。ミルボ1のものと同様2本のレバーで操作できる。中央の赤いボタンは非常停止ボタン |
上述の通り、同社では施工後5年間は年1回の定期点検を無料で行うことを保証しており、万一、保証期間内にシロアリの発生が確認された場合は、無料で再処理を行っている。施工精度が高まれば再処理の実施回数が下がり、収益の改善につながる。そればかりか、顧客との信頼関係の構築にもつながり将来、施工が必要なときに再度、アサンテを選択してくれることも期待される。顧客満足の格段な向上が見込まれる。
*5:「サービスロボット市場創出支援事業」での参加企業・団体は次の通り。アサンテ(受託事業者)、アサヒ電子研究所(通信システム開発)、国際レスキューシステム研究機構(ロボットシステム研究開発)、RTソリューション(プロジェクト総括・ロボット製造責任者)、MHIソリューションテクノロジーズ(カメラ関連部品製造)、スリーディーデータ(各種計測システムの導入検討・性能試験)、安全工学研究所(安全工学に基づく安全認証指導)。さらに、以下はアサヒ電子研究所と再々委託というかたちで参画している。ナカタテクスタ(ロボット本体製造)、スリーS電器製作所(制御部品製造)。現在は、新たな企業や研究機関の参加を含め、開発グループの再編成を進めている。
*6:シロアリ防除業界は、一部悪徳業の詐欺行為により、業界全体が好意的に見られているわけではない。そのために、成約に至る確率が低く、ひどい場合は、数百回もの営業をかけて1件程度の確率とも言われている。床下点検ロボットと連動した映像通信システムでは、被害状況を顧客や、遠隔地に住む顧客の家族にも映像配信をしたり、本部にいる専門家とやり取りしたりすることができ、説得力および信頼感のある営業を可能にする。
●点検作業・履歴情報の保存に必須の図面化が課題
現在、アサンテでは、まず顧客価値の創出に寄与するプロセスへの各種RTの導入を検討している。同時に、作業チームの負荷を軽減し、作業効率のアップに寄与するプロセスへの各種RTの導入も考えている。そのうえで、各種RTを導入したサービスプロセスへと再構成することを狙っている。
同社の近況を紹介すると当初、2010年度中に現場で稼働させることを予定していたが、「少々先送りになる可能性がある」(西山敦総務部長)という。
おもに技術的な課題に起因するものであり、まず1つは操作性の問題である。現在のシステムでは、1人の作業者で床下点検ロボットを操作しつつ、顧客に説明をするのが難しいシステムになっている。技術スタッフは2人1組で行動するため問題はないが、1人で行動する営業スタッフが利用するのには負担が大きい。期待される営業の効率化を難しくしている。
もう1つは、建物の図面や間取り情報を保有していないことである。住宅メーカーが取り組む床下点検ロボットでは、彼ら自身が図面を保有しているので問題にはならないが、新規顧客にサービス提案をするアサンテの場合、自分たちで図面化する手間がある。多くの家庭では図面を保管していないため必須の作業になる。
現在の図面化の作業は、まず営業スタッフが営業時に建物のおおよその図面を描く。その情報を技術スタッフが引き継いで詳細に図面化。最後に、CS担当が点検時に増改築の情報を添記する、という手順で進められる。営業段階では各部屋に入ることは難しいため、施工時に技術スタッフが間取り情報の詳細を収集している。
詳細な図面がないために営業段階での床下点検ロボットの利用を難しくしている。また、部屋の間取り情報とロボットが捉えた映像、点検内容をリンクして履歴情報として残すことも困難にしている。
![]() |
![]() |
| ミルボ3が撮影した映像を表示しながら、床下の状況を説明。7月7日に初めて顧客の家庭で走行させた。このときは営業スタッフが作成した図面を技術スタッフが詳細化し、これを頼りに走行させた。 | ミルボ3が捉えた床下の映像。きれいな映像で顧客には好評だった。ただし地図情報が同時に表示されないため、家のどの位置の映像なのかがわかりにくい。 |
プロジェクトでは、土木構造物や建築物などの計測を得意とする3Dデータ(*7)というベンチャーを参画させたが、彼らの計測技術では高精度な図面が得られる反面、計測に約半日を要し、その図面化には翌日まで待たなければならない。営業段階で利用できる簡便さを備えていない。図面の問題は「床下点検ロボット運用する以前に、重要な問題になるかもしれない」と、HA事業部 小林正志技術課長は話す。
こうした事情もあり、開発したシステムを適用しやすいプロセスとして、飲食店や病院の衛生管理を担う「トータルサニテーション(TS)部」での利用を検討している。具体的には、システムの1つとして開発した「壁面作業ツール」の利用を目指している。シロアリ防除では天井まで確認作業を行うが、各種システムを抱えた状態での作業の安全性を検証し切れていないという事情もあってのことである。
アサンテのプロジェクトでは技術的な課題を抱えており、まだまだ道のりは長い。が、顧客価値をきちんと捉えた各種システムの導入検討や、サービスプロセスのリエンジニアリングを視野に入れた段階的な取り組みなど示唆に富む内容が多いと言える。
![]() |
サービスプロセスのフロントステージとバックステージを整理したうえで、顧客価値の創出につながるプロセスを捉えている。さらに、サービスプロセスの再構成を視野に入れた取り組みを展開している。 |
*7:3次元レーザスキャナを用いて土木構造物や地形、建築物などを計測するベンチャー。3次元レーザスキャナとは、レーザによる計測対象物とセンサとの間を、レーザパルスが往復する時間を計測することで距離を計測し、同時にレーザビームを発射した方向を計測することで、計測対象点の3次元座標を取得する計測器である。その原理は、レーザが測定対象物で反射して帰ってくるまでの時間から距離を算出し、同時にレーザの移動方向角度から角度を算出して、得られた距離情報と角度情報から3次元位置情報を求める、というものである。
●リスク回避を狙い次世代ラボを構想
ビー・エム・エル(BML)では、2006年より臨床検査サービスの検査工程(BML総合研究所)にて、松下電工の検体搬送ロボットシステム「HOSPI-AL(Auto Loader)(*8)」を利用している。血液検査検体の受け取りから自動分析装置へのセッティング、検査後の回収という一連の検体の受け渡し、その間の搬送業務を担っている。生化学分析工程に10台、血液学分析工程に5台の計15台を運用している。
![]() |
![]() |
| ビー・エム・エルが導入した血液検体自律搬送ロボット「HOSPI-AL」。群れで動いて血液検体をフレキシブルに搬送する。最初に10台を、次に5台を導入。計15台が稼働している。レーザレーダを1個、ジャイロセンサを1個、バンパセンサを本体全周に2段搭載。ジャイロセンサは、ロボット本体の向きを検知するために利用している。また、血液検体の受け渡しを確実にするためにオートローダー機能を搭載。これにはXY方向に加えて回転方向に調整する機構が付加されている。 |
血液検体は自動分注システムにより、写真のようなチューブに小分けにされる。100検体を収納したトレイで自動分析装置に搬送される(HOSPI-ALは2つのトレイを収納して搬送)。ここで5検体を収納したラックに切り離して自動分析装置に投入される。 |
臨床検査サービスのおおまかな流れを整理すると、次のようにまとめられる。
(1)まず、全国87個所の営業所を通じて、顧客となる医療機関より血液など検体を集荷する(BML総合研究所では埼玉近郊の病院などから集荷)。
(2)集荷した血液検体はバーコードを読み取り、依頼された検査項目を検索する。バーコードにはID情報が入っており、ホストコンピュータにて患者名や医療機関名などが照合される。
(3)検査前処理工程に入る。遠心分離器にて、血液検体を血清と血餅に分離。自動分注システムにより、検査項目に合わせて血清を小分けにする(*9)。
(4)小分けした血清検体を検査室に搬入し、検査工程に入る。自動分析装置にて各種検査を行う。100検体を収納したトレイで搬入され、5検体を収納したラックに切り離して自動分析装置にかける。
(5)得られた検査結果を確認した後、ホストコンピュータで集計・整理して各医療機関に納品する。
(6)検査を終えた血液検体は、自動倉庫(*10)にて2週間保管する。契約した保管期間を過ぎれば焼却棟にて焼却・廃棄して、一連のサービスが終了する(*11)。
*9:BMLでは、(3)のバーコードシステムとの連携で依頼情報に沿った自動仕分け・分注を行う検査前処理工程を「フロンティア」と、(4)の検査工程を「シンフォニー」と表現。また後者の工程で、生化学分析のラインを「シンフォニー・ケミストリー」と、血液学分析のラインを「シンフォニー・ヘマトロジー」とそれぞれ表現している。
*10:自動倉庫システムは253万本の収納が可能という。追加検査の依頼があった場合は、残っている検体を用いて再度検査を行う。
*11:集荷した血液検体は個人情報そのものであるため、保管・廃棄工程までフォローする必要があり、これらの業務を含めて、各医療機関と契約を交わしている。
血液検体の集荷は夕方になされ、検査前処理工程を経た後、検査室に随時搬入される。検査は0時から7時~8時までの夜間に実施され、朝の早い段階で各医療機関に納品される。生化学分析の場合、多い日で約6万の患者数の検査依頼が寄せられ、通常1人当たり10項目の検査依頼がなされることを考慮すると、夜間で約60万の検査が実行される計算になる。
顧客となる各医療機関では、納品された検査結果をもとに診断や治療を行うため、納期の遅れは許容されない。それにかかわるリスクをいかに回避するかが大きな経営課題であり、構想されたのが「次世代ラボ」である。
●フレキシブルな検体の流れを設計
次世代ラボとは、工藤康之検査本部長によると、「オートメーション化され、かつその時代にあったフレキシブルなラインを構築できるラボ」と表現されている。次世代ラボ構想は、(6)の血液検体の保管・廃棄までの工程を含めたものであり、自動倉庫システムの設置も含まれている。
BMLでは以前より、検体の取り間違いをはじめとするヒューマンエラーの回避をおもな目的に自動化を図っており、すでに旧検査工程で実現していた。そこで今回、上述のリスクを回避するアプローチとしてキーワードになったのが「フレキシブル」である。
旧検査工程の流れを整理していくと、まず搬入したトレイを軌道台車に送り込む。軌道台車により各ストッカに均等に配られ、ラックの状態に分離されてラインに送り込まれる。次に、軌道台車により均等にストッカに配られたトレイは、ラックに切り離された状態で搬送ラインに送り込まれ、自動分析装置に搬送される。検査を終えた血液検体はラインで回収され、回収トレイを経由して搬出される、というものである。軌道台車は1台で各ストッカへの搬送を行っている。また、各ストッカには4台の自動分析装置がつながっており、ストッカがこれらの管理を担っている。
![]() |
旧検査工程での血液検体の搬送イメージ。軌道台車により各ストッカに血液検体を均等に搬送する。ストッカにてラックに切り離されて搬送ライン(コンベヤ)に送り込まれ、自動分析装置に搬送、セッティングされる。各ストッカは4台の自動分析装置を管理している。 |
このようなシステム構成、検体の流れであるために、【1】台のストッカが故障すると、下流に位置する4台の自動分析装置が使えない、【2】均等に搬送されるため、自動分析装置に遊びが発生する(稼働率の低下)という課題を抱えていた。機器の故障は想定されるリスクであり、また、納期の確実性を考慮すると、これらの克服は必須である。
加えて、【3】需要の変動に柔軟に対応できない、【4】自動分析装置のリプレースおよびレイアウト変更が困難、という課題もあった。
そこで、HOSPI-ALを導入した検査工程では、次のようなシステム構成、検体の流れに改めている。
生化学分析ラインを例に紹介すると、まず搬入されたトレイを3つのスタート(供給)ストッカに均等に搬入する。搬入作業は2名のアルバイトが行っている。次に、搬入した信号を発信すると、HOSIPI-ALがスタートストッカから2つのトレイ(計200の血清検体)を回収し、空いている自動分析装置に搬入、セッティングをする。トレイはラックに切り離されて順次自動分析装置内検査がなされる。そして、検査を終えると自動分析装置から終了の信号が発信され、HOSPI-ALがトレイを回収し、エンド(回収)ストッカに搬送する。
![]() |
HOSPI-ALを利用した検査工程での血液検体の搬送イメージ。スタートストッカから2つのトレイを回収し、空いている自動分析装置に搬入、セッティングをする。検査が終了すると、自動分析装置からトレイを回収し、エンドストッカに搬送する。自動分析装置は独立して稼働しており、またHOSPI-ALは空いている自動分析装置に次々と搬送するため、フレキシブルな搬送が可能になっている。 |
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
| (1)スタートストッカの一例。 |
(2)自動分析装置の搬入口(「IN」と表示部)と搬出口(「OUT」と表示部)。 | (3)自動分析装置の一例。 | (4)自動充電装置。充電ソケットを移動させて、HOSPI-AL側の挿入口を探索して接続。 |
各自動分析装置は独立して稼働するように変更されている。また、各血液検体はバーコードシステムにより管理されているため、HOSPI-ALはどの自動分析装置にトレイを搬送・セッティングしてもよいことにしている。新しい検査工程のイメージは「いわば、ライン生産からセル生産へと移行したようなもの」(工藤検査本部長)で、血液検体の流れにフレキシビリティを持たせた検査プロセスへと改めている。
なお、HOSPI-ALは、そのプロセスと合致する搬送システムとして開発されており、ストッカや自動分析装置などとの連携、システムの実装はBML自身が行っている。
このようなプロセス革新により、【1】~【4】の課題を克服し、納品に影響を与えるリスクを格段に低減している(*12)。そして、各医療機関の信頼感の獲得に結び付けている。
*12:万一、すべてのHOSPI-ALが稼働不能になったとしても、代わりに人が自動分析装置に搬送できるような構成にしている。リスク分散が徹底してなされている。
4月特集でも取り上げたが、ロボットビジネスの成功例として紹介される富士重工業は、パートナーである住友商事の物件である神田和泉町ビルで約1年間をかけて実証実験を行った。富士重工業の技術レベルと住友商事側の要望との擦り合わせを経て、晴海トリトンスクエア(X、Y、Z棟のオフィスタワーとW棟から構成)に計7台の清掃ロボットシステムの導入を果たした。よく知られる、廊下の壁際20cm以内は人が清掃するという人と清掃ロボットとの役割分担は、このときの擦り合わせを通じてなされたものである。
また、ビル管理会社の住商ビルマネージメント、ビル清掃会社のエス・シー・ビルサービス(SCB)(*13)などビル事業に関わるグループ企業を総動員して、業務内容の変革を図ったことでも知られる。
![]() |
晴海トリトンスクエアで清掃作業を行う清掃ロボット。計7台が稼働している。障害物センサを搭載しており、これを回避しながら障害物の裏側まで自律的に清掃ができる。清掃能力は最大3,000m2/h。1回の充電で3時間以上の連続作業が行える。清掃の高効率化、清掃レベルの均一性などに寄与している。 |
*13:SCBでは住友商事が入居しているY棟の16階より上と2階より下の階を担当している。一部W棟、Z棟も清掃も担当している。清掃業務の委託は、ビルのオーナーである管理組合が決定しており、住商ビルマネージメントシステムへ、SCBという流れで委託されている。住商ビルマネージメントは、清掃品質やコストなどオーナーとの調整役を果たしている。SCBが使用する清掃ロボットは同社が購入しており、当時の購入価格は、システム開発費を含めて700万円(ロボット本体が600万円)。
●従来手法にない新たな清掃プロセスが必要だった
清掃ロボットを導入した背景(*14)には、ビル管理に焦点を当てると、管理コストの低減と品質維持を両立させる課題があった。坪当たりの共益費の単価を目標5,000円程度に定めていたが、「従来の管理手法をそのまま適用すると、試算では6,800円程度にもなっていた」(住商ビルマネージメント 井澤勇八部長)。これには管理にかかる人件費や各種道具類のほか、エレベータの保守点検なども含まれるわけだが、トータルでの新たな試みが必要とされていた。
清掃に言及すると、トリトンスクエアは延面積約67万㎡にもなり、試算上、朝の清掃だけでも全体で300~400名程度の清掃スタッフの確保が求められた。もともと晴海地区をはじめ臨界地域は、清掃スタッフの人員確保が難しいという事情を抱えていたが、一方で、住友商事本社ビルという性格上、オーナー(管理組合)側より清掃品質(美観)を継続的に維持するという課題がかせられていた。清掃回数の削減をはじめ清掃仕様(*15)の変更などにより、効率化を図るという手段を選択することができなかった。
また、仮に清掃スタッフを確保できたとしても、トリトンスクエアのフロア形状を考慮すると、作業効率が低下することが予想された。清掃スタッフが他階に移動する場合、左右の非常用エレベータを利用することになっているが、そのために、清掃スタッフ同士でのエレベータの取り合いが発生する。シミュレーションではスタッフ1人当たり「1,000m2の床面の清掃に2.5~3時間程度も要する」(SCB 宮田敏紀 環境事業部 課長代理)とのことで、「建物の形状に当てはめて試算すると、それ以上の作業量が見込めなかった」(同)。
このように、従来手法とは異なる清掃方法が必要とされ、清掃ロボットの導入を前提とした清掃プロセスが組まれることになる。もちろん、清掃ロボットの導入は、1人当たりの作業量や人件費との比較、清掃スタッフの採用や教育といった労務管理にかかるコストなど、総合的な判断によりなされたものである。
*14:晴海の再開発プロジェクトのレベルで見た場合、トリトンスクエアに清掃ロボットが導入された背景には、思いときっかけが挙げられる。前者は、住商にとって同地区の再開発が21世紀最初のビッグプロジェクトであり、総合商社らしい“最先端な取り組み”が必要という思い。後者は、プロジェクトリーダーの井上弘毅氏がたまたま羽田空港で清掃ロボットを見かけたことである。これを機に、最先端な取り組みの1つとしてビル清掃への応用を考えるに至る。
その後、調査した結果、そのときの清掃ロボットが富士重工業が開発した試作機だとわかり、やがて両社が連携を図ることになる。
*15:一般には、東京ビルメンテナンス協会などが発行している「建物清掃標準仕様」を参考に仕様が検討されている。例えば、清掃ロボットが担当する「共用」(対象場所:廊下・エレベータホール)区域で記されている仕様では、例えば繊維床の清掃では、日常清掃は、真空掃除機による集塵とカーペットスイパーよる粗大ゴミ回収を1日1回、定期清掃はしみ取りを月2回、スッポトクリーニングを月1回、全面クリーニングを年1回、それぞれ行うことになっている。
●自動化により作業者をアシスト
現在のトリトンスクエアでの清掃手順を整理しておくと、おおまかには次のようにまとめられる。
共用部(廊下・エレベータホール)の清掃を担う清掃ロボットの作業は毎晩、23時より順次開始される。1名のオペレータが所定の位置に清掃ロボットをスタート位置に設置し、スタートボタンを押して清掃を開始する。清掃エリアは特殊フロアやハードフロアを除き、Y棟は3階~最上階まで、Z棟は3階~33階まで、W棟は4階~19階までの共用部をそれぞれ清掃する。清掃ロボットは、それぞれのエリアの清掃を3時間程度で終了し、2時~3時の間に順次終了する。清掃を終えた清掃ロボットは保管庫に収納し、次の清掃に備えて充電を行う。その間、オペレータは1人で7台の清掃ロボットの管理を行う。
清掃ロボットは、エレベータとの連動による垂直移動機能を備えており、これにより低層から高層まで同様のフロア形状が連続する共用部の清掃作業の自動化が図られている。ゆえに「エレベータ連動清掃システム」という捉え方がなされている。
ただし既述の通り、壁際20cmは清掃しない仕様になっており、このエリアはあまり汚れないことから、週に2回作業スタッフが掃除機で清掃している。エレベータの搭乗口や共用部と専用部の境界部については汚れやすいため翌朝、清掃スタッフが清掃をしている。
![]() |
![]() |
![]() |
| エレベータと連動したシステムとなっており、低層から高層まで垂直移動ができる。 | エレベータ側の信号受光部。清掃ロボットより呼び出し信号を発信。到着信号を確認するとエレベータに乗り込む。 | 清掃階選択スイッチ。駆動輪によるカーペットのへこみを軽減するよう、曜日ごとに走行する軌跡を変更する機能も備える。「清掃区域ボタン」の曜日ボタンを押すだけで設定できる。極めて簡単な操作系になっている。 |
一方、清掃スタッフによる清掃作業は、就業時間前の早朝に重点的に行われる。専用部の床面清掃、ゴミ収集、机上の清掃のほか、トイレ・洗面所や湯沸室などの清掃を行う。ビルのオーナーと交わした契約(清掃仕様)に基づいて実施する。玄関や階段など、必ずしも朝での実施が求められていない個所は、夕方近くまで時間をかけて行う。また夜間の清掃は、就業時間後の18時~21時前後の間に実施する。清掃スタッフによる清掃作業は、清掃ロボットの稼働時間と重複しない時間帯に行っている。
従来の清掃作業と単純に比較すると、共用部の清掃を、清掃スタッフが掃除機を用いて行うイメージになる。清掃ロボットの清掃能力は最大3,000㎡/hあり、1台につき清掃スタッフ3人分程度の能力を備えるとされる。単純に計算すると、計20名程度の作業量を清掃ロボットが担っていることになるが、宮田課長代理が当初シミュレーションした内容を考慮すると、それ以上の効果(*16)を得ていると推測される。
*16:人の場合、清掃に取りかかるまでに作業着に着替えたり、掃除機の準備をしたりするロスがある。またパートの清掃作業員の場合、多くは短時間労働であるため、交代時のロスがさらに発生する。これらを考慮すると、その清掃能力にはプラスαが見込まれる。
これだけに着目すると、コストメリット(*17)ばかりが注目されるが、継続的な清掃品質の維持という課題を考慮すると、次のような見方ができると思われる。つまり、共用部の清掃作業を自動化することにより、この部分の清掃品質を安定し、かつ人員の確保やスキルの平準化など清掃スタッフに起因する不安定要素の低減に寄与している。また、清掃スタッフが専用部などの清掃に専念できる環境を構築している、である。
よくサービスの専門家より、「作業(サービスプロセス)のどの部分を機械に置換し、結果として品質・顧客満足が向上または安定・効率化するのか、従業員の負担が結果として減るのか、そしてできた余裕でサービス・コンテンツをリッチにできるかを見極める必要がある」(産業技術総合研究所 サービス工学研究センター)という指摘がなされるが、そうした見極めができていると言えるだろう。
トリトンスクエアの清掃作業では、これまでに何度か仕様変更がなされているが、「(品質に関わる)清掃の実施回数にまでは手を付けていない」(SCB 宮田課長代理)。当初より求められていたとはいえ、このような清掃プロセスにより、人員の確保が難しい環境でありながら、コストの低減を図りつつ継続的な清掃品質の維持に結び付けている。そして、ビルオーナーの要求(*18)に応えているのである。
*17:清掃管理のコストについては、清掃時間、床材との相性、清掃スタッフ、ビル管理者などを包括的に捉えて、最適なシステムとして組み上げることで低減を図っている。
*18:単純にコストを重視するのか、品質を重視するのかなど、それともセキュリティを重視するのかなど、「清掃業務を発注するビルオーナーの考え方によって仕様は変更する」と、SCBの宮田課長代理は話す。ただ、「新規に清掃業務を受託する場合は、多くはコストが重視される」という。
これを踏まえ、宮田課長代理は私見としながらも、「清掃ロボットを第一に売り込む先はビルオーナーなのでは」と話す。「清掃ロボットを導入した場合のコストメリット、初期投資にかかる費用など、オーナーを巻き込んでの見積もりを提示したうえで購入してもらい、オーナーが委託する清掃会社に清掃ロボットを与えるという流れで売り込みができれば広がるのでは」と説明する。
西日本高速道路メンテナンス関西(NEXCOメンテナンス関西)は、高速道路のサービスエリアやパーキングエリアでのトイレ清掃に向けて、清掃ロボット「LadyBird」を導入しようとしている。昨年11月に発表したモデルは、水や洗浄水を排出してブラシで床面を磨きながらゴミをかき取り、たまった汚水をバキュームで吸い上げる従来掃除機の機能をベースに開発したものである。おもにトイレの床面清掃に適用することを想定している。
![]() |
テントウムシ型のトイレ清掃ロボット「LadyBird」。サイズは800(幅)×1,350(奥行き)×1,000mm(高さ)。触覚がマイクになっており、話しかけると返事をするほか、インターネットに接続して渋滞情報やサービスエリア近隣の観光情報を案内してくれる。コミュニケーションを通じて、トイレ清掃およびサービスエリアのイメージアップを図る役目も担う。(写真提供:知能技術) |
●労働力の確保と品質の安定化が課題
清掃ロボットの開発は、「高速道路作業環境改善協議会(*19)」の開発グループ「3Jロボット開発集団(ディアロボ関西)」の枠組みにて進めている。同グループは、人手による3K作業を軽減し、上質で効率的な業務をロボットにより提供をすることを目的に結成されたもので、3Kの一歩前を進んで3Kを克服するという意図から「K」の1つ前の「J」をグループ名に付けている。
*19:トイレ清掃ロボットに加え、車線規制区域に侵入する車を検知し、工事従事者に避難警報を発し同時にドライバーに警告を出す車両型ロボット「仁王」も開発している。高速道路で保全工事を行う際、現場の1,500m手前から工事注意の標識を立ててドライバーに注意を喚起し、標識車の手前300mから走行車線変更の誘導をして作業エリアを確保している。しかし、脇見運転や居眠り運転でドライバーが標識に気づかずに、規制エリアに進入してくる事故がある。この開発も3K作業の軽減という視点から取り組んでいる。
清掃ロボットの導入を検討した背景(*20)はまず、上述の3K作業の軽減に関連する、将来の労働力の確保という課題が挙げられる。
現在、サービスエリアやパーキングエリアの清掃作業は、比較的高齢の清掃スタッフ(女性が多い)が担当している。冬場の清掃作業は負荷が大きく、彼女たちの作業負荷の軽減も必要だが、5年後、10年後を見据えると、現在のような労働力の確保は困難になることが予想される。
また、終日安定した清掃品質の確保という課題もある。最近は深夜の移動が増えており、サービスエリアおよびパーキングエリアが24時間利用されている。通常、トイレは数時間おきに定時清掃がなされるが、定時清掃直後の利用者には清潔なイメージを与えるの対し、その直前に利用した利用者には不快な気分にさせてしまう。サービスエリアの利用者の多くは真っ先にトイレに向かうため、エリア全体のイメージの低下につながる。24時間を通してトイレの清掃品質を一定にするには、単純に現在の倍の清掃スタッフが求められることになるが、上述の通り非常に困難である。何らかの新たな方策が求められているのである。
*20:そのほか、女性清掃スタッフに対するセクハラ対策という課題もあり、清掃ロボットに防犯機能を搭載することで、その防止も狙っている。
現在、トイレ清掃は大規模なサービスエリアでは4~5名が、通常規模のエリアでは2~3名でトイレ清掃を行っている。従来は7時間単位で勤務していたが、人材確保が難しく、より短い時間の勤務スタッフが増えている。そのため、実際の清掃スタッフ数は、この人数に交代要員を加えたものになる。
清掃作業は、3~4時間おきに定時に行っている。トイレの床面や便器などの清掃に加え、トイレットペーパーや洗剤など備品交換も行う。大規模なサービスエリアではフルタイムで清掃作業を行うこともある。
現在の清掃で最も負荷が大きいのは、スタッフの多くが高齢の女性ということがあり、力を要する床面清掃である。また、床面は人の往来が激しく、かつ最も目に留まりやすいところでもある。
そこで、清掃スタッフの支援、清掃品質のアピールという観点から、この作業の自動化に狙いを定め、上述の清掃ロボットを発表したわけである。
便器まわりや隅は汚れにくく、比較的目立たない個所であるため、通路を中心に床面の8割程度を清掃させることを考えている。上述の富士重工の清掃ロボットが共用部のみを清掃するのと、同様のイメージと言える。また、タイマー起動(*21)により24時間定時清掃をさせることで、清掃品質のバラツキを抑えることを予定している。
![]() |
トイレの床面に水と洗浄水を吹き付けながらブラシで磨き、清掃後の水分をバキュームで吸い取ることで清掃を行う。目に留まりやすい床面を重点的に清掃する。こまめに定時清掃を自律的にさせることで、清掃品質の低下を抑える。トイレの幅はかなり狭く、その中で、前進してターンして戻ってくることが求められるため現在は、大幅な小型化に向けて改良している。2号機の完成は2009年夏頃を予定している。(写真提供:知能技術) |
清掃ロボットが完成したときは、昼間は清掃スタッフと清掃ロボットが共同で清掃を行い、床面清掃の自動化に伴い、現在の約半数のスタッフで作業する。夜間は清掃ロボットをタイマー起動させ、床面を清掃する、という運用方法がイメージされている。自律的な水や洗浄水の積載を含め自律制御の確立により、こうした運用が可能になると、NEXCOメンテナンス関西では見ている。
技術的なつくり込み(*22)に課題を抱えているが、このような床面清掃の自動化により、より少ない清掃スタッフでありながら清掃品質の安定化する清掃プロセスの確立を目指している。
以上、各サービス事業者の取り組みを紹介したが、それぞれの課題および選択したアプローチをまとめると、以下のようになる。
![]() |
サービスロボットを導入した各社の課題と、それに向けたアプローチのイメージ。 |
それぞれの開発提案はユーザー企業が抱える経営課題にフィットし、導入に至っている(導入が図られつつある)。また、サービス事業者側は、導入に伴うサービスプロセスの変更により、サービスの生産性と付加価値の向上の両立、すなわち「サービスイノベーション」を達成している。「サービスイノベーションとは、サービスを受容者のニーズとサービス内容や提供方法を相互に適応させ、受容者にとっての付加価値と提供者にとっての効率を同時に高める活動」(産総研)である。
ユーザーとなるサービス事業者とロボットメーカーが一体となってつくり込んでおり、また、BtoBでは厳しく問われることであるため、当然の結果と言えるだろう。
しかしながら、シーズ型で開発が進められるロボット開発では、その特徴と経営への寄与が結び付かない例がまだまだ多い。4月特集で紹介した、ダイヘンの患者移乗装置「C-Pam」は安全性をはじめ高度なつくり込みがなされており、看護師の腰痛軽減につながることが期待された。が、院内サービスの向上や効率化など病院経営への寄与が見えず、導入には至らなかった。ダイヘンはすでに、経営への寄与を目指した取り組みを始めているが、経営への寄与を意識することが、サービスロボットを各プロセスに適用するための第一歩となる。
さらに、この内容を踏まえ、ロボットメーカーが開発提案時に採るべきアプローチを考えてみる。
今回紹介した事例は、アサンテを除いて、サービプロセスのごく一部を担うサービスロボットが提案されている。確かに、経営課題に即したものであれば導入に可能性は高い。また、このようなBtoBを前提とした取引では、あるプロセスを担う単機能なロボットの方がコストメリットを算出しやすく、実際、「単機能のロボットの導入が進んでおり」(富士経済アナリスト)、提案の第一歩としてはよいだろう。が、これだけの開発提案にとどまっては一定程度の収益を上げるのは厳しく、継続的な開発、ビジネス展開は困難である。
ここで改めて、4月特集にて紹介した「現在ロボットビジネスが陥りやすい問題点」を取り上げる。
![]() |
現在ロボットビジネスが陥りやすい問題点。「1.サービスプロセスの局部を置き換える」という例はかなり多い。経営課題にフィットする提案、もしくは作業の代替によってできた労働力を、その解決に充てるというロジックが構築された提案であればよいが、そうした例はまだ少ない。シーズ型で開発されるロボット開発では、なかなか難しいようだ。 |
ここでは、『サービスプロセスの局部を置き換える』という提案は、収益を得にくいことを紹介した。開発したシステムには、サービス事業者が提示する細かな仕様への適合が求められ、また、彼らのノウハウが多分に込められたシステムとなり、他事業者や他施設への展開が難しいからである(*23)。
結果、「サービス事業者からの要求を待つ“待ちの営業”になっており、彼らの要求通りに開発しただけの例が散見される」(ロボットビジネス推進協議会のある幹事)。「自社のロボットシステムが担えるプロセスを核に、他のプロセスも包含したソリューションとして提案していれば、もっと収益を上げられるはずだし、そうしたビジネスモデルを志向すべきだろう」(同)という声が上がっている。そうしたレベルに至っている例はまだ少なく、サービスロボットの開発で儲けたという企業はあまり存在しない。
ゆえに、次の段階として、サービスプロセスの再設計を見据えた提案へとステップアップしていくことが求められる。
つまり、4月特集でも紹介した、『人とサービスロボットあるいはRTを最適なバランスで組み合わせた形態によるサービスの提供を目指す』『一連のサービスプロセス全体を洗い出し、それを見直す(リエンジニアリングを行う)というアプローチを採る』ことである。
協力関係にあるサービス事業者と共同で取り組むのもよいし、コンサルタントまたは他のシステムを保有する企業と共同で取り組むでもよいが(*24)、このようなソリューションとしての提案ができなければ、ロボット開発企業が開発に見合った収益を上げるのは容易ではない。また現在、多様化するサービス内容を考慮すると、ロボットシステム単体でのリッチなサービス提案は困難であり、なおさら、こうした提案が必要とされている。
*24:松下電工のHOSPI-ALに対し、「例えば医療現場にアピールするのであれば、医療機器メーカーとタイアップし、搬送システムとして提案するパッケージングができれば、他への導入が見込まれるのではないか」と話す関係者がいる。
アサンテの例は、参画する開発企業(*25)からの提案を受け、また互いに議論を重ねることにより、そうしたアプローチを採ることを当初より目指している。また、清掃ロボットシステムの開発を手がける富士重工では、これに加え、ビル内で排出されたゴミを分別し、その重量を計測する「ゴミ計量器」や、分別したゴミを運搬する「ゴミ箱搬送計量ロボット」から構成されるゴミ管理システム、汚水槽の洗浄を行うオゾン洗浄システムなどを提案する、ビル全体のメンテナンスサービスを意識した取り組みを模索している。それに気づいているロボットメーカーは、そうしたアプローチに着手し始めている。
このようなアプローチを採ることによってはじめて、ロボットメーカーとサービス事業者が互いにWin-Winの関係を構築することができる。サービス事業者の競争力の向上とともに、持続的なサービスロボットの発展につながると思われる。
*25:ビジネスの最終形を描いているRTソリューションというベンチャーのもとに、サービスプロバイダーであるアサンテ、開発・製造企業、研究機関がプロジェクトに参画している。RTソリューションはビジネスプラン、マネジメントに特化した企業であり、固有技術を保有していない。このような企業がロボットビジネスの中核を担えるという仮説を検証する意味合いもあり、このようなプロジェクト体制が敷かれた。
(参 考 文 献)
1)石黒周:「石黒周が語るロボットビジネスの明日」、ロボットビジネス開拓記、ロボットラボラトリー、http://www.robo-labo.jp/,2007年.
2)東京ビルメンテナンス協会・建物衛生管理委員会:建物清掃標準仕様書 建物清掃品質評価表 第2版」、東京ビルメンテナンス協会、平成17年11月.
■取材協力
アサンテ
執行役員 総務部長 西山 敦 氏
HA事業部 技術課長 小林正志 氏
ビー・エム・エル
執行役員 検査本部長 工藤康之 氏
住友商事
ビル事業部 主任 矢野健太郎 氏
住商ビルマネージメント
企画開発統括責任者 技術管理部長 企画開発部長 井澤勇八 氏
エス・シー・ビルサービス
環境業務部 課長代理 宮田敏紀 氏
西日本高速道路メンテナンス関西
代表取締役社長 西田行宏 氏
■企画協力
知能技術
代表取締役 大津良司 氏
知能技術の大津さんは、ロボット業界では希少なシステムインテグレータとしてご活動されています。http://www.chinou.co.jp/
■関連サイト
松下電工 使って利益が上がる、必需品となるロボットを目指す
http://robonable.typepad.jp/robot/2007/08/post_c47b.html
ダイヘン ロボットを看護の現場に適用するためには、その文化を変えることが大切です
http://robonable.typepad.jp/robot/2007/07/post_11de.html
アサンテ 西山 敦・小林正志 作業員の能力を拡張する道具。それが当社のロボットです
http://robonable.typepad.jp/robot/2007/08/post_ce37.html