Robotコンサル小西の超・思考法

2011.08.01
第26回 サービスロボの安全認証にかかわるビジネス上の課題とは?

  6月末に長岡技術科学大学の木村哲也准教授の呼びかけで、サービスロボット安全技術認定者(「サービスロボット安全技術者認定講座」の受講者)を対象にした勉強会が開催(於:IRS神戸ラボ)され、筆者も参加してきました。2012年の発行を控える生活支援ロボット(厳密には「パーソナルケアロボット」)の国際安全規格「ISO 13482」の策定状況や、国際安全規格にもとづく安全の考え方などについて、より理解を深めることができました。勉強会への参加を通じて今後、生活支援ロボットの安全技術の開発や運用能力の向上に貢献できればとの思い強くしました。
 そこで今回は、生活支援ロボットの安全性確保に向け、ビジネス上想定される課題として2テーマをあげ、意見ならびに提案をさせてもらいます。

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6月25日に開催された勉強会の風景。情報交換という意味合いもあり、フランクな雰囲気での勉強会となりました。

大企業しか生活支援ロボは上市できない!?

 2010年12月に茨城県つくば市に生活支援ロボット実用化プロジェクト(2009~13年度、NEDO)の一環として、「生活支援ロボット安全検証センター」が設置されました(*1)。「走行試験関連エリア(動画)」「対人試験関連エリア」「強度試験関連エリア」「EMC試験関連エリア」の4エリアから構成され、2010年末時点で計17台の試験機が設置されているようです。

*1:三菱総合研究所が取りまとめた「戦略的な認証ビジネスの国際化戦略に関する調査」(2010年3月まとめ)では、同センターの運営コストの概算が示されており、初期投資として試験設備機器に約11億円、施設の建設に約6億円(同プロジェクトより捻出)、運営コストとして年間3億円と見積もっている(内訳は、設備更新のための資金:50%、メンテナンス費用:5%、固定資産税:10%、人件費や光熱費、管理費など:35%)。

動画 走行試験関連エリアに設置されている、3次元動作解析装置と障害物接近再現装置を組み合わせた障害物検知の試験風景。移動ロボットが周辺の人や物、障害物などと接近した際に適切な検知と対応が行えるかを検証する。

  NEDOプロ終了後は、同センターは日本自動車研究所(JARI)が試験設備を所有し、日本品質保証機構(JQA)が認証業務を請け負う予定とのことです。すでにJQAでは認証審査官の育成に取り組まれており、2015年までに5名程度が輩出されるそうですが、(当初の市場規模を想定してのことのようですが)あまりにも少人数のため、認証開始から認証完了まで長期化するのは避けられないのではと危惧しています。後述する認証コストにもかかわりますが、その間、“儲けゼロ”で会社を運営するというのは中小・ベンチャーのロボットメーカーには経営上、耐え難いです。

 そこで、こうした状況をうまく回避するためにサービスロボット安全技術認定者を生かせないかと考えています。安全認証の申請に先行して、ロボット関連企業への安全教育コンサルタントとして技術資料をチェックし、認証審査官に引き継ぐという具合に。もともと、木村准教授らはサービスロボットの安全性確保に向けては技術者の育成が必須と考え、同講座を立ち上げられたそうですので、こうしたかたちで国プロとの融合を果たすのは、その考えに沿うものです。NEDOプロに関わる方にはぜひ検討してほしいです。

 また、認証コストの低減に向けても、ひと工夫をしてほしいです。NEDOプロに参画する大手企業からすれば、技術・人材・資金の面から見ても、安全認証にかかるコストは、さほど負担がかかるものではないでしょう(そもそも、これを考慮して大手企業の提案が採択されていると聞きますが・・・)。しかし、中小・ベンチャーが、そのための資金を用意するのは困難です。
  例えば、各種試験を受けるためには、販売予定の量産機と同仕様のロボットを複数台準備する必要があると想定されます。仮に、量産試作機1台のみで認証が受けられないとなると、数台の小ロットで量産期を製造することになり、中小・ベンチャーにとって資金的負担は相当なものになります。加えて、安全検証センターがある茨城県つくば市までロボットを輸送し、担当者が何度も往復するコストもかかります。

 さらに、ISO 12100にもとづくリスクアセスメントの実施など設計段階に要求される各種安全技術の教育などにかかるコストも加味しなければなりません。つまり安全認証に加え、安全性という「機能価値」を満足するために数千万円もの負担がかかるわけです。こうした現状を理解しないまま、技術オリエンテッドなアプローチで生活支援ロボットを開発すると、その資金的なリスクは増大するばかりしょう。

 ISO 13482の策定において、現在のようにわが国が主導的な立場にあることは、生活支援ロボットの市場化に向けて重要ですし、引き続きそうあってほしいです。しかしながら、それにもとづく安全認証を取得するために相当なコストがかかる現状は、中小・ベンチャーの上市を妨げる可能性があり、改善されるべきです。それに向け次のような方策を提案したいです。

【1】「生活支援ロボット安全協会」といった団体(*2)を設立し、ロボット関連メーカーに加盟を促す(認証申請企業は必ず加盟)。また、加盟料は企業の規模(資本金など)によって区別し、加盟料が安全検証センターの運営を支える。加盟企業は安全に関わる最新情報を共有可能とするといったインセンティブを与える
【2】 申請企業の規模(資本金など)に応じて、認証にかかるコストに差を付ける
【3】 販売台数/売上げに応じて、後から追加で認証費用を納めてもらう

 これに加え、木村准教授も指摘されていますが、一部試験を各地の工業試験所でも実施可能にすることもあげたいです。安全検証センターには汎用的な試験装置を複数台備えているので、同様の試験装置を備える工業試験所には試験実施の認定を与えることで、茨城県つくば市までのロボットの輸送費や担当者の交通費の抑制につなげてもらいたいです。わが国では地域に中小・ベンチャーのロボット開発企業が点在することを踏まえると、必須の取り組みと考えます。

*2:NEDOプロでプロジェクトリーダーを務める産業技術総合研究所 知能システム研究部門の比留川博久部門長らは、安全検証センターの事業化に向け、経済産業省と「事業化検討委員会」を立ち上げており、自治体および参加企業から支援金を提供してもらい、コンソーシアム形式で運営するといった方策を検討している。

ユーザーから危険事象をフィードバックしてもらうには?

 ここからは話題を変えて、ISO 12100にもとづくリスクアセスメントに関して今後、ユーザー(ユーザー企業)が意識すべきことに触れます。まずISO 13482でも規定されるであろうリスクアセスメントのフローを示します。

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 ISO 12100にもとづくリスクアセスメントのフローと安全対策の手順 

 で注目してもらいたいのは、ユーザーからロボットメーカーに対し、ロボットを実際に運用する中で見えてきた、これまで想定されていなかったリスクをフィードバックすることが求められていることです(青線の個所)。このフローは、安全性確保のPDCAを回すという意味で理想的だと思います。ところが筆者の経験上、ユーザー企業はロボットの安全に関する基礎知識がほとんどないです。何に主眼を置いて運用上の危険事象をチェックすればよいのかがわかりません。さらにいえば、ユーザーは「残留リスクさえ理解しておけば絶対安全!」と思い込んでいることさえあります。

 このリスクアセスメントのフローを実現するためには、メーカーの開発技術者に対するサービスロボットの安全教育と併行して、ユーザーに向けて「サービスロボットの安全ユーザー教育」を実施する必要があります。つまり、開発技術者を対象にサービスロボット安全技術者認定講座が開催されているように、ユーザーに対しても「サービスロボット安全ユーザー認定講座」を実施するのです。そうすれば、メーカーとユーザー間の安全性確保に関する相互理解が深まり、ロボットの安全に関わるメーカーからユーザーへの引継ぎが円滑になります。今後のサービスロボット普及に向けて、重要な活動になるでしょう。

 もしかすると近い将来、サービスロボット安全技術認定者が在籍するロボットメーカーとサービスロボット安全ユーザー認定者が在籍するユーザー企業が生活支援ロボットの開発でコンソーシアムを組んだ場合、両者の合意のもとで実用化されるというストーリーが現実味を増すと思います。
 例えば、介護福祉施設を全国展開しているような企業が、中小・ベンチャーのロボットメーカーが開発した生活支援ロボットを導入するような場合、中小・ベンチャーにとって安全検証センターでの認証コストが開発の障壁になるかもしれませんが、両者の合意のもとで安全認証を受けずとも実用化に至る―。
 このような開発が現実味を増すと考えます。

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《特集》
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再来年には発行!パーソナルケアロボの国際安全規格ISO 13482 次世代ロボット分野の国際安全規格策定と関連技術の動向より
 

 

●執筆者紹介

小西さん写真.JPG小西 康晴さん(Konishi Yasuharu)
(株)ロボリューション 代表取締役。1977年、大阪府生まれ。2000年、慶應義塾大学 理工学部 システムデザイン工学科(1期生)卒。2002年、慶応義塾大学大学院 理工学研究科 修了。修論テーマは「自律走行自転車ロボットの開発」。同年、村田製作所に入社。産業用ロボットの研究・開発および電子部品PR用ロボット開発に関わる。2005年 ロボットテクノロジーに無限の可能性を感じ退社。同年4月、父が経営する生野金属に入社(現在、企画開発室 取締役室長)。06年6月 サービスロボットの開発・導入コンサルティング事業を行うロボリューションを設立し、代表取締役に就任する。
 大和ハウス工業「住宅床下点検ロボット開発プロジェクト」(平成18年度経済産業省「サービスロボット市場創出支援事業」)や、平成20年度には村田製作所「ムラタセイコちゃん開発プロジェクト」において開発プロデュースを担当するなど、ロボット開発に関わるプロデュース・コンサルティング業務をおもに活動している。
 2006年度から4期継続し、大阪市ロボットラボラトリー、次世代ロボット開発ネットワーク「RooBO」における技術アドバイザーを務めるほか、国際デザインコンペティション2006 テーマ「ROBOT」、同2007 テーマ「ROBOT2」にて技術専門委員も務める。
URL:http://www.robot-revolution.com/




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