文部科学大臣も観戦したロボット相撲大会
今年で23回目となった「全日本ロボット相撲全国大会」が12月18日(日)、全国予選に参加した1,311チームの中から勝ち抜いた96チームが、両国国技館に集結しました。
写真1 3つの土俵で3試合ずつ同時進行で行われました。
自立型の優勝は、前回大会に引き続きチーム両国の「六次元K」、ラジコン型の優勝は香川県立三豊工業高校の「蒼穹」(前回大会も同校のチームが優勝)でした。この優勝ロボット同士2体が対戦したエキシビジョンマッチを動画1~3で紹介します。動画の後半部分はスロー再生した映像です(ルール説明などは、こちらを参照)。
動画1 エキシビジョンマッチ第1試合の動画です。左が自立型の「六次元 K」、右がラジコン型の「蒼穹」です。自立型はスイッチをオンにしてから5秒後に動くようルールで規定されていますので、ラジコン型の操縦者は同じタイミングでロボット操作を始めます。
動画2 第2試合の動画です。「六次元 K」のアームに付いているフラッグは対戦ロボットを惑わすためのものですが、ラジコン型が相手ではほとんど意味をなさないですね。
動画3 ロボットにはたいてい緊急停止ボタンが付いています。自立型の相撲ロボットでは動きが速すぎるうえに、相手ロボットの下にもぐり込むためのブレードが鋭利な刃物状になっており、近づくと危険なため、遠隔リモコン操作により停止させていることがわかります。
写真2 今年から審判は硬式野球のキャッチャー用プロテクターを下半身に装着することになりました。動画3のようなシーンを目の当たりにすると、確かに必要な装備だと感じます。
大会はホームページからプリントアウトしたチラシを持参すれば、誰でも無料で観戦できます。また、今年はエントランスにて、宇宙航空研究開発機構(JAXA)や千葉工業大学の協力により宇宙服や災害対応ロボット「Quince(クインス)」が展示され、パネルやモニター映像を使った解説が行われていました。ほかにも紙飛行機工作教室や相撲ロボットの操縦体験コーナーもあり、家族で楽しめるイベントが盛りだくさんです。
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写真3(左) 小型ソーラー電力セイル実証機「イカルス」や小惑星探査機「はやぶさ」の模型とパネル展示です。写真4(右) 「船外活動ユニット」いわゆる宇宙服が展示されており、ヘルメット部分から顔を出して記念写真を撮る親子連れが目立ちました。
写真5 Quinceに見入ったり、パネルやモニター映像を熱心に参照されたりする方も多く、福島原発事故への関心の高さが伺えます。展示したQuinceは後ほどステージデモを行いました。
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写真6(左) 「なんだ、紙飛行機か」とバカにしたものでもないのです。滞空時間が数十秒という本格的なものをつくります。写真7(右) 本物のロボットを操縦する体験など、なかなかありません。まして、対戦型のロボットとなれば子どもたちにはたまらないでしょう。
主催の富士ソフトや協賛スポンサー19社が提供する賞品が当たる抽選会も盛況でした。ちなみに、1等はノートPC「HP Mini 210」とLenovo「IdeaPad Tablet A1」が各1名に、2等はMicrosoft「XBOX 360 250GB + Kinectバリューパック」:4名、3等はMicrosoft「Xbox 360 4GB + Kinectバリューパック」:4名、4等はグラフィックボード「AMD FirePro V4900」:3名をはじめ、観戦者約1,000名にほとんど何かしらの賞品が当たるよう用意されています。
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写真8(左) 商店街の福引きに比べれば上位の当選確率は高いように思います。写真9(右) 写真にあるようにQuinceを横方向に傾けて85度の角度まで倒れないことを示しました。順調にいけば2012年1月、新たに改良したQuinceが原発建屋に投入される予定です。
決勝の巴戦準備の時間を利用してQuinceのステージデモも行われました。小柳英次副所長(千葉工業大学 未来ロボット技術研究センター)が解説を行いながら、Quinceは枡席側から階段を下りステージへ向かいます。無線のトラブルでもあったのか、途中Quinceが立ち往生する場面もありましたがすぐに復帰し、スムーズに段差乗り越えのデモを披露しました。
表彰式での中川正春・文部科学大臣の挨拶を以下抜粋します。
「福島第一原子力発電所がこれから廃炉に向けて、非常に難しい技術的な壁を克服していく段階にあります。千葉工業大学を中心にロボット開発をしていただいていますが、ますますロボットの役割が必要になってくるということでありますし、宇宙、海洋、そして癒し、介護ロボット、それぞれの分野でロボットがこれから本当に活躍をする、そんな時代がやってきます。みなさんの闘志、挑戦する心、そこから育つ人材、心から期待を申し上げたいと思いますし、また、来年に向かってがんばっていただきたいと思います」
元気が出る良いコメントだと思います。NEDOからは「災害対応無人化システム研究開発プロジェクト」の公募が開始されましたが、文部科学省として「原発事故対策ロボット研究開発プロジェクト」は計画があるのでしょうか。気になるところです。
写真10 表彰式で挨拶をする中川正春・文部科学大臣です。大臣はQuinceのデモを見学し巴戦を観戦、そして表彰式に出席しました。
爆笑ロボット映画「ロボジー」
監督・脚本は「ウォーターボーイズ」や「スウィングガールズ」で知られる矢口史靖氏です。前回のコラムでは映画「リアル・スティール」を紹介し、試写会では“感動して”涙ぐんでしまったと書きましたが、今回紹介する映画「ロボジー」は“爆笑の連続”で涙ぐんでしまいました。一般の方はもちろん、特にロボット関係者は必見の作品です。
写真11 主役の「ニュー潮風」です。「頭部は電気釜、胸部はガスメーター、背中は湯沸かし器と、家電会社の連中がスクラップを集めてつくった中古感を目指した」とは矢口監督の弁です。『ロボジー』2012年1月14日(土)より 全国東宝系公開。(C)2012 フジテレビジョン 東宝 電通 アルタミラピクチャーズ 公式ホームページはこちら。
<ストーリー>
家電メーカー、木村電器の窓際社員、小林・太田・長井の3人組は、ワンマン社長から流行の二足歩行ロボットの開発を命じられていた。近く行われるロボット博での企業広告が目的だ。しかし、ロボット博まであと1週間というところで、制作途中のロボット“ニュー潮風”が木っ端微塵に大破!窮地に追い込まれた3人は、ロボットの中に人間を入れて誤魔化す計画を立てる。ロボットの外装にぴったり収まる人間を探すため、架空のオーディションが開かれ、仕事をリタイアして久しい独り暮らしの老人・鈴木重光(73歳)が選ばれる。しかし、この鈴木がとんでもないジジイで・・・。さらには、“ニュー潮風”に恋をしたロボットオタクの女子学生・葉子も巻き込み、事態は思わぬ方向へ転がり出す―。
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写真12(左) 2足歩行ロボットオタク役を演じた吉高由里子さんです。彼女のロボットオタクっぷりは見事なものです。「ニュー潮風」製作スタッフが大学の講演講師に呼ばれたシーンも秀逸でした。写真13(右) 仕事をリタイアして久しい独り暮らしの73歳、主役の鈴木重光を演じる五十嵐信次郎さんです。老人問題というとおおげさかもしれませんが、リタイア後の生き方などなど、いろいろと考えさせられました。
矢口監督は1996年、ホンダの「P2」を見て「まるでロボットが入っているみたいだ」と衝撃を受け、以来、ロボット映画をいつかつくりたいとずっと思っていたといいます。そして、2004年頃から本格的にロボットについてリサーチを始めていたそうです。ロボットイベントやそのバックヤードについて、やけにリアリティがあるはずです。「CEATEC JAPAN 2010」の実景撮影が加えられているので、なおさら臨場感が増しているのでしょう。
映画の中には、ヴイストンの「Vstone Tichno」「OmniZero.9」「OmniZero.7&ALCNON?」、産業技術総合研究所/川田工業の「HRP-2 Promet」、安川電機の「SmartPalV」、通天閣観光/エルエルパレス/グラフィック・パワーの「通天閣ロボ」、テムザックの「PRロボット」、村田製作所の「ムラタセイサク君」、理化学研究所/東海ゴム工業の「RIBA」が実際に登場します。ロボット関係者にはお馴染みですが、試写会に来たマスコミ関係者の大半は、これらのロボットが映画用につくられたものだと勘違いするそうです。
写真14 「ニュー潮風」の左は木村電器のロボット開発部員を演じる濱田岳さん、右はチャンカワイこと川合正悟さん、後ろでノートPCを拡げているのは川島潤哉さんです。イベント会場の準備でこんな場面に出くわします。「ロボット通りまーす!」という声が聞こえてきそうです。
上述の「全日本ロボット相撲全国大会」でデモを行ったロボット「Quince」の研究開発に携わっている者は3名で、そのうち1名は大学院生です。先日もNHKのニュース番組のディレクターさんが、Quinceの開発がたった3名で行われていることに驚かれていました。一般の方の感覚では、ロボットはもっと大勢で開発しているイメージがあるのかもしれません。「ニュー潮風」の開発に携わっている社員は3名、うち1名はエアコンのIC担当で、他は洗濯機の営業担当と梱包担当だった設定ですから、現実にはさすがにこの人員ではロボット開発はできませんね。
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写真15(左)、16(右) 「ニュー潮風」に入る人間の募集チラシです。サイズが細かく指定されていますが、実際の映画の撮影においても、かなり細身の方、特に太ももが細い方でないと中に入るのは難しいそうです。なお、チラシに「個人PRタイム有り!」とありますが、このPRタイムのシーンがおかしくて、思わず声を出して笑ってしまいました。
矢口監督のこだわりでロボットに関してはCGを一切使っていません。「ニュー潮風」の部品はFRP製で、身体に装着する際には各部品をネジ止めしていきます。セリフを大声で喋ると反響して周りの音が聞こえなくなり、視界が狭く、総重量が30kgもあるといいますから、役者さんはたいへんです。CGを使わないことにより、味のあるリアルな作品に仕上がっているように感じます。「ロボジー」は、ロボット好きでなくても理屈抜きで楽しめる、良質のスラップスティック・コメディ(ドタバタ喜劇)映画です。
「2011国際ロボット展」の最終日にROBO-ONEイベントを開催した際、矢口監督と「ニュー潮風」にゲスト出演してもらう機会がありました。矢口監督は真面目な顔と口調でありながら、話している内容はユーモアに溢れているという独特な雰囲気を持った方でした。
そんな矢口監督のコメントを最後に紹介したいと思います。
「ニュースなどで最新のロボットを見るたび、あまりの自然な動きに『実は中に人が入ってたりして・・・。』そんなことを思っていました。この物語は“老人とロボットのハイブリッド”というかなり突飛な設定ですが、ロボット先進国日本の片隅で、もしかしたら、ひっそりこんなことが起っているかもしれませんよ。あなたが見たことがあるロボットだって、本物かどうか・・・。映画館を出たあと、すべてのロボットが疑わしく感じるはずです。ほら、段々おジイさんに見えてきませんか?」
●執筆者紹介
先川原 正浩さん(Sakigawara Masahiro)
千葉工業大学 未来ロボット技術研究センター 室長
1963年、東京都生まれ。1989年より理工書専門出版社にて、主に電気電子系の書籍企画・編集に従事。2000年1月~03年5月、ロボット専門誌の編集長。2003年6月より現職に就く。2足歩行ロボットによる格闘競技大会「ROBO-ONE」の委員会副代表をはじめ、多くのロボットコンテストにて委員・審査員を務める。また、新聞・雑誌・TV番組・イベントなどのロボット関連企画を多数手掛ける。
http://furo.cocolog-nifty.com/ (fuRoブログ)
http://www.furo.org/(fuRo)

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