fuRo先川原室長のロボヤマ話

文部科学大臣も観戦したロボット相撲大会

 今年で23回目となった「全日本ロボット相撲全国大会」が12月18日(日)、全国予選に参加した1,311チームの中から勝ち抜いた96チームが、両国国技館に集結しました。

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写真1 3つの土俵で3試合ずつ同時進行で行われました。

 自立型の優勝は、前回大会に引き続きチーム両国の「六次元K」、ラジコン型の優勝は香川県立三豊工業高校の「蒼穹」(前回大会も同校のチームが優勝)でした。この優勝ロボット同士2体が対戦したエキシビジョンマッチを動画1~3で紹介します。動画の後半部分はスロー再生した映像です(ルール説明などは、こちらを参照)。

動画1 エキシビジョンマッチ第1試合の動画です。左が自立型の「六次元 K」、右がラジコン型の「蒼穹」です。自立型はスイッチをオンにしてから5秒後に動くようルールで規定されていますので、ラジコン型の操縦者は同じタイミングでロボット操作を始めます。

動画2 第2試合の動画です。「六次元 K」のアームに付いているフラッグは対戦ロボットを惑わすためのものですが、ラジコン型が相手ではほとんど意味をなさないですね。

動画3 ロボットにはたいてい緊急停止ボタンが付いています。自立型の相撲ロボットでは動きが速すぎるうえに、相手ロボットの下にもぐり込むためのブレードが鋭利な刃物状になっており、近づくと危険なため、遠隔リモコン操作により停止させていることがわかります。

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写真2 今年から審判は硬式野球のキャッチャー用プロテクターを下半身に装着することになりました。動画3のようなシーンを目の当たりにすると、確かに必要な装備だと感じます。

 大会はホームページからプリントアウトしたチラシを持参すれば、誰でも無料で観戦できます。また、今年はエントランスにて、宇宙航空研究開発機構(JAXA)や千葉工業大学の協力により宇宙服や災害対応ロボット「Quince(クインス)」が展示され、パネルやモニター映像を使った解説が行われていました。ほかにも紙飛行機工作教室や相撲ロボットの操縦体験コーナーもあり、家族で楽しめるイベントが盛りだくさんです。

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写真3(左) 小型ソーラー電力セイル実証機「イカルス」や小惑星探査機「はやぶさ」の模型とパネル展示です。写真4(右) 「船外活動ユニット」いわゆる宇宙服が展示されており、ヘルメット部分から顔を出して記念写真を撮る親子連れが目立ちました。

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写真5  Quinceに見入ったり、パネルやモニター映像を熱心に参照されたりする方も多く、福島原発事故への関心の高さが伺えます。展示したQuinceは後ほどステージデモを行いました。

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写真6(左) 「なんだ、紙飛行機か」とバカにしたものでもないのです。滞空時間が数十秒という本格的なものをつくります。写真7(右) 本物のロボットを操縦する体験など、なかなかありません。まして、対戦型のロボットとなれば子どもたちにはたまらないでしょう。

 主催の富士ソフトや協賛スポンサー19社が提供する賞品が当たる抽選会も盛況でした。ちなみに、1等はノートPC「HP Mini 210」とLenovo「IdeaPad Tablet A1」が各1名に、2等はMicrosoft「XBOX 360 250GB + Kinectバリューパック」:4名、3等はMicrosoft「Xbox 360 4GB + Kinectバリューパック」:4名、4等はグラフィックボード「AMD FirePro V4900」:3名をはじめ、観戦者約1,000名にほとんど何かしらの賞品が当たるよう用意されています。

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写真8(左) 商店街の福引きに比べれば上位の当選確率は高いように思います。写真9(右) 写真にあるようにQuinceを横方向に傾けて85度の角度まで倒れないことを示しました。順調にいけば2012年1月、新たに改良したQuinceが原発建屋に投入される予定です。

 決勝の巴戦準備の時間を利用してQuinceのステージデモも行われました。小柳英次副所長(千葉工業大学 未来ロボット技術研究センター)が解説を行いながら、Quinceは枡席側から階段を下りステージへ向かいます。無線のトラブルでもあったのか、途中Quinceが立ち往生する場面もありましたがすぐに復帰し、スムーズに段差乗り越えのデモを披露しました。

 表彰式での中川正春・文部科学大臣の挨拶を以下抜粋します。
 「福島第一原子力発電所がこれから廃炉に向けて、非常に難しい技術的な壁を克服していく段階にあります。千葉工業大学を中心にロボット開発をしていただいていますが、ますますロボットの役割が必要になってくるということでありますし、宇宙、海洋、そして癒し、介護ロボット、それぞれの分野でロボットがこれから本当に活躍をする、そんな時代がやってきます。みなさんの闘志、挑戦する心、そこから育つ人材、心から期待を申し上げたいと思いますし、また、来年に向かってがんばっていただきたいと思います」

 元気が出る良いコメントだと思います。NEDOからは「災害対応無人化システム研究開発プロジェクト」の公募が開始されましたが、文部科学省として「原発事故対策ロボット研究開発プロジェクト」は計画があるのでしょうか。気になるところです。

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写真10 表彰式で挨拶をする中川正春・文部科学大臣です。大臣はQuinceのデモを見学し巴戦を観戦、そして表彰式に出席しました。

爆笑ロボット映画「ロボジー」

 監督・脚本は「ウォーターボーイズ」や「スウィングガールズ」で知られる矢口史靖氏です。前回のコラムでは映画「リアル・スティール」を紹介し、試写会では“感動して”涙ぐんでしまったと書きましたが、今回紹介する映画「ロボジー」は“爆笑の連続”で涙ぐんでしまいました。一般の方はもちろん、特にロボット関係者は必見の作品です。

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写真11 主役の「ニュー潮風」です。「頭部は電気釜、胸部はガスメーター、背中は湯沸かし器と、家電会社の連中がスクラップを集めてつくった中古感を目指した」とは矢口監督の弁です。『ロボジー』2012年1月14日(土)より 全国東宝系公開。(C)2012 フジテレビジョン 東宝 電通 アルタミラピクチャーズ 公式ホームページはこちら

 <ストーリー>
家電メーカー、木村電器の窓際社員、小林・太田・長井の3人組は、ワンマン社長から流行の二足歩行ロボットの開発を命じられていた。近く行われるロボット博での企業広告が目的だ。しかし、ロボット博まであと1週間というところで、制作途中のロボット“ニュー潮風”が木っ端微塵に大破!窮地に追い込まれた3人は、ロボットの中に人間を入れて誤魔化す計画を立てる。ロボットの外装にぴったり収まる人間を探すため、架空のオーディションが開かれ、仕事をリタイアして久しい独り暮らしの老人・鈴木重光(73歳)が選ばれる。しかし、この鈴木がとんでもないジジイで・・・。さらには、“ニュー潮風”に恋をしたロボットオタクの女子学生・葉子も巻き込み、事態は思わぬ方向へ転がり出す―。

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写真12(左) 2足歩行ロボットオタク役を演じた吉高由里子さんです。彼女のロボットオタクっぷりは見事なものです。「ニュー潮風」製作スタッフが大学の講演講師に呼ばれたシーンも秀逸でした。写真13(右) 仕事をリタイアして久しい独り暮らしの73歳、主役の鈴木重光を演じる五十嵐信次郎さんです。老人問題というとおおげさかもしれませんが、リタイア後の生き方などなど、いろいろと考えさせられました。

 矢口監督は1996年、ホンダの「P2」を見て「まるでロボットが入っているみたいだ」と衝撃を受け、以来、ロボット映画をいつかつくりたいとずっと思っていたといいます。そして、2004年頃から本格的にロボットについてリサーチを始めていたそうです。ロボットイベントやそのバックヤードについて、やけにリアリティがあるはずです。「CEATEC JAPAN 2010」の実景撮影が加えられているので、なおさら臨場感が増しているのでしょう。

 映画の中には、ヴイストンの「Vstone Tichno」「OmniZero.9」「OmniZero.7&ALCNON?」、産業技術総合研究所/川田工業の「HRP-2 Promet」、安川電機の「SmartPalV」、通天閣観光/エルエルパレス/グラフィック・パワーの「通天閣ロボ」、テムザックの「PRロボット」、村田製作所の「ムラタセイサク君」、理化学研究所/東海ゴム工業の「RIBA」が実際に登場します。ロボット関係者にはお馴染みですが、試写会に来たマスコミ関係者の大半は、これらのロボットが映画用につくられたものだと勘違いするそうです。

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写真14  「ニュー潮風」の左は木村電器のロボット開発部員を演じる濱田岳さん、右はチャンカワイこと川合正悟さん、後ろでノートPCを拡げているのは川島潤哉さんです。イベント会場の準備でこんな場面に出くわします。「ロボット通りまーす!」という声が聞こえてきそうです。

 上述の「全日本ロボット相撲全国大会」でデモを行ったロボット「Quince」の研究開発に携わっている者は3名で、そのうち1名は大学院生です。先日もNHKのニュース番組のディレクターさんが、Quinceの開発がたった3名で行われていることに驚かれていました。一般の方の感覚では、ロボットはもっと大勢で開発しているイメージがあるのかもしれません。「ニュー潮風」の開発に携わっている社員は3名、うち1名はエアコンのIC担当で、他は洗濯機の営業担当と梱包担当だった設定ですから、現実にはさすがにこの人員ではロボット開発はできませんね。

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写真15(左)、16(右) 「ニュー潮風」に入る人間の募集チラシです。サイズが細かく指定されていますが、実際の映画の撮影においても、かなり細身の方、特に太ももが細い方でないと中に入るのは難しいそうです。なお、チラシに「個人PRタイム有り!」とありますが、このPRタイムのシーンがおかしくて、思わず声を出して笑ってしまいました。

 矢口監督のこだわりでロボットに関してはCGを一切使っていません。「ニュー潮風」の部品はFRP製で、身体に装着する際には各部品をネジ止めしていきます。セリフを大声で喋ると反響して周りの音が聞こえなくなり、視界が狭く、総重量が30kgもあるといいますから、役者さんはたいへんです。CGを使わないことにより、味のあるリアルな作品に仕上がっているように感じます。「ロボジー」は、ロボット好きでなくても理屈抜きで楽しめる、良質のスラップスティック・コメディ(ドタバタ喜劇)映画です。

 「2011国際ロボット展」の最終日にROBO-ONEイベントを開催した際、矢口監督と「ニュー潮風」にゲスト出演してもらう機会がありました。矢口監督は真面目な顔と口調でありながら、話している内容はユーモアに溢れているという独特な雰囲気を持った方でした。

 そんな矢口監督のコメントを最後に紹介したいと思います。
 「ニュースなどで最新のロボットを見るたび、あまりの自然な動きに『実は中に人が入ってたりして・・・。』そんなことを思っていました。この物語は“老人とロボットのハイブリッド”というかなり突飛な設定ですが、ロボット先進国日本の片隅で、もしかしたら、ひっそりこんなことが起っているかもしれませんよ。あなたが見たことがあるロボットだって、本物かどうか・・・。映画館を出たあと、すべてのロボットが疑わしく感じるはずです。ほら、段々おジイさんに見えてきませんか?」

 

 ●執筆者紹介

先川原さん.jpg先川原 正浩さん(Sakigawara Masahiro)
千葉工業大学 未来ロボット技術研究センター 室長
1963年、東京都生まれ。1989年より理工書専門出版社にて、主に電気電子系の書籍企画・編集に従事。2000年1月~03年5月、ロボット専門誌の編集長。2003年6月より現職に就く。2足歩行ロボットによる格闘競技大会「ROBO-ONE」の委員会副代表をはじめ、多くのロボットコンテストにて委員・審査員を務める。また、新聞・雑誌・TV番組・イベントなどのロボット関連企画を多数手掛ける。
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シムロイドの改良版が登場

 11月9~12日、東京ビッグサイトで開催された「2011国際ロボット展」に足を運んだ方も多いことでしょう。私は仕事の打合せや、ステージで開催された「ROBO-ONE」の解説などで、残念ながら肝心のロボットを見て回る時間があまりとれませんでした。そんな私にとって、「ロボナブル」でロボット展関連のニュースが取り上げられているのは、本当にありがたい限りです。
 今回の国際ロボット展で、わずかな時間ですが歯科患者ロボット「シムロイド」(開発:日本歯科大学、ココロ、協力:モリタ製作所、ニッシン、東京センサ、動画1)について、担当者に話が聞けましたので、以下に紹介します。

動画1 シムロイドのデモの様子。使用されている治療機器はすべて本物ですが、会場では水が使用できなかったため、実際に歯は削っていません。

 4年前の「2007国際ロボット展」で発表されたものと比べ、今年展示・デモが行われたシムロイドは大きく3点の改良がなされました。
 1つは音声認識の精度が上がったことで、騒音が多い会場でもかなり正確に聞き取れていたようです(*)。2つ目は制御するコンピュータの使い勝手が向上したことで、キーボード入力からタッチパネル操作方式となりました。専門のオペレーターではなくても、自由に問題なく扱えるようになったのです。そして、3つ目は口の周りの素材を変更したことです。以前使われていたシリコンではあまり伸びないため、実際に歯を削れるほど引っ張ることができませんでした。そこで、素材をシリコンから熱可塑性エラストマーに変更することにより、強く引っ張っても切れることがなくなったそうです。

*:一般的な連続音声認識ではなく、事前に入力したフレーズを選択して音声入力を行うフレーズ方式を採用。単語単位で認識しているため、騒音環境下でも高い認識率の確保につなげている。

 治療する歯は上下全部で4個所、第一大臼歯と呼ばれる奥歯のいちばん虫歯になりやすいところに光センサが埋め込まれています(写真1)。歯を削るタービンにはもともと口の中を照らすためのライトが付いており、歯を削り過ぎて表面が薄くなると光がセンサに届くため、シムロイドに「痛い」と言わせるよう設定されています。

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写真1 光センサは奥から2番目の歯(少々変色しています)に埋め込まれています。

 歯は表面がエナメル質、その下が象牙質でできています。本来、治療では、エナメル質部分を削る分には麻酔は使いません。象牙質まで削る場合には麻酔をしているのが前提ですから「痛い」とは反応しません。今回のデモでは麻酔があまり効いていないという状況設定になっていました。麻酔をしているどうかはコンピュータでバージョンを切り替えています。
 なお、歯がきちんと正確に削れたかどうかを判断するために、削った歯を3Dデータで取り込み、削る前の歯と比較・分析する装置があり、その方法もすでに確立されているとのことです。

 シムロイドの真骨頂は、学生が患者と接する態度を記録できることにあります。治療を行う際、患者の顔に寄りすぎたり話し方に特徴があったりするなど、指導医が学生に様々な癖を指摘しても「私はふだんそんな言い方はしませんから」などと否定されることが多いのだそうです。それを客観的に見せることによって、本人たちも納得し改善できるようになります。過去に自分が治療をしている動画と今の動画を同じ画面に配置して比較・検証できるソフトも入っていますから、患者への対応がだんだん良くなっていることを自分で実感できる利点もあります。

 今後は多くの大学に製品として出荷していく予定で、海外も含めて患者への対応についての評価を統一できると予想されます。また、現在は日本語と英語のバージョンがありますが、フランス語やドイツ語等、多くの言語に対応していくことも考えているとのことです。

等身大ROBO-ONE? 映画「リアル・スティール」

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写真2 「リアル・スティール」 (c)DreamWorks II Distribution Co. LLC All Rights Reserved. 12月9日(金)全国ロードショー!http://disney-studio.jp/movies/realsteel/

<ストーリー>
西暦2020年、リングの中で死闘を繰り広げるのは、もはや生身の人間ではなく、高性能の格闘技ロボットたちだった。才能あふれるボクサーだったチャーリー・ケントンは、チャンピオンになるために全てを──妻と子供までも──捨てて、ただ夢だけを追い続けてきたが、ロボット格闘技の時代の到来によって生きる場所を失い、今や人生の敗残者も同然。辛うじてロボット格闘技のプロモーターとして生計を立てるものの、彼の乏しい資金力で手に入れられるロボットは、リングの上であっという間にスクラップ状態に…。人生のどん底で、さらにチャーリーに災難が舞い込んでくる。11歳の息子のマックスが、赤ん坊の頃に別れて以来、初めて彼の前に現れたのだ。最愛の母を亡くしたマックスはチャーリーに心を開くはずもなく、父子の関係は最悪の状態。そんなある日、2人はゴミ捨て場でスクラップ同然に捨てられた旧式ロボット“ATOM”を発見する。
それが、彼らの人生に奇跡を巻き起こす “運命の出会い”であることに、チャーリーもマックスもまだ気づいていなかった…。

 いやあ、感動しました。映画の試写会で涙ぐんでしまったのは久しぶりです。「父子の絆を描く感動のエンターテイメント巨編」というだけあります。ロボットに興味があって見ていたはずが、いつの間にかどっぷりと物語の中に入り込んでしまいました。

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写真3 汚泥に埋もれていた「ATOM」を復活させます。これが最もたいへんな作業でしょうね。

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写真4 ロボット・コントローラのデザインはどこかで見たような気がします。

 製作総指揮のスティーブン・スピルバーグが、この映画の脚本を買ってから映画化されるまで11年もの年月が流れたとあります。11年前といえば、ROBO-ONE代表の西村氏と私は酒の席で「人間型ロボットの格闘競技をやろう。いつの日か、東京ドームで等身大ロボットの格闘競技を見たいよねえ」などと話していたことを思い出します。その翌年に実現した「二足歩行によるロボット格闘技 ROBO-ONE」も、来年3月に10周年記念大会が開催されます。

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写真56 操縦者のモーションをATOMが真似る「シャドウ」のシーンです。ロボットの動きは、あの伝説のボクサー、シュガー・レイ・レナードが技術指導したというから驚きです。ミドル級らしい軽快で素早い動きに興奮させられます。

 主人公の少年マックスが拾ったロボット「ATOM」は、スパーリング・ロボット特有の摸倣機能を持っています。映画の中では「シャドウ」と呼ばれていました。ロボットが人間を見て摸倣するというのは無理でしょうが、マスター・スレーブ方式を発展させていけばこんな感じになるのかとワクワクしてしまいます。なお、映画に登場するロボットたちの身長は2.3~2.6mとのことです。ATOMは2014年に製作されたという設定ですが、あと3年でここまでのロボットが出現するかと問われれば、難しいでしょうと答えるほかありません。

 試写会では「リアル・スティール ロボット格闘技の歴史」という資料が配布されました。映画は2020年の時代設定となっており、この資料は1960~2020年までの人間のボクシングとロボット格闘技についての年表でした。この年表に「2011年:東京開催のロボット対戦映像がインターネット上に溢れこのカルトシーンが拡大」との表記がありました。実は、今年2011年10月9日、このカルトシーンになりそうな試合が「第19回ROBO-ONE」決勝リーグで実現したのです。公式戦ではおそらく初めて成功した「投げの大技(おおわざ)」なのです。以下の動画はCGではないことを断っておきます。

動画2 「G・サアガ」が「クロムキッド」を見事に投げ飛ばしています。

動画3 スローモーションで再生したところです。 

 

 ●執筆者紹介

先川原さん.jpg先川原 正浩さん(Sakigawara Masahiro)
千葉工業大学 未来ロボット技術研究センター 室長
1963年、東京都生まれ。1989年より理工書専門出版社にて、主に電気電子系の書籍企画・編集に従事。2000年1月~03年5月、ロボット専門誌の編集長。2003年6月より現職に就く。2足歩行ロボットによる格闘競技大会「ROBO-ONE」の委員会副代表をはじめ、多くのロボットコンテストにて委員・審査員を務める。また、新聞・雑誌・TV番組・イベントなどのロボット関連企画を多数手掛ける。
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※本コラムの更新が遅くなりましたことをお詫びいたします。(編集部)

原発災害対応ロボット「Quince」の仕様書はなかった?

 7月12日、日本国際問題研究所 軍縮・不拡散促進センターは、文部科学省委嘱標記調査研究 第2回セミナー「大規模複合災害における被害管理と科学技術の活用 ―ロボット・無人化技術の有効活用に向けて」を開催しました。今回は、小柳英次副所長(千葉工業大学 未来ロボット技術研究センター)のコメントを抜粋し紹介いたします。なお、文中の筆者のコメントには、段落の先頭に「《先川原》」と付しています。

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小柳栄次fuRo副所長です。Quinceが福島原発建屋に投入された時期に開催されたセミナーであり、開発現場の状況が詳細に語られたのはこれが初めてでした。

 ここ数カ月間、原発災害対応ロボットを手がけてきて、すごく印象に残っていることがあります。それは、想定外の事故が起こったため、ロボットをつくるための仕様書が「ない」ということです。世の中のあらゆる物は、条件を想定してつくられています。想定外だからできないというと、すごい言い訳に聞こえるかもしれないけど、「想定」っていうのは設計の大元なんですよ。それがはずれたら物はできないに決まっているし、機能しないのは自明なのです。

 今回、福島原発対応をしようとしたときに、私たちのところには瓦礫を走る最新鋭のロボットはありました。5カ年計画で4億数千万円かけて開発した「Quince(クインス)」です。研究者としては教授クラスが10名くらい、助教クラスが10名前後、学生に至っては延べ60~70名が5カ年かけて、やっとあそこまでできたロボットです。ところが、すぐに原発建屋に入れられなかった決定的な理由は、福島原発対応ではなかったというところです。

《 先川原 》
 上記の5カ年計画というのはNEDOの「戦略的先端ロボット要素技術開発プロジェクト Ⅲ.特殊環境用ロボット分野 <1>被災建造物内移動RTシステム」(2006~2010年度)のことです。地下鉄サリン事件のように、人間が入って行くには危険と思われる、汚染された空間の環境状況や被災者の有無を調査するためのロボットを研究開発していました。なお、ロボットは2010年8月から千葉市の消防局に貸し出しました。防災訓練などにて消防隊員が実際にロボットを操縦し、操作感や安全面で気になる点等の意見を参考に、より安全で使いやすいロボットの改良・製作に取り組んでいます。  《コメントここまで》

 原発建屋でロボットに何をさせたいのか、どんな技術が必要なのかがわからない。それはある意味しょうがない。なぜかというと、最初から予定されてないから。つまり、医者でいうならば、予防ではなく対症療法なんですね。ここが悪くなったからこの薬を飲ませよう、副作用が出ちゃったからこれをやろうと。そういう、後追いで決して先んじた対応ができていない。
 
 それから、われわれにとっても災害現場は想定できません。圧倒的に情報不足だからです。今回、Quinceは2号機建屋の地下に降りたんですね。私たちに示された図面は、東京電力の本社から渡された手描きの図面、つまり30年前に東京電力が書いた図面です。それには階段の幅は91cmと書いてある。その後、2~3年に1回、定期検査のたびに改修が繰り返され、いつの間にか階段の幅は70cmになってしまった。その情報が私たちに来たかというと来ない。津波でサーバがやられたから、福島原発の最新図面はすべて失われたままなのです。つまり情報不足。通路の幅がわかんないのにロボットに入って行け、といわれているのが現状です。だから非常に難しい。いつまで経っても問題点が明確にならない。

《 先川原 》
 原発建屋の階段踊り場でうまく曲がれなかったとの連絡はありましたが、想定より20cm以上も狭いのでは無理もありません。
 話は変わりますが、先週、小柳は浅間山山頂付近まで、火山調査のためのフィールド実験に出かけました。東大地震研究所浅間火山観測所まで車で行き、そこから2時間、人力でロボットを運搬しての実験です。小柳は口癖のように「実際にロボットが働く環境で試験を繰り返さなくては、確実に動く人の役に立つロボットはつくれない」といいます。ちなみに小柳は10月後半に大島、11月は阿蘇山にロボットを持参し走行実験を行う予定です。  《コメントここまで》

 私たちは、メンテナンス・フリーということに対して非常に甘い考えを持っていました。レスキューロボットというのは厳しい環境を走るものですから、1回のミッション(3時間ぐらいの作業)が終わったら、きっと翌日のためにメンテナンスをすると思った。いくらメンテナンス・フリーといっても、ミッション中にどこかのネジが緩むようなことはないにしても、翌日のために点検ぐらいはしてくれると思った。でも、原発で働くロボットは翌日のための点検は、作業員の被爆につながるから一切できない。「原発建屋に入れたら最後。ロボットが壊れるか作業が終わる以外、メンテナンスはバッテリー交換だけです」といわれたときには、はっきりいって寒気がした。最初の時点でそういうロボットを開発しろといわれていたら、2カ月前なら裸足で逃げ出したかもしれない。いまはやれる自信が少しついてきました。なぜかといえば、ここ4カ月間、休みなしで一生懸命やってきたから。ああ、こういうことだったんだなあとわかってきた。もしかすると私は原発災害対応ロボットの第一人者になりつつあるかもしれない(笑)。笑い話ですが。

《 先川原 》
 小柳は2月中旬から10月現在までに土日祭日含めほとんど休みをとっていません。一緒に原発ロボットに携わっている西村君(千葉工業大学・大学院生)に至っては、8カ月以上も休みをとらずにロボットの製作・実験に取り組んでいます。たいへんだろうと思う一方、そこまで熱中できることがあるというのは、なんと幸せなことだろう、とも感じます。  《コメントここまで》

 それから、(東電社員とわれわれの)認識の違いについては、いつまで経っても余計なところで問題が起きます。練習してうまくいった、となると、もう少し大丈夫だろう、と無理をしてしまうのです。本番では環境が変わるのですから、うまくいかない要素がとても増えているはずです。無理する理由は、作業員は被爆が怖いからなんですね。1回の出動で済ませられるのであれば、そこでたくさんの作業を済ませたいと無理をする。

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現在投入されているQuinceは1台です。図のように有線で遠隔操縦しています。

 「PackBot(パックボット)」2体を出動させる場合、12名の方が1回のロボット・オペレーションに参加します。ロボットを運搬する人、操縦する人、指示を出す人などで、そのくらいの人数になってしまう。その人たちは、どういう姿勢でロボットを操縦するかというと、隣の人と身体を寄せ合って操縦している。寒いわけでもないのに。隣の人とくっついている側は少なくとも被爆しないだろうと。そういう劣悪な環境で作業しているわけです。

 もちろん、ロボットは1体よりも2体で入ったほうが良いのは当たり前です。屋外で働いている建機のロボットは、ロボットの外部に設置されたカメラで見て操縦している。ロボットが危険な場所に行くときは、もう1体のロボットがそれを見ていてあげる。そうすることによってオペレータは客観的に自分のロボットを見て操縦することができるのです。しかし、建屋内に2体入れると被爆者が増えるわけです。運ぶ人もオペレータも倍になります。ですから、1体で作業をしてくれと言われたのは東京電力からの要望で、私達もそれを受けたのです。いま現在、私たちのグループから建屋に入っているのは1体です。

 たくさんのカメラ情報やロボットの姿勢を表示するメータを付けても、オペレータは操縦がなかなかうまくならなかった。そこで、われわれは苦肉の策で何をしたかというと、リバースモードを設けました。Quinceの前後は対象につくられているので、リバースモードキーを押すだけで運転席が180度反転したかのように、ソフトで対応しています。ジョイスティックの方向も画像表示もすべて反転するのです。これならば、袋小路に入ってもリバースモードキーを押すだけでバックの操作をする必要がなくなります。

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次に投入される予定のQuinceに搭載された3Dスキャナで、周囲の形状を計測した結果です。千葉工業大学の校舎内で実験しました。

 図で示した赤はグランドレベルであり、地面からの距離が離れ天井に近づくに連れて青くなるよう表示しています。これがどれくらい役に立つかというと、1号・3号機原子炉建屋はかなり破壊されている。柱の間隔や瓦礫の状態などが読める。こういったものでいろいろな角度から見ることによって、例えば遮蔽するための壁の設計ができるようになります。いちいち人が計測しに行かなくても寸法がわかるメリットは大きいのです。

 PackBotが最初に2号機原子炉建屋に入った際、湿度はほぼ100%でカメラが一気に曇ったとの報道があり、私たちは千葉工大の寮の風呂場でボイラの温度を65度、湿度100%で実験しました。当初はあっという間に曇ってしまいましたが、カメラ内部の湿気を抜き密閉することと、レンズを事前に暖めておくことで解消できることがわかりました。このように、ロボットというのは現実の環境に出来るだけ近いところで走らせない限り、まったく問題解決はできません。

 ここまでやってきて何が必要なのかを考えましょう。まず、それなりの性能を持ったロボットでなければ話にも何もならない。それから次に運用組織が必要です。私たちのチームでは学生がいちばんのオペレータなのです。ところが、学生を原発に行かせるわけにはいかない。つまり、私たちのチームはオペレータを持っていないわけです。組織としてきちんとロボットを運用できて、ロボットの性能・機能を熟知した優秀なオペレータがいることが必要です。
 でも、それだけではまだダメなのです。例えば消防署の指揮者というのは隊員の安全を守りながら、次に何をしなければならないかということを、きちんと把握している。ロボットの性能を的確に把握してオペレータにプランニングを指示できる、これができないとロボットは運用できない。

 私たちは半年間に渡って、千葉市消防局にロボットを貸したのですが、市内4カ所の消防署を転々としました。そのときにわかったことをお話ししましょう。
 私たちが最初に貸したのは殿台消防署でした。マニュアルとともに、このように操作するんですよ、とレクチャーしました。1カ月半経って、ロボットは違う消防署に行きます。そのとき、私たちは何も教えません。彼らはものすごくきちんと申し送りをしているから教える必要がないのです。いま、満足に申し送りができる組織といえば消防署か病院(看護師)くらいでしょうか。彼らは自分たちが得た知見を含めて次の消防署に情報を渡す。ですから、4カ所の消防署を転々としても私たちが教えた消防署は1カ所だけで済む。そういう組織力が要ります。総合的にきちんと訓練する組織がなければ、ロボットを導入しようとしてもダメです。以上の要素が1つでも欠ければロボットは役に立たないし、今の日本では満足できるロボットや組織はひとつもないというのが私の結論です。

《 先川原 》
 今後、災害救助ロボットチームが組織される際には、ロボットを開発・改良する以上に、いかにうまく運用していくかということが重要なのですね。最後に、小柳 の講演スケジュールを以下に記します。御興味のある方はぜひ足をお運びくだ さい。  《コメントここまで》

●防衛技術シンポジウム2011
タイトル「福島原発で活動する国産ロボットQuinceの構成と改良」
日時:11月9日(水)11:00~11:20、場所:グランドヒル市ヶ谷

2011国際ロボット展 サービスロボットビジネスフォーラム2011【パネルディスカッション】
 タイトル 「東日本大震災を教訓とした災害対応ロボットのあり方」
日時:11月9日(水)14:15~15:30、場所:東京ビッグサイト

2011国際ロボット展 出展者ワークショップ
タイトル「想定外に挑戦する災害対応ロボットの開発」
日時:11月10日(木)10:30~11:30、場所:東京ビッグサイト

ロボット関係者に見て欲しい映画

 この春公開され全米映画ファンを騒然とさせた、衝撃のサスペンス・アクション「ミッション:8ミニッツ」(原題:SOURCE CODE) が10月28日(金)より全国公開となります。

<ストーリー>
 シカゴで列車爆破事故が起こり、乗客は全員死亡。この事件を解明し、犯人をみつけるために、政府の極秘ミッションが始動する。任務遂行のために選ばれたのは、米軍のエリート、スティーヴンス大尉。百戦錬磨の彼をもってしても、今回のミッションは予測不可能──爆破の犠牲者が死亡する“8分前の意識”に入り込み、その人物になりすまして犯人を見つけ出すというのだ。8分後には爆破の瞬間が訪れ、スティーヴンスは元の自分に戻る。死んでは甦り、また死を繰り返す…犯人を捕らえるまで終わらない“8分間”の悪夢のミッション。その度ごとに犯人に近づいていくスティーヴンスだったが、次第に彼の中で疑惑が膨らんでいく。過去を変えて乗客たちを救うことは可能なのか? そして、この奇妙なミッションに選ばれたのが、なぜ自分なのか…?
 抱くことは許されないこの疑惑こそ、極秘ミッションに隠された禁断の真実への扉だった…。

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(c)2011 Summit Entertainment, LLC. All Rights Reserved. 
10月28日(金)全国ロードショー

 映画の原題が「ソース・コード」ということから察しがつくかと思いますが、主人公がコンピュータ・プログラムの世界に入り込み、シミュレーション体験を繰り返す、といったストーリーでしょうか。パラレルワールドを考えれば様々に解釈できると思いますが、関係者の方々、的外れな感想だったらごめんなさい。
 この映画、ヴァーチャル・リアリティやブレイン・マシン・インタフェイス、人工知能の専門家にぜひ御覧いただき、感想を聞いてみたいものです。

 小松左京や筒井康隆を読んで育った私には、時間軸がどうこうという部分では斬新さを感じなかったのですが、映画としてはたいへん楽しめるものでした。繰り返される8分間はそれぞれ微妙にシチュエーションに変化があり、「この意味は?」とあれこれ考えているうちに次々とストーリーが展開され、いつの間にか映画の世界に引きずり込まれてしまいました。
 SFファンはもちろん、誰でも楽しめるスピード感のあるサスペンス・アクション映画となっています。ぜひ劇場に足を運ぶことをお勧めします。
 

 ●執筆者紹介

先川原さん.jpg先川原 正浩さん(Sakigawara Masahiro)
千葉工業大学 未来ロボット技術研究センター 室長
1963年、東京都生まれ。1989年より理工書専門出版社にて、主に電気電子系の書籍企画・編集に従事。2000年1月~03年5月、ロボット専門誌の編集長。2003年6月より現職に就く。2足歩行ロボットによる格闘競技大会「ROBO-ONE」の委員会副代表をはじめ、多くのロボットコンテストにて委員・審査員を務める。また、新聞・雑誌・TV番組・イベントなどのロボット関連企画を多数手掛ける。
http://furo.cocolog-nifty.com/ (fuRoブログ)
http://www.furo.org/(fuRo)

 福島第一原子力発電所の「冷温停止」に向け、千葉工業大学ではレスキューロボット「Quince(クインス)」の改良を重ねてきました。そして6月24日、ついに2号機原子炉建屋内に投入され、活躍し始めています(ファーストミッションの模様はこちら)。今回のコラムでは、6月8日の記者発表会に前日に開催された「Quince貸与式」の話題を中心にまとめました。

東京電力にクインスを無償貸与

 千葉工大の役員会議室で行われた貸与式は、東京電力から原子力設備管理部の山下和彦部長ほか2名が、国際レスキューシステム研究機構(IRS)と東北大学を代表して田所諭教授・IRS会長が、そして千葉工大からは本岡誠一学長と瀬戸熊修常務理事、未来ロボット技術研究センター(fuRo)の古田貴之所長と小柳栄次副所長が出席しました。また、来賓として経済産業省 製造産業局産業機械課の北島明文技術係長と、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)機械システム部の金山恒二主査、製造科学技術センターの瀬戸屋英雄専務理事の3名が顔を揃えました。
 
 話は遡りますが3月中旬、小柳副所長は、いずれ原発事故調査のためQuinceに出動要請がなされることを確信していました。原発で水素爆発が起こり、現場は瓦礫だらけであるとの報道がなされていたからです。こうした不整地での走破はQuinceが最も得意とするところであり、世界的にもその優秀さは認められています。なお、Quinceの基幹部分はNEDOの「戦略的先端ロボット要素技術開発プロジェクト」(2006~2010年度)で開発されたものであり、貸与式に経済産業省やNEDOから出席者があったのは、こうした理由によるものと思われます。

 今回の原発災害対策に向けQuinceには大幅な改良がなされています。5月20日に東京電力から汚染水のサンプル採取や水位計の設置を要請され、アームやケーブル類、巻き取り装置などを取り付ける必要性が生じました。もともと26.4kgしかなかったQuinceの機体は、倍の50kgにもなってしまいました。また、重量が増えたうえに重心が高くなるため、急な階段を安定して走行するために足回りも大幅に改良しています(動画、詳細はこちら)。

動画 貸与式の前日(6月6日)に実施した水位計設置ミッションの訓練の様子

 NHKのニュース番組では、湿度100%の建屋内で働くQuinceのレンズ曇り対策について、千葉工大の学生寮にある風呂場を使っての実験シーンが放送され、fuRoには多くの対策意見が寄せられました。「松ヤニをフィルターに塗る」「ジャガイモをスライスして塗る」「セロハンが有効「海草を原料とする曇り防止剤」・・・などなどです。光触媒塗料の曇り防止剤の使用も勧められましたが、原発建屋内は光がないため使えません。一般の方々の意見を含め、ニュース番組でこれだけ反響があったのは初めてです。

 いろいろ試したところ、原発建屋投入後にレンズを濡らしたりぬぐったりすることができれば有効な曇り防止剤もあったのですが、投入前に塗っただけではレンズが曇るのを防ぐことはできないようです。結局、カメラを真空状態にしてレンズ内側(カメラ内部)の湿気をなくしてからカメラを密閉することと、原発建屋内に入る直前までレンズ表面を60℃ほどに暖めておくことによりクリアな映像を撮影できるようになりました。レンズを暖めるためにラジコンカーのタイヤウォーマーを改造したことはTV番組でも紹介されていました。

photo1-furo50.JPG写真1 カメラ内部の湿気を除去した後、密封しています。カメラ下部のタッパーには体温計サイズの放射線量計が入っています。線量計の目盛正面に設置された小型カメラで数値を読み取っています。ここではタッパーを密封するという単純な方法で曇りを防止しています

 ところで、Quinceが原発に投入されるまでに、なぜこんなに時間がかかったのでしょうか。1つには、東京電力がQuinceは何ができるのかを把握し、どのようなミッションを依頼すればよいかを決定するまでに時間がかかったということがあげられます。もう1つは、Quinceの操縦者は東京電力(または関連会社)の社員に限られており、初めてロボットを操縦する方に対し、わかりやすい操作インターフェイスを準備する時間も必要だったことです。
 バッテリーの交換方法や通信が途切れた場合の対処方法など、誰が読んでも理解できるようなマニュアルづくりにも工夫を凝らし、最終的にはロボット知識のない千葉工大の事務職員数名にロボットを操縦・メンテナンス体験をしてもらい、意見を反映させています。このように、マニュアルの完成度を上げるためにも相当の時間を費やしています。

 震災後、Quinceの研究開発・調査費などの資金について、小柳副所長は学校法人・千葉工業大学と早い段階から相談し、必要な経費負担を理事会で認めてもらっていました。国難ともいうべき大震災、原発事故に対し、工学系の学校法人としては「技術で社会に貢献するべきである」との理由から、開発費用を負担したというわけです。緊急対応が必要な今回のような場合、いかに早急に資金を調達できるかも大事だと痛感しました。

 再び、話題を貸与式に戻しましょう。IRSと千葉工大から東京電力に目録の贈呈が行われました。すでに三者間で「Quinceロボット使用貸借契約書」(無償貸与)の内容については合意が得られています。貸借資機材はQuince ロボット、操作卓、無線機(内/外用)、ノートPC(付属品含む)、ケーブル類(ケーブルリール含む)、バッテリー/充電器類、工具類/付属機器、これら一式です。貸与期間は1年間で、期間の延長については協議することとなっています。また、貸与式の最後に、東京電力の代表取締役社長名により、千葉工大、IRS、東北大に対して感謝状が読み上げられました。

photo2-furo50.JPG写真2 貸与式後、Quinceの解説をする小柳栄次副所長 

 マスコミからは「原発建屋内の詳細な状況(情報)について記者発表するのでしょうか?」とよく質問されます。これについては、テロ対策等の理由により公の場で詳細な発表がされることはないでしょう。ただし、新規に投入する原発対応ロボットに寄与できるデータは共有するということで、我々は東京電力と合意しています。
 
 小柳副所長のほか、同じくfuRoの吉田上席研究員、未来ロボティクス学科大学院生の西村君らQuinceの主要開発メンバーは、3月11日の大震災以来、土日を含め1日の休みもとらずに研究開発に取り組んでいます。その努力には頭が下がる思いです。西村君は「苦労して改良したQuince。できるものなら原発建屋内での操縦は自分がしたい。学生の身分では建屋近辺に行けないというなら退学してでも行きたいですよ!」と熱く語っていました。学生に限らず一般人は建屋に近づくことはできません。それにしても、最近の男子学生は一般に草食系が増えたと言われていますが、こうした気骨のある学生もいるというのは頼もしい限りです。

今度のトランスフォーム(変形)は未体験3D

 2007年夏、「トランスフォーマー」、2009年「トランスフォーマー/リベンジ」、そして今年、7月29日、「トランスフォーマー/ダークサイド・ムーン」が日本で劇場公開されます。私はひと足先に試写会に参加してきました。

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写真3 宇宙からの侵略者は圧倒的な破壊力を持ち、街は壊滅的な状態に (c) 2011 PARAMOUNT PICTURES. All Rights Reserved. HASBRO, TRANSFORMERS and all related characters are trademarks of Hasbro. c2011 Hasbro. All Rights Reserved

 マイケル・ベイ監督が「過去最高の3Dを私が保証します」と謳っていますが、私も同感です。「アバター」の3D映像も衝撃的だと感じていたのですが、それと比較しても没入感や迫力は桁違いです。特に広大な月面シーンでは、その場に立っているような錯覚を覚え、感動しました。

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写真4(左) 主演はシャイア・ラブーフで変わりませんが、ヒロインはロージー・ハンティントン=ホワイトリーが演じています
写真5(右) マイケル・ベイ監督の傍らにあるのが3Dカメラでしょうか。当初、マイケル・ベイは3Dで撮るつもりはなく、ジェームズ・キャメロンに強力にプッシュされ、3Dを1年ほど勉強して採用したのだそうです
Photo Credit: Jaimie Trueblood.

 全体の65%を3Dカメラで撮影し、複雑なシーンは35ミリで撮り、後で3Dに変換したとのことですが、その差異はまったく感じられませんでした。空中での撮影シーンでは、スカイダイバーのヘルメットに3Dカメラを取り付け、シカゴのビル群の間を240km/hで飛ばしたそうで、その迫力に圧倒されました。

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写真6 「渾身」という単語がピッタリの空中シーンです。身体に思わず力が入ってしまいます

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写真7 サムの親友「バンブルビー」も健在です。コミカルなシーンを期待したのですが、今回は全体にわたりシリアスな展開となっています

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写真8 世界各地でロケが行われ、特にアメリカではシカゴやデトロイトでの市街戦、ワシントンでのカーチェイス、ケープ・カナベラルのスペースシャトル基地にもカメラが入りました

 ところで、日本国内の3D映画では「XpanD」という上映システムを導入しているところが多いようです。この方式ではシャッター駆動装置や電池が必要なため、3Dメガネがどうしても重くなるという欠点があります。また、映画を見ている途中でバッテリー切れを起こしたら最悪です。今回の試写では「ドルビー3Dデジタルシネマ」方式の3Dメガネでした。これは分光方式を使うため電池は不要、軽くて2時間半の間、快適に見ることができました。個人的には、今後はこちらの3D方式に移行して欲しいと感じました。

 以前、画像処理の専門家であるfuRoの友納正裕副所長に「映画『アバター』を3D劇場で見たのですが、ディズニーランドの『キャプテンEO』のほうが、極端に眼前まで飛び出し立体感があるように思いませんか?」と尋ねたことがあります。「それは人工的に味付けした食べ物と同じで不自然なのでは? 映像への没入感を自然に感じられるような技術とは違うと思う。映画では、数分ではなく長時間疲れずに、しかも自然に見えるような技術が求められているのではないか」といわれた記憶があります。「トランスフォーマー/ダークサイド・ムーン」では、特に「奥行き感」のリアルさが驚異的で、まさに初めての映像表現だと感じました。

 今まで市販の3Dプロジェクターに関心はなかったのですが、この映画のBlu-ray Discを自宅で3D鑑賞したいがために、新たにプロジェクターを衝動買いしそうな自分が恐いです。

 

 ●執筆者紹介

先川原さん.jpg先川原 正浩さん(Sakigawara Masahiro)
千葉工業大学 未来ロボット技術研究センター 室長
1963年、東京都生まれ。1989年より理工書専門出版社にて、主に電気電子系の書籍企画・編集に従事。2000年1月~03年5月、ロボット専門誌の編集長。2003年6月より現職に就く。2足歩行ロボットによる格闘競技大会「ROBO-ONE」の委員会副代表をはじめ、多くのロボットコンテストにて委員・審査員を務める。また、新聞・雑誌・TV番組・イベントなどのロボット関連企画を多数手掛ける。
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http://www.furo.org/(fuRo)

 3月8、9日、品川のザ・グランドホールにて「サイバニクス国際フォーラム2011」が開催されました。2日間にわたって多くの講演が行われましたが、本稿では大阪大学大学院・金子真教授による基調講演「未来のロボットが進むべき方向はどうあるべきか」の一部を抜粋して紹介します。今回は、文中の筆者のコメントはグレーで表記しています。図は講演より引用しました。

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photo49-2.JPG会場に入ると「ロボットスーツHAL福祉用」がズラリと並べられていました。研究開発、販売しているCYBERDYNE株式会社は資本金22億6250万5千円、従業員数55名と、ロボットベンチャー企業としてはかなり規模が大きいですね。 
人と異なる能力で差別化を

 これはある会社の株価の推移を表したものです。10年前は10ドルくらいだったものが、今は300ドル以上で約30倍以上となっています。このグラフを見ると、すごく会社が伸びていることがわかります。この会社は医療用ロボットで世界一有名な「da Vinci(ダヴィンチ」というロボットをつくっている会社です。このように伸びているということは何が言えるかというと、このロボットの中にキーのテクノロジーがあるはずだと。それからもう1つは売れているわけですから、キラーアプリケーションがあるはずだと確実に言えます。それは一体何なのか。それがもし含まれているならば、このロボットは将来のロボットの方向に対して、何らかのメッセージを我々に送っているのではないかと思います。

photo49-3.JPGda Vinciを研究開発、販売している米Intuitive Surgical社の株価推移です。 

 今日、お話をするに当たってのポイントが2つ。将来のロボットはどういう方向に進むべきなのか、どういう方向に進んじゃいけないのか。これが1点。もう1点は、(ロボットスーツ)HALなんかもそうですけど、人間とロボットがフィジカルにインタラクションしていく、あるいはメンタル面でインタラクションしている、そういう人間とロボットが将来的にどういう風な共存関係を持つのが理想的なのか。
 
 人間とロボットとは本質的に違う。それぞれ得意技を持っている。人間は器用性においてはロボットに対して圧倒的に勝つ。逆に、ロボットでは器用性では人間に追いつかない。ところが、スピードという切り口で考えると人間よりもロボットのほうが優れている。つまり人間を目指してロボットを開発するっていうことがものすごく矛盾を含んでいる。われわれが主張したいのは、人間と違った能力で差別化できればロボットはそれでよい。こういう特長があると考慮するならば、どのように共存するのが良いかと言うと、人間に対して、われわれが期待するのは器用性、器用な動作であり、これに対して、われわれがロボットに期待するのは、例えばスピードです。もしこういう形で人間とロボットの協力関係が得られるのであれば、最終的に何が達成できるのかというと「見かけの人間の能力を拡張すること。これこそが人間とロボットの共存のいちばん良いシナリオではないかと思います。
 
 最初に、金子教授が研究されてきたマニピュレーション技術について、動画を中心に解説が行われました。金子教授は人の手・指の動きをロボットに摸倣させる研究を長年続けてきていますが、人の手・指の「器用性」のレベルが高過ぎるため、100年後でもロボットがその「器用性」に追いつけるとは思えない、と断言されています。今回、人の手・指の代わりになって手術を行う医療ロボット「da Vinci」に的を絞って紹介します。

手術ロボットにおける人と異なる能力

 例えば、手術の現場で医師が間違って血管を切ってしまったと。切ってしまうとたちどころに血の海になってしまうのですが、人間の動体視力というのは非常に低い。ということで、すぐにどこを切ったのかというのは見えなくなってしまう。そのときにもう1つこういった速い眼を入れておけば、瞬時にオーバーレイすることができて、切った場所を止血することができる。これがロボットと人間のひとつのコラボレーションのスタイル。この場合には、医師に求められるのは器用性で、カメラに期待するのは高速の眼。人間では見えないスピードのものが見える。トータルとしては人間の能力の拡張につながる。

 未来のロボットはどのような方向に行くべきなのか。どういう方向に行っちゃいけないのか。という点について少し考えてみたいと思います。(2000年のda Vinciの映像を見せながら)、先端のグリッパの部分が約5mm、人間のような手じゃない「グリッパ」です。どうやって見かけ上の器用性をつくりだしているかというと1本ではなくて2本入れることによって、見かけ上の器用性ができています。1本1本のグリッパは単に対象物をつかむだけです。

 2000年のバージョンに比べて現在のda Vinciは圧倒的に動きが速くなって、全体のシステムがスマートになっている。このロボットが日本には6台、韓国には20台、全世界で1500台売れています。価格は高額で、日本円にして2億5千万円。1台2億5千万円もするロボットが世界ですごい勢いで売れ始めている。だから株価が上がっているのです。

 なぜ、お医者さんや病院がこのロボットを買いたくなるのか。どんな病気でこれを使っているのかを調べてみると前立腺癌(ガン)だった。これがキラーアプリケーションです。米国では70%以上、前立腺癌の手術がda Vinciで行われている。これはお医者さんが進めるのではなく患者さんがロボットでやってくれと言っているわけです。ここがすごいところです。このようなキラーアプリケーションが出た時点で、このロボットは衰退、減衰しない。発展することはあっても、なくなったりはしない。前立腺癌に何でda Vinciが要るのか、どういう特徴を持っているのか。もちろん、狭いところに入っていかなければならないので、人間の手による手術は出来ない。マイクログリッパを使って手術せざるをえない。そのときにも大きく2通りあります。1つは人間がマイクログリッパを手で持って手術する、いわゆる腹腔鏡手術です。

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左の写真は腹部表面の穴から腹腔鏡を入れている様子、右はその断面イメージです。

 腹腔鏡手術では、患部が非常に狭いということもあって患部を傷つける可能性があります。少しでも動かし方を失敗すると、動きがダイレクトに伝わっていますから患部を傷つけてしまう。ところが、da Vinciを使うと、お医者さんが大きな動きをつくり出したとしても、ロボットのほうは動きをスケールダウンすることができる。なぜならば、間にコンピュータが入っているからです。ということで前者と後者の一番大きな違いは、後者は自由にスケールをコントロールできるということです。

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コンピュータを介せば、手を1cm動かすとグリッパが1mm動くといった制御ができます。

 グリッパが1本だと器用性は発揮できない。2本必要です。手動の場合にはどうしても狭いところの手術は難しい。ところがda Vinciの場合には間にコンピュータが入っていますので、お医者さんが作るモーションプランニングと別にコンピュータで動きをつくることもできます。ということで、da Vinciが前立腺ガンに使われることになったということが非常に売れている原因です。
 
 今度は、いちばん最初のデザインについて。これは非常に重要です。2000年以降にプロジェクトが生まれてこのロボットをデザインするときに、重要な部分は何かというと、人間のように多関節方式にするのか、それとも産業用ロボットのようにグリッパ方式にするのか。もし、みなさん方がいちばん最初のデザイナーだったらどちらの方式を取りますか? 

photo49-8.JPGグリッパ方式と多関節方式、あなたならどちらを選びますか? 

 もし僕が20年前にデザインしろと言われたら、ひょっとしたら、いやまず間違いなく多関節方式をとる。なぜか? こちらのほうが絶対に器用だからです。手に物を持って対象物を指の中で操ることができる、これが人間の器用性の原点です。ところが、デザイナーはこちらを取らなかった。あえてシンプルな設計にした。実はこれが成功に非常に大きく寄与していると思います。そして、1本じゃなくて2本使うことがポイントです。1本であれば「つかむ」か「離す」しかないのです。2本で腫瘍や患部を持つと、2本の手を使って操ることができます。このデザイナーはそうした選択を取ったのです。僕はこれがいちばん最初の時点での成功の1つのポイントだと思う。将来、ロボットでどういう方向に行くべきなのか、あるいはどういう方向に行っちゃいけないのかというある種のメッセージを、このda Vinciは我々に送ってくれているのではないかと思います。

photo49-9.JPG手術ロボットをどのように動かしたら良いのかは、もちろん人間が考えます。考える部分までコンピュータが担うのは、当面スタートレックのようなSFの中だけですね。 

 
 このロボットは人間に、人間の頭脳にモーションブラインドを期待している。それからロボットに対して、何を期待しているかというと正確、精密な位置決めですね。かつ、非常に小さい、人間の手よりも非常に小さいというスケールダウンをこのロボットに期待している。
 最終的には、手が入らない狭い空間に、このロボットの小さい手を使って、見かけ上、このお医者さんの手が入っていったような、ある種の仮想的な現実感を体験できる。人間とロボットが一体になって見かけ上人間の能力を拡張するというのは、人間とロボットのコラボレーションとしては非常に良いスタイルだと思っています。さらにそこにキラーアプリケーションです。これがないとロボットは必ず衰退していきます。

photo49-10.JPGあなたが患者ならば、成功率80%のロボット手術を受けますか? 

Relative SaftyとAbsolute safty

 最後に、重要な考え方を説明したいと思います。「Relative Safety」という言葉をあまり聞いたことがないでしょうが。ある手術で1つはロボットで、もう1つは人間がマニュアルで行うと想定します。いずれの場合も、何らかの処置・手術をしない限り、患者さんは生命を落としてしまう、という非常に過酷なシチュエーションとします。例えば、このロボットを使うと手術の成功率が80%だとします。これで日本の政府・官庁がこのロボットを許可すると思いますか? 80%の成功率とは10回手術をすると2回は生命を失ってしまうという、非常に厳しい数値です。こういう数値を持ったロボット手術をもしみなさん方だったら、許可しますか? 80%はちょっと低すぎる、自分が監督官庁のヘッドだったらこういったロボットは許可しないという人、手を挙げてください。人間がマニュアルで行う方の成功率を聞いてみないとわからないという人は?

photo49-11.JPGロボットを使わない人の手による手術の成功率が70%ならどうでしょうか。 

 では、人間が手術をした場合の成功率は70%だとします。その場合、皆さんも同感されると思いますが、このロボット手術を認めないと思う方が罪じゃないでしょうか? なぜかというと、認めないことによって、本来助かった人までが助からなくなってしまうからです。また、「Relative Safety」という言葉に対して「Absolute Safety」という考え方があります。「Absolute Safety」とはとことん100%成功率を求めようという考え方です。こと医療に関しては、しかも生命がかかっているときに100%の成功率が保証できないのであれば、人間のやった手術とロボット手術とでどちらの成功率が高いか、ここで見極めるべきだと思います。ロボット手術の成功率を考えるときに、ロボットだけにしか出来ないのであれば、人間がやる手段がないのであれば、仮にこの成功率がもっと低くても、これは認めるべきではないかと僕は思います。
 
 da Vinciを導入し手術経験もある藤田保健衛生大学・宇山一朗教授の取材記事が、2009年2月のロボナブルに掲載されています。あれから2年以上経ちましたが、日本においては積極的にda Vinciを導入しているとは言い難い状況です。日本国内での医療ロボット開発も大学では行われていますが、厚労省の承認に時間がかかるためメーカーが手を出したがらないようで、したがって商品化は困難かと思われます。日本には、人を救える様々なロボット技術を抱えているというのに、誠に残念なことです。

 

 ●執筆者紹介

先川原さん.jpg先川原 正浩さん(Sakigawara Masahiro)
千葉工業大学 未来ロボット技術研究センター 室長
1963年、東京都生まれ。1989年より理工書専門出版社にて、主に電気電子系の書籍企画・編集に従事。2000年1月~03年5月、ロボット専門誌の編集長。2003年6月より現職に就く。2足歩行ロボットによる格闘競技大会「ROBO-ONE」の委員会副代表をはじめ、多くのロボットコンテストにて委員・審査員を務める。また、新聞・雑誌・TV番組・イベントなどのロボット関連企画を多数手掛ける。
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http://www.furo.org/(fuRo)

 本コラムを書いている4月10日現在、いまだに日本のロボットに対して国や東京電力から正式な出動要請がないようです(ボランティアでは活動実績がありますが)。一般の方はもちろん多くのマスコミから「外国のロボットが福島原子力発電所に投入されるニュースを耳にするが、なぜ日本のロボットは稼働しないのか教えて欲しい」との問合せが多数寄せられています。そうした方には「ロボナブルニュース」に対災害ロボ関連の状況報告が詳細に書かれているので、ぜひ一読されることをお勧めしています。しかし、専門知識がない一般の方にもわかるように、もっとやさしい言葉で解説してほしいとの声もよくお聞きします。

 そこで今回は、私の所属する千葉工業大学 未来ロボット技術研究センター(fuRo)の小柳栄次副所長に、なるべく専門用語を使わずに話をしてもらいました。

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3月11日の地震直後のfuRo研究室(千葉県習志野市津田沼)の様子です。偶然、ハルクⅡの上に物が落ちてこなかったため無事でした。

情報不足のため出動要請できず

―東日本大震災の発生直後に仙台に向かわれたとのことですが、そこではなぜレスキューロボットが使われることがなかったのでしょうか?(以下、回答はすべてfuRoの小柳副所長です)

 私は3月13日の夜、総勢5名でレスキューロボット4体と自分たちが食するための食料や水を10日分クルマに積み込んで、果たして道が通れるのかどうかわからないまま東北を目指しました。幸い通行止めもなく14日の早朝には仙台に到着しました。しかし、予想以上に現地は大混乱していましたね。仙台では、共同研究をしている東北大学の田所諭先生が中心となり、被災地に向かうべく情報を収集しようとしていましたが、それがまったくできない状況でした。つまり、災害の規模が想像を絶するほど大きすぎて、決められた防災組織が機能しなかったと思われます。

 例えば、私たちがレスキューロボット4体を持参して現地入りしていることも、警察署も消防署も東京電力も知る由(よし)もなかったのです。そこで、レスキューロボットを持参して来たことを急遽パンフレットにし、『出動の要請はありませんか?』と市役所などに配布しました。ところが、市役所職員もロボットがどういう性能を持っているのかがわからないと、どこでどう使えるのかを判断できません。つまり、お互いに持っている情報が完全に不足していたのです。

 私たちは仙台周辺で自動車部品やLSIをつくっている工場があることは知っていました。例えば、人にとって有毒な物質を扱っているような工場が被災し、復興作業に向けロボットで工場を検査して欲しいとか、緊急に地震の現場でロボットが必要だといった要請を期待していました。しかし、残念ながら現地ではそうした要請を受けることはありませんでした。
  仙台では出動要請がなく、このまま待機しているべきかどうか検討を重ねていましたが、16日の夕方、地震で緊急停止したプラントの操業にあたり施設の一部を「ロボットで点検できないか?」との問い合わせがありました。そこで、私たちはプラントの現場視察や打合せをするため、その日の夜には現地を発って千葉に戻ったわけです。

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3月13日、仙台へ向けて出発直前のレスキューロボットチームです。青のヘルメットが小柳栄次副所長です。

―公的機関の要請がなくても、ロボットを持って被災地に入れば良かったのではないでしょうか?
 ボランティアの方々が、被災した各家庭を回って片付けの手伝いをすることと、レスキューロボットを用いた活動を行うということは、少々次元が違うことなのです。
 ロボットが現地に入るためには、いったい誰が操縦をするのか、また得られた情報をどのように有効利用するかということを含めて、解決しなければならない問題がたくさんあります。ロボットをどのように運用するのかをきちんと決めておかないと、実際に現地で活躍することはできません。公的機関の要請がないまま勝手に被災地に入り、ロボットで調査を行うようなことはできません。

原発災害でロボを運用するには

―福島の原発事故現場で日本のロボットは活躍できないのでしょうか?
 原発の事故に対応するために私たちは研究してきたかというと、残念ながらそうではないんです。今回の事故は、水素爆発により瓦礫だらけになった現場に、強い放射性物質が離散しています。災害が複合化しており、現場で働いている方は本当に苦労が多いと思います。

 過去にも日本で原発に関連した事故があり、その際に対応するロボットは開発されました。JCO東海村臨界事故がありましたが、その事故を教訓に原発災害用ロボットは開発されたのです。ところが、そのロボットは今どこにあるかというと、もはや展示物になってしまっているものもあります。つまり使われていないのです。なぜ使われなくなったか。災害が起きたときの対応により、その施設を改良し、二度とこのように事故が起きないようにします。すると、施設が丈夫で安全になったからロボットは使わなくて済むということで、その後の研究はなされていないんですね。

 今回の災害でフランスからロボットが送られてきました。フランスでは原子力を使う以上、絶対事故はゼロではないということで、原発災害用ロボットは常に開発を続けているのです。繰り返しになりますが、日本では今すぐに使える原発災害用ロボットは、ほとんど持ち合わせていないと思います。

Quince(クインス)をはじめ小柳副所長が開発したレスキューロボットを、原発災害現場で使うためにはどのような問題をクリアする必要があるのでしょうか?
 ロボットは危険な災害現場、人は安全なところからロボットを遠隔操作する、というのが私たちの研究開発の基本です。人とロボットの間は無線通信でつないでいます。私たちの使っている通信では無線LANを使いますが、それは日本の法律でおよそ10mWという極々小さな出力でしか電波を出せないんですね。現実には見通せる場所でも100mくらいまでしか無線が届きません。つまり、原発災害現場であれば、人も強い放射線を浴びながらロボットを操作することになります。人もロボットも同じように危険な環境で作業せざるを得ないわけです。

 アメリカは国土が広いこともあり、5Wや10Wといった高出力で無線通信を行っています。アメリカや中国は日本の電波管理規制と比べると緩いわけです。そこで、私たちは台湾から1W出力の無線増幅器を注文し、2kmほど離れたところのロボットを操縦実験に成功しています。もちろん、これらを緊急に使用する許可は得ています。

―遠隔操縦の問題が解決すれば、原発の建屋にロボットが入って行けますね?
 原発の施設は放射線が漏れないように分厚いコンクリートでつくられています。2km届くはずの無線機を積んでいても、施設内に入ったら10mも動けないでしょう。壁が電波を通さないんですね。
 そこで、私たちは2台のロボットを使おうと考えています。施設の入り口までは無線通信でロボットを移動させます。施設内に入るロボットは、無線でつながっているロボットと光ファイバでつないで遠隔操縦を行おうと考えています。光ファイバを繰り出しながら走行するロボットであれば、施設内を調査できるのではないかと考えています。そのシステムの構築はほぼ終わり、実証実験を行っている最中です。

―光ファイバならば数十kmでも減衰なしで通信できますから問題ないですね。
 光ファイバをロボットに巻き付けて搭載するためには屈曲させなければなりません。また、ロボットが動き回るためかなり強い力で引っ張られますから、相当な強度を持った光ファイバでなければ使えません。今の技術では、そのような光ファイバは最長で200m程度しか通信できないのです。しかし、施設内は一辺が50mほどですから200mあれば何とかなるでしょう。

 ロボットに搭載したカメラで状況を見る、赤外線サーモグラフィでどこに熱源が集中しているか、放射線の量など、内部の状況を調査することは可能だと考えています。ただ、施設内があまりに破壊されており、瓦礫走行が得意な私たちのロボットでも入っていけない可能性もあります。

48p3.JPG原発建家内の探索に向け電源供給のためのPOEケーブルを搭載したロボットは4月6日にIRSにより公開されました。詳細はこちらをご参照下さい。

数日間練習を積んでもらえば原発内で操作できる

―原発から2km離れてのロボット操縦も安全とはいえないのではないでしょうか?
 避難地域が20km、屋内避難地域が30kmとされていますが、そうした遠距離からロボットを操縦する実験は昨年行っています。操縦者は東京ビッグサイトに、ロボットは浅間山のふもとにいて、超高速インターネット衛星通信を使った操縦実験に成功しています。
 ただし、それをするには問題があります。衛星の電波は非常に弱いためパラボラアンテナが必要です。これは、衛星に向けての角度誤差がないように、数時間かけて調整しなければなりません。原発の近くで、しかも屋外で人が設置作業をしなければなりません。
 
―ロボットに搭載されたコンピュータやカメラといった機器は放射線の影響は受けないのでしょうか?
 私たちのロボットにはコンピュータが6、7個搭載されています。また、通信デバイスなど電子部品を多数搭載されています。こうした電子部品は放射線の影響を受けると、何らかのトラブルを起こします。コンピュータのICやビデオカメラの撮像面をも破壊してしまう可能性もあるといわれています。高濃度の放射線下で電子デバイスを使うためにはどうしたらよいのでしょうか。
 例えば自衛隊のヘリコプターは床面にすべてタングステンを張っています。タングステンは放射線を遮る素材です。私たちがタングステンを使うのは難しいため、レンズ部分以外はカメラを鉛板で囲っています。コンピュータ部分にも鉛板でサンドイッチ状態にし、放射線の影響を少なくするように改造するための情報を集めています。

―他に解決しなければならない問題点はありませんか?
 最後にひとつ、オペレーターの問題があります。たぶん、こうした国家的な危機に対しては責任の問題が派生しますので、民間人が操縦することは難しいでしょう。私たちが開発したロボットを非常に上手に操縦できるのは、実は学生なんです。かといって、学生を災害現地に行かせることは絶対ありませんし、衛星回線を通じて離れた安全な場所にいても学生に操縦させるわけにはいきません。

 私たちのロボットを操縦できるのは、レスキュー隊員か自衛官といった方達です。幸い、私たちのロボットは、千葉市のハイパーレスキュー部隊に2010年8月下旬から半年間貸し出していました。ハイパーレスキュー隊員の20名前後は、私たちのロボットを操縦した経験があります。ただし、現場はコンクリートの瓦礫に覆われて、ものすごく操縦が難しいと予想しています。相当操縦訓練を積む必要があると思います。

 千葉工業大学の建屋の一部に、そうした不整地を走破するための訓練フィールドがあります。消防隊あるいは自衛隊の方たちが、私たちのロボットを導入したいというのであれば、消防隊員や自衛官がそのフィールドを使ってもよいという許可を大学にもらってあります。そこで2、3日練習すれば、福島原発のような厳しい現場でも操縦できるようになります。

 小柳副所長のインタビュー解説、いかがでしたでしょうか。もっと詳細を知りたい方は、つい先日立ち上がったサイト「対災害ロボティクス・タスクフォースの公式ブログ」や「対災害ロボティクス・タスクフォースTwitter」をご参照ください。

 ●執筆者紹介

先川原さん.jpg先川原 正浩さん(Sakigawara Masahiro)
千葉工業大学 未来ロボット技術研究センター 室長
1963年、東京都生まれ。1989年より理工書専門出版社にて、主に電気電子系の書籍企画・編集に従事。2000年1月~03年5月、ロボット専門誌の編集長。2003年6月より現職に就く。2足歩行ロボットによる格闘競技大会「ROBO-ONE」の委員会副代表をはじめ、多くのロボットコンテストにて委員・審査員を務める。また、新聞・雑誌・TV番組・イベントなどのロボット関連企画を多数手掛ける。
http://furo.cocolog-nifty.com/ (fuRoブログ)
http://www.furo.org/(fuRo)

ROBO-ONE書籍の出版記念講演として開催

 2月5日、川崎市産業振興会館にて「第13回 ROBO-ONEテクニカルカンファレンス」が開催されました。今回は、昨年刊行された書籍「ROBO-ONEで進化する二足歩行ロボットの造り方」(オーム社)の出版記念として行われたもので、執筆陣が講師を務めました。参加費3,000円は、上記書籍(税込み2,835円)を持参することで無料になるというお得なカンファレンスです。

p47-1.JPGROBO-ONE委員会代表の西村輝一氏です。 

  はじめにROBO-ONE委員会代表の西村輝一氏が「ROBO-ONE誕生から10年」について振り返り、これからも新しい技術開発に挑戦しながら参加者と観戦者の両方が楽しめる大会にしたいと訴えました。「今後10年、ロボット技術のキーワードはセンシング、通信、HMI(Human Machine Interface)。ROBO-ONE参加者はモデルベース開発と実ロボットでの検証を行うべきで、特にセンサの計測結果をきちんと処理できればよいロボットとなる」と締めくくりました。

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図1(左):西村代表は、鉄腕アトムのように2足歩行ロボットを飛行させたいと言います。彼は2002年、すでに「ロボットの飛行実験を行っていました。図2(右):ROBO-ONE宇宙大会選抜競技として考えられた通称「投げロボ」は、2足歩行ロボットを参加者が「手」で放り投げて両足で着地できれば成功です。機械で投げるのと違い、ロボットは毎回違う軌跡を描きますので、空中での姿勢制御が難しくなります。

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図3(左):企業での研究開発や教育に使われている、MathWorks JapanのMATLABやSimulinkを学生時代にマスターできれば、就職活動において非常に強い武器となるようです。図4(右):Human Machine Interfaceは、日本ナショナルインスツルメンツのLabVIEWが紹介されました。

 次に、ROBO-ONE事務局の西村将太郎氏が「シリアルサーボを使ったロボットのプログラミング」について、ベストテクノロジーの上光隆義氏が「シリアルサーボライブラリ」と題し、講演を行いました。
 カンファレ ンスの後半は、ROBO-ONE参加者でもある執筆者3名による製作実例を中心に解説が行われました。まずは、網野 梓氏の「トコトコ丸の歩行」では、EXCELによる歩行機能開発環境についての紹介です。

 次に、 ドカプロジェクトの「ドカはるみの特長と構造」について一部抜粋して紹介しましょう。開発者の角 和樹氏が等身大ヒューマノイドを開発した理由は、自分にとって役に立つロボットが欲しかったからだそうです。「会社では人間は文句を言ってなかなか自分の言うことを聞いてくれません。私の言うことを聞いてくれるロボットをつくりたかった」との発言に会場のあちこちから笑いが起きました。みなさん同様の気持ちをお持ちなのでしょうか。角氏がどこまで本気なのかはよくわかりませんが、個人で等身大ヒューマノイドをつくりはじめた行動力には頭が下がる思いです。

p47-2.JPG「ドカはるみ」を製作した角 和樹氏です。 
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図5(左):ドカはるみの開発コンセプトは、等身大ヒューマノイドを研究している研究機関が掲げているものと共通する部分が多いですね。異なる点は、1人で持ち運べる、市販品を流用する、といったところでしょうか。図6(右):初代ドカはるみ(身長90cm)を建設機械に乗せると、一目で操縦は無理であることがわかります。ASIMOをつくったホンダでも、電灯スイッチやドアノブに手が届き、テーブルでの作業など家事手伝いができるヒューマノイドの最小サイズは身長120cmと発表しています。

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図7(左):ドカはるみの成長過程です。初代をつくり始めてから2年ちょっとの間にずいぶん人間に近づきました。図8(右):ドカはるみの仕様です。サーボモータが50個も使われているとは驚きです。

f47-9.PNG図9 個人で大型ロボットをつくった場合、みなさん運搬に苦労されています。スライドにあるように、飛行機での移動ではバッテリーは預け荷物にできないため、手荷物で機内に持ち込まなければなりません。レスキューロボットチームのように多数のバッテリーを必要とする場合、手荷物の重量限度を超えそうなときには、バッテリーを衣服のポケットに詰め込んで搭乗することもあるそうです。 

動画1 ロボットを吊した状態で全身歩行時の腰の動きを撮影したものです。角氏は歩行のモーション作成が苦手で、腰をくねらせお尻を上げれば足を上げやすくなると思い、腰にロール軸を取り付けたのだそうです。足踏みをしながらヨー軸を使うことにより前後歩行を実現させています。

動画2 某研究所のロボットをマネて、片足立ちでバランスをとっています。

動画3 5本指の特徴を生かしピアノを弾いています。角氏のいうように弾くというよりは鍵盤を叩いているだけですね。消音で動画再生すると、それなりに弾いているように見えるのが不思議です。

 この日のカンファレンスの最後はヒューマノイドヘルパープロジェクト(以下HHP)の経験をもとに「MUSASHIの制御技術の全て」と題し、丸直樹氏が講演を行いました。

p47-3.JPG「MUSASHI」を製作した丸 直樹氏です。 

 格闘競技であるROBO-ONEのロボットが備えている2足歩行制御技術のほかに、HHPでは無線LANによる遠隔操作、遠隔操作用のカメラ、音声コミュニケーションの技術が必須と丸氏はいいます。また、できればマニピュレータ(ハンド)を備え、マスタースレーブ操作機能もあったほうがよいとのことです。

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図10(左):HHPロボット「MUSASHI」の仕様です。使っているサーボモータの数は44個です。ドカはるみ同様、大型ヒューマノイドになるとこれほど多くのモータが必要なのですね。図11(右):格闘ロボットのキングカイザーとMUSASHI、ともにマスタースレーブ方式で操作します。しかし、目的に合わせて必要とされる技術は異なります。

動画4 MUSASHIは腕の動きをなめらかにするために、ポーズ間の補完スピードをリアルタイムで変更できるようにしています。動画の前半は補完スピードを一定にしたキングカイザーの制御方法で、動きは速いのですがカクカクとぎこちない動きとなっています。後半は補完スピードを最適化したMUSASHIの制御方法で、これならばなめらかに細かい作業を行えます。

 丸氏はロボットにコーヒーをおいしく注がせるために、高度な画像処理を使わず安価なセンサを用いています。ロボットの腕に歪みゲージを貼り付け、物を持ったときに生じる腕のひずみを測定して重量に変換するという方法により、コーヒーが入った容器の重量をロボットが検出できるようにしました。これでゆっくり容器を傾ければ、重量変化により定量のコーヒーをカップに注ぐことができます。ところが、これではおいしそうに見えないと丸氏は力説します。しかし、速く傾ければセンサ反応の遅れで計量誤差が大きくなってしまいます。
 そこで、何度傾けたらコーヒーが注がれ始めるのか検量線をつくり、かつ人間がそうするように容器からコーヒーが出る直前まで速く傾け、注ぎ始めたら速度を落とすという2段階の速度制御を行っています。

f47-12.PNG図12 検量線は容器の形状によって変わるため、あらかじめロボットに学習させておきます。 

動画5 従来のロボットの注ぎ方と2段階の速度制御をした注ぎ方です。従来の注ぎ方では見ていてイライラしてしまいます。

 ここで紹介した講演内容はほんの一部です。「ROBO-ONEテクニカルカンファレンス」ではROBO-ONEやHHPに限らず、ロボット製作の技術やヒントが満載です。次の機会にはぜひ参加することをお勧めします。

 最後に、来月3月19日(土)10:20から「第19回ROBO-ONE(予選)」、「第3回ROBO-ONE Light」が、3月20日(日)10:20から「第19回ROBO-ONE決勝トーナメント」、「ROBO-ONE宇宙大会選抜競技」が川崎市産業振興会館にて開催されます。観覧は無料、私も解説で参加します。みなさんお誘い合わせのうえご来場ください。

 

 ●執筆者紹介

先川原さん.jpg先川原 正浩さん(Sakigawara Masahiro)
千葉工業大学 未来ロボット技術研究センター 室長
1963年、東京都生まれ。1989年より理工書専門出版社にて、主に電気電子系の書籍企画・編集に従事。2000年1月~03年5月、ロボット専門誌の編集長。2003年6月より現職に就く。2足歩行ロボットによる格闘競技大会「ROBO-ONE」の委員会副代表をはじめ、多くのロボットコンテストにて委員・審査員を務める。また、新聞・雑誌・TV番組・イベントなどのロボット関連企画を多数手掛ける。
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乗ってわかったウィングレットとセグウェイとの違い

 1月8日、「あいち次世代ロボットフェスタ2011」(会場:ウインクあいち)にて、トヨタ自動車 理事 パートナーロボット部 高木宗谷氏の講演が行われました。私も同会場で講演を頼まれていたため準備をしていると、高木氏がパーソナル移動支援ロボット「Winglet(ウィングレット)」を、まるでキャリーバッグを引くように運んで控え室に現れたのです。バックヤードで高木氏が気持ちよさそうにWingletに乗る姿を見て、私もお願いして試乗させてもらうことになりました。

p1.JPGトヨタ自動車 理事 パートナーロボット部の高木宗谷氏です。2011年にWingletを販売するとの記事がある新聞に掲載されていましたが、高木氏に確認したところ、トヨタはそのような発表はしていないとのことです。残念ですね。


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講演内容はトヨタのパートナーロボットについての解説が主で、最後にロボットと共生する未来、産学連携、安全規格の策定に言及しています。生活支援ロボット安全検証センター設立の意義は大きいのです。
 

  Wingletは、立ち乗り型の電動2輪ロボットで、走行するステアリングユニット(ハンドル部分)を手で持って乗るタイプL、ステアリングユニットを膝で操作するタイプM、それをさらにコンパクトにしたタイプSの3種類があります。今回私が試乗したのはタイプMです。

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p5.JPG今回、高木氏が会場に持ち込まれたのはWingletのタイプMです。直進走行中に、上部に伸びたステアリングユニットを膝で右に傾ければ右に曲がります。止まったまま傾ければその場旋回となります。また、写真(右)のように上部から取っ手を引き出し、キャリーバッグのように運ぶことも可能です。


 実はこの日、私は右足のかかとを痛めていたため、Wingletにきちんと乗れるか少々心配でした。実際、はじめは痛めたかかとをかばうようにしていたせいか、思うようにうまく乗れません。しかし、わずか数分の練習で走ったり止まったり左右に曲がることができるようになり、歩くよりも痛みを感じずに快適に移動できたのです。考えてみれば2足歩行は、かかとを床に叩きつける行為の繰り返しであり、ヒューマノイドも足首のサーボモータは故障しやすいですよね。

 高木氏に「Wingletに乗ったまま壁にぶつかってみてください」と言われ、減速せずに向かってみると、手を軽く壁につくだけで止まることができました。倒立2輪構造のため、てこの原理を考えるとわかるように、小さな力で本体を制止できるのです。これなら人を含め、何かにぶつかっても大きなケガをすることはないでしょう。今回乗ったタイプMは、上記のように搭乗時も両腕が自由に使えますから、レストランのウェイターやウェイトレスに乗ってもらったら楽しそうです。

 2008年の記者発表会でスタッフがWingletを乗っている姿を思い返すと、ローラーブレードやスケボーと同様、かなりの練習が必要に思えます。実際に乗ってみて、アクロバティックな乗りこなしは簡単ではないでしょうが、通常の乗り方であれば数分も練習すれば十分だと実感しました。人が2輪の上に立ってバランスをとるという難しい部分は、Wingletが担ってくれているのです。

 同じ2輪ロボットであるSegway(セグウェイ)との違いはスケールです。Segwayは歩行者よりも目線が一段高くなり、最高時速20kmで風を感じて気持ちよく走り回れます。ただし、サイズが大きいため人混みの中での使用は難しいかもしれません。
 それに比して、Wingletは最高時速6kmで人が歩くスピードに合わせており、人混みでの移動も問題なさそうです。また、Segwayの本体重量は約50kgありますので、電源を切った状態で持ち運ぶのはたいへんです。Wingletは10kgほどですからバッテリーが切れた場合でも持ち運べるでしょう。どちらのロボットが良いという問題ではなく、使用する場所や目的に応じて活躍する場が違うのです。

 Wingletは上から見るとA3程度のサイズですので、肩幅ほどの隙間があれば通過でき、エレベータにも乗ることができます。こうしたことはTVのニュースやホームページの映像を見て頭ではわかっていましたが、実際に目の当たりにしてそのコンパクトさに感動します。今回、フェスタが開催されている屋内会場の人混みの中を高木氏がWingletで移動していく様子を見て、少々混みあったデパートや歩道でも周囲に対して威圧することなく乗れることを実感しました。
 
 私はときどき小中高校で講演を依頼されるのですが、講演会場でWingletに乗れたらどんなによいでしょう。ロボット技術を解説するには最適の教材です。トヨタさん、分解はしませんから1台お借りできませんか? 

p6.JPG会場内でWingletを乗り回す高木氏、どこにいるかわかりますか。人混みに紛れると一般の歩行者と区別がつきません。

 

 

  

等身大ヒューマノイドのおもてなし

 昨年12月25,26日、ハウスクエア横浜で「第3回 ヒューマノイドヘルパープロジェクト」が開催されました。初日はテーブルロボット部門、ROBO-ONE軽量級認定大会、2日目は2足歩行ロボット部門、徒競走です。昨年の大会に引き続き、今大会の目玉も2足歩行ロボットによるおもてなしです。

 動画1は、チーム「CAP project」が製作し優勝した「THKR-4」による1回目のデモの様子です。動画が暗いのは、ロボットをビデオカメラで撮影し、別室の観客が楽しめるようスクリーンに投影したものを撮影しているからです。操縦者は観客と同じ部屋にいるのですが、スクリーンに背を向けて、ロボットに搭載したカメラから送られる映像をPC画面で確認し、それを頼りに操縦しています。スクリーンにたびたび現れる小さな画面は、操縦者が見ているPCの画面です。なお、「THKR-4」は、ワインを注いだりクラッカーを鳴らしたり際には、マスタースレーブ方式でロボットの腕を動かしています。

 動画2は、「THKR-4」による第2回目のデモの様子です。動画1は操縦者目線でしたが、今回はロボットともてなされる人間側から撮影してみました。やたらと足踏みしているのが気になりますが、ロボットとテーブルとの位置合せがうまくいかないと、おもてなしの作業(?)が難しくなるのでしょう。今回のデモで感じたことは、ロボットの動きが緩慢であっても、音声でのやり取りがうまくいけば、かなりイライラは解消されるということです。

 動画3は、肩もみの様子です。ロボットに背を向けて肩をつかまれることに、はじめは少し恐怖を感じるようです。なお、もてなされるお客さんの役はROBO-ONE委員会メンバーが演じています。万が一、ロボットにケガをさせられた際にも問題にならないようにとの配慮です。

 動画4は、9m徒競走優勝ロボット「デシュミット」の走りです。なぜキリの良い10mにしなかったか。それはステージが狭く直線で10mをとるのが難しかったからです。このあたりの臨機応変な決め方はROBO-ONE委員会らしいと思います。なお、優勝タイムは15秒30でした。
 練習では10秒ほどで走れるロボット(動画5)もいたのですが、コースアウトで失格になってしまいました。3月19日に行われる「第19回 ROBO-ONE」の予選は9m徒競走です。決勝リーグに進出する上位32体に入るための参考記録としてください。

 

●執筆者紹介

先川原さん.jpg先川原 正浩さん(Sakigawara Masahiro)
千葉工業大学 未来ロボット技術研究センター 室長
1963年、東京都生まれ。1989年より理工書専門出版社にて、主に電気電子系の書籍企画・編集に従事。2000年1月~03年5月、ロボット専門誌の編集長。2003年6月より現職に就く。2足歩行ロボットによる格闘競技大会「ROBO-ONE」の委員会副代表をはじめ、多くのロボットコンテストにて委員・審査員を務める。また、新聞・雑誌・TV番組・イベントなどのロボット関連企画を多数手掛ける。
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生活支援ロボットの安全研究棟が完成間近

 10月14、15日に産業技術総合研究所のオープンラボに行って来ました。「生活支援ロボットの安全性検証用試験装置の開発」ブースに、12月に完成予定の「生活支援ロボット安全研究棟」の図面が掲示されていたので紹介しましょう。

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生活支援ロボット安全研究棟1階全体の図面です。特徴に応じて4エリアが色分けされています。2階はおもに会議室となっています。

●走行試験関連エリア
 青のエリアは傾斜走行、段差乗越え走行といった走行性能試験を行います。ロボットの試験場らしく、3次元動作解析装置、障害物接近再現装置が設置されています。また、上部にはモーションキャプチャのためにカメラ取付け用ぶどう棚が据え付けられています。人体に装着するタイプのロボット、いわゆるパワードスーツなどはそれぞれのパーツの位置関係を把握しながら試験しなくてはならないため、こうした試験環境が必要なのです。

●対人安全関連エリア
 赤のエリアでは日本自動車研究所が中心となり、衝突安全性試験や転倒安全性試験を行います。また、労働安全衛生総合研究所の提案により、ダミー人形を使って日常生活や作業中の事故に関する実験を行う予定です。

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走行試験関連エリア図面(左)と対人安全関連エリア図面(右)

●機械装置関連エリア
 オレンジのエリアにはオープンラボで紹介された産総研が開発した試験装置が設置されます。高湿度であったり、振動を与えられたりといったロボットにとって過酷な耐環境試験や、耐荷重試験、衝撃耐久性試験を行います。

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機械装置関連エリア図面。

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ドラム式走行耐久性試験装置。車輪型ロボットを走行させます。

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ベルト式走行耐久性試験装置。自動車は4輪ですが、ロボットは2輪、6輪、脚式などさまざまなためベルト式の走行試験装置が考えられました。ロボットが常に同じ位置にとどまるよう、センサ情報を使ってベルトのスピードは自動調整されます。つまり試験装置自身もロボットといえるのです。

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静的安定性試験装置。傾斜角を上げてゆき、ロボットが倒れはじめる角度を検出します。どのくらいの角度で滑りはじめるのかといった滑りの試験もできます。

●電波暗室関連エリア
 緑のエリアでは電磁波の干渉・耐性実験を行います。

 

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電波暗室関連エリア図面。

 われわれの身の回りで作業をしてくれる生活支援ロボットは、既存の機械よりも複雑な検証が必要となることが研究棟図面を見ただけでもよくわかりました。今後は、日本国内の安全規格を制定すると同時に、国際標準機関になるような活動も本格的に行われます。開発担当者は「ジャパンスタンダードは良いロボット!と世界中からいわれたい」と熱く語っていました。

 企業が開発した発表前の新製品についても安全性の検証を行いますので、知財の漏洩がないように情報は厳しく管理しなければなりません。もともと情報の秘匿性が高い自動車業界のノウハウが、そこに生かされるそうです。今年中に研究棟は完成し、実際にロボットを使った検証の様子がマスコミに公開されます。今からとても楽しみですね。

自律搭乗型ロボットの乗り心地について

 オープンラボ屋外会場では、知能システム研究部門 フィールドロボティクス研究グループが、協調走行する自律搭乗型ロボットのデモを行っていました。ロボナブルのニュースに詳細な記事が掲載されています。
 私はこれを見学しながら自律搭乗型ロボット(以下、自律ロボ)の乗り心地についてあれこれ考えていました。協調走行する自律ロボの前に伴走者がわざと足を差し出すと、障害物と認識して自動的にブレーキがかかって停止します。何メートル先の障害物を認識し、どのようなタイミングと強さでブレーキをかけるのかなど自律ロボの安全基準制定は難しそうだと感じました。

 私が所属するfuRoでも「次世代ロボット知能化技術開発プロジェクト」(NEDO)において全方位移動型電動車椅子(以下「車椅子ロボット」)による自動走行実験を行っています。このロボットには、もちろん障害物回避モードが搭載されているのですが、ある程度スピードが出た場合には回避行動をとらないようにしてあります。なぜなら、車椅子ロボットが急回避したり急ブレーキをかけることにより、搭乗者が投げ出されたりロボットごと転倒することも予想されるからです。前述の「生活支援ロボット安全研究棟」での実証実験の積み重ねにより、安全認証基準が制定されることを期待したいと思います。

左右に立てられたポールの先端には、車椅子ロボットが目標とする赤外線の発信装置が取り付けられています。車椅子ロボットは手前のスタート地点から右のポール、左のポールを経由し元の位置に戻って来るようプログラミングされています。途中、任意の位置に障害物(段ボール箱)が置いてありますが、自動回避をとる様子がわかります。

TBS番組「革命×テレビ」の舞台裏

 今年は大型2足歩行ロボット「core(コア)」の発表を機に、多くのメディアでfuRoを紹介していただきました。TV番組だけでもNHK「首都圏ニュース845」、フジテレビ「めざましテレビ」、NHK BS「ガッチャン!」、フジテレビ「LIVE2010ニュースジャパン」、日本テレビ「ズームインスーパー」、「真相報道 バンキシャ!」などなど、いまでも制作進行中の番組がいくつかあります。今回は12月5日に放送されたTBS番組「革命×テレビ」を例に、TV番組制作の舞台裏についてお話しましょう。

 「革命×テレビ」はソフトバンク1社による提供番組ということもあって、ITを中心に取り上げるサイエンス・バラエティ番組です。当初はfuRoのおもしろそうなロボットを1体取り上げて1コーナーで紹介する予定だったのです。しかし、何度か打合せを重ねるうちに、番組1回分丸ごとfuRo特集にしてもらうことになりました。

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メインスタジオは背景セットをCG処理するためブルーバックでした。天井も高く、かなり広いスタジオです。

 coreや車椅子ロボットは移動が困難なこともあり、VTRロケで紹介してもらうことになりました。レポーターはガレッジセールのゴリさんです。朝から晩まで1日かけたロケですが、VTRではわずか数分にまとめられていました。さらに、車椅子ロボットのシーンはすべてカットされていました。番組の編集作業中に番組スタッフから「車椅子ロボットはカットになります。申し訳ありません」との連絡をもらいました。われわれとしてはこうしたことには慣れっこですし、fuRoのCM制作を頼んでいるわけではありませんのでまったく気になりませんが、一部の方は気にされるようです。

 余談ですが、みなさん、TV番組で新橋駅の周辺などでサラリーマンにインタビューするシーンをご覧になったことはありませんか。こうした取材をする場合『収録したVTRを番組で放送してもよい』との書面にサインをしてもらうそうです。これはわかるのですが、最近は『VTRを放送に使用しない場合でも了承し問題としません』といった内容の書面にもサインをもらうのだそうです。せっかく貴重な時間を使って答えてやったのに放送しないとは何事だ、といったクレームがTV局や番組スタッフに寄せられることが多いのだそうです。いやはや何とも番組作りにも面倒なことが増えているんですねえ。

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HallucⅡの背景セットは純白です。fuRoの施設もそうですが周囲が白ですと未来的な印象となります。ハルクⅡの操縦は奥村主任研究員が担当しています。操縦席は見栄え良くつくられています。が、カメラに映らない椅子の下部分は単なる木箱なんですね。

 赤坂のTBSスタジオでの収録時には8脚車輪ロボット「HallucⅡ(ハルクⅡ)」と操縦システム、レスキューロボット「Kenaf(ケナフ)」や「Quince(クインス)」を持ち込んでの撮影となりました。HallucⅡが実車化されたというイメージでセットをあらかじめ製作しておいてもらったのですが、坂の角度は? 路面の材質は? 段差はどのくらいにする? といったやり取りだけでも結構たいへんです。実際にはHallucⅡを走らせてみないと、どんな不具合が生じるのかわからないため、収録日の朝から半日かけてリハーサルを繰り返し調整しました。

 収録翌日には、立川でレスキューロボットを使った実地予行訓練が予定されていました。そのため念入りなメンテナンスに時間が必要だったことと、本番収録で動けなくなるような事態にはならないという自信もあって、KenafやQuinceはリハーサル直前にスタジオ入りしました。ここでも残念なことに、アームを使用するシーンは台本上カットになり、Quinceは収録されることすらなく持ち帰ることとなりました。また、サーモグラフィを使って子犬を発見する場面を撮影したのですが、ここも残念ながらカットされてしまいました。技術紹介をする番組ではありませんので仕方ないといえばそれまでですが・・・。

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階段上にいる子犬をサーモグラフィで発見するシーンはスタジオで収録したのですが、放送ではカットされていました。残念です。写真右は子犬を映したサーモグラフィ画像です。

 台本では、司会の雨上がり決死隊と小林麻耶さんが、Kenafの走破する瓦礫コースを空き缶や剣山などで好き勝手にレイアウトする、とあります。どんな瓦礫コースをつくってもらっても問題なく走破します、と事前に回答していたのですが、コース終点に雨上がり決死隊の宮迫氏が横たわることはさすがに想定外でした。さらに、彼はセンベイの空き缶を高く積み上げて、自分の頭に落ちるように仕掛けていました。レスキューロボットが宮迫氏の身体の上に乗り上げるシーンではテロップで「事前に人体への乗り上げ実験を行い、安全であることを確認しております」と記してもらいました。それほど危険がないとはいえ、笑いのためにはケガをも恐れぬタレントの意気込みには脱帽の一日でした。

【関連記事】
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●執筆者紹介

先川原さん.jpg先川原 正浩さん(Sakigawara Masahiro)
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1963年、東京都生まれ。1989年より理工書専門出版社にて、主に電気電子系の書籍企画・編集に従事。2000年1月~03年5月、ロボット専門誌の編集長。2003年6月より現職に就く。2足歩行ロボットによる格闘競技大会「ROBO-ONE」の委員会副代表をはじめ、多くのロボットコンテストにて委員・審査員を務める。また、新聞・雑誌・TV番組・イベントなどのロボット関連企画を多数手掛ける。
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頭部の形状に合わせてマッサージしてくれる「洗髪ロボット」

 9月29~10月1日、東京ビッグサイトにて開催された「第37回 国際福祉機器展」での注目ロボットは、なんと言ってもパナソニックのブースでデモ展示が行われていた「洗髪ロボット」でしょう。私は展示会最終日の午後、ブースで解説をされていたパナソニック ロボット事業推進センター 商品開発・メカニズム担当 リーダーの中村徹氏に話を聞くことができました。以下、グレーの文字が各担当者のコメントになります。

写真1.jpg写真1 ステージデモはマネキンを使っています。すぐそばで見ましたが、とても気持ちよさそうで、私もロボットに洗ってもらいたくなりました。

  2009年4月に社内で起案して昨年11月まで種々の方式を検討、そこから開発をスタートしました。病院などの入院患者は、1週間に2日くらいしか洗髪の機会がないことが多いようで、それをなんとかしたいということが開発動機となっています。水流で洗う洗髪システムでは物足りない、手洗いがよいという方がいて、そこを再現できないかと考案しました。もちろん、美容室や理容店でも使用できるため、一般に幅広く使ってもらうことも考えています。ドライな状態でもマッサージができるので、ヘッドスパのようなリラクゼーション分野での利用も狙っています。 

写真2.jpg写真3.jpg

写真2(左)、写真3(右) 洗髪ロボットの事前セッティングはタッチパネルを使います。

 構想からわずか1年半で、完成度の高いロボットを試作したわけですね。美容室や理容店で洗髪してもらう際、「かゆいところありますか?」と必ず聞かれますが、かゆい場所を口で説明するのって難しくありませんか。私はいつも「ありませーん」と答えるのですが、本当は右の後頭部に近い辺りがかゆかったりします。他人にかゆいところをかいてもらう心理的負担、「よそ様にかいてもらうなんて申し訳ないなあ~」との気持ちになってしまうのは私だけではないように思います。入院時に忙しいヘルパーさんに洗ってもらうなら、なおさらそう考えてしまいます。

 もちろん洗髪ロボットが自動で洗ってくれるのもよいのですが、自分で操縦するモードも開発して欲しいものです。その場合、操縦は手元のコントローラか音声認識ということになるのでしょうね。
 次に、開発で苦労した点や耐久性についても伺いました。

 人の頭には様々な形状があり、髪の多い少ないなど、しっかり記憶して好みに応じて登録しておくというところ、個々の特徴に合わせて指先をうまく追従するメカニズムを、どのように仕上げていけばいいかというところに苦労しました。
 防水部分はゴム製の蛇腹を使っています。ロボット指先の表面に付いているビニールは、利用者で1人ひとり交換します。清潔さをイメージしてもらいたいのです。ビニールは使い捨て手袋と同じで安いものなのでコストはかかりません。
 まだ耐久試験は行っていないのですが、本展示会で取材時までに50回近く洗髪デモを行い、故障や失敗は一度もありません。

 プロトタイプのロボットが、3日間に50回ものデモを行うのは珍しいですね。商品化は間近ではないかと思いましたが、「機能性の向上」と「装置の信頼性」「安全性」の3つをクリアするのは2012年頃だろうとのことです。

 洗髪ロボットの隣には「らくらく移乗でくらしを拡げる生活支援ベッド」の体験コーナーがありました。これについては、同社ロボット事業推進センター ロボット企画担当 リーダーの小林昌市氏に話を聞くことができました。

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写真4(左)、5(右) 「車椅子機能付き電動ケアベッド」はベッドの一部が分離して車椅子になります。ガスダンパーで力をサポートしているため、ユーザーが簡単に椅子の背を立てることができます。

 この車椅子機能付き電動ケアベッドは介助用で、介護施設用にターゲットを絞り込んだものです。NEDOの「生活支援ロボット実用化プロジェクト」で弊社が開発を進めているロボティックベッドはプレミアムバージョンで、どんどん改良していき安全性が高く、要介助者の自律を目指すものとして開発しています。つまり、要介助者の立場で自律を支援するものです。
 こちらのベッドは要介助者にとって生活をアシストするものでもありますが、どちらかといえば介助するヘルパーさんの立場に軸足を置いています。こちらはロボットとは呼ばず、ロボット技術を使った電動ケアベッドです。NEDOプロジェクトのロボティックベッドを開発している中で、お客さんから寄せられた声にもお応えしていこうというものです。安全規格が成立するであろう2012年頃にはロボティックベッド、洗髪ロボットともに商品化して世に出したいと考えています。

写真6.jpg写真6 パナソニックブースでは、フィットネス機器「ジョーバ」を介護予防用に設計したもののデモが行われていました。

 ロボットを開発していく過程で生まれた要素技術が製品に反映されていくわけですね。洗髪ロボットの2012年の商品化というのは、技術的な問題よりも安全認証制度の確立によるところが大きいようです。
 今回の国際福祉機器展では、パナソニックのほかには大和ハウス・サイバーダイン社のロボットスーツ、セコムの食事支援ロボットなど、いくつかロボットのデモ展示がありましたが、まだまだ数は少ないように感じます。早く安全認証制度が制定され、サービスロボット産業が爆発的に拡大するといいですね。

日本で14万台売れた自動掃除機「ルンバ」

 10月5~9日、幕張メッセにて「CEATEC JAPAN 2010」が開催されました。アジア最大級の「it・エレクトロニクス」イベントということもあり、会場はたいへん賑わっていました。3Dテレビやモバイル機器、電子デバイスのほかに、電気自動車やヘルスケア関連のブースが昨年よりだいぶ増えたように感じます。

写真7.jpg写真7 パペロがデモを行っていたデジタルヘルスケア・プラザです。ロボットやネットワークと連携した健康サービスは、今後ますます需要が高まりそうです。

 アイロボット社の日本総代理店セールス・オンデマンド社のブースでは、掃除ロボット「ルンバ」のデモが行われていました。このルンバ、世界で最も売れているロボット家電と言ってよいでしょう。すでに世界40カ国で500万台が販売されています。日本国内での販売台数は14万台ということですが、これを多いと見るか少ないと見るかは意見が分かれます。普通の電気掃除機が各家庭に1台はあることを考えると、まだまだ普及しているとは言えません。しかし、電気掃除機としては高価格帯でバッテリーの定期交換費用もかかることを考えると、健闘しているとも考えられます。
 ただ、1年に1回、1万円のバッテリーを交換するのは負担だと考える方も少なくありません。もっとも電気自動車のバッテリー交換費用に比べれば大した金額ではないのですが。

写真8.jpg写真8 床と畳・カーペット程度の段差は問題なくクリアできることをデモで実証しています。

 500万台も販売されていると事故は避けられないのではないかと思い、ブースで解説をしていた方に聞いてみました。すると今まで、バッテリーの発火など深刻な事例報告はないとのことです。なお、ルンバは留守中に稼働させることも多いため、安全性の高いニッケル水素電池を採用しています。

 ルンバのブースにはアイロボット社が開発した爆弾処理用ロボット「パックボット」も展示されていました。基本はアメリカ軍に販売しているものですが、アメリカの警察も購入しているとのことです。レスキューロボットと外観は変わりませんが、最大の違いは頑丈さに秀でている点でしょうか。1.8mの高さからコンクリートの上に落下させても壊れず、防水処理により水深1.8mでも稼働します。未来ロボット技術研究センターのレスキューロボット「Quince(クインス)」も高さ2mの落下試験に耐えられますが、商品化レベルでの耐久試験は行っていません。

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写真9(左) 多目的作業ロボット「パックボット」です。それにしても1体2,000万円で3,000体以上売れているとはすごいものです。写真10(右) 爆弾処理作業でバラバラになった「パックボット」が、アイロボット社に送られてきたことがあるそうです。人の代わりにロボットが犠牲になってくれたとして感謝状が同封されており、こうした感謝状は何通も送られてくるのだとか。

 村田製作所のブースでは、今年もムラタセイサク君・セイコちゃんのデモが行われていました。ムラタセイサク君にエネルギー表示機能が加わっていましたが、これはスマートホームへのイメージ展開をしてもらうために考えたことだそうです。

 日産自動車は電気自動車が普及した街の未来像をロボットカー「エポロ(EPORO)」を使って表現していました。発電用ソーラーパネル「ソーラーの木」は蓄電池にもなっており、周囲は非接触充電ゾーンとしてデモが行われました。「ソーラーパネルは常に太陽方向を向く」とあるので、ここにもロボット技術が使われるということですね。

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写真11(左) ムラタセイサク君のエネルギー消費量が可視化されました。このようにわかりやすい表現を使えば、子供にも(大人も?)エコを理解してもらえるのではないかと思います。写真12(右) 担当者は、今から20~30年後に電気自動車が非接触充電で走り回れるようにしたいと言います。ただ、その頃私は高齢のため自分で運転するのは難しいかもしれません。あわせて自動操縦技術も実用化していることを願います。

浅間山片蓋川のロボットを東京ビッグサイトから遠隔操縦

 10月6~8日、東京ビッグサイトで「危機管理産業展2010」が開催されました。本来、ロボットとはあまり関係ないイベントですが、今回は興味深い公開デモが行われました。東北大学(吉田・永谷研究室)、情報通信研究機構(NICT)、宇宙航空研究開発機構(JAXA)の共同ブースで行われた「超高速インターネット衛星WINDSを用いた不整地走行ロボットによる被災情報収集の公開デモ」です。
 具体的に言うと、浅間山片蓋川に置いたロボットを東京ビッグサイトの会場から衛星経由で遠隔操縦するというものです。アームはマスタースレーブ方式でコントロールしています。会場でデモを行っていた吉田和哉・東北大学大学院教授に話を聞きました。

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写真13 デモの指示をする(左)吉田和哉教授(東北大学大学院)とロボットを操縦する桐林星河氏(東北大学大学院博士課程 吉田・永谷研究室)です。

 

 以前、ETS-VIII(きく8号)で実験をしたとき、静止衛星を往復させると1秒ほどの時間遅れが出来るという経験をしています。そこで1秒遅れても安定して作業ができる仕掛けを考えてきました。現地の様子をよりよく知るための情報伝達の仕方を研究してきたわけですが、今回のWINDSは回線が太いのでかなり高画質の動画像を1秒遅れ程度の時間差で見られるため、前回に比べたら、かなり実験はし易くなりました。研究としては、クオリティが高くなくてもCGなどのモデルによってスレイブアームの様子を推察できる仕掛けをつくり込んでいます。

 ビッグサイトの会場から、浅間山片蓋川の様子を画面で見せてもらいましたが、画質の高さには驚きました。岩石の調査や採取作業等、これだけ高画質であれば効率良く研究が進められるに違いありません。

 実際に実用化しようとトータルで考えると、通信の現場設営の問題、つまりAC電源が必要だったり機材もそれなりに大きくなってしまいます。これらをもっとポータブルにしていくということは技術としては必要です。また、ロボットとしても信頼性を高めていかないといけないなど、まだまだ課題はたくさんありますが、1つひとつの技術はいま積み上げつつあります。実際に火山で噴火活動が始まってしまい、人が近づけないけど何かを見に行きたいと、そういうときに役立てるようなものを作っていかないといけないかなと思っています。

動画1 右端のモニタが浅間山片蓋川で作業するロボットの映像です。左端のモニタはロボットアームの先にあるカメラ映像で、岩石の特長をよく映し出しています。マスターアームの操縦によりロボット上のスレーブアームが作業することがわかります。

動画2 ロボットが傾くと、同じ角度で手元のマスターアームも傾きます。傾斜地でロボットを作業させる場合でも操縦しやすいように配慮されているのです。

動画3 ロボットを操縦していた桐林氏によると、衛星通信回線が普通のLANと変わらず使えているので、普段の操作システムがそのまま使えるとのことです。

 東京消防庁のブースでは救出ロボット「ロボキュー」のデモが行われました。隊員は週に1回3時間ほどロボットの操縦訓練をしているそうです。東京消防庁に1体だけあるこのロボット、宝くじの1等賞が当たらないと買えない値段だそうです。また、隊員が実際に要救助者になってロボット取り込まれる訓練を経験したそうですが、特に痛みや恐怖を感じるようなことはなかったとのことです。

動画4 人間を救助する目的で作られたため、ダミー人形のように堅い物を扱うのは難しいようです。ダミー人形がロボットに押されて動いてしまうため、手前の隊員が足で押さえています。人間であればこのような問題は起きません。

 

●執筆者紹介

先川原さん.jpg先川原 正浩さん(Sakigawara Masahiro)
千葉工業大学 未来ロボット技術研究センター 室長
1963年、東京都生まれ。1989年より理工書専門出版社にて、主に電気電子系の書籍企画・編集に従事。2000年1月~03年5月、ロボット専門誌の編集長。2003年6月より現職に就く。2足歩行ロボットによる格闘競技大会「ROBO-ONE」の委員会副代表をはじめ、多くのロボットコンテストにて委員・審査員を務める。また、新聞・雑誌・TV番組・イベントなどのロボット関連企画を多数手掛ける。
http://furo.cocolog-nifty.com/ (fuRoブログ)
http://www.furo.org/(fuRo)




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