「21世紀の巨大産業――」
そう言われて久しいロボット市場。
中でも「公共分野」「医療・福祉分野」「生活分野」などの非産業分野(これをすべてを総称してサービス分野)における市場は大きな成長が期待され、(社)日本ロボット工業会などによると、2010年には3兆円、2025年には8兆円規模に達するとの予測がなされていた。
ところが、昨年8月に富士経済が発表した「2007年ワールドワイドFAロボット/RT関連市場の現状と将来展望」(http://robonable.typepad.jp/trend/1_2/index.html)によると、2006年における業務・民生用ロボットの市場規模は、わずか20億円と算出された。あまりの数字の隔たりから、サービスロボット市場に対して否定的な見解を示す人が増えつつある。
また、ロボットがサービス市場に受け入れられない状況を受け、ここ1、2年、ロボット開発に対する風当たりが強くなっている。実際、サービスロボットを開発したメーカーの中には、経営側より次期開発プロジェクトにストップがかけられたり、開発リーダーが異動させられたりしたところがあると聞く。
確かに、ロボットの実用性が問われるようになり、その開発には厳しい目が向けられてきている。
それでもなお、サービス分野で活躍する次世代ロボット(以下サービスロボット)やRT(Robot Technology)、これを活用したロボットビジネスの登場には大きな期待が寄せられている。
![]() |
![]() |
|---|---|
| 2007年7月~8月にかけてATRがイオン高の原ショッピングセンターで実施した実証実験 |
アクアシティお台場を巡回する綜合警備保障の警備ロボット地図情報などによる自走走行ができるうえ、ジョイスティックによる手動走行もできる。また、タッチパネル方式による案内機能も充実している。警備が本来の仕事だが、集客という面でも寄与している。子供たちの人気は高いという。 |
![]() |
![]() |
| テムザックの会津中央病院で活躍する受付ロボット(右)と案内ロボット(左)受付・案内ロボット。受付・案内ロボットの病院への導入は世界初。受付業務の効率化につながっているうえ、病院内の雰囲気を明るくしている。案内ロボットの頭部には血管年齢を測定する装置を搭載しており、簡易な健康診断ができる。 | 同じく、テムザックが3月25日よりイオンモール福岡ルクルに導入したコミュニケーションロボット。大型商業施設への常設導入は世界初。胸部分にQRコードリーダーを搭載しており、会員カードをかざすと、QRコードに記録されている氏名や性別、生年月日などの個人情報を読み取り、個人を判別しながら店やイベントなどを案内する。http://robonable.typepad.jp/news/2008/03/20080320-7fa5.html |
| サービス分野でのサービスロボットやRTの利用が求められている。 | |
期待されるのにはいくつかの理由があるが、まず挙げられるのが「サービス業の工業化」である。
現在、サービス業は少子高齢化および若年労働力の低下という課題に直面している。労働人口の急速な減少およびニートや格差社会、若年者の意識の変化などを反映し、サービス現場で3K労働を忌避する可能性が指摘されている。具体的には、夜間の清掃や警備、就労時間が不規則な介護や医療、重労働の建設作業などである。さらに最近は、小売りや外食といった一般サービス業においてでさえ、労働力の不足が目立ち始めている。
高齢者や外国人就労者の活用という手段もあるだろうが、一時的な延命策に過ぎず、決定的な解決手段には成り得ない。そこで、サービスロボットやRTを活用した新たなサービスプロセスを確立することで、これらの課題に立ち向かおうする気運がある。
一般に、サービス業は人が価値を提供するスタイルをとっている。人手不足になることはすなわち、その提供が困難になることを意味している。サービスロボットの究極の姿はヒューマノイドであろうし、サービスは人が提供するものであるということを考えると、その開発はサービス業にフィットするはずである。そこに大きなビジネスチャンスがあり、サービスロボット市場が大きく成長する拠り所となっている。
サービスの工業化が求められる背景には、わが国のサービス業の労働生産性の低さ(*1)もある。欧米のサービス業に比べて全般的に低く、米国の60%程度しかない領域があると指摘されることがある。
今後、サービス業のグローバル化が進展するとともに規制緩和がなされていくと、わが国に上陸する海外のサービス企業に席巻されてしまうような事態を招きかねない。これに備え、サービス業の競争力を高めるという切り口でも、サービスロボットやRTが必要とされている。
また、サービスロボットが期待される理由として、近年のサービスのカスタマイズ化という流れが、ロボットの特徴に合致していることも挙げられる。製造業もそうだが、成熟した社会では市場の多様化が進んでいる。個々のレベルで多様化しており、単なるカスタマイズから個々人に価値を提供しなければならない状況になりつつある。
ロボットはセンサ、コントローラ、アクチュエータの3要素を備えるものの総称であり、その特徴により状況に応じて、また顧客に応じてサービスを提供することができる。こうした流れも、サービスロボットの開発には追い風となっている。
加えて、見方は変わるが、GDPや雇用の約7割を広義のサービス業が占めており、ここにRTや製造業の役割を組み込んでいかなければ、大きなマーケットを取り逃がしてしまうことも挙げられる。
![]() |
サービスロボットが必要とされるおもな理由 |
このような有利な条件があるにもかかわらず、サービスロボットで事業化に至った例はまだまだ少ない。次稿「Part1」では、現在のロボットビジネスが陥りやすい問題を考察する。
■関連サイト
トレンドウォッチ特別編2 業務・民生用ロボット市場動向と将来展望 2006年の国内業務・民生用ロボット市場は20億円!?
http://robonable.typepad.jp/trend/2008/03/200620-bca1.html