fuRo先川原室長のロボヤマ話

2011.02.23
第47回 大型2足歩行ロボットをつくろう!

ROBO-ONE書籍の出版記念講演として開催

 2月5日、川崎市産業振興会館にて「第13回 ROBO-ONEテクニカルカンファレンス」が開催されました。今回は、昨年刊行された書籍「ROBO-ONEで進化する二足歩行ロボットの造り方」(オーム社)の出版記念として行われたもので、執筆陣が講師を務めました。参加費3,000円は、上記書籍(税込み2,835円)を持参することで無料になるというお得なカンファレンスです。

p47-1.JPGROBO-ONE委員会代表の西村輝一氏です。 

  はじめにROBO-ONE委員会代表の西村輝一氏が「ROBO-ONE誕生から10年」について振り返り、これからも新しい技術開発に挑戦しながら参加者と観戦者の両方が楽しめる大会にしたいと訴えました。「今後10年、ロボット技術のキーワードはセンシング、通信、HMI(Human Machine Interface)。ROBO-ONE参加者はモデルベース開発と実ロボットでの検証を行うべきで、特にセンサの計測結果をきちんと処理できればよいロボットとなる」と締めくくりました。

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図1(左):西村代表は、鉄腕アトムのように2足歩行ロボットを飛行させたいと言います。彼は2002年、すでに「ロボットの飛行実験を行っていました。図2(右):ROBO-ONE宇宙大会選抜競技として考えられた通称「投げロボ」は、2足歩行ロボットを参加者が「手」で放り投げて両足で着地できれば成功です。機械で投げるのと違い、ロボットは毎回違う軌跡を描きますので、空中での姿勢制御が難しくなります。

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図3(左):企業での研究開発や教育に使われている、MathWorks JapanのMATLABやSimulinkを学生時代にマスターできれば、就職活動において非常に強い武器となるようです。図4(右):Human Machine Interfaceは、日本ナショナルインスツルメンツのLabVIEWが紹介されました。

 次に、ROBO-ONE事務局の西村将太郎氏が「シリアルサーボを使ったロボットのプログラミング」について、ベストテクノロジーの上光隆義氏が「シリアルサーボライブラリ」と題し、講演を行いました。
 カンファレ ンスの後半は、ROBO-ONE参加者でもある執筆者3名による製作実例を中心に解説が行われました。まずは、網野 梓氏の「トコトコ丸の歩行」では、EXCELによる歩行機能開発環境についての紹介です。

 次に、 ドカプロジェクトの「ドカはるみの特長と構造」について一部抜粋して紹介しましょう。開発者の角 和樹氏が等身大ヒューマノイドを開発した理由は、自分にとって役に立つロボットが欲しかったからだそうです。「会社では人間は文句を言ってなかなか自分の言うことを聞いてくれません。私の言うことを聞いてくれるロボットをつくりたかった」との発言に会場のあちこちから笑いが起きました。みなさん同様の気持ちをお持ちなのでしょうか。角氏がどこまで本気なのかはよくわかりませんが、個人で等身大ヒューマノイドをつくりはじめた行動力には頭が下がる思いです。

p47-2.JPG「ドカはるみ」を製作した角 和樹氏です。 
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図5(左):ドカはるみの開発コンセプトは、等身大ヒューマノイドを研究している研究機関が掲げているものと共通する部分が多いですね。異なる点は、1人で持ち運べる、市販品を流用する、といったところでしょうか。図6(右):初代ドカはるみ(身長90cm)を建設機械に乗せると、一目で操縦は無理であることがわかります。ASIMOをつくったホンダでも、電灯スイッチやドアノブに手が届き、テーブルでの作業など家事手伝いができるヒューマノイドの最小サイズは身長120cmと発表しています。

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図7(左):ドカはるみの成長過程です。初代をつくり始めてから2年ちょっとの間にずいぶん人間に近づきました。図8(右):ドカはるみの仕様です。サーボモータが50個も使われているとは驚きです。

f47-9.PNG図9 個人で大型ロボットをつくった場合、みなさん運搬に苦労されています。スライドにあるように、飛行機での移動ではバッテリーは預け荷物にできないため、手荷物で機内に持ち込まなければなりません。レスキューロボットチームのように多数のバッテリーを必要とする場合、手荷物の重量限度を超えそうなときには、バッテリーを衣服のポケットに詰め込んで搭乗することもあるそうです。 

動画1 ロボットを吊した状態で全身歩行時の腰の動きを撮影したものです。角氏は歩行のモーション作成が苦手で、腰をくねらせお尻を上げれば足を上げやすくなると思い、腰にロール軸を取り付けたのだそうです。足踏みをしながらヨー軸を使うことにより前後歩行を実現させています。

動画2 某研究所のロボットをマネて、片足立ちでバランスをとっています。

動画3 5本指の特徴を生かしピアノを弾いています。角氏のいうように弾くというよりは鍵盤を叩いているだけですね。消音で動画再生すると、それなりに弾いているように見えるのが不思議です。

 この日のカンファレンスの最後はヒューマノイドヘルパープロジェクト(以下HHP)の経験をもとに「MUSASHIの制御技術の全て」と題し、丸直樹氏が講演を行いました。

p47-3.JPG「MUSASHI」を製作した丸 直樹氏です。 

 格闘競技であるROBO-ONEのロボットが備えている2足歩行制御技術のほかに、HHPでは無線LANによる遠隔操作、遠隔操作用のカメラ、音声コミュニケーションの技術が必須と丸氏はいいます。また、できればマニピュレータ(ハンド)を備え、マスタースレーブ操作機能もあったほうがよいとのことです。

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図10(左):HHPロボット「MUSASHI」の仕様です。使っているサーボモータの数は44個です。ドカはるみ同様、大型ヒューマノイドになるとこれほど多くのモータが必要なのですね。図11(右):格闘ロボットのキングカイザーとMUSASHI、ともにマスタースレーブ方式で操作します。しかし、目的に合わせて必要とされる技術は異なります。

動画4 MUSASHIは腕の動きをなめらかにするために、ポーズ間の補完スピードをリアルタイムで変更できるようにしています。動画の前半は補完スピードを一定にしたキングカイザーの制御方法で、動きは速いのですがカクカクとぎこちない動きとなっています。後半は補完スピードを最適化したMUSASHIの制御方法で、これならばなめらかに細かい作業を行えます。

 丸氏はロボットにコーヒーをおいしく注がせるために、高度な画像処理を使わず安価なセンサを用いています。ロボットの腕に歪みゲージを貼り付け、物を持ったときに生じる腕のひずみを測定して重量に変換するという方法により、コーヒーが入った容器の重量をロボットが検出できるようにしました。これでゆっくり容器を傾ければ、重量変化により定量のコーヒーをカップに注ぐことができます。ところが、これではおいしそうに見えないと丸氏は力説します。しかし、速く傾ければセンサ反応の遅れで計量誤差が大きくなってしまいます。
 そこで、何度傾けたらコーヒーが注がれ始めるのか検量線をつくり、かつ人間がそうするように容器からコーヒーが出る直前まで速く傾け、注ぎ始めたら速度を落とすという2段階の速度制御を行っています。

f47-12.PNG図12 検量線は容器の形状によって変わるため、あらかじめロボットに学習させておきます。 

動画5 従来のロボットの注ぎ方と2段階の速度制御をした注ぎ方です。従来の注ぎ方では見ていてイライラしてしまいます。

 ここで紹介した講演内容はほんの一部です。「ROBO-ONEテクニカルカンファレンス」ではROBO-ONEやHHPに限らず、ロボット製作の技術やヒントが満載です。次の機会にはぜひ参加することをお勧めします。

 最後に、来月3月19日(土)10:20から「第19回ROBO-ONE(予選)」、「第3回ROBO-ONE Light」が、3月20日(日)10:20から「第19回ROBO-ONE決勝トーナメント」、「ROBO-ONE宇宙大会選抜競技」が川崎市産業振興会館にて開催されます。観覧は無料、私も解説で参加します。みなさんお誘い合わせのうえご来場ください。

 

 ●執筆者紹介

先川原さん.jpg先川原 正浩さん(Sakigawara Masahiro)
千葉工業大学 未来ロボット技術研究センター 室長
1963年、東京都生まれ。1989年より理工書専門出版社にて、主に電気電子系の書籍企画・編集に従事。2000年1月~03年5月、ロボット専門誌の編集長。2003年6月より現職に就く。2足歩行ロボットによる格闘競技大会「ROBO-ONE」の委員会副代表をはじめ、多くのロボットコンテストにて委員・審査員を務める。また、新聞・雑誌・TV番組・イベントなどのロボット関連企画を多数手掛ける。
http://furo.cocolog-nifty.com/ (fuRoブログ)
http://www.furo.org/(fuRo)




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